霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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七十五話

その日、二箇所に存在するオーフィスの何方が本物か確かめる為、『ぼくのごせんぞさまはすごいんだよ同盟』の幹部達は二手に分かれていた。ゲオルクと曹操の姿になったアーロニーロはリアス達の所に居るオーフィスを襲い、ジークフリードとレオナルドはアーサーと一緒に居るオーフィスに襲撃をかける。

 

そしてヘラクレスは冥界にある基地に残り、留守番ついでにジャンヌの遺品の整理をしていた。

 

「……うぉ、エロ下着」

 

思わず零した言葉に女性の構成員から冷たい視線が送られる。気不味さから目を逸した時、彼らの鼻腔に甘い香りが漂ってきた。

 

「……ん? なんだ、この香り……ぶはっ!?」

 

途端に襲ってくる苦痛。体中に走る激痛によって呼吸すらままならず、その場でのたうち回る。何時の間にか室内には紫の煙が充満し、体中に同じ色の斑点が出来ていた。

 

 

ああ、これは毒だな、ヘラクレスがそう判断した時には既に意識は沈んでいく最中で、そのまま彼は意識を手放した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何があった!? ヘラクレス! 返事をしろ!」

 

自分達が見張っていた方は偽物だと連絡を受けたジークフリードは基地に帰り驚愕する事となった。構成員が老若男女問わずに死に絶えていたからだ。全身に紫の斑点、目は窪み、穴という穴から血が流れ出ている。

 

「……毒か? レオ、触るなよ」

 

彼は隣に居た幼い仲間に指示を飛ばすと建物内部を慎重に探索する。そして大広間にたどり着いた時、見知らぬ男と出くわした。

 

 

 

 

 

「おや、まだ居たのかネ? そうそう、殺す前に名前を聞いておくヨ。瓶に詰める際にラベルに名前を書かなかればならないからネ」

 

禁手化(バランスブレイク)!」

 

目の前の男……マユリはヘラクレスを解剖しながら二人に話しかける。彼がこの惨状の元凶だと理解したジークフリードは禁手を使って一気に勝負を決めようとした。

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

しかし、禁手は発動しない。その姿をマユリは可笑しそうに笑っていた。

 

「無駄だヨ。スパイに集めさせたデータを元に特殊な結界を貼っている。君達ご自慢の禁手を封じる結界をネ。さぁ、実験を始めようじゃないか」

 

マユリは刃が三本ある金色の不気味な刀をジークフリードに向け、彼も龍の手の亜種である神器を発動させる。背中から生えた龍の腕と両腕の合わせて計三本の腕に名立たる魔剣を持ち、マユリ目掛けて一気に跳躍する。

 

「はぁっ! たぁっ! がぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ほっ。はっ。ふっ」

 

ジークフリードの猛攻を凌ぎながらマユリは後ずさりする。一見すると彼が押されている様に見えるが顔にも声にも余裕があり、其れがジークフリードを苛立たせる。そしてマユリを壁際まで追い詰めた彼は三本の魔剣を一気に振り下ろした。

 

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

それは受ければ塵すら残らない程の一撃。彼の腕前もあって神速で放たれた斬撃は壁を吹き飛ばし、建物の殆どを吹き飛ばす。

 

 

 

 

「ぐふっ!」

 

そしてジークフリードは前方へと体を躱していたマユリによって脇腹を深く切り裂かれた。その場に膝をつくジークフリードがレオナルドに加勢の魔獣を創造させる指示を出そうとした時、第三者の声が響いた。

 

 

 

「でひゃひゃひゃひゃ! オモロイ事なってんじゃん、ジークちゃんよぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

「リゼヴィム!? ッ! レオを離せっ!」

 

突如現れたリゼヴィムはレオナルドを捕まえ、楽しそうに笑っている。その隣には銀髪の青年が控えていた。

 

「リゼヴィム様、そろそろ……」

 

「オッケーオッケー♪ 分かってるよユークリッド。そろそろ死神ちゃん共が来そうだし、おっぱじめっか!」

 

リゼヴィムは懐から大きい瓶を取り出す。其処には大量のオーフィスの蛇が入っており、それをレオナルドの口に無理やり流し込んだ。

 

 

「!?」

 

急激に力を底上げさせられたレオナルドはもがき苦しみ、影より魔獣を創りだす。これが彼の神器である『魔獣創造』の力。しかし、今創り出されているのは規模が違った。現れたのは無数の巨大な魔獣と一際大きい一体。

 

「……無理やり禁手に至らされたカ」

 

「せいか~い! いやぁ、デッカイ事って何があるか考えてさ……今の冥界を滅ぼそうって事になったのよ。んじゃ、後はヨロシク!」

 

リゼヴィムは無理やり力を引き出された反動で気絶したレオナルドを捨て置き、青年と共に転移していく。その頃になって死神達が現れた。

 

「マユリ殿ッ!」

 

「来るんじゃないヨッ! ……お前らは冥界に連絡を入れろ。私は一番デカイ奴の相手をするヨ。……其処の馬鹿を捕らえておきなヨ。後で実験するからネ」

 

「はっ!」

 

死神達はジークフリードとレオナルドを捕らえ、その場を去っていく。魔獣達は首都を目指して歩いて行くが、一際大きい魔獣だけはマユリをジッと見ていた。

 

「……さて、たまには本気を出すとしよう」

 

マユリは刀を鞘に戻すと懐から注射器を取り出し首に注入する。その瞬間、彼の肉体が崩れ、別の存在に変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホーッホッホッホッホッホ! さぁ、遊びましょう」

 

声こそ同じだがその姿は別物だ。毛のない真っ白な体に長い尾。頭の部分だけ紫の所がある。そして彼から放たれるオーラだけで基地の残骸が吹き飛んだ。

 

 

 

 

「ボクの名はフリーザ。死従七士の一人にして、『傲慢』を司る将だよ」

 

フリーザは芝居がかったお辞儀をし、にこりと笑った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、次の死人を決めようか?」

 

「なっ!? 兵藤君、何を言ってるんだ!? 残りは生かして返すって言ったじゃないか!」

 

一誠の言葉に祐斗は狼狽する。アザゼルはアーロニーロに生きたまま飲み込まれ、リアスは兄に見捨てられたショックで騒ぎ出し、五月蝿いからと気絶させられて捕らえられている。恐らく後で殺すのだろう。そして先程一誠が言った言葉では選ばれなかった方は生かして返す筈だったのだが……。

 

 

 

「いや、話を聞こうよ。俺は選んだ方を殺して残りは生かして返すって言ったけど、ルシファーが選んだ方とは言ってないよ? 玉藻」

 

「はい♪」

 

次の瞬間、目の前に青と赤の二つの門が現れる。一行がそれを見つめる中、一誠はアーシアに話しかけた。

 

「これが最後の選択だよ。君は回復役だから無条件で帰還させてあげる。でも、木場君と姫島先輩とヴラディ君か松田。何方には死んでもらう。さぁ、松田が入る門を選んで。ハズレに入った方は死ぬよ」

 

「そ、そんな! どうにかならないんですか!?」

 

アーシアは必死に懇願するも一誠は首を横に振るばかり。流石に今度ばかりは賠償金だけで済ます気など無いようだ。

 

アーシアが迷う中、頭の中に一誠の声が響いてきた。

 

『安全なのは赤の扉だよ。松田に青を選ばせれば木場君は無事に帰れる。ほら、大多数の為に少数を切り捨てるなんて君の尊敬するミカエルもやってるよ、君を追放したみたいにさ。……さっさと選ばないになら何方も殺す。仲間をより多く助けるにはどうしたら良い? 大丈夫、この事は黙っていてあげるよ』

 

一誠の誘惑はアーシアが心の隅に持っていた木場と一緒に帰る為に松田を見捨てても良い、っというドス黒い感情を正当化させる物。極限まで追い詰められていた上に突きつけられた非情な選択に彼女の心は参っており、誘惑を跳ね除ける力は残っていなかった

 

「あ、青」

 

『へいへい、ほら、行きなっ!』

 

「うわっ!」

 

グレンデルは松田の襟首を掴むと青い門に放り込む。その瞬間、門が消失した。

 

「おめでとう! 君達は仲間を犠牲にして生き残れた! 彼らの分まで精一杯生きたら良いと思うよ?」

 

その瞬間空間が歪みだし、アーシア達は先程まで居たホテルの内部に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HAHAHA! んじゃ、遠慮無く貰っていくZE!」

 

インドラは瀕死のヴァーリを担ぎ上げながら高笑いをする。彼の前方には首都へと向かう大型の魔獣達が居たが、集まった神々の手によって呆気なく倒されていく。

 

《ファファファ、今回の事でグレモリー家は領地を大幅削減。……しかし兄妹の情は捨てきれんか。無能姫を生かして返してくれるなら減った領地を冥府に差し出すと言うのだからな。その他の領地も魔獣退治の代価として貰う事になっておるし……一誠、幾らか部下に治めさせるか? お前は無理だろうしな》

 

「ランスロットとハンコック位しか領地経営経験ないけど……やらせてみるよ」

 

そう、あの後サーゼクスとハーデスはリアスを生きて返す代わりに此度の件で減らされる事になるグレモリー領の幾つかを慰謝料の名目で冥府に差し出す事になったのだ。

 

 

「まぁ、生きて返す、だから……魂が抜き取られてても肉体さえ生きてれば問題はないよね?」

 

《外道が。だが、其れで良い! ……少し話がある。貴様の今後についてだ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の顛末を語ろう。冥界を襲った巨大魔獣達は神々の手によって壊滅。しかし、此度の一件で不信を抱いていると主張する彼らの力を借りる代わりに悪魔と堕天使は領地を代価として彼らに支払い、冥府がそれなりの額を支払う事で全て冥府の領地となった。

 

 

そしてグレモリー家だが此度の一件で公爵から男爵へと降格。魔王選出権も永久に失う事になり。大きく削減された領地を治めながら目覚める事のない肉体だけのリアスの世話を続ける事になる。当然、屋敷も小さくなり、使用人にも生きているのを知られる訳にはいかないので地下室でこっそりと、だ。

 

そしてサーゼクスは魔王の地位こそ保ててはいるが、息子であるミリキャスは人質として北欧に行き、妻であるグレイフィアは内通の疑いをかけられ軟禁状態となった。リゼヴィムの傍に居た青年が死んだはずの弟であり、彼と繋がっていると疑われたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして一誠は改まった顔で両親の前に座り、告げた。

 

 

 

 

「父さん、母さん。俺、もう人間を辞めなきゃならなくなったんだ」




さて、だいぶ死にました

リアスは魂を抜き取られ、アザゼルは食われ、ヘラクレスとジャンヌも死亡。ジークとレオは死神に捉えらえ、松田も死亡


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