冥府の一角に最近完成した一誠の屋敷。見事な庭園を構える大正ロマン溢れる屋敷の中は和洋折衷だった。
「私の部屋は和室ですね。あ、奥の襖を開けたら呪術の為の部屋ですよ、ご主人様」
「俺の部屋は近代風の洋室だね。あ、階段とエレベーターの間に案内板がある。混浴の大浴場は一階で、普通の浴室は二階と三階に男女別にあるのか」
「……夫婦の寝室は大きなベットに、照明の色を変えられますね。ムードを盛り上げる音楽も流せると。流石はゼウス様の監修だけあります。侮れねぇ」
屋敷は地上五階地下二階の本館と地上三階地下一階の別館という作りになっており、庭には屋外プールまである。そんな豪邸を一誠は玉藻を九人全員連れて見学に来ていた。心なしか一誠はやつれており、玉藻達の肌はツヤツヤだ。
「……神器が無かったらヤバかった」
何がヤバかった、は語らない。ただ、昨日彼の寝室には強力な結界が張られ、出入りも中を伺う事もできなかった、とだけ言っておこう。
『まさか俺の力を情交に利用するとはな。いや、今更何も言うまい』
ドライグは疲弊しきった精神をこれ以上傷つけぬ為に現実から逃避する。そんな彼の呟きは玉藻の声でかき消された。
「あぁん、もう! ご主人様ぁ♪ 今夜は此方にお泊りになるんですよねぇ? お背中お流しますね♥ って言うか、今すぐ行きましょう! 善は急げ、ですよ?」
「……別に良いけどドレが流すの? 俺の背中は一つだよ? あと、今日は流石に九人は無理」
その瞬間、玉藻達の間で火花が飛び交う。その手には呪符が握られ一触即発の雰囲気だ。
「分かってるとは思うけど、玉藻同士で傷つけ合ったら駄目だよ? 俺は玉藻が傷つく所は見たくないんだからさ」
「はぁうんっ! ご主人様、イケメン過ぎますぅ~♥ わっかりました! ジャンケンで決めますのでお先に入っていて下さいませ。乱交も楽しみましたしぃ、そろそろ戻ります。どの玉藻が中心となって一人に戻るか決めますね?」
「早くしてね? にしても黒歌とベンニーアちゃんは何処に行ったんだろ? 今朝から姿が見えないけど……」
一誠が姿の見えない二人を心配しながら大浴場に向かう中、玉藻ナインによる激闘が幕を開けようとしていた。
「(ふっふっふっ! 私なら最初はグーでパーを出すはず! ならばっ! 私はチョキを出す!)」
ナインの内の一体が自分のセコさを理解した上での作戦を立てる。成功した場合、相手が最初から反則をしているのだから文句は言われない筈だ。
『最初はグー!! あぁっ!?』
……既に予想済みの方もおいでだと思うが一応書いておこう。全員、チョキを出した……。所詮は思考パターンが同じ。一誠を集団で襲った時は位置のせいで出遅れた個体が居たが今回は関係ない。そして、同じ思考パターンを持つ狐達の終りの見えないジャンケン大会が始まった。
『アイコでしょっ! アイコでしょっ! アイコでしょぉぉぉぉぉぉっ!!』
「……わぉ♪」
一誠が大浴場に入ると目に入った来たのは様々な様式の風呂。ジャグジーに檜風呂、はたまた薬湯、箸には異空間と繋げてあるのか雪国の中の露天風呂や滝が見える露天風呂まである。風呂好きの一誠からすれば正しく天国だった。
取り敢えず案内板に従い、入ったことのない泡風呂を目指すと、既に先客達が居た。
「ふぅん、少しは大きくなったかにゃん? イッセーに散々揉まれたせいかにゃ?」
《あっ…何処触ってるでやんすかぁ……。仕返しでやんすっ!》
「にゃっ!? い、意外とテクニシャン……」
其処に居たのは今朝から姿が見えなかった二人。どうやら一足先に屋敷の見学に来ていたようだ。まぁ、一緒に行こうと誘おうにも、一誠は昼前まで自室に居たのだから仕方がないのだが……。
兎に角一誠に気付かない二人は。浴槽の直ぐ傍で組み合って互いの胸を揉み合う。なんとも淫靡な光景で一誠は暫く見ていようとしたのだが、
「……あっ! やっと来たにゃんっ!」
《待ってたでやんすよ。ささ、此方に》
「あ、うん」
一誠は素直に二人に近寄り、
「最近ご無沙汰だったから、私、溜まってるにゃん♪」
《あっしも、あの日抱かれてから……》
……そのまま襲われた。終わった頃に漸く一人になった玉藻がやって来て。
「ご主人様ぁん♪ 今日は燃え上がりましょうね♥ って、先越されてやがる! 畜生、混ぜやがれっ!」
また襲われた。
「お兄ちゃん、大丈夫? 顔色悪いよ?」
次の日、ありすを連れて一誠がやって来たのは『ミルキー』という人気の魔女っ子物の実写版のオーディション会場。なんと、素人からも希望者を集めて主演を決めようと言うのだ。ありすも少女なのでミルキーが好きであり、見た目年齢のせいで参加資格はないが、せめてと見学に連れてきていた。なお、アリスは興味がなく、ゲームをしたいからと来ていない。
見学者用の名札を貰った二人が会場を歩いていると、意外な人物が向こうからやって来た。
「あら、坊やと……ありすちゃん♥」
「メディアさんっ!? ま、まさか貴女も受けるの? うわっ、キッツ!」
「呪うわよ? 私は仕事よ。今回の脚本は私の担当なの。今日は面接官よ」
「うん、知ってた。……あの、お弟子さんは来て無いよね?」
「……さ、忙しいから行くわ。ありすちゃん、後でケーキでも食べに行きましょ」
メディアはそそくさとその場を後にし、一誠は顔を引きつらせた。そんな時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「兵藤君……?」
其処に居たのはソーナと眷属の女性陣。全員、フリッフリのコスプレ衣装を着ていた。
「……プッ! い、いや、アハハ、こ、こんな所で…ひ~っひっひっ! 会長に会うなんて。ぶっふっ! し、仕事? あの年を考えないお姉さんの護衛とか? あの人、来そうだし」
「……はい。……すみません。いっそ、思いっきり笑って下さった方が気が楽です」
「あはははははははははははははははははははははははははははははははっ! ひ~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっ! ……写真撮って良い?」
「……いくら何でも笑いすぎです。あと、絶対却下っ! あら? あの子が居ませんよ?」
「あれ? 本当だ」
一誠が目を離した隙にありすの姿は消えている。辺りを見渡しても姿は見えず、まだ時間があるからと言ってくれたソーナ達が一緒に探していると、向こうからセラフォルーに手を繋がれて泣きながらやって来るありすの姿が見えた。
「あ、お兄ちゃ~ん! うぇ~ん! アッチにムキムキでネコミミのお化けが居たのっ! 怖いよぉぉぉぉ!」
「あ~はいはい。それ、人間だから。むしろ君がお化けだから。ほら、連れてきて貰ったお礼は言った? 有難うね。うちの子がお世話になったよ」
「気にしなくて良いんだよ? 私は魔法少女だからね✩」
その場でクルッとターンを決めるセラフォルーに対し、一誠に抱き上げられてようやく泣き止んだありすは笑みを向ける。
「有難う!
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