霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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八十八話

「「残念天使(て~んし)♪ 自称天使(てっんし)♪ 何時もボッチのハブられ天使~♪ 天使の意味があるのっかな♪」」

 

「うわ~ん!!」

 

此処は学園内にある避難シェルターの中。講師として呼ばれていたイリナは避難した者達の護衛として残っていた。最初はシエルター内なのに護衛?、と疑問符を浮かべたイリナだったが、

 

「……大きい声では言えませんが、もし魔法使いの中にテロ組織と通じている者が居たら危険ですので。それと、本当に裏切り者がいた場合、バレたと分かったら暴れだす危険性がありますので、今のは他言無用です」

 

と、ソーナから言われ残る事にし、同じ意見の一誠が残したありす達に苛められていた。

 

「貴女、講義の時に布教活動したんですって? 馬鹿(ばっか)じゃないの? 悪魔って神に祈ると痛みを受けるのよ?」

 

「それで、講義を中断させられたんでしょ? 本当(ほんと)、貴女ってそんなんだから残念(イリナ)なのよ」

 

ソーナに頼まれて講義を行ったイリナだったが、其処で布教活動を行ってしまい、保護者からのクレームで講義は中断。今、絶賛その事を囃され中である。

 

「今、何をイリナって読んだの!? あ~ん! やっぱり、この二人イッセー君の仲間だよぉ~!!」

 

その場で泣き出したイリナの周りを二人はスキップしながら周り出す。その時、二人の襟首を巨大な手が掴み、二人の体を持ち上げた。

 

『グハハハハ! 止めとけ止めとけっ! そんな事より俺様の手品を見てな』

 

二人を掴んだグレンデルは子供達の所に連れていく。どうやら元・邪龍様は手品も嗜むらしい。

 

「ねぇ、龍のオジさん! 次は何をやるの~?」

 

「早く続き続きっ!」

 

『待て待てっ! すぐ続きを見せてやるって』

 

邪龍が子供達に囲まれるという異様な光景に、術式を組み立てている魔法使い達でさえ開いた口が塞がらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、邪龍って何だっけ?」

 

その疑問に答えれる者などその場には居なかった……。

 

 

 

 

「あれ? そういえば会長は何処に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっはぁぁぁ!! 木屑にしてやんよぉ!!」

 

『ぐっ! なぜその相反する二本を同時に使えるのですっ!?』

 

ラードゥンの前に現れた少年……フリードは最強の聖剣であるコールブラント、そして最強の魔剣であるグラムを同時に使いラードゥンを追い詰める。強化されたラードゥンの障壁も簡単に切り裂き、その体を刻む。相反する筈の二本はまるで訓練の行き届いた軍犬の様にフリードの意思に従い、その力を万全に発揮していた。

 

「あぁん? 俺っちが天才だからさっ! 最強の聖剣を使いこなす高潔さと、最強の魔剣を使いこなす凶悪さ、その二つを併せ持ったスーパーサイ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うネ。其奴は私特性の改造魂魄だヨ。態々、グラムにも適正を付けてやったと言うのに……」

 

「反省して下さい、この駄犬」

 

「……マユリの旦那ぁ。あと、ネムの姉御はもう少し罵って下さい」

 

何時の間にか現れたマユリとネムは蔑む視線をフリードに送っていた。

 

 

 

『舐めるなぁぁぁぁっ!!』

 

ラードゥンの叫びは町全体に響き渡り空気を震わせる。フリードを球状の結界が幾重にも囲み収縮しだした。

 

『潰れろっ! 潰れてしまえっ!!』

 

「っ! 畜生がぁぁぁっ!!」

 

フリードはグラムとコールブランドが同時にオーラを放ち、結界の収縮に抗う。しかし、徐々に押し込まれていった。

 

『無駄ですっ! その結界には私の力の殆どを……』

 

 

 

 

 

 

「へぇ、力の殆どを、ねぇ。聞いたか、匙?」

 

「ああ、聞いたぜ、ゼノヴィア」

 

その瞬間、ラードゥンが体の周囲に張っていた防御障壁に穴が開く。ゼノヴィアはニヤニヤしながらエクスカリバーで強化されたデュランダル……エクス・デュランダルを向けていた。

 

『なっ!?』

 

「……支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)。私と最も相性が悪かったが、注がれる力の減った障壁に穴を開ける位はできるさ」

 

「そして、それだけ穴が開けば……」

 

 

 

 

 

 

                「「お前に攻撃が届く!!」」

 

エクス・デュランダルのオーラとヴリトラの黒炎がラードゥンを包み込む。相手の力を奪う黒炎と、魔の存在を弱らせる祝福の聖剣(エクスカリバー・ブレッシング)の同時攻撃によってラードゥンの力は大きく削がれる。

 

 

 

 

 

 

 

そう、フリードを潰そうとしていた障壁が破壊可能にまで弱体化する程まで……。

 

「はっはぁ!! ブチ壊れなぁっ!!」

 

神々しい聖なるオーラと荒々しい魔のオーラ。その二つが混ざり合い、ラードゥンに直撃した。

 

『ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

ラードゥンは建物を巻き込みながら吹き飛ばされ、町の中心にある時計台にぶつかって止まる。衝撃で時計台が崩壊し、ガレキがラードゥンに降り注いだ。

 

 

 

 

「よっしゃぁぁぁっ! よくやったぜ、下僕共っ!!」

 

「「誰が下僕だっ!!」」

 

「……細かい事は気にすんなって。っと、そろそろ限界か。お前らもみてぇだな」

 

フリードはその場に膝をつき、匙も禁手を解除し息を荒げている。ゼノヴィアも立ってはいるが疲弊の色が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……殺す。貴様ら、絶対に殺すっ!!』

 

「げっ! まだ生きてるのかよっ!? マユリの旦那……って居ねぇ!?」

 

その時、ボロボロのラードゥンが瓦礫の中から起き上がる。万全の障壁を張る力は残っていない様だが未だ戦闘の意思は衰えず、反対に戦闘本能を剥き出しにしていた。その口には膨大なエネルギーが貯められ、フリード達目掛けて放たれ様としている。

 

『死ね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様がな……」

 

『ぐふっ!?』

 

そして脳天にサイラオーグの拳を受け、エネルギーが口の中で爆発する。その体には黄金の鎧が纏われている。

 

「すまない、邪龍の相手に戸惑った。……あとは頼むぞ、ソーナ」

 

「ええ、これだけ力を貯めれば十分です。……お喰らいなさい、ラードゥン。ウォーターカッターはご存知ですか?」

 

ソーナの背後には巨大な水球が現れ、刃となってラードゥンに迫る。

 

『くそぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

ラードゥンの体は水の刃によって真っ二つに切断され、左右に別れ落ちる。その体目掛けて一誠がてを伸ばしていたが……。

 

 

 

 

 

「ちぇ。魂、取り逃がしたか。惜しかったな」

 

ラードゥンの魂を確保しようとした一誠だが、聖杯の力によって紙一重で先に確保されたようだ。一誠が残念そうに肩を竦めた時、ボロボロのランスロットが戻ってきた。

 

 

「あ、終わった?」

 

「ええ、何とか終わりました。さぁ、そろそろ帰りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後、ランスロットとロスヴァイセの結婚式が冥府にて開かれた。

 

 

 

 

「あ~、テメェら、さっさとキスしろや。どうせ永遠の愛なんざ誓うまでもねぇだろ?」

 

ロスヴァイセが北欧出身なので冥府式か北欧式か迷った挙句、両方する事になり、今は冥府式の結婚式が行われている。集まったのはゲンドゥルを除けば一誠の部下と一部の死神。完璧身内だけの結婚式である。なお、北欧陣営は北欧式の時に呼ぶ予定らしい。

 

「……フリード。少しは真面目にして下さい。ロスヴァイセもそう思いますよね」

 

「構いませんよ。むしろコッチの方が私達らしいと思います。……ランスロットさんは文句あるんですか?」

 

「私もそう思います!」

 

二人はフリードが行う適当な神父役に苦笑しつつ、唇を合わせた。なお、もう尻に敷かれるのは確定のようだ。

 

 

 

 

 

そして、結婚式は第二部へと移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  

                 「宴だぁぁぁっ!!」

 

そう、結婚式の出席者達はタダの騒ぎたい連中の集まりと化した。

 

 

特設のステージでは、ギターをグレンデル、ドラムをグリンパーチ、ヴォーカルを市が行いロックを奏でている。曲が佳境に差し掛かると市は普段の暗さや貞淑さをどこかにやり、激しくブレイクダンスを踊りだす

 

「……うわぁ、激しく踊ってるよ。あの子ってああいうタイプだったんだ」

 

「ご主人様如きに女性の本性が見抜けるはずありませんよ♪」

 

その瞬間、玉藻の瞳が怪しく光り、口元に妖艶な笑みを浮かべる。

 

「酷っ!? え? あれ? 玉藻も本性隠してる?」

 

「……ご主人様、だぁい好き♥」

 

先程の怪しさなど無かったかの様に甘えだした玉藻に対し、一誠も先程の事は片隅へと追いやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、おチビ。野菜をもう少し食べなさいよ」

 

《肉ばっかり食べてるとムダ肉ばかり付きやすよ。ちゃんとバランスよく栄養取らないと。……あんたのお姉さんは乳にばっか栄養が行ってるでやんすけど》

 

「……そうですね」

 

「ほんと、貴女ってチビね」

 

「チビ、チビ~♪」

 

「……貴女達に言われたくないです」

 

メリーを頭に乗せ、ありすとアリスと向かい合い、ベンニーアと並んでご馳走を食べている小猫は姉の方をチラリと見る。既に泥酔してあられもない姿で寝転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか綺麗でしたよ、ロセ。ランスロットさんも孫をよろしくお願いしますね」

 

仕事があって宴には出席できないゲンドゥルは祝いの言葉を残して帰っていき、主役である二人は離れた場所で静かに飲んでいた。

 

「さて、此れから忙しくなりますね。完成した術式を知っている魔法使いが忽然と姿を消しましたし、悪魔側にもおそらく裏切り者がいる、中々骨が折れそうです」

 

「大丈夫ですっ! 一誠さんから結婚祝いも頂きましたし、此れからは私も戦いますから。……それと、折角の結婚式の二次会なんですから仕事の話は止めて下さいね?」

 

やる気に満ちたロスヴァイセの背後には紫炎が巻き起こる。結婚祝いは紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)だった様だ。

 

「そうですね。では、後で何かお詫びをしなければなりません。何が良いですか?」

 

「早く赤ちゃんが欲しいです♪」

 

 

 

この時小猫は思った。末永く爆発して下さい、と……。

 

 




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