D .Gray-manのエシ
古来、日本では物には小さな神様が宿ると言い伝えられていた。 主に大切に扱われ100年経つと宿られると言われ、怨念などでも宿るとも言える。
それはどんな物でも例外は無いようだ。 その物に対して人間が色々な想いを込めて作り上げて、役目を果たす為に扱われ時には壊れていく。
世界は…人間の手によって物が溢れていた。
生きていく為に作られた物。 それは数にしたら途方も無いほど満ち溢れているだろう。 そして…人間のエゴによって一番物が生産されるタイミングとは…
争いだ。
古今東西、人間はあらゆる理由で争いを絶えない生き物と言えよう。 信念、宗教、悪意…後付けな理由で行う争いなど多々ある。
その中でも地球上で一番大きな争いとは何か。
それは戦争だ。
国内だけの争いでは無く、196の各国を巻き込む歴史的な争い。 経済、人材、時間、資源など浪費が莫大な歴史に残る出来事である。
様々な想いがのせられて、戦場に立つ人や人を殺める為に武器を作る人や無事帰りを待つ人など。
鉄と火薬が一番だと思われ、金銭で言えば旧大蔵省が太平洋戦争(日中戦争を含む)の戦後にまとめた資料によると名目上の戦費総額(一般会計と特別会計)は約7600億と言われている。
そんな中で島国と言われた日本は、他の国に攻める為に船を建造していく。 第二次世界大戦当時に日本の国力を結集させて建造した戦艦「大和」の建造費用は当時価格でおよそ1億4000万と言われる。(現在価値だと約3兆円ほど)
大日本帝国の勝利を目指して数々の船や戦闘機など製造して、人間と共に地球の7割と言える海の底に沈んでいる。 幾多の人間が想いを背負い、死ぬ間際には帰りを待つ家族や靖国に行けるなど思い命を落としていく。
パチ…パチ…
「…あぁ、ここまでか。 俺の人生は世の中の流れに揉まれて好きな事も出来ずに靖国行くのかぁ。 こほっ。 なんで人と人で争わなくちゃいけないんだろう。 皆面白おかしく笑って平和に…ごふ、生きて行きたかった。
神様よぉ、人間の想像だけの存在じゃなかったら…一つ聞いてくれねぇかな。 ゴホッゴホッ! はぁはぁ。 少しでも笑顔を増や…し…てくれない…か……なぁ。 憎…しみだけの…世の中……なんて…つまんない………だろ? …悪……い、八…重子。 お……前…を描い…てられ…な………」
火災が起きて海に沈んでいく船に、その船に乗っていた搭乗員が数多く命を落とした先人のように後を追ってしまった。
そして人だけでは無く、生み出された兵器達も同じく海の底に誘われた事により不可思議な事が起きていた。 世界に最初で最後に使われた核兵器は日本だが、終戦の後でも実験と理由で使われ核兵器の実用を変えてエネルギーを作る原子力なども生み出されていた。 国の威厳などで生み出された兵器は、事故などで海の底に沈んでいる物も少なくない。 その中には原子力潜水艦など。
そして、人類が最大火力を誇る核兵器を生み出した。 それがソ連が作り上げた『ツァーリ・ボンバ』(核爆弾の皇帝)が1961年10月30日にノヴァヤゼムリャで、大気圏内核実験を行われた。 単一兵器として威力は人類史上最大と言われ、日本で使われた広島型原子爆弾の約3300倍。 『ツァーリ・ボンバ』が核爆発した際に2000kmから離れた場所からも確認が取れており衝撃波は地球を三周させたと言われている。
そんなTNT換算で約100メガトンと言われる水素爆弾が用いたエネルギーは、地球の地表だけでは無く海の底にも届いていた。
あらゆる結果が重なったのか、海の底で不可思議な事が完全に一つの形になり未来なのか他の世界かは不明だが…新たな個が誕生を遂げた。
★★★★★★
ざざぁ…ざざぁ…
深夜の海、波が音を鳴らし海面に横たわるように浮く一つの人型が其処にいた。 少し時は流れ丑三つ時、人型は突如起き上がると周りを見渡して少ししてその場から離れていった。
それがこの世界での『異物』と誰もが予想が出来る筈も無く。
★★★★★★
深海棲艦
それは突如あらわれ、海を自由に移動が可能で人類と敵対する。深海棲艦には一般兵器では歯が立たず人類は海を奪われてしまう。
しかし、深海棲艦が海を占拠してから時が過ぎ唯一の打破する存在が現れた。
艦娘
深海棲艦は白い肌を持ち不気味な化物を扱うが、艦娘は少女や女性の外見で人間では出せない力を持っていた。 艦娘だけが持つ力が、まさに深海棲艦の対する兵器とも言える。 最初は数少ない艦娘だったが、少しずつと人類は彼女達を建造する事を発見する。 ある選ばれた人間のみが目に見える『妖精』を通し燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイトを消費をして誕生させる事に成功させたのだ。
そんな艦娘は普通の人間みたいに感情という物を持っていた。 それが良い方には向かなかった。
人類にしたら艦娘は唯一の深海棲艦を倒せる存在。 どの時代も争いに物量作戦は使われる。 鎮守府を各所に建設され、選ばれた人間は『提督』と呼ばれるように。
そして『提督』の指示には、逆らえない艦娘達は深海棲艦と戦い虚しくも轟沈して海の底に沈んでいく。
泣き叫びながら力を使い深海棲艦と戦い、運良く生き延びた所で…再び戦場に立たされる彼女達。 時は流れ少しずつ、深海棲艦と拮抗していた状況が人類の優勢に傾いていた。それを実感した人類は、声に大にして喜びを表に出していた。 その時には多くの艦娘を沈めていたが。
鎮守府は提督の気分次第では様々な事を出来ると過言ではなかった。 人間と言う物は欲に動かされていると言っても過言では無い。 欲する心を満たせば、新たな欲が新たに生み出され挙句の果てには人の皮を被った悪魔にさえ変わってしまう。
自分の地位を上げる為だけに艦娘達を使い、非人道的な方法など行うのさえ自然に行える提督も少なからず存在していた。
そんな鎮守府はブラック鎮守府と呼ばれていた。 提督の黒く染まった欲で艦娘を自由に扱われ、彼女達は最早奴隷に等しかった。
そんな鎮守府は一番力を入れていたのが資源集めであった。 駆逐艦など軽巡洋艦で遠征に行かせ、必要最低限の補給で繰り返す。 確かに艦娘は人間とは違うが、心は人間と変わらないので休みがほぼ無い状態で何度も遠征に行かせられば失敗するのも予測できる。
しかし、提督は許さなかった。
失敗した艦娘達に脅しに『解体』と言う言葉を持ち出す。
解体とは艦娘を資材に変える。 即ち…艦娘の死とも言える所行。 人間の心を持つ艦娘には余りにも耐えがたい恐怖とも言える。 その恐怖を糧に日々艦娘達は、資材の為に遠征に足を運ぶのであった。
★★★★★★
ざぁー
海の上を移動している影が4つ。
「…つかれたのです」
「頑張って、電」
「Еще немного(もう少し)」
「電…後ろから押してあげるわ」
暁型と言われる四人の艦娘達。特徴としては小学生の様な容姿をしている。
上から
電 気弱で優しい四番艦。 長い後ろ髪の先を後頭部の位置にセットした髪型。髪色は茶色。
暁 『一人前のレディー』を自称する一番艦。 黒い帽子に長い黒髪で容姿の所為で背伸びした行動が逆に子供っぽいのが際立ってしまう。
響 クールで色素が薄い二番艦。 二つ名に『不死鳥』とも言われている。 彼女だけがロシア語を話せる。 白い帽子に長い銀髪。
雷 明るく献身的な三番艦。 自分に頼って欲しいと想いがちな彼女。 仲間の為に少し苦労しても顔色を変えない。 四人の中で唯一髪が短く電と同じく茶色。
彼女達は駆逐艦であり、遠征にしては適材適所とも言える艦娘達である。 その為か一日の回数が酷い有様である。 身も心も疲れ果てて電が弱音を吐いてしまうが、残り三人は励まして少しでも支えて行こうと思っていた。
しかし、そんな彼女達に不運が舞い降りる。
「後方から敵影発見! 数は…多数!?」
暁の言葉に顔色が真っ青になる三人。 それもその筈、普通ではあれば深海棲艦にも様々な種類が存在して彼女達でも対象が出来る種類と2〜4体で撃破できるのだが…多数となれば話は変わってくる。
彼女達の後ろには数十体となれば、深海棲艦の中でも『姫』や『鬼』など呼ばれた存在が確認されている。 それらは深海棲艦の中でも一際ポテンシャルが違く戦艦クラスの艦娘がいても無事に済むか分からないほどである。
「一先ず逃げるのよ! 私達では何にも出来ない!」
「逃げるたって…何処によ!」
「どこでも良いから早く! 資源は捨てて!!」
暁の言葉に雷が噛みつくが、最悪な状況を打破するにもその場から離脱を考える暁。 四人は手に持つ資源を捨て、少しでも身を軽くして深海棲艦から逃げる。
「少しでも鎮守府に逃げれば、援軍の可能性があるわ! だから、諦めないで!」
暁は三人に喝を入れて活力を引き出そうとする。 そんな努力を嘲笑うように深海棲艦の駆逐イ級が砲撃を一発。 すると、吸い込まれるように電の背中に着弾。
「きゃあああああっ!!」
「「「電!!」」」
駆逐イ級の砲撃により電は転倒してしまい、みるみる内に深海棲艦が迫ってきていた。
「二人とも! 今ある残弾全て使ってでも深海棲艦の足止めするわよ!」
「「了解!!」」
最早戦うしかない状況だと判断した彼女達は電を救う為に立ち向かう為に艤装を展開する。
「駄目なのです!!!」
しかし、電は三人とは違う気持ちであった。 今までが辛い生活だったが、電はどうしても三人だけでもいつかは幸せがくるかも知れない可能性に掛けて生きてほしいと思っていた。 だから…この場で電が足止めをすれば三人は助かると思ったのだ。
「三人は早く鎮守府に行くのです! そして援軍を呼んでほしいのです! 私が深海棲艦の足を止めてる間に!!」
「だけど電!」
「暁ちゃん!」
暁は電の瞳に宿った決意に、下唇を噛み締めて血を流しながら苦渋の選択に迫られていた。 そして暁の出した選択は。
「…二人共、撤退よ」
「「……」」
余りにも苦痛が見て取れる表情に、響と雷は何も言えないでいた。 三人が戦場から離れていく姿を見た電は、少し微笑み深海棲艦の方に振り返り艤装を出して砲台を突きつける。
「さぁ、私と戦ってほしいのです!」
電は深海棲艦に向かっていく。 自分がもう助からないの悟って三人が鎮守府に無事逃げられるように少しでも時間稼ぐ為に電は戦場を駆けていく。
★★★★★★
時は流れ、深海棲艦と電は長くは無い戦いに終わりを遂げていた。 数の暴力とも言える深海棲艦に対して、一体だけの艦娘で駆逐艦だけでは勝率は0に等しいだろう。
「…うっ」
艦娘はダメージを負うと主に艤装と服装などに目に見えた破損が現れる。 現時点で電は服装に至っては破れたスカートや胸部しか隠していないほどしか機能していなかった。 そして、艤装は最早無いに等しくて何とか海上に浮けるほどしか残っていなかった。
そして…仰向けに倒れている電を跨るようにして見下ろす深海棲艦がいた。
港湾棲姫
全身が白で構成されたと過言では無いぐらいに白い格好である。 そして、額には角が生えており両手には大きな鉤爪をもっている。 身長もだが胸部もが大きな深海棲艦である。
「……ヤスラカニ…シズミナサイ」
港湾棲姫の後ろには艤装と言われる化物が、砲台を電に向けていた。 電も戦闘での疲労とダメージにより意識が朦朧している為に、感情などがもう湧いてこないでいた。
電の反応が見れないのか、トドメを刺そうと
港湾棲姫が砲弾を撃ち込もうとする。 その雰囲気を感じとった電は、両目から涙を流していく。
(辛い人生だったのです…みんなは戻れたかな?)
最後に走馬灯を見ながら目を閉じ身体の力を抜いた。
ガンッ
何か重い物がぶつかったような轟音が鳴り響く。 電は轟音の為に驚いて目を開けるが、目の前にいた港湾棲姫が消えていた。 突如に消えた深海棲艦を探す為に頭を動かして左に向くと人型の存在が後ろ姿で立っていた。
後ろ姿からでは完全には分からないが、騎士が来てそうな鎧が所々に張り付いており長い髪?と思われる物が3本ぐらいに纏まっている。
そんな人型の先には吹き飛ばされたと思われる港湾棲姫が倒れていた。
電は突然の事に状況が把握できないでいた。 艦娘では無いと思われる存在が深海棲艦と敵対しているに、電は人型を見つめていると人型は電の方に顔だけが振り返ってきた。
人型の顔は異形と言える。 近い感じで言えば、深海棲艦の駆逐イ級の顔なのだろう。 しかし、兜と思われる感じで目は無く歯が剥き出しになっている。 見た目からして深海棲艦としか見えない。 そんな人型は電の顔を見ると再び前に向くと凄まじい雄叫びが上がる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
人型は深海棲艦の大群に向かっていく。 それを見た深海棲艦達は、人型に一斉に砲撃を始める。
だが、人型は自分に当たる砲撃だけを殴って掻い潜っていく。
接近を許し手前にいたイ級を人型は、サッカーボールのように蹴り上げる。 海から蹴り上げられた駆逐イ級は顔が人型の足形に凹んで、そのイ級を人型は殴り飛ばす。 イ級は他の深海棲艦にぶつかっていく。
余りの戦況に深海棲艦は、戸惑いを隠せないでいるが人型の虐殺が始める。
軽巡ホ級は人の姿をした箇所は、人型に引き裂かれ粉々に。
雷巡チ級は頭部を握り潰され悲惨な状態に。
戦艦ル級などは人の形を残されておらず、拳だけでの殴打で原型を留めていなかった。
多くの深海棲艦は無残にも人型の手によって散っていく。 そして最後に残ったのが港湾棲姫だけだった。 深海棲艦の中でも『姫』と言われた港湾棲姫も最早ボロボロ。
何とか砲撃を当てようにも躱され、接近を許すと凄まじい右のボディブローが左の肋骨に突き刺さり骨が折れる音が鳴り響く。 横にくの字に折り曲がる港湾棲姫を追い討ちに左サイドキックで逆に折り曲げる。
最早港湾棲姫の艤装も砕かれ、息がある深海棲艦は彼女だけだった。
「……アナタ…ナニモノ……ナノ?」
跪く港湾棲姫を見下ろす人型は、彼女の言葉に返事をせず右のローキックで首を跳ねた。
大群と言える深海棲艦は、突如現れた人型により殲滅された。 その光景をずっと眺めていた電は恐怖に駆られている。
自分にあの暴力が襲い掛かるのではないかと。
そして人型は生きている深海棲艦がいないと分かると電の方に近寄っていく。 それを見た電は身体を震わせている。 自分の首元に死神の鎌が備えられているような感覚に捉えていた。
そして、人型は電の近くまで寄ると片膝を着くと先程の深海棲艦に向けていた手を伸ばしてきた。 それを見た電は目を固く瞑り身を硬らせる。
すると
ポン
そんな音が鳴りそうな感じに人型は電の頭に乗せたのだ。 身体を震わせる電であったが、人型は優しく電の頭を撫でていく。 その為か電は少しずつと震えていた身体が落ち着いて、目蓋を恐る恐ると開けるとやはり人型が目の前に存在していた。
先程まで深海棲艦を殺めていた手が、優しく電の頭に撫でられて彼女は不思議な感覚に襲われていた。 彼女自体は建造されてから頭を撫でられる事が無く、姉妹からもされた事が無い所為で何とも言えない気持ちになっていた。
そして人型の手は温度を感じさせる事は無かったが、電は心が暖まっていく。 少しずつと意識が薄れて目蓋が下がっていく中、人型はそんな電を見ると撫でていた手を頭から目の方に持っていく。 優しく優しく電の目蓋を下ろすように促していくと電は人型に身を任せた。
(優しい人?なのです…)
これが電と人型の出会いだった。
作者 にわか以下の知識しか持たない為、おかしい部分があるかと思いますが其処は勘弁を。
こんな作品があってもいいかなぁと思って投稿しました