歌の世界の【奏者】光の戦士   作:シャイニングピッグEX

14 / 16
無印シンフォギア最終回まで一気にいきます!!!

次回からは番外編というか、Gまでの間の話になります


命の歌

クリスの絶唱により、なんとか月を破壊することは阻止したものの、奏者の内半分が満身創痍だった。

 

 「クリス…!ちくしょうッ!」

 

 大我は悔しさと怒りを込めながら机を殴った。

 

 響の嗚咽を漏らしながら膝をついた。

 

 「そんな…せっかく仲良くなれたのに…こんなのないよ…ウソだよ…」

 

 「…」

 

 「もっと、沢山話したかった…でないと、もっと喧嘩することももっと仲良くすることも出来ないんだよ…ッ!」

 

 響の目から溢れた涙が地面に流れ落ちていく。

 

 「クリスちゃん…夢があるっていったもん…あたしクリスちゃんの夢を聞けてないまま…」

 

 「自分を殺して月への直撃を阻止したか…ハッ、無駄なことを…見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だな」

 

 怒りと悲しさ、そして悔しさの感情がぐちゃぐちゃに混ざるように響の身体は黒く染っていく。

 

 「…笑ったか…命を燃やして、大切なものを守り抜く事を…!お前は無駄とせせら笑ったか!」

 

 翼はその怒りのままに矛先をフィーネに向けた。

 

 「それガ…!」

 

 「!」

 

 「夢ヲ持ッタ奴ノ命ヲ握リツブした奴ノ言ウ事カぁァぁァ!!」

 

 響はの体は黒く染まり、目も赤く光って口からは牙が生えていた。

 

 それを見てフィーネは侮辱するように鼻で笑った。

 

 

 

 「響…」

 

 「あれ、本当にビッキーなの…?」

 

 地下のシェルター内では大我達や未来がその状況を見守っていた。

 

 

 

 響は獣の様な唸り声をあげながらフィーネを睨んでいた。その周りは炎が燃えている様に空間が揺れていた。

 

 「立花…!立花ァ!」

 

 「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ…制御出来ない力にやがて意識が塗り固められていく」

 

 翼は響の身体に起こっている事の説明を思い出していた。響の驚異的なエネルギーや回復力は体組織と融合しかけているガングニールのせいにあると言った事である。

 

 「…!まさかお前、立花を使って実験を…!?」

 

 「実験を行っていたのは立花だけではない。見てみたいとは思わんか?ガングニールに翻弄されて、人としての威厳が損なわれていく様を…」

 

 「…!!お前はそのつもりで立花を!」

 

 響は地面を蹴り出し、獲物を狩るライオンの様にフィーネに攻撃を繰り出した。

 

 「立花!」

 

 フィーネはそれを触手で受け止め、追撃を喰らわせようとする響を触手で薙ぎ払った。

 

 「立花ァ!」

 

 「もはや、人に在らず…もはや人の形をした破壊衝動…」

 

 フィーネの言う通り、響は二本足で立つことも忘れ、四本足で地面に立っていた。

 

 響はもう一度フィーネに襲いかかるも、フィーネは触手を無数にクロスさせて障壁を作る[ASSARD]を使用して響の攻撃を防いだ。

 

 響の身体に電流が走り、苦しみながらもその怒りが勝ったのか、その拳はフィーネの障壁を破壊した。

 

 とてつもない破壊音と共に煙が巻き上がり、煙が晴れると、そこには腹部から上が裂かれたフィーネが立っていた。しかし、フィーネはまだ何ともないようで、見下すように笑った。

 

 「…!」

 

 「はァ…ハぁ…!」

 

 着地した響は肩で息をしながらフィーネの方だけを見ていた。

 

 「もうよせ立花!これ以上は聖遺物との融合を促進させるばかりだ!」

 

 その声に気付いた響が狙いを変えるように翼の方をゆっくりと向いた。

 

 敵味方の区別も出来なくなっているのだろう、ついに響は翼に襲いかかった。

 

 襲ってきた響を翼は剣で弾き返すも、響は間髪入れずに翼に襲いかかる。

 

 「立花ァァ!」

 

 

 

 「どうしちゃったの響!元に戻って!」

 

 未来の叫びは響には届かない…。

 

 「もう終わりだよ…アタシ達…学院がめちゃめちゃになって、響もおかしくなって…」

 

 「終わりじゃない!響だって、私達を守るために――」

 

 「あれが私達を守る姿なの!?」

 

 その目には涙が浮かび、モニターには真っ黒な響が映っていた。

 

 モニター内の響は獣のように唸り声をあげる。

 

 「…」

 

 「私は響を信じる」

 

 そう言う未来の目にはまだ諦めの文字は出ていなかった。

 

 「…私だって響を信じたいよ…この状況をなんとかなるって信じたい…でも…でも…!」

 

 恐怖の限界でついに膝が着く。

 

 「板場さん…」

 

 「もう嫌だよ…誰か何とかしてよぉっ!やだよ…死にたくないよぉっ!助けてよぉぉ!響ぃ!」

 

 その悲しみの叫びも響には届いていないのだろう、響は翼への攻撃を続けており、翼の天羽々斬も段々損傷が激しくなっていた。

 

 「…ハッハッハっ、どうだ?立花響と刃を交えた感想は?お前の望みであったなぁ」

 

 そういいながらフィーネは身体を再生していく。

 

 「くッ…!人の在り方すら捨て去ったか…!」

 

 「私と一つになったネフシュタンの再生能力だ。面白かろう?」

 

 そして、カ・ディンギルは二度目のチャージを始めた。

 

 「まさか…!」

 

 「そう驚くな。カ・ディンギルが如何に最強最大の兵器だとしても、ただの一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品。必要がある限り何発でも撃ち放てる。その為にエネルギー炉に不滅の刃、デュランダルを取り付けてある…!これは尽きることの無い無限の心臓なのだ…」

 

 「…だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かすものはいなくなる」

 

 そう言って翼はもう一度矛先をフィーネに向けた。

 

 しかし、その前には響が立ちはだかる。

 

 「立花…」

 

 翼は数秒目を瞑り、もう一度響の方を優しく見つめた。

 

 「立花…。立花、私はカ・ディンギルを止める。だから…」

 

 響は何かを感じたのだろうか、翼に襲いかかった。

 

 翼は剣を地面に刺し、響の爪が翼の腹部を貫いた。

 

 辺りに鮮血と欠片が飛び散りながらも、翼はその身体を抱き寄せた。

 

 「これは、束ねて繋げるはずの力だろう?」

 

 翼は響の血に濡れた手を繋ぎながら[影縫い]を発動し、響の動きを止めた。

 

 「立花、奏から受け継いだ力をそんな風に使わないでくれ…」

 

 その翼の声は誰よりも優しかった。

 

 響の目からは、人間らしい、綺麗な涙が流れた。

 

 口と胸から血が流れながらも翼は単身フィーネに向かっていった。

 

 「待たせたな」

 

 「どこまでも剣と往くのか…」

 

 「今日、折れて死んでも、明日に人として歌うために!風鳴翼が歌うのは、戦場ばかりでないと知れ!」

 

 「人の世界が剣を受け入れることなど、在りはしない!」

 

 [絶刀・天羽々斬 Vo.風鳴翼]

 

 フィーネの攻撃をかわし、上空から[蒼ノ一閃]を放つ。しかし触手に砕かれてしまい、着地したところを狙われるもその攻撃を掻い潜り、フィーネの懐に入って巨大な剣で斬撃を浴びせ、フィーネの身体をカ・ディンギルに叩きつけた。

 

 そして、剣を投げつけて空中で変形させ、空中で蹴りつける[天ノ逆鱗]を放った。

 

 フィーネは三重もの障壁を作り、翼の攻撃を受け止めようとした。

 

 翼は足元の巨大な剣を逸らして地面に刺すようにして立たせ、二つの剣に炎を纏わせて斬りつける[炎鳥極羽斬]を発動し、カ・ディンギルに向かった。

 

 「初めから狙いはカ・ディンギルか!」

 

 なんとか逃げようとしたものの、触手に追いつかれてしまい、その攻撃を食らって炎も消えてしまった。

 

 (やはり私では…!)

 

 「何弱気なこと言ってんだ」

 

 すると、どこからか奏の声が聞こえた。

 

 (奏…!?)

 

 気がつくと、目の前には奏がいた。

 

 「翼、わたしとアンタ、ツヴァイウィングならどこへでも遠くへ飛んで行ける」

 

 そう言って奏は翼を引っ張った。

 

 (そう、両翼揃ったツヴァイウィングなら…!)

 

 翼は落ちる寸前にもう一度剣に炎を纏わせ、カ・ディンギルに向かって飛んだ。

 

 (どんなものでも超えてみせる!)

 

 フィーネの触手の攻撃をものともせず、翼は青い不死鳥のオーラを纏いながら飛び出した。

 

 「立花ァァァ!」

 

 その決死の特攻がついに決まったのだろう、カ・ディンギルは光を放ちながらついに砕かれた。二つ目の羽が犠牲になりながら。

 

 「私の想いはまたも…!」

 

 響の影を縫っていた刀は風に晒されて風化して粉微塵へと変わった。

 

 響の変身は解かれ、普通の人間へと戻った。

 

 「翼さん…」

 

 絶望のあまり、響は力なく膝をついた。

 

 「…天羽々斬…!反応途絶…」

 

 そう言う大我の目からは涙が溢れていた。

 

 「身命を賭してカ・ディンギルを破壊したか翼…!お前の歌、世界に届いたぞ…!世界を守りきったぞ…!」

 

 そう言う弦十郎の拳はわなわなと震えていた。

 

 「わかんないよ…!どうして皆戦うの!?痛い思いして!どうして!?死ぬために戦ってるの!?」

 

 「分からないの!?」

 

 「え!?」

 

 未来の目からも涙が静かに流れていた。

 

 未来は板場の肩を掴んでじっと板場を見つめた。

 

 「分からないの…?」

 

 「…!?…!」

 

 板場の叫びがこだました。

 

 

 

 「ええい!どこまでも忌々しい!月の破壊は、バラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす!惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物の力を持つ私の元に帰順するはずであった!」

 

 そう言いながらフィーネは響の元へ駆け寄った。

 

 「痛みだけが!人の心を繋ぐ絆!たった一つの真実なのに!それを…!それをお前は!お前らは!」

 

 そう言いながら戦意喪失の響を蹴りあげ、響の頭を掴んだ。

 

 「まあ、それでもお前は役に立ったよ。生体と聖遺物の初の融合症例。お前と言う生命が居たからこそ、私は己が身をネフシュタンと融合させる事が出来たのだからな。あの零とか言うガキでも良かったが…アイツは如何せん人類の常識範疇に収まっていないが故に確証が持てなかった」

 

 そう言ってフィーネは響の身体を投げつけた。

 

 「翼さん…クリスちゃん…零さん…三人とももういない…学校も壊れて…皆いなくなって…私…私は何のために…何のために戦ったの…皆…」

 

 

 様子を見守っている大我達の元にタイタスと風舞達が生存者達を連れて帰ってきた。

 

 「司令、周辺区画のシェルターにて、生存者達を発見しました」

 

 「そうか!良かった!」

 

 その中には以前響が助けた女の子もいた。

 

 「あっ!お母さん、あの時のお姉ちゃんだ!」

 

 「あっ!ちょっと!待ちなさい!」

 

 女の子はモニターの元に駆け寄って覗き込んだ。

 

 「すいません…」

 

 「ビッキーの事、知ってるんですか?」

 

 「え?…詳しくは言えませんが、ウチの子はあの子に助けて貰ったんです」

 

 「え…」

 

 「自分の危険を顧みず、助けてくれたんです。他にもそう言う人達が…」

 

 「響の…人助け…」

 

 「ねえ、かっこいいお姉ちゃん助けれないの?」

 

 心配そうな顔をして女の子が未来達の方を見る。

 

 「…助けようと思っても、どうしようも無いんです。私達には何も出来ないですし…」

 

 「じゃあ一緒に応援しよう!ねえ、ここから話しかけられないの?」

 

 女の子は大我の方を見て言った。

 

 「…それが、出来ないんだ…」

 

 「…!応援…!ここから響に、私達の声を、無事を知らせるにはどうしたらいいんですか?響を助けたいんです!」

 

 「助ける?」

 

 「学校の施設がまだ生きてるなら…リンクして声を送れるかもしれない!」

 

 それを聞いて未来は安心したように笑い、意を決した。

 

 

 「もうずっと遠い昔、あのお方に仕える巫女であった私は、いつしかあの方を…創造主を愛するようになっていた…」

 

 辺りが明るくなり始め、山の方からは白い光が見えていた。

 

 「だが、この胸の内を告げることは出来なかった…その前に私から…人類から言葉が奪われた…!バラルの呪詛によって、唯一創造主と語り合える統一言語が奪われたのだ!私は数千年に渡り、たった一人、バラルの呪詛を解き放つため、抗ってきた…」

 

 響は光のない目をフィーネに向けた。

 

 「いつの日か、統一言語にて胸の内を届けるために…」

 

 「胸の…想い…?だからって…」

 

 「正義を問うだと!?恋心を知らぬお前が!」

 

 そう叫んでフィーネはもう一度響の頭部を掴んで地面に叩きつけた。

 

 

 

 「この向こうに切り替えレバーが?」

 

 「こっから動力を送れれば、再起動が出来るかもしれねぇ」

 

 未来達四人と風舞、タイタスの六人は電源がある場所に来ていた。

 

 「でも、タイタスさんや風舞さんでは…」

 

 「…!」

 

 「…」

 

 「アタシが行くよ!」

 

 「弓美!」

 

 声を上げたのは板場弓美だった。

 

 「大人じゃ無理でも、アタシならそこから入っていける!アニメだったらさ、身体のちっこいキャラの役割だしね。それで響を助けられるなら!」

 

 「でもそれはアニメの話じゃない!」

 

 「アニメを真に受けて何が悪い!ここでやらなきゃ、アタシアニメ以下だよ!実在性証明にもなりやしない!この先、響の友達と胸を張って答えれないじゃない!」

 

 「…!」

 

 それを聞いて未来は驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 「ナイス決断です。私もお手伝いしますわ」

 

 「だね。ビッキーが頑張ってるのに、その友達が頑張らない理由はないよね」

 

 「みんな…!」

 

 「あの嬢ちゃんも、いい友達を持ったな」

 

 「うむ。美しい友情だ」

 

 そう言って二人も微笑んだ。

 

 そして、四人は中へと入り、未来達三人に由美が乗り、レバーに手を伸ばしていた。

 

 「せぇーのッ!」

 

 由美がジャンプしてレバーを上げ、それと同時に電力が回復した。

 

 「来ました!動力学校施設に接続!」

 

 「学校のスピーカーも行けるぜ!」

 

 「やったー!」

 

 皆の顔にだんだん笑顔が戻って行った。

 

 「…後は応援だけだな…!」

 

 「ゼ…昴!目を覚ましたか!」

 

 「ああ、心配かけた」

 

 

 

 「シンフォギアシステム最大の問題は、絶唱使用時のバックファイア。融合体であるお前が絶唱を放った場合、どこまで負荷を抑えられるのか…研究者として興味深いところではあるが…もはやお前で実験してみようとは思わぬ。この身も同じ融合体だからな…新霊長は私一人が居れば良い。私に並ぶ物は全て絶やしてくれる」

 

 そう言ってフィーネが触手を伸ばした時だった。

 

 校庭のスピーカーから歌が聞こえ始めた。

 

 「耳障りな!何が聞こえている?」

 

 「…!」

 

 (響、私達は無事だよ。帰ってくるのを待っている。だから、負けないで!)

 

 すると、辺りから光が生まれ、浮かんでいた。

 

 「どこから聞こえてくる…不快な、歌!…歌、だと!?」

 

 「聴こえる…皆の声が…」

 

 壊れたカ・ディンギルの間から太陽の光が差し込み、零のシンフォギアのカラータイマーにも青い光が灯り始めていた。

 

 「良かった…私を支えてくれている皆がいつだって側に…!皆が歌ってるんだ…!だから、まだ歌える…!頑張れる!戦える!」

 

 響の身体に光が灯り、シンフォギアを装着し始めた。

 

 「なっ!?」

 

 響は身体を起こし、フィーネの方を見た。

 

 「まだ戦えるだと!?何を支えに立ち上がる!何を握って力と変える!鳴り渡る不快な歌の仕業か…?嘘だ、お前が纏っている物はなんだ…?心は確かに折砕いたはず…!なのに…何を纏っている!?それは私が作ったものか!?お前が纏うそれは一体なんだ!?なんなのだ…!?」

 

 [君だけを守りたい 歌唱:つるの剛士 出典:ウルトラマンサーガ]

 

 カ・ディンギルの中から青い光の柱が一つ、森の中から赤い光の柱が一つ、そして瓦礫の山の上から赤い光の柱と青い光の柱が一つずつ立ち、明るく青い空の中に四人の奏者が飛び立った。

 

 「シンフォギアァァァァァー!!!」

 

 響達の背中から光の翼が生まれた。

 

 「お姉ちゃん達かっこいい!」

 

 「やっぱアタシらがついてないとダメだな!」

 

 「助け助けられてこそ、ナイスです!」

 

 「アタシら、一緒に戦ってるんだ!」

 

 「うん…!」

 

 

 

 「皆の歌声がくれたギアが、私に負けない力をくれる。クリスちゃんや翼さん、零さんに、もう一度立ち上がる力をくれる。歌は、戦う力だけじゃない。命なんだ!」

 

 青い翼を生やした翼と赤い翼を生やしたクリス、そして白い翼を生やした零は上空でフィーネを見ていた。

 

 「高レベルのフォニックゲイン…こいつは二年前に――」

 

 「んなこたどうでもいいんだよ!」

 

 「迷惑までも…限定解除されたギアを纏ってすっかリ回復か!」

 

 そう言ってフィーネは杖でノイズを召喚した。

 

 「いい加減芸が乏しいんだよ!」

 

 「世界に尽きるノイズの災禍は、全てお前の仕業なのか!」

 

 「ノイズとは、バラルの呪詛にて相互理解を失った人類が、同じ人類を殺戮するために作りあげた自立兵器…」

 

 「人が、人を殺すために…!?」

 

 「バビロニアの宝物庫は扉は開け放たれたままでな。そこからまろび出ずる十年一度の偶然を私は必然と変え、純粋に力へと使役しているだけの事」

 

 「またワケわかんねぇ事を!」

 

 そしてノイズが飛び出そうとした途端、零はアイスラッガーで全て切り裂きながら他の奏者とフィーネに迫った。

 

 フィーネの号令で今までにない量のノイズが召喚され、街も空も覆い尽くしていた。

 

 「あっちこっちから…!」

 

 「おっしゃあ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれる!」

 

 「一匹足りとも逃がさねぇ!」

 

 そう言ってクリスと零は飛び立ち、ノイズを倒しに行った。

 

 「翼さん、私、翼さんに…」

 

 響は先程の事を思い出していた。

 

 「どうでもいい事だ」

 

 「え…」

 

 「立花は私の呼び掛けに応えてくれた。自分から戻ってくれた。自分の強さに胸を張れ」

 

 「翼さん…!」

 

 「一緒に戦うぞ。立花…!」

 

 「…!はいッ!」

 

 四人の奏者が光の弧を描きながらノイズに向かっていく。

 

 [First Love Song Vo.立花響×風鳴翼×雪音クリス]

 

 そして、奏者達は四手に別れた。

 

 響の一撃は巨大なノイズ二匹を一瞬で打ち砕き、クリスの強化された[MEGA DETH PARTY]で空中のノイズは一匹残らず殲滅された。

 

 「すごい!全弾命中!」

 

 「全部狙い撃ってんだ!」

 

 「だったら私も!乱れ打ちだぁぁ!」

 

 響の連打により、地上のノイズ達は大小問わず次々と殲滅していった。

 

 翼の放つ[蒼ノ一閃]も空中のノイズを貫通して二体撃破した。

 

 『うーん…はっ!れ、零!』

 

 「ウソ!?お前意識あるのか!?」

 

 『何故かは分からないが意識を取り戻したらしい』

 

 「ったく…遅いんだよ!とにかくいくぜ!」

 

 『ああ!』

 

 零は両腕にエネルギーを貯め、腕を十字に組んで光線を発射した。

 

 「『ゼノクロスショット!!』」

 

 光線で一払いすると、それに巻き込まれたノイズ達は次々に爆発して殲滅されていった。

 

 エクスドライブ状態の四人の奏者の攻撃により、あんなにいたノイズ達の姿はほとんど無くなっていた。

 

 「どんだけ出ようが、今更ノイズか」

 

 「…!」

 

 ふとフィーネの方を見ると、フィーネはその杖を自分の体に突き刺そうとしていた。

 

 すると、残っていたノイズがフィーネの身体にまとわりつき始めた。

 

 「なんだ…?」

 

 そしてまた緑の光が放たれたと思うと、そのノイズはフィーネの元に集まって行った。

 

 「ノイズに取り込まれて…」

 

 「そうじゃねぇ…!アイツがノイズを取り込んでんだ!」

 

 すると、巨大なノイズの槍が四人目掛けて伸びて行き、それを四人は咄嗟に避けた。

 

 「来たれ!デュランダル!」

 

 やがてフィーネはデュランダルとも合体し、一体のノイズへと変わり、手始めに街に光線を撃った。

 

 その光線が過ぎ去ったかと思った次の瞬間、街で巨大な爆発が起きた。

 

 「街が!」

 

 「逆さ鱗に触れたのだ…相応の覚悟は出来ておろうな…!」

 

 見ると、ノイズの中心にフィーネがおり、そのネフシュタンの鎧は黒く染っていた。

 

 ノイズから巨大な光線が発射され、何とか避けたものの、その威力は絶大で、周りにいるだけで吹き飛ばされるほどだった。

 

 「こんのォォー!!」

 

 クリスが無数の光線を放つもノイズはシャッターを閉じるように障壁を作り出し、全ての攻撃を無効化して、クリスに撃ち返した。

 

 「ぐはぁっ!」

 

 翼の[蒼ノ一閃]で傷を付けることは出来たものの、すぐに再生されてしまった。

 

 「これならどうだァァ!」

 

 零もM87光線を撃つも身体を貫いただけで、効果は無いようだった。

 

 響も一撃を食らわせるも、やはり再生能力には意味が無いようで、致命的な一撃を与えることが出来なかった。

 

 「いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具!完全聖遺物に対抗出来るなどと思うてくれるな!」

 

 「聞いたか!?」

 

 「チャンネルをオフにしろ」

 

 「ああ」

 

 「しかし、その為には…」

 

 三人は響の方を見ていた。

 

 

 地下では凄まじい揺れが起きていた。

 

 「クソっ!奴が純粋な怪獣なら俺達も出ていけるってのに…!」

 

 「響…!」

 

 「ビッキー達、きっと大丈夫だよね」

 

 「…うん!」

 

 未来の目には依然強い光が灯っていた。

 

 

 

 「あ…えっと…やってみます!」

 

 その言葉に三人は頷き、後ろから撃たれた光線をかわして零、翼、クリスの三人はフィーネに向かった。

 

 「私達三人で杖を払う!」

 

 「手加減無しだぜ!」

 

 「分かっている!」

 

 クリスと零はフィーネに突っ込んでいき、翼は巨大な剣に巨大なエネルギーを纏わせ、斬撃を放つ「蒼ノ一閃・滅破」を使用してノイズにダメージを与えた。

 

 そして、段々小さくなって行く穴の中に二人が突入し、零はメタリウム光線で、クリスは大量の光線を放ちノイズの障壁を開けさせた。

 

 その中に翼が先程の攻撃をもう一度打ち込み、フィーネの手からデュランダルを離させた。

 

 「そいつが切り札だ!」

 

 [Synchrogazer 歌唱:水樹奈々]

 

 「!」

 

 「勝機を零すな!掴み取れ!」

 

 落ちそうになるデュランダルに零が大急ぎで向かい、渾身の一蹴りを入れて響に向かって飛ばし、響はそれを掴み取った。

 

 「デュランダルを!!」

 

 デュランダルの影響か、響が再び黒く染まりそうになる。

 

 

 

 それを見ていた未来は出口に向かった。

 

 「これだとまた響が…!」

 

 「未来!どこへ!?」

 

 「地上に出ます!」

 

 「無茶だ!危険すぎるぜ!」

 

 「響は、響のままでいてくれるって、変わらずにいてくれるって…!だから私は、響が闇に飲まれないよう、応援したいんです!」

 

 「…!」

 

 「助けられるだけじゃなく、響の力になるって誓ったんです!」

 

 

 

 響の翼まで黒く染まっていく中、黒く染まらないように響は持ちこたえていた。

 

 すると、地下シェルターから大我達や未来が飛び出した。

 

 「正念場だ!踏ん張りどころだろうが!」

 

 「!…!」

 

 響は堪えながら弦十郎の方を見た。

 

 「強く自分を持つんだ!響!」

 

 「昨日までの自分を!」

 

 「これからなりたい自分を!」

 

 大我、タイタス、風舞が叫ぶ。

 

 「み…んな…!」

 

 「臆するな立花。お前が抱えた胸の覚悟、私に見せてくれ」

 

 「お前に信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を信じなくてどうするんだよ!」

 

 「大丈夫!響なら出来る!」

 

 響の側に翼、クリス、零も立っていた。

 

 「あなたのお節介を!」

 

 「あんたの人助けを!」

 

 「今日はあたし達が!」

 

 「やかましィ!黙らせてやる!」

 

 そう言ってフィーネは触手を伸ばした。

 

 零は響の前に出てバリアを張った。

 

 「邪魔はさせん!」

 

 響がついに黒く染まり、デュランダルを振り上げた時だった。

 

 「響ぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 その声はついに響に届いた。

 

 「…!そうだ、今の私は、私だけの力じゃない…!」

 

 「ビッキー!」

 

 「響ー!」

 

 「立花さーん!」

 

 「そうだ…!この衝動に…!塗り潰されてなるものか!」

 

 ついに響に光が戻り、元の響へと戻り、より一層大きな羽根が響の背中から生まれた。

 

 「やった!」

 

 零はバリアを消して光線で牽制し、後ろから響を支え、デュランダルを支えた。

 

 デュランダルの剣は空高く伸び出した。

 

 「その力!何をたまげた!」

 

 「響き合う皆の歌声が!シンフォギアだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 四人は皆の歌声を力に変えてデュランダルに込めて振り下ろす一撃、[Synchrogazer]を放った。

 

 その一撃はノイズの巨体を切り裂き、フィーネの怒りの断末魔と共にノイズは爆散した。

 

 

 

 日も暮れ、瓦礫の中からフィーネを助け出した響が皆の元に帰ってきた。

 

 「お前…何を馬鹿な事を…」

 

 「このスクリューガールが」

 

 そういうクリスの顔は苦笑いしていた。

 

 「よく言われます。皆からも変わった子だーって」

 

 フィーネは意気消沈しながら岩に腰掛けた。

 

 「もう終わりにしましょう。了子さん」

 

 「…私はフィーネだ…」

 

 「でも、了子さんは了子さんですから」

 

 「…」

 

 「きっと私達、分かり合えます」

 

 「…ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを選んだ。そんな人間が分かり合えるものか…」

 

 フィーネのその声からは怒りよりも悲しさの方が強く見えた。

 

 「人が…ノイズを…」

 

 「だから私は、この道しか選べなかったのだ…!」

 

 「おい!…」

 

 飛び出そうとするクリスを翼が手で制した。

 

 「…人が言葉よりも強く繋がれること、分からない私達じゃありません」

 

 「…はぁっ!」

 

 フィーネは振り向きざまに触手を伸ばすも響はフィーネに拳を打ち込む直前で止めた。が、フィーネの触手は止まらない。

 

 「私の勝ちだ!」

 

 最初からフィーネの触手は響など狙っておらず、その触手は月を目指して伸びていた。

 

 触手は割れた月の一部に刺さり、地球に投げるようにフィーネは懇親の力で背負い投げた。

 

 「月の欠片を堕とす!」

 

 「!!」

 

 「私の悲願を邪魔する禍根はここでまとめて叩いて砕く!この身がここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな!」

 

 そう言うフィーネのネフシュタンの鎧や身体はボロボロと崩れ始めた。

 

 「聖遺物の発するアウトバック波形がある限り私は何度だって世界に蘇る!どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねる為にィィ!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!フィーネなのだァァァ!」

 

 響はフィーネに軽い一撃を与えた。

 

 「…」

 

 そして、その身体は段々風化を始めていく。

 

 「うん、そうですよね。どこかの場所、いつかの時代、蘇る度に何度でも、私の代わりに皆に伝えてください。世界を一つにするのに、力なんて必要ないってことを。言葉を超えて、私達は一つになれるって事。私達は未来にきっと手を繋げるということ。私には伝えられないから。了子さんにしか、出来ないから」

 

 そう言う響は希望に満ちた顔をしていた。

 

 「お前…まさか…」

 

 「了子さんに未来を託すためにも、私が今を守って見せますね!」

 

 「…フッ、本当にもう、放っておけない子なんだから」

 

 そう言うフィーネの声は了子の様に優しかった。

 

 「胸の歌を、信じなさい」

 

 そう言ってフィーネは灰に代わり、風にさらわれていった。

 

 「…」

 

 一同は涙を浮かべ、特にクリスは涙を溢れさせながらフィーネの最期を見届けた。

 

 (アンタの恋心ってやつは、今まで生きてきた中でも、一番重くて、誰よりも一途な恋心だったぜ…)

 

 昴も静かにフィーネを見届けた。

 

 「起動計算出たぜ。やっぱり地球に直撃は免れないみたいだ」

 

 「あんなものがここに落ちたら…!」

 

 「アタシ達、もう…!」

 

 奏者達はその砕けた月を見ていた。

 

 「響…」

 

 「何とかする」

 

 そう言って振り向いた響の目は覚悟を決めていた。

 

 「ちょーっと行ってくるから、生きるのを諦めないで」

 

 そう言って響は走って飛び出して行った。

 

 「響…」

 

 未来の目から大量の涙が流れ落ちた。

 

 命を賭して、皆を守るために歌う最期の歌。

 

 響は単身月に向かっていた。

 

 「…あいつ一人死なせるわけにゃ行かねえんだよ!」

 

 零も急いで飛び出し、響を追いかけた。

 

 「零さん!」

 

 

 

 

 絶唱を終えた響は、月を見つめていた。

 

 「そんなにヒーローになりたいのか?」

 

 後ろから声が聞こえ、響は声のした方を振り向いた。

 

 [First Love Song Vo.立花響×風鳴翼×雪音クリス]

 

 「こんな大舞台で挽歌を歌うことになるとはな。立花には驚かされっぱなしだ」

 

 「最後まで付き合うぜ、響」

 

 「翼さん、クリスちゃん、零さん」

 

 「まあ、一生分の歌を歌うには丁度いいんじゃねえのか?」

 

 そして、四人は月へと向かって行った。

 

 「それでも、私はもっと立花と歌を歌いたかった」

 

 「ごめんなさい…」

 

 「ばーか。こういう時はそうじゃねえだろ」

 

 「そうそう。皆で帰ろう」

 

 「ありがとう、三人とも。解放全開!」

 

 「全力全開ーッ!」

 

 四人は一つの光になり、月へと向かっていく。

 

 (皆が同じ夢を叶えられないのは分かってる。夢を叶えるための未来は、皆に等しく無きゃいけないんだ!)

 

 (命は、尽きても終わりじゃない。尽きた命が、遺したものを受け止めて託して行くことが人の営み。だからこそ、剣が守る意味がある)

 

 (生きることを諦めない。皆未来に向かって戦っている。だから、俺達もその未来を守るために戦うんだ…!)

 

 (例え声が枯れたって、この胸の歌だけは絶やさない!夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!)

 

 (これが!私達の!絶唱だぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

 やがて四人は月の欠片へ到着し、翼は自分の何倍もの大きさの剣を構え、クリスも膨大な数のミサイルを装填し、響もこれまでに無いほどの出力を出せるようにブーストをかけ、零も持っている七枚全てのカードを読み込ませ、メビウスインフィニティーの力を纏わせ、突撃準備に入った。

 

 「「「「うおおおおおおおお!!」」」」

 

 四人は一斉に月の欠片に向かって己の剣を、ミサイルを、拳を、そしてその身を飛ばした。

 

 やがて、眩い光と共にその月の欠片は粉々に砕かれ、欠片は無数の流星群となって空を流れて行った。

 

 「流れ星…」

 

 未来は膝をつき、大声をあげて、子供のように泣いた。泣きじゃくった。

 

 

 

 

 ある日未来は、大雨の中傘もささずにバスを待っていた。

 

 あの日から三週間、響達四人の捜索は打ち切られてしまった。

 

 弦十郎や大我達からは、作戦行動中での行方不明は死亡扱いになると聞かされていた。

 

 郊外に墓が立てられたものの、そこに響はなく、秘密の関係上名前が彫られることも無い。

 

 外国政府からの追求を躱すためだとの事らしいが、未来にはまだよく分からない事だった。

 

 未来が弦十郎に渡された写真が飾ってあれば、それが響の墓標だと言う。

 

 それが寂しい墓であっても、未来は響が通った終着に通いつめている。

 

 何度も大我やタイタスの元を訪ねても「悲しいことだが…」と言われて悲しい顔をされ、それ以上は何も聞けなかった。

 

 未来は響の墓標の前に花を添えた。

 

 「会いたいよ…もう会えないなんて…私は嫌だよ…!響…!私が見たかったのは響と一緒に見る流れ星なんだよ…!」

 

 未来が泣いていると、どこからか悲鳴が聞こえた。

 

 「誰か助けてー!」

 

 未来は悲鳴が聞こえた方に行き、女性の手を掴み、階段を登って逃げた。

 

 「こっち!」

 

 そして、道を走ってノイズから逃げていた。

 

 (諦めない!絶対に!)

 

 女性は手を離し、その場で力なく膝をついた。

 

 「私…もう…」

 

 「お願い!諦めないで!」

 

 しかし、そう言う未来の目と鼻の先にはノイズがおり、二人を壁際に追い詰めて取り囲んでいた。

 

 未来はどれだけノイズが近寄ってきても、女性から離れることはせず、ノイズを阻むように立った。

 

 そして、覚悟を決めた瞬間、ノイズ達が一瞬にして炭へと変わった。

 

 攻撃が飛んできた方を見ると、そこには――

 

 「ごめん、色々機密を守らなきゃいけなくて…未来にはまた本当のことが言えなかったんだ」

 

 そこには、いつもの調子で笑う響、そして翼、クリス、零が立っていた。

 

 未来は響の方に走って抱きつき、響もそれを受け止めた。

 

 ノイズの脅威は去ることがなく、人々もまた闘争で溢れている。未だに危機は溢れ、悲しみの連鎖は留まることを知らない。だけど、俯かない。諦めない。だってこの世界には歌があるのだから。

 

 ED[逆光のフリューゲル Vo.天羽奏×風鳴翼]

 

 




今回はここまでです!

次からはやっとウルトラマンが出ます!!

また感想や高評価もよろしくお願いいたします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。