歌の世界の【奏者】光の戦士   作:シャイニングピッグEX

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連投でええええす!!!


悲しみの落涙

「ネフシュタンの…鎧…!」

 

 「へぇー?てことはアンタ、この鎧の出自を知ってんだ」

 

 「二ヶ月前…私の不始末で奪われたものを忘れるものか!…私の不手際で奪われた命を忘れるものか!」

 

 「…!」

 

 あの時の光景がフラッシュバックする。

 

 立ち直ったつもりでいても、どうやら許しては貰えないようだ。

 

 「忘れるもんか、絶対に」

 

 そう言って零と翼は武器を構え、少女も鎖のような武器を構えた。

 

 「翼さん、零さん、辞めてください!相手は人です!同じ人間です」

 

 「「戦場で何をバカなことを!お??」」

 

 「むしろ、貴方と気が合いそうね」

 

 「だったら仲良くじゃれ合うかいィ?」

 

 そう言って少女は鎖を飛ばし、零は響を抱き抱えて翼と同時に飛び上がった。

 

 翼はその勢いのまま【蒼ノ一閃】を放ち、少女も鎖で受け止め、それをはじき飛ばした。

 

 「なんてやつだ…あれを弾き飛ばすなんて…」

 

 翼も同様が隠しきれないまま巨大な剣を握って少女に向かって奮うも剣先が当たらず、その剣を受け止められて動きが止められ、腹部に強い一撃をくらい吹っ飛んだ。

 

 「ネフシュタンの鎧のポテンシャルだなんて思わないでくれよなァ?アタシのテッペンはまだまだこんなもんじゃねえぞォ?」

 

 そう言って少女は後ろに飛び上がり、鎖をムチのようにしならせて翼目掛けて叩きつけた。

 

 その威力は翼が立っていたすぐ後ろの木が一瞬でへし折れる程だった。

 

 「翼さん!」

 

 「お呼びじゃないんだよォ。コイツらの相手でもしてな」

 

 そう言って少女は八体のノイズを呼び出し、零と響の前に召喚した。

 

 「ああ…!ノイズが操られている…!」

 

 「そんなんありかよ…!」

 

 気が付くと、零の胸のカラータイマーも鳴っており、エネルギーが少ないことを知らせていた。

 

 「だ、大丈夫ですか!?なんか鳴ってますけど!?」

 

 「元々こいつはそういう仕様なんだ…それにしても肝心なところで…ッ!」

 

零は身動きが取れないまま、響と一緒にノイズに捕まってしまった。

 

 翼はよそ見をしていた少女に向かって剣を奮い、少女もとっさに鎖で受け止めた。

 

 「その子にかまけて、私を忘れるなぁ!」

 

 「!?」

 

 翼の機転で少女はバランスを崩しかけるもすぐに持ち直し、翼の回し蹴りを腕で受け止めた。

 

 「お高く止まるなァ!」

 

 少女は受け止めていた翼の足を掴んで地面に叩きつけ、一瞬で翼の前に回り込み顔を踏みつけた。

 

 「くっ…」

 

 「のぼせ上がるな人気者!誰も彼もが構ってくれるなと思うんじゃねぇ!」

 

 「うっ…」

 

 「この場の主役と勘違いしているんなら教えてやる。狙いはハナっからこいつをかっさらうことだ。余計なやつも一人ついてきたけどまあいい」

 

 そう言って少女は親指で響達の方を指した。

 

 「鎧も仲間も、あんたには過ぎてんじゃないのか?」

 

 「繰り返すものか…!私は誓った!」

 

 そう言うと翼は天空から無数の小さな剣を飛ばす【千ノ落涙】を放ち、自分から少女を引き離して体制を立て直し、二人とも街の方へ飛んで戦闘を再開した。

 

 「…そうだ!アームドギア!奏さんの代わりになるには私にもアームドギアが必要なんだ!あれさえあれば…!出ろ!出てこい!アームドギアァ!」

 

 しかし、いくら暴れても響の腕から武器は出ず、何も起きることは無かった。

 

 「…なんでだよ…どうすればいいのか分かんないよ…」

 

 零のカラータイマーの点滅も早くなり、意識も朦朧としていた。

 

 その頃、翼と少女は戦いを繰り広げていた。

 

 「やはり鎧に振り回されてる訳では無い!この強さは本物…!」

 

 「ここで何考え事だァ?ちょせぇ!」

 

 翼は少女の回し蹴りを避けて間合いを取り、刀を構え、それと同時に少女も周囲にノイズの群れを召喚した。

 

 翼は一瞬戸惑うもノイズの攻撃を受け止め、弾き返してノイズを切り裂き、残りのノイズの群れもあっという間に倒した。

 

 そして、斬撃を少女に放ち、再び翼と少女の一騎討ちになり、少女は翼が投げた短剣を弾いて鎖の先端から黒と白の光弾を放つ【NIRVANA GEDON】を放ち、翼はそれを剣で受け止めた。

 

 「翼さん!」

 

 響の叫びもむなしく、大きな爆発が起き、その中から翼が飛び出して地面に膝をついた。

 

 「フッ、まるで出来損ない」

 

 「…確かに、私は出来損ないだ。」

 

 「はァ?」

 

 「この一振の剣と鍛えてきた筈なのに…なのに、無様に生き残ってしまった…出来損ないの剣として恥を晒してきてしまった…!」

 

 翼は剣を杖のようにしながらよろよろと立ち上がった。

 

 「だが、それも今日までのこと。奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名を注がせてもらう!」

 

 「そうかい。脱がせるものなら脱が…なにィ!?」

 

 見ると、少女の影には剣が刺さっており、身動きが取れなくなっていた。これも翼の技の【影縫い】だった。

 

 「くっ…こんなもんでアタシの動きを!…まさか、お前…」

 

 「月が覗いている内に決着をつけましょう」

 

 そう言う翼は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 「う、歌うのか…絶唱を…!」

 

 「翼さん!」

 

 「防人の生き様!覚悟を見せてあげる!」

 

 そう言って翼は響に矛先を向けた。

 

 「貴方達の胸に焼き付けなさい!」

 

 二人の視線は揺れながら交差していた。

 

 「ええい!やらせるかよ!好きにッ!勝手にィッ!はっ!」

 

 翼はゆっくりと刀を天に掲げ、ピンク色の結界を張りながら少女へと向かって踏み出した。

 

 そして、歌いながらゆっくりと少女に向かって歩み寄り、己の全てを賭けて命を燃やしつくそうとしていた。

 

 そして、詠唱が終わると同時に口から血を流し、一瞬の間のあと凄まじい衝撃波が放たれ、ノイズが消え去るのと同時にネフシュタンの鎧にもヒビが入った。

 

 そして、少女は大きく吹き飛ばされ、響と零も解放された。

 

 少女はなんとか立ち上がり、どこかへと去ってしまった。

 

 響は零を肩で支えながら引っ張って翼の元へと駆け寄った。

 

 「翼さーん!!」

 

 その横に弦十郎と了子は車で現れ、避難を済ませた大我達も零達の元へ駆け寄った。

 

 「無事か!翼!」

 

 「…私とて、人類守護の務めを果たす、防人」

 

 そう言って振り返った翼の目は虚ろで、口から滝のように大粒の血が垂れ、足元には赤い水たまりが出来ていた。

 

 「こんなところで、折れる剣じゃ…ありません」

 

 そう言って翼は倒れ、それを見た弦十郎は翼に駆け寄った。

 

「翼さああああん!!!」

 

 響は悲鳴とも叫びとも分からぬ声をあげていた。

 

 

 

 翼と零は救急車で搬送され、基地に戻っていた。

 

 「零くんの方は体力の限界だったので、休めば大丈夫です。翼さんの方も、一命は取り留めましたが、容態が安定するまでは絶対安静、油断を許されない状況です」

 

 「宜しくお願いします」

 

 そう言って弦十郎と大我達は医師に頭を下げた。

 

 「俺達は鎧の行方を追跡する!どんな手がかりも見落とすな!」

 

 そう言って弦十郎と大我達は外へ出た。

 

 手術室の横の待合室には響が一人座っていた。

 

 「お前が気に病む必要はねえよ。翼自ら戦い、歌ったんだからな…」

 

 「昴さん…」

 

 そう言って昴は飲み物を買い、自販機のすぐ前のソファに座った。

 

 「お前も知っての通り、以前の翼はアーティストユニットを組んで活動をしてた…」

 

 「ツヴァイウィング…ですよね」

 

 「ほらよ」

 

 そう言って昴は響に暖かい飲み物を渡した。

 

 「その時から翼のパートナーが天羽奏…響の前のガングニールの奏者だったんだ」

 

 「二ヶ月前のあの日、ノイズに襲撃されたライブの被害を最小限に抑える為に奏は絶唱を解き放ったんだ…」

 

 「絶唱…翼さんも言っていた…」

 

 「奏者の負荷を厭わずにシンフォギアの限界以上の力を解き放つ絶唱はノイズの大群を一瞬で消滅させられたが、同時に奏の命も燃やし尽くしたんだ」

 

 「それは…私を救うためでしたか…」

 

 「…」

 

 昴は一口コーヒーを飲み、言葉を続ける。

 

 「奏の殉職、それでツヴァイウィングも解散…一人になった翼は奏の穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきた。同世代の女の子が知る恋愛や遊びも覚えないで自分を殺し、一振の剣として生きてきた。そして今日、剣としての使命を果たすために死ぬことすら覚悟して歌を唄った…。傍から見てても不器用なんだよ。でもそれが、風鳴翼と言う人間の生き方なんだ…」

 

 響は唇を震わせながら涙を流し、口を開いた。

 

 「そんなの…酷すぎます…!それなのに私は翼さんのこと…なんにも知らずに…一緒に戦いたいだなんて…奏さんの代わりになるだなんて…」

 

 そう言って響は嗚咽を漏らし始めた。

 

 「…俺やマネージャーの緒川や零、大我達も奏の代わりになって欲しいだなんて思っちゃいねえよ。そんなこと、誰も望んじゃいない。…なあ響、俺から一つお願いしていいか?」

 

 「…?」

 

 「俺は翼のマネージャーでもなんでもないけど…アイツのこと、嫌いにならないでやってくれよ。世界で独りぼっちになんて、させないでやってくれ」

 

 「…はい」

 

 

 零は意識の世界のなかで、白い百合の花畑に立っていた。

 

 過去の事が思い出される。

 

 ルシフェルやファイエル…それらは決して一人で倒すことが出来なかった…。

 

 今もう一度現れたら俺は勝てるのか?

 

 もしも…もしも仲間を失ったりしたら…?

 

 いやだ。怖い。

 

 こんなにも戦うことに恐怖を覚えたことはなかった。

 

 何時でも命を落とせるこの環境にあっては、いつしか生きるという選択を捨てるのではないか…そんな恐怖が焼き付いてしまっていた。

 

 ユリ…レイジ…皆…!

 

 幻影に手を伸ばそうとした途端、そこで意識が戻った。

 

 「…」

 

 軋む身体をベッドから起こしながら拳を握ってじっと見つめる。

 

 「…翼は…ずっと一人で戦ってきたんだ…俺も、戦うしかないんだ…」

 

 すると、部屋に大我達が入り、起きた零に気が付いた。

 

 「おお、目が覚めたのか!良かったー!」

 

 「もう起きても大丈夫なのか?」

 

 「なんか食いてえ物とかあるか?」

 

 「…いや、大丈夫だよ。ありがとう、皆」

 

 「…そっ、か。…なあ、零。その、なんて言うかさ」

 

 「…?」

 

 零は不思議そうに大我の方を見た。

 

 「俺はお前みたいにシンフォギアを纏って戦える訳じゃないし、いつも守ってもらう立場だから言うことじゃないかもしれないけどさ。お前はお前のまま、強くなれよ」

 

 「俺のまま…?」

 

 「おう!例えば、俺にだって怖いものはある!父さんの説教とか、それも数え切れないくらい!だけど、それも含めて俺なんだって、思うんだ。だからさ、お前を、柊零をブレさせないまま、強くなれよ」

 

 そう言って大我は零の胸を軽く小突いた。

 

 「…そうだね。そうだよね。ありがとう、大我」

 

 「へへへ。前に俺達と一緒に戦ったヒロユキも同じこと言うかなって思ったんだ」

 

 「ヒロユキ?」

 

 「ああ。俺達がいた地球で体を借りてた地球人なんだ」

 

 「彼と戦った日々は今も私達と共に根付いている。君にもいるだろう?今は一緒にいなくても、共に戦ってきた仲間達が。彼らは、あるいは彼女達は君を信じてここまで進めてくれたんだ。君が仲間を信じてきたように、仲間達もまた君を信じていたんだ」

 

 「確かに…皆、俺を引き止めないで送り出してくれたんだ…俺もその期待に応えなきゃな」

 

 「よっし!決まりだな!それじゃあさ…」

 

 

 

 

 零と響、そして昴と大我達は弦十郎の家へと来ていた。

 

 「考えることは同じみたいだな、お前達」

 

 「えへへー」

 

 「さ、行こうぜ」

 

 早速、零と響は弦十郎、昴、大我、タイタス、風舞の指導の元、特訓を開始したのである!!

 




今回はここまでです!!!
うーん!!疲れが滲み出てるかも!!!
次回も宜しくお願いします!!

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