歌の世界の【奏者】光の戦士   作:シャイニングピッグEX

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よっしゃ行くぞーッ!


兆し

昨日の戦いから夜が明け、零は一人屋上で明けゆく夜空の中、持っているカードを見つめていた。

 

 持っているカードは全部で七枚。弱い訳ではなく、使いこなせていない自分自身に苛立ちと遅れの様なものを感じていた。

 

 焦りなのか、あるいは…。

 

 「…」

 

 強く、ならなくては。

 

 甘さを捨てなければ。

 

 何者にも負けぬ、力と精神を…!

 

 そう思う彼の瞳は一瞬黒く濁った。

 

 

 

 同時刻、クリスは館の近くの湖で朝日を見ながら響がデュランダルの力を解き放った時のことを思い返していた。

 

 (完全聖遺物を起動するには相応のシンフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。アタシがソロモンの杖に半年もかかつらったことをアイツはあっという間に成し遂げた。そればかりか、無理矢理力をぶっぱなして見せやがった。)

 

 暴走し、黒く染まりながらもデュランダルを振り上げ、圧倒的な力で工場を瓦礫の山に変えたのは一晩明けた今でも鮮明に思い出せる。

 

 「バケモノめ…!」

 

 そう言ってクリスは歯を食いしばる。その顔には怒りがあらわになっていた。

 

 「このアタシに身柄の確保を任せるくらい、フィーネはアイツに御執心ってワケかよ…」

 

 手に持ったソロモンの杖を強く握り、幼い頃の記憶を思い出す。親も住まいも失い、どこの誰とも分からぬ子供達と一緒に連れられ、奴隷の様に扱われ…。

 

 夜風が彼女の髪を静かになびかせていた。

 

 「…そしてまた、ワタシはひとりぼっちになるワケだ…」

 

 すると、後ろに気配を感じ、振り返るとあの女性…フィーネが黒い服と帽子を着用して立っていた。

 

 「分かっている。自分に課せられた事くらいは。こんな物に頼らなくても、アンタの言うことくらい、やってやらァ!」

 

 そう言って、クリスは持っていたソロモンの杖をフィーネに投げ渡した。

 

 「アイツよりも、私の方が優秀だって事を見せてやる!アタシ以外に力を持つ奴は、全部この手でブチのめしてくれる!」

 

 そう言いながらクリスは拳を強く握った。

 

 「それがアタシの目的だからな!」

 

 そういうクリスをフィーネは静かに笑った。

 

 

 

 そしてまた同じ頃、杖をつきながら翼は病院の廊下を歩き、リハビリに励んでいた。

 

 すると、窓の外から響が走っているのが見えた。

 

 「…」

 

 「アイツら、頑張ってるだろ?」

 

 「大我…さん」

 

 翼の前から大我が歩み寄り、一緒に窓の外を見た。

 

 「立花…」

 

 「翼が思ってる以上に、響は頑張ってるさ。…まあ、とにかく、翼もリハビリ頑張れよな!」

 

 そう言って大我は部屋へと戻って行った。

 

 翼はその背中をただじっと見つめていた。

 

 

 

 零は一人、昴と実戦形式の特訓をしていた。

 

 「どうした!闘い方が直線的に戻ってるぞォォ!」

 

 「!!」

 

 そう言われた途端、一瞬零の動きが止まり、昴の回し蹴りをモロに喰らった。

 

 「がっ…ぐっ…」

 

 「わ、悪ぃ。立てるか?」

 

 昴が差し出した手を払い除け、零はすぐに立ち上がった。

 

 「大丈夫…俺はやれる…」

 

 「…まあいい。何か分かんねえが、続けるぞ」

 

 「ああ。続けてくれ!」

 

 またも一瞬零の瞳が黒く濁る。

 

 「…?行くぞ!」

 

 昴と零は同時に飛び出し、拳を交えた。

 

 以前とは違い、零の拳からは本気の殺気が感じ取れるほどに鋭く、一撃が重くなっていた。

 

 一体何を焦っているんだ、零。お前らしくもないじゃないか。

 

 そう言えるほどの隙もない程に零の攻撃は早く、何よりも零の顔は険しい物になっていた。

 

 「はぁっ!」

 

 「ぐっ!」

 

 零の一撃を昴は両手で受け止め、その衝撃で地面の一部が抉れるように吹き飛んだ。

 

 「ぐっ…ぐぐ…!」

 

 「く…!はっ!」

 

 昴はなんとかして零の体を放し、零も三段跳びの要領で間合いを取った。

 

 零の一撃で昴の腕が痺れ、昴は腕を強く振った。

 

 「…お前、今どんな顔してると思う?」

 

 「…え?」

 

 「獣のように俺を睨み、恨みでもあるのかって思うくらいの怒りの顔をしてるぜ」

 

 「怒…り…」

 

 「お前の…柊零としての闘う理由は何だ!言ってみろ!」

 

 「俺の闘う…理由…それは…それは…!…!?」

 

 言葉が詰まって出てこない。

 

 俺は何がしたいんだ?

 

 ノイズを倒すこと?違う。

 

 地球を平和にすること?違う!…違う?

 

 それじゃあ…今の俺は何がしたいんだ…!?

 

 分からない。分からない。分からない分からない。分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分から―――

 

 「ああああああああっっっ!!!」

 

 一瞬、零の瞳と髪の一部が黒く染まる。

 

 黒い電流の様なものを身体中に迸らせたと思うと、零は目を見開いたまま倒れ込んだ。

 

 「…こいつは…!?」

 

 昴は零の両目を見て驚愕した。

 

 彼の片目はいつも通りの緑色の瞳だったが、もう片方の瞳は紅い瞳だった。無論、充血しているなんてものではない。

 

 「零の中にもう一つの人格が誕生しようとしている…!?」

 

 よく見ると、零の口の中の歯も、何本か牙の様に変形していた。

 

 「…零…お前、本当に何を焦っているんだ…」

 

 そう言って昴は零の目と口を閉じ、医務室のベッドへ運び、寝かせてやった。

 

 「…大馬鹿野郎だ、お前は」

 

 

 

 その頃、響は翼のお見舞いに行き、乱雑にされていた部屋を見て多少驚きながらも部屋を片付けた。

 

 そして、翼からも認められていた事や、己の闘う理由など、色々なことを話し、その流れでいつもルームメイトでありクラスメイトである未来と一緒によく行くお好み焼き屋の「ふらわぁ」へ向かう道中の事だった。

 

 クリスが響と未来に襲いかかり、未来に車が飛んできたのを見て響はやむなくシンフォギアを身にまとった。

 

 「響…!」

 

 「…ごめん」

 

 響は未来の方を振り向けぬまま、クリスを追った。

 

 [私ト云ウ 音響キ ソノ先二 Vo.立花響]

 

 「ドンくせえのがいっちょ前に挑発するつもりかよ!」

 

 そう言って響は市街地を離れ、森の方へと移動し、クリスもそれを追った、

 

 そして、場所を決め、クリスの方を振り向くと同時にクリスの鎖が飛び出し、響は咄嗟に腕で防いだ。

 

 「ドンくせえのがやってくれる!」

 

 「ドンくさいなんて名前じゃない!」

 

 「は?」

 

 「私は立花響!十五歳!誕生日は九月の十三日で、血液型はO型!身長は、こないだの測定では百五十七センチ!体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きな物はご飯&ご飯!後は、彼氏いない歴は年齢と同じィ!あとついでに前に一緒に戦ったのは柊零さん二十歳!誕生日とか身長とかは何にも聞けてないけど凄く強くて頼りになる人だッ!」

 

 「な、何をとち狂ってやがるんだお前…」

 

 「私達は、ノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」

 

 「なんて悠長!この期に及んでぇッ!」

 

 そう言ってクリスは鎖を飛ばし、響は飛び上がってそれを避けた。

 

 クリスの攻撃は当たらず、いや、響が前よりも避けれるようになっており、表情も以前とは違い、迷いが無くなっていた。

 

 (こいつ…何が変わった…?覚悟かッ!?)

 

 「話し合おうよ!私達は闘っちゃいけないんだ!」

 

 それを聞いてクリスは歯ぎしりした。

 

 「だって言葉が通じれば人間は――」

 

 「うるせえ!」

 

 言葉を遮って叫ぶクリスに響は驚いた。

 

 「分かり合えるものかよ人間が!そんな風に出来ているものか!気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ!!分かっちゃいねえ事をべらべら口にするお前がァァァー!!!」

 

 「…!」

 

 肩で息をしながらクリスは言葉を続ける。

 

 「お前を引きずってこいという命令だったがもうそんなことはどうでもいい!お前をこの手で叩き潰す!お前の全てを踏みにじってやる!」

 

 「私だってやられる訳には!」

 

 そう言ってクリスは鎖の先端に黒と白の光球を作り出し、相手に放つ[NIRVANA GEDON]を放った。

 

 響はそれを受け止め、放すことも出来ないまま後ずさった。

 

 間髪入れずにクリスはもう一発放ち、響ががいた場所は大きな爆発を起こした。

 

 「お前なんかがいるから、私が…はっ!」

 

 煙が晴れた場所には傷ひとつ無い響が立っており、手のひらの間にエネルギーを集中させるも上手くいかず、手元で爆発して響の体が吹っ飛んだ。

 

 (これじゃダメだ!翼さんの様に固定出来ない…!)

 

 「この短期間に、アームドギアまで手にしようってのか!?」

 

 クリスが驚いている隙にもう一度響は手のひらにエネルギーを貯め始めた。

 

 (エネルギーはあるんだ…アームドギアに形成されないのなら…!)

 

 響はエネルギーの球を握り、腕のギアが動いて煙が吹き出た。

 

 (そのエネルギーをぶつければ良いだけッ!)

 

 「させるかよッ!」

 

 クリスは咄嗟に二本鎖を飛ばすも響はそれらを片手で止めて見せた。

 

 「なんだと!?」

 

 (雷を握り潰す様にいいいッ!)

 

 響はその鎖を持ってクリスの体を引っ張った。

 

 (最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に!胸の響を!この思いを!伝える為にいいいっ!)

 

 その思いに応えるように、響のギアは変形して腰と腕からジェット噴射し、とてつもない一撃をクリスにぶつけた。

 

 「うおおおおおおーっ!」

 

 その一撃の痛みは鎧をも貫き、クリスの背中の一部が盛り上がっていた。

 

 (そんな…ネフシュタンの鎧が…!)

 

 そして、森の中で大きな爆発を起こした。

 

 

 

 




今回はここまでです!

「ん?私達の出番は…!?」

「おい兄ちゃん。次回はあるんだろうな?」

きっと、多分、あると思います!

また次回っ!短くなってすまぬ!
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