俺のデュエルアカデミア   作:タコよっちゃん

1 / 4
遊戯王の知識:漫画、及びアニメの一部のみ
ヒロアカの知識:ジャンプ購読のみ、コミックス未所持
小説執筆経験:これが初めて

それでも思いついてしまったんだからしょうがない
広い心で読んでね!


TURN-1 『始まりの決闘』

 

『個性』の歴史……それは遥か昔、中国軽慶市の光る赤子にまでさかのぼるという。

 現代における個性は、資格を持って正義を執行する、或いは暴力として犯罪を犯す、世界の均衡を決める超常の力であった。

 それらはヒーロー、(ヴィラン)と呼ばれた。

 

 今、新たなの力を手にし、謎の個性を受け継いだ少年がいた。

 本気と趣味……二つの心を持つ少年。人は彼を――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「た……たのむよ……ボクにはこの一万円で精一杯なんだ…」

 

 人気のない路地裏、少年――――緑谷(みどりや)出久(いずく)は壁に背を預けへたり込んでいた。

 身に付けている学生服は泥と埃で汚れ、頬には大きな青痣ができている。身体の痛みに耐えながら、眼前の男へと差し出された右手には一万円札が握られていた。

 出久の目の前の男――――蜘蛛のイラストが描かれた黒シャツを着た逆立った金髪の不良はそれを目にし、鼻を鳴らしながら声を張り上げた。

 

「そんなはした金じゃオレ様のレアとは釣り合わねぇんだよ!」

 

 そう言って不良は右手で一枚のカードをチラつかせながら出久を見下ろす。路地裏に響き渡る不良の声はしかし、出久以外の誰にも届く事はない。

 

「で……でも最初にこの代金で納得してたじゃないか!」

 

「気が変わったんだよ! いいかぁ、オレは喧嘩に勝った!! 負けた野郎は勝った人間の言う事はなんでも訊かなきゃならねぇんだよ!」

 

「喧嘩って……いきなり殴りかかってきてカードを奪ったんじゃ――――」

 

「うるっせんだよ無個性のザコが!」

 

 言葉と同時、吐き捨てられるように出久の腹に蹴りが突き刺さった。呻き声をあげ、出久は何故こうなったのかと想いを馳せた。

 ツイていなかった。いや、途中まではツイていたはずだったのだ。下校途中に寄ったコンビニ。趣味のヒーローチップス(カード付き)を購入し、待ちきれないとパックを開くと、そこには最も有名なヒーローの姿が描かれていた。

 

 

 ――――――【最強の男 オールマイト】

 

 

 表記された最高ランクレアの表記、輝くホログラム、そして中央に仁王立つ最強の男の姿。

 オークションで売れば、数十万は下らないだろうレアカード、その最新バージョン。

 なにより、自分が最も憧れているヒーローのカード。

 夢にまで見た、最高のレアカードを手に、出久は感動で身体を震わせ、自分の幸運と神に最大限の感謝をささげたのだ。

 

 

 そう、間違いなく幸運だったのだ。唐突に背後から肩を叩かれるまでは。

 後は語るまでもない。現れた不良に首根っこを掴まれて路地裏に放り込まれ、いきなり喧嘩を売られたと思いきや殴られ、遂には掛け金と称してカードを奪われ、今に至る。

 

()()()()と釣り合うカードを差し出すか! さもなきゃ十万払うか……残る最悪の選択で二度と歩けねぇ体にしてやるかよ!」

 

 あぁそれと、と不良は口の端を釣り上げて嗤う。持っているカードの中の笑顔とはかけ離れた、歪み切った嘲笑だった。

 

「ここら辺のヒーローは今出張(でば)ってるらしいからな、助け求めようったって無駄だぜ……分かったらさっさと財布持ってきやがれよ!」

 

 グッ、と奥歯をかみしめる。不条理な暴力に不平等な言い分。不良に従って新たなカードや金を持ってきたとしても、それも奪われるだけなのは明らかだ。

 しかし今の出久にはやり返す事も言い返す事もできない。個性持ちと無個性。力の差は歴然で、助けも来ない。何一つ、この状況で緑谷出久にできる事は存在しない。

 

「………っ!」

 

 瞳が熱くにじみあがる感覚に目を堅くつぶる。悔しい。悔しくて悔しくて、何より自分が情けなくて仕方がない。

 泣きたくない。泣いてしまえばどんなに楽になるだろうか。それでも泣いてしまったら、涙と一緒に他の物も零れていってしまいそうな気がしてしまうから。

 せめてもの抵抗として、不良のにやけ面から逃げるように顔を背けた。

 

 その先でふと、にじむ視界に不良の持っているカードが映った。ホログラムの背景を背に、最強で勇敢なヒーローが真っ白な歯を見せて出久に笑いかけている。

 

 己の尊敬する男。目指すべき姿。奮い立たせる言葉。

 ――――――憧れているヒーローがそこにいる。

 

 拳を、弱々しく握る。息を、震えながら吸う。潤んだ瞳を、汚れた袖で拭う。

 不良には勝てない。個性も力も足りない自分だけでは、無様にやられるだけだ。

 でも、言いなりになんかなりたくない。個性で、力で負けたとしても、心まで負けたくない。例えカードを失う事になっても、カードの中の男にこれ以上情けない惨めな姿を見せたくない。

 

 ――――――黙って差し出すぐらいなら、奪われた方がずっとマシだ!

 

 一万円札を握り締め、滲んだ目で不良を見据える。イラついた表情の不良が、今にも殴りかかってきそうな勢いで睨みつけてくる。

 深呼吸をして、いざ負け戦の火ぶたを切ろうとして――――――

 

 

 

「――――――待ちな!」

 

 

 

「……っ、だ、誰だ!?」

 

 突然響き渡った声に、振り上げた怪腕は動きを止め、不良は周囲を見渡す。

 しかし周囲に人影は無く、路地裏には不良と出久、二人の影のみ。

 

「何を勘違いしてやがる……ここだぜ!」

 

「ヒョ?」

 

 再度、声が響く。力強く、腹から出しているだろう声が、二人の頭上から響き渡る。

 見上げたのは二人同時だった。出久と不良は頭上を見上げ――――ビルの窓枠に腰掛ける人影を捉えた。廃ビルの隙間から注ぐ太陽が逆光となり、黒いシルエットしか分からないが、その声からして男なのだろう。路地裏に逆巻くビル風に纏った外套をはためかせ、腕を組み片足を窓枠に掛けている。

 その圧倒的な存在感に、二人はある言葉が脳裏を過ぎる。

 

「てっ……テメエ、まさか…っ!!」

 

 焦りに満ちた不良の声。その姿はまるで追い詰められた敵のようだ。いいや、まさに敵そのものなのだろう。何故なら、彼と対峙し、恐れているのだから。

 頭上の人影が、ゆっくりと片腕を不良へと向け指を指す。

 光を背負い、その身に力を漲らせ、悪を見下ろし強く笑う。

 

 

 そう、その姿はまさにヒーロー――――――

 

 

 

 

 

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

 

 

 

「違った! デュエリストだった!!」

 

 思わず、白目を剥いて全力叫んでしまった。おまけに思い切りズッコケた。いや、仕方がないだろう。そりゃ叫ぶ。誰だって叫ぶしズッコケるだろうと出久は思った。そしてそれは不良も同じだったらしい。

 

「なんでだよ! なんでデュエリストがいんだよ!?」

 

「ふっ……だが俺はレアだぜ?」

 

「知るかぁ!!」

 

 不良の罵声をその身に受けつつ、少年は……決闘者(デュエリスト)は不敵に笑いながら大地へと降り立った――――ビルの壁に備え付けられた梯子を使って。

 そして地面に降りた決闘者は音を立てて歩きだし、二人に向けて足を進める。異常な、否、異様な雰囲気に気圧され不良は後ずさりをする。出久もそうしたかったが、残念な事に不良から受けたダメージが大きく、尻を数センチ引きずるだけにとどまった。

 

 そんな二人の様子に気が付かないのか、決闘者は歩みを進め、やがて二人の間、いや、出久に背を向けて、不良の前に立ちふさがった。

 そこで初めて出久は決闘者の姿をはっきりと見た。左腕に板状の機械――――デュエルディスクを付け、腰ベルトに二つのカードの束をホルスターに収まったピストルの様に備えている。何とも言い難い特徴的な髪型の少年が、学生服をマントの様にはためかせて、出久を守るかように立っていた。

 

「話は聞かせてもらったぜ……強引に他人のカードを奪うなんて……デュエリストの風上にも置けないぜ!!」

 

「誰がデュエリストだ!! オレのルールに口出しするんじゃねえ!」

 

「暴力に任せたアンティなんてWikiにも俺ルールにも存在しないぜ! この蟲野郎!」

 

 

「なぁに、これぇ……?」

 

 噛み合ってそうで噛み合ってない言葉の応酬。目の前で繰り広げられるそれを見て、出久はポツリと呟くほか無かった。

 

「あ゛あ゛あぁぁぁ!! うぜぇぇ!!」

 

 ――――先に業を煮やしたのは、やはり不良の方だった。唾を撒き散らしながら不良は地面を蹴り付け、決闘者を睨み付ける。焼け付くような視線を受けてなお、決闘者は余裕を崩さない。むしろその殺意が心地良いとでも言うように、首を鳴らして佇んでいる。

 涼しげな態度。しかし、よく見ればその瞳に闘志を燃やしている事が分かるだろう。

 

「勝負だコラァ! 邪魔するっつんならテメーもオレの個性でぶちのめしてやんだよぉ!!」

 

「――――良いだろう。その宣戦布告、受けて立つぜ」

 

 そう言って決闘者はベルトから1つの山札を抜き取り、左腕のデュエルディスクにセットした。ディスクに光が点り、戦いの時を今か今かと待ち望んでいる。

 もはや言葉で語る事は無い。ここから先は力を以て語る時間。

 そして遂に、決闘者の一言で戦いの火ぶたが切って落とされた――――――

 

 

 

決闘開始(デュエルスタート)

 

 

 

「先攻は俺がもらうぜ モンスターを裏側守備表示でセット! 更にカードを一枚伏せてターンエンドだ!」

 

 先手――――否、先攻を取ったのは決闘者。開戦の勢いそのままディスクのデッキからカードを五枚引き抜く。そしてそれらを一瞥し、凄まじい速さでセットしていく。

 刹那、決闘者の前方の空間が瞬き、二枚の伏せられたカードの(ヴィジョン)が浮かび上がった。

 

「これは……『個性』の力!?」

 

 目の前の光景に出久が驚愕する。決闘者が手にしているカードと同じ物が、何倍ものサイズとなって出現したのだ。あきらかな超常現象、ならば個性の力と判断するのは間違っていないだろう。

 幻、いや立体映像の個性だろうか? だが、出久達の眼前に浮かび上がった巨大なカードは、ただの幻影とは言えない、言葉にできない凄みを放っていた。

 

「なんだか分かんねえが、オレの個性の前じゃザコなんだよ! 出ろぉ、爆弾大蜘蛛!!」

 

 対して不良は、怒声を上げて再度地面を蹴りつける。それを合図に、蹴りつけたコンクリートに罅が入る。罅はドンドン勢いを増して広がり、地面は膨らみ盛り上がっていく。

 ナニカが、地面の中で蠢いている。そう理解するのに時間は要らなかった。

 

 次の瞬間、コンクリートが音を立てて吹き出し、地面に空いた穴からその巨大なナニカが這い出してきた。

 

 

『Pigi! Piguiiiiiiiiiii!!』

 

 

 蜘蛛だ。巨大な、出久の身長よりもはるかに巨大な大蜘蛛がその身をさらけ出したのだ。風船のように膨らんだ胴体、身の丈ほどの六本の鋭い鉤爪。三つの目の下には涎を滴らせた口が牙を並べて鈍く光っている。

 

「ひぃいいいいいいい!?」

 

「はっはぁあ! 見たか! コイツが俺の個性、爆弾大蜘蛛よぉ!!」

 

 不良の個性、『爆弾大蜘蛛』。手の平から卵を作り出し、孵化した蜘蛛を操作できる個性。生み出された蜘蛛は一週間ほどで人間大に成長し、そして不良以外が触れると一定確率で体の一部を爆発させる。その爆発は強力で、誤って近づきすぎると主人である不良までも巻き込んでしまうほどだ。最大で三匹同時に操作する事ができるが、今は一匹しか育てていない。余りに凶暴すぎるため、放っておくと仲間同士で殺し合いを始めてしまうからだ。だが、その代わりにこの一匹サイズは最大まで成長している。

 

 ガチガチと鳴らされる牙の音に、出久が悲鳴をあげる。それを聞いて不良は口元を大きく歪ませ溜飲を下げた。そうだ、自分の個性は最強なのだ。そこいらの奴らとは違う、自分こそが特別なのだと眼をギラつかせる。訳の分からない男に調子を崩されたが、いつも通り、いやいつも以上に大蜘蛛で弄らせてもらおう。

 そうほくそ笑みながら不良は、大蜘蛛の姿に怯えているだろう決闘者へと視線を向け、

 

 

「ほう、〝地雷蜘蛛〟を召喚する個性……よくその程度の個性で虚勢が張れたものだ……」

 

 

「地雷蜘蛛じゃねえ、爆弾大蜘蛛だ! 勝手に名前変えるな!!」

 

 全くペースを崩していない姿に怒鳴り声を上げる。

 訂正の声もどこ吹く風、決闘者はハァンと鼻で笑いながら罵声に嘲笑(トラッシュトーク)を持って返した。

 

「そんな個性、俺は三十六人知ってるよ……」

 

 ――――――絶対に嘘だ。

 

 出久は半眼でそう思いながらも改めて決闘者を見る。

 自分と同年代、身長は頭一つ分高いくらいだが、大きく逆立った頭髪が彼をより大きく見せる。なにより、眼前の大蜘蛛と対峙して、冷や汗の一つも恐れていない立ち姿が、彼の存在を強大に感じさせる。威風堂々、その言葉を体現した背を目にして、出久は体の震えが止まるのを感じた。

 彼は、自分の事をデュエリストと言った。けれど、まるでその立ち姿は、そう――――――

 

 出久の考えをよそに、決闘者は大きく目を見開き、右手を前に突き出して叫ぶ。

 

「相手がモンスターを召喚した瞬間、リバースカードオープン! カウンタートラップ、神の宣告!!」

 

 叫びに応じるかのように、伏せられたカードの一枚が見えない手に操られるかのように立ち上がる。描かれているのは女性二人を引き連れた、白い髭を生やした老人。

 次の瞬間、いきなりカードが光り輝きだした。閃光に目が眩み、思わず出久は目を閉じてしまった。数秒後、目を開いた出久の前に広がっていたのは、

 

 

『………Fuuuum』

 

 

 中空に現れた、カードに描かれた通りの老人の姿だった。

 

 『なっ……!!』

 

 幾度目かの驚愕をする不良と出久をよそに、老人は大蜘蛛に向けて手を掲げる。

 手の平に瞬きが生まれ渦巻く。次第に音を立てて勢いを増し、やがて暴れ狂う雷の球体へと変貌した。雷球が今にも破裂しそうになった瞬間、遂に轟音を翼に、手の平から光の槍となって大蜘蛛へと解き放たれた。

 

 

『Pigi……Gyaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

 

 なす術もなく雷の槍に貫かれた大蜘蛛は身体に風穴を開け、あっという間に内側から弾け飛ぶように爆発した。

 そして――――――

 

 

「グワァアアアアア!!」

 

 

 決闘者は暴風に吹き飛ばされたかのように、何故かボロボロになった。

 

「えぇえええええ!! なんで!?」

 

 もう何度目か分からない驚愕を迎え、出久は全力で叫んだ。いや本当に訳が分からない。大蜘蛛を瞬殺したと思ったら、何故攻撃を行った決闘者が倒れ伏しているのか。

 

「ぐぅ……俺はライフを半分支払う代わりに、貴様の召喚を無効化し、そのモンスターを破壊する……地雷蜘蛛、爆殺!!」

 

 地面に膝を突き口から血を流しながらも、自信に満ち溢れた表情で叫ぶ。反対に不良は、自慢の個性を無力化された為か、こめかみに青筋を浮かばせ怒鳴りだした。

 

「ふざけやがって……ガキがぁ! 直接ぶん殴ってやらぁ!」

 

 地を蹴って不良は駆け出し、腕を大きく振りかぶって決闘者に殴りかかる。

 個性を使った攻撃には及ばずとも、喧嘩で鍛えたであろう拳。それを今のダメージを受けた決闘者が受けてしまえば、昏倒必死、ひとたまりもない。

 

 だが、不敵な笑みが消える事はない。

 

「そのダイレクトアタックは通らないぜ!」

 

 声に応じ、カード――――最初に伏せたカードが、まるで決闘者を守るかのように不良の前に立ちふさがる。

 所詮映像! そう判断した不良はしかし、苛立ち混じりに目の前のカードを殴りつけながら走り抜けようとし――――――

 

 

 次の瞬間、ゴキャァと、鈍く何かが砕ける音が響いた。

 

「――――グ、ギィ、ガァアア!! 手が! 俺の手がぁ!!」

 

 地べたにのた打ち回る不良の拳は、指があちらこちらに折れ曲がり、真っ赤に血に染まっている。それを見下ろすかのように、先程までカードが伏せられていた場所に鋼の筋肉を纏った戦士が巨大な盾を構えていた。

 

「俺が伏せていたモンスターはビッグ・シールド・ガードナー! 効果発動、このカードは攻撃された場合、ダメージステップ終了時に攻撃表示になる」

 

 大盾を構えた戦士、ビッグ・シールド・ガードナーは立ち上がり、防御を解いて構える。その姿は守りに専念した時よりも劣るように感じられるが、しかし表情は未だ闘志に満ち溢れていた。

 それに励まされる様に決闘者は立ち上がり、うめき声を上げる不良を真っ直ぐに見据える。

 

「……ハッキリ言うぜ! お前弱いだろ!」

 

 ボロボロ(ライフ半分)になりながらも、モンスターと共に仁王立つ決闘者。

 個性によるモンスターの召喚を無効化されたどころか、手痛い反撃を受け悶える不良。

 

 どちらが優勢か、一目瞭然だった。

 

「はぁ、はぁ、舐めやがって、クソが舐めやがってよぉ!!」

 

 声を上げてのた打ち回ったおかげか、落ち着きを取り戻した不良は、しかし烈火の如き憤怒を抱えて決闘者を睨みつける。怒りのあまり目は充血し口の端から泡を飛ばしている。

 

「テメェ……オレをブチギレさせやがったな! お終いだ、お終いだぞテメ「ターンエンドか、なら俺のターンだ! ドロー!」――――聞けよぉ!」

 

 不良の言葉を遮り、デッキからカードを引く。そして手中のカード見て、決闘者はニヤリと笑う。望んだカードを引き当てた表情、勝利を確信した笑みだ。

 

「このターンで終わらせる! 俺はマンモスの墓場を攻撃表示で召喚!」

 

 フィールドに光が舞い、新たなモンスターが召喚される。今度は巨大なキバを持ったマンモスの骸骨が、けたたましい唸り声を上げて現れた。

 

「そしていくぜ! 魔法カード二重召喚を発動! 場の二体のモンスターをリリース!」

 

二重召喚(デュアルサモン)

通常魔法

①:このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

 その言葉を合図に、場の二体のモンスターが光となって砕け散る。目を剥く出久を尻目に、決闘者は手札から一枚のカードを抜き出し、渾身の思いを込めてデュエルディスクに叩きつけた。

 二体のモンスターの残骸の光が勢いよく渦を巻いていき、やがて勢いを増し、竜巻となって路地裏に暴風を吐き出す。

 

「り、立体映像なのに……風が!?」

 

「これがフィールの力! 現れろダイヤモンド・ドラゴン!!」

 

 竜巻が、爆発する。光の風を弾き飛ばした後に残っていたのは、イッカクの様な長大な角を持つ全身が金剛石で覆われたドラゴンであった。

 

 

『DiGyaaaaaaaaaaaaaa!!!』

 

 

「な、っな、なななっ……!!?」

 

 ドラゴンが吠え、空間が震える。竜の息吹が路地裏のゴミを吹き飛ばし、踏みしめたコンクリートに亀裂が走る。この段階になって、ようやく出久は気が付き理解した。目の前のモンスターはただの映像ではない。

 否、映像が実体を持っている事を!!

 

「こ、これが彼の……カードの力を現実にする個性!!」

 

 その声を背に、決闘者はトドメとばかりに新たに一枚のカードを繰り出す。

 

「更に! 手札から装備魔法、巨大化発動! 自分のライフが相手より少ない時、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる!!」

 

 石で出来た魔方陣が描かれたカードが出現する。一瞬後、ドラゴンの足元に同様の魔方陣が現れ、間髪置かず黒い光がドラゴンを照らし――――――

 

 

『DiGuragyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan!!』

 

「ダイヤモンド・ドラゴンの攻撃力は、4200となる!」

 

 

 大きく、大きく、見上げるほどに大きく。ドラゴンは路地裏の壁を崩す程に巨大化した。

 

 出久はもはや言葉も出ない。不良も同じなのだろう、口を大きく開けながら、眼前に立つ巨大な暴力を呆然と見上げている。正気を保っているのはただ一人、金剛竜を従えている決闘者だけだ。

 そして今、万感の思いを込めた号令を掛ける!

 

 

「行け、ダイヤモンド・ドラゴン! 相手プレイヤーにダイレクトアタック!! ダイヤモンドブレス!!!」

 

 咆哮一閃。巨竜の口から嘶きと共に金剛石の嵐が、不良に向けて解き放たれた。

 

 

「ヒ、ギ、ギャィヤアアアアアア!!!」

 

 

 個性を封じられた、否、個性を使えたとしても対抗しきれない力の差。哀れ不良はなす術もなく竜の息吹の直撃を受ける他なかった。砕かれたコンクリートの粉塵が舞いあがる。暫くして煙が晴れたそこには、ボロ屑を纏った不良が白目を剥いて倒れ伏していた。

 

 

 

決闘終了(フィニッシュ)

 

 

 誰の目から見ても、決闘者の勝利は明らかであった。

 ふぅ、と息を吐き出すと、それが合図だったかのように、ドラゴンもカードもまるで嘘のように光の粒となって消え去った。決闘者はデッキを仕舞いながら不良へと近づき、その近くに落ちていた一枚のカードを拾い上げる。

 

「承諾無しのアンティはご法度なんだが……奪ったカードなら問題ないな。なぁ、こいつ、オタクのなんだろ?」

 

「え……あ、うん、そうなんだ! あ……ありがとう?」

 

 近づいてきた決闘者からカードを手渡され、出久は戸惑いながらも大事そうに受け取った。その姿を見て、決闘者は小さく笑いながら再度出久に話しかけた。

 

「ヒーローコレクションか、俺の範疇からは外れてるが良い趣味だ。しかも最高レア……もう手放すんじゃ――――――」

 

 

「ああ、うん、そうだよね。もう絶対に手放したりなんかしないよ。やっぱりあんな人目のある所で不注意に見惚れていちゃ駄目だったんだ。オールマイトのカードはどれもSSRばかり、オークションにだけは数十万、いやいや物によっては数百万、マニアにとっては数千万の価値があるんだ。さっきの不良は十万って言ってたけどそれは流石に低く見過ぎているとしか言いようがない。いや、それは僕も同じ、数千万を通りで手にしたまま気を抜いていたんだ。本当に不注意だった。いやだけど流石オールマイトのカード、価値以上に何かこうこみ上げて来るものが――――――」

 

 

 こういう、自分の興味がある事になると早口になって話が長くなるのがオタクの悪い所なのだが、自分の世界に入り込んでしまった出久は一切気が付かず、延々と言葉のソリティアを続けている。いきなり始まった怒涛の解説に決闘者は思わず目を丸くするが、やがて口の端を歪め、愉快そうに喉を鳴らして笑い出した。

 

「クククッ……オイオイ、そんなにカードが好きなのか」

 

 声に出して笑われた事で、ようやく出久は自分が熱中し過ぎていた事に気が付き、赤面した。慌てて立ち上がり、頭をペコペコと何度も下げて礼を言った。

 

「あ、ああ、ごめんお礼も言わずに! あの、ありがとう、カードを取り返してくれて……凄い個性?だったね」

 

「個性よりプレイングと引きを褒めて欲しいが、まあ良い。そんな大した事してないさ、ただ俺がやりたい事をやりたい風にやった。それだけだぜ」

 

 そう言いながらも、決闘者は鼻の下を指で擦り照れくさそうに笑う。本当に気にしてないのだろう。ボロボロの服装とは反対に、表情は清々しい笑顔で輝いて見えた。

 それを見て出久は安心すると同時に、胸の奥がざわめいてしまうのを感じた。

 

「それでも……助けてくれてありがとう。僕なんかじゃあ……君が来てくれなきゃどうにもできなかったし、結局あのままカードもお金も全部奪われてただろうし……無個性でも、せめてカードだけはって思ってたんだけど全然守れなくて、助けを待つだけで……ははっ、駄目だな、こんなんじゃヒーローになれない――――」

 

 

 

「――――だが、お前は降参(サレンダー)しなかった」

 

 

 

 力強く、熱さを持った言葉が、胸に届いた。

 

 

「あの時、お前の目は死んでなかった。手札が無くて、場が死んでいても、心が生きていた。生きて、耐えて、諦めずにドローし続けたから、俺という逆転のカードを引き当てる事ができた。お前自身が、お前の折れないハートが、明日への道を切り開いたんだ」

 

 

 届いた言葉が種火となって心に火を点ける。広がった熱が胸から零れ、身体全体を駆け巡っていく。寒くもないのに体が震え、傷ついた四肢から痛みが消えた。

 紡がれる言葉が、心臓を何度も何度も殴りつけ、更なる想いを呼び覚ます。

 

 

「他の誰でもない、初心者で"LP100(がけっぷち)"のお前だったから!!! 俺は動かされた!!」

 

 

 また、目の奥が熱くなる。今度は暴力ではなく、強い想いが涙腺を震わせ、やがて大きな雫となってあふれ出す。ああ、焼けるような涙が頬を流れる。視界は歪み、だけどしっかりと彼の表情が見える。真っ直ぐな瞳と、視線が交錯する。

 

 

「トップデュエリストは構築済みの(ストラクチャー)デッキを使っている時から伝説を残している……そいつらの多くが話をこう結ぶ!!

 

 考えるより先に(カード)を手にしていた、と!!

 

 お前もそうだったんだろう!?」

 

 

 目指している夢、捨てられない願望。そうだ、いつだってそうだった。初めてオールマイトを見た時から追い続けていた夢がそこにあった。いつも、馬鹿にされていた。諦める事は簡単で、追うのを止めれば楽になれた。嗤われても、難しくとも、苦しくても、それでもこの夢だけは捨てる事はできなかった――――

 

 心の片隅で夢を、憧れを諦めていた自分が消える。

 

 ――――あふれる感情がとまらない。

 

 憧れが、願いが、夢が、息を吹き返し、今、叫びとなって吐き出される――――

 

 

 

「僕はっ……僕は、ヒーローに――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は決闘者(デュエリスト)になれる」

 

「いや! 流石にそうはならないけども!!」

 

 

 

 

 

 

 『個性』の歴史……それは遥か昔、中国軽慶市の光る赤子にまでさかのぼるという。

 現代における個性は、資格を持って正義を執行する、或いは暴力として犯罪を犯す、世界の均衡を決める超常の力であった。

 それらはヒーロー、(ヴィラン)と呼ばれた。

 

 

 今、新たなの(パック)を手にし、謎の個性を受け継いだ少年がいた。

 本気(ガチ)と 趣味(ファン)……二つの(デッキ)を持つ少年。

 

 

 

 人は彼を――――――『決闘者(デュエリスト)』と呼んだ。

 

 

 

決闘者:オリジン

 




以上! おしまい! 続きは(多分)無い!

初めて文章を書いたので荒くて済みません。
練習と効果の実験も兼ねた作品でした。気が向いたら続き書くかもです。
読んでくれてありがとうございました。

主人公の髪型を決めよう。

  • ウニ頭
  • ワカメ頭
  • サザエ頭
  • 帽子(コナミ君にならって)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。