俺のデュエルアカデミア   作:タコよっちゃん

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続きました。二話目にして前後編に分けるって何してるんだろう。
なんで入学試験にこんな文字数使ってんだろう。

取り敢えず1-A戦闘訓練までの流れは出来てるんでそこまではやります。
後、多分1.5話なり外伝なりも書きます。禁止制限解除される位の気持ちで待ってね。

今回もなんちゃってデュエルなんであしからず。
つーかデュエリスト一人なんだからなんちゃってデュエルしかできないね。


TURN-2 『なる為の資格:前編』

 ヒーローには資格が必要だ。

 何もそれだけに限った事ではないが。

 

 車の運転、先生、医師や弁護士、インストラクター、調理師、果てはネイリストなどなど、世には多くの資格が溢れている。そしてそれを具現化した物が免許という訳だ。人はその資格を以て職に就き社会の中で様々な事を成す。

 資格がなければ、例え知識や技術を持っていたとしてもそれを振るう事は許されない。世の多くの人は、その者が振るう技で理解するのではなく、資格が記された免許を見る事で、彼の人の技術を、経験を判断する事ができるのだ。

 

 

 ――――資格とは信頼……誰かに信じられているという事だ。

 

 

 信頼。文字通り、信じ頼られる事。

 相手や周囲の人間、世間に対して、自分は十全にその技能を使いこなす事ができる事の証明なのだ、資格とは。完璧でなくても良い。ある程度、最低限、幾分と、要求される基準を超える事で、人々を納得させる。それが信頼、資格という訳だ。

 学び、努力をし、身に付け、経験し、成熟する事で――――求められる信頼に答える事ができて、初めて人は何かになるのだ。

 

 

 重ねて言わせてもらおう。ヒーローには資格が必要だ。

 何もそれだけに限った事ではないが。

 

 

 つまりどういう事かと言うと――――()()()()()()()()()()()も存在するという事だ。

 

 

 さて、それは一体誰が信じているものなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、デュエリストになる為の資格など存在していない。

 カード一枚手にした時、君の目の前にデュエリストへのロードが現れるのだ。

 頑張れ! デュエルまで残り三十九枚だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 常闇(とこやみ)踏陰(ふみかげ)は一歩前へと足を踏み出した。

 それは行動としても、心理的な意味としても。

 

 ヒーローへの登竜門、最高峰の雄英高校ヒーロー科。入学試験実技会場。

 そう、登竜門なのである。

 

 誰もがヒーローになれる訳ではない。

 今ここに居る数百人の試験参加者の内、合格する事ができるのは片手で数えられる程度だろう。否、別会場がある事を考慮すれば、この会場に合格者が出ない事もありうる。

 そして例え合格できたとしても、どれ程の者がヒーローとなって学校の門を出る事ができるのか。挫折による自主退学、不適合判定からの除籍処分、ヒーロー科の苛烈さを揶揄する噂は絶えない。おそらく噂は事実なのだと常闇は思う。

 

 門を潜る事ができるのは一握り、門から羽ばたく事ができるのは一つまみ。されど羽ばたきたった者たちは竜となって最高の栄光を手に入れる事ができるのだ。これを登竜門と言わずして何と言うのか。

 

 つまり、今これから行われる実技試験に合格できなければ、そもそもヒーローになる資格など無かった、という訳だ。

 

「必ず合格する。それが必然だ。そうだろう、〝黒影〟(ダークシャドウ)

 

 常闇はその身に宿る相棒に語りかける。

 その声に応じるように、黒い何か――――影のような生き物が常闇の身体から現れ、素早く腕を一撫ですると文字通り影の様に姿を消した。己が個性の様子に小さく笑みを浮かべながら、常闇は思考にふける。

 

 筆記試験の手応えは、まずまずと言った所だった。学力には自信があったのだが流石は難関校、おそらく及第点を取る事はできたがそれだけでは合格には及ばないだろう。

 

 だが、ヒーロー科の入学試験は、実技こそ本番であると常闇は確信している。

 筆記試験も当然合否に判定に含まれるだろうが、やはりどうしても実技の方が重視される傾向にある。

 状況をいち早く把握するための情報力、あらゆる局面に対応するための機動力、どんな状況でも冷静でいられる判断力、そして純然たる戦闘力。紙のテストでは分からない、市勢の平和を守るためのヒーロー基礎能力が点数となって表れるのだ。

 

 スタートラインに立てるか否かの境界線を踏み越えられるかどうかは、今これから始まる実技試験にかかっている。あと一歩、あと一歩さえ踏み出すせれば、己の夢を始める事ができる。

 そのためにも、この実技試験、決して抜かる事などできやしない。

 

 それは己以外の全員がそうだろう。常闇は視線を気付かれない様に周囲へ巡らせ、そう思考する。

 見渡す限りの人、人、人――――これが全て試験の参加者で競い合うライバルだというのだから恐れ入る。

 

 あからさまに緊張している者は流石にいないが、目を瞑り腕を擦ったり、小さく足踏みをしている者の姿は多々ある。非常時に冷静さを保てるか、これもヒーローを目指す為に必要な要素の一つだ。この百人以上の参加者を出し抜いて合格しなければならないのだ。ある意味ポイント対象である敵ロボよりも厄介と言える。

 ――――なにかしら先んじる物が必要だ。そう思い常闇は鋭い目をさらに細めてる。

 

 事前の説明でもあるように妨害行為は反則事項だが、例えば相手の外見から個性を予想する程度なら何ら問題はない。どんな個性を使うか知っていれば、相手がどんな動きをするか分かる。個性の種類を予測できれば、相手の攻撃に巻き込まれない様に立ち回れる。

 なにより、周囲の参加者の個性を知っていれば、周囲の人間を少しでも理解できれば。

 全く知らない人間に囲まれるのと、少しは知っている人間に囲まれるのでは緊張感は大きく異なるという物だ。

 

「ふん、考える事は同じか」

 

 よくよく辺りを観察すると、常闇と同じく周囲をさり気なく見回している参加者の姿が数人存在していた。やはり、参加者の見極めと個性の推測を行っているのだろう。

 そう言う意味では常闇は有利かもしれない。彼の容姿で最も目立つのは、そのカラスの様な頭。〝黒影〟を体内に収めていれば、周囲の人間はきっと鳥の異形系個性だと勘違いしてくれるだろう。

 

 自身が持つアドバンテージに微かに気を安めながら、常闇は観察を続行する。気の所為かさっきより参加者の様子が分かるようになった気がした。

 

 動きやすい服装をしている者、緊張で顔を青くしている者、己の個性を生かせる恰好をしている者、昆虫をイメージしたスーツを着ている者、ブツブツと自分を励ます言葉を繰り返している者、忍者の服装で列を成している者、露出の多い女性に目を奪われているチビ、昆虫に似た装甲を身に付けている者、魔法使いの姿をしている者、異形化の個性で半裸の者、昆虫の――――――

 

 ……気のせいだろうか、やたら似たような、奇妙な格好……コスチューム?をしている者が目に付く様な気がする。個性の関係だろうか、特に昆虫をモチーフにしたスーツ姿の人影がやけに多いように見える。いや、全体の参加者数と比べるとそうでもないのだが、何故か集団で固まっているために余計目を引いているように思える。

 

 加えて集団内で談笑や何か――――名刺だろうか、カード状のものを交換している姿が見受けられる。トンボの羽が付いた赤いスーツの男が袖が破れたジャケットを着た男と握手し、とんがり帽子をかぶった白服の魔法少女が歌舞伎の隈取をした和服の大男と真剣に交渉をしていたり……

 

「仲間……いや、顔見知りか? いや、そもそも参戦者なのか?」

 

 どう見ても、これからヒーロー科の席を賭けて競い合うライバル同士の姿には見えない。というかヒーローの姿に見えない。ある意味ヒーローっぽい姿をしているが何か違う気がする。

 会場の振り分けはランダムなので、仲間同士が同じ組み合わせになる事は少ないはずなのだか……。

 まぁ、会場が多いとは言っても両手で数えられる程度。運が良ければ同じ会場になる事もある、そう結論を出して常闇は、軽く頭を振り集団に背を向け歩き出した。

 

 ――――先の集団から「シロッコだ」「いやダマスカスだろ?」「コガラシだって」と訳の分からない言葉を背に受けながら。

 

「……冷静になれ〝黒影〟。飛んだ邪魔が入ったが、俺たちの戦いはこれからだ」

 

 不味い、折角の良い調子だったのに乱れてしまった。落ち着け、姿恰好はトンチキだがあくまで試験参加者のはずだ。緊張感の欠片もない気楽な様子からして記念受験の可能性も高い。

 ならば自分のやる事は変わりない。どうせ試験に合格すれば縁の無くなる奴らだ。

 そう常闇は考えながら、早歩きでコスチューム軍団から距離を取って、

 

 

 

 

「うーん、BF(ブラックフェザー)にサイバー流、コレで……いや、両方ともガチデッキっていうのもな……だが甲虫装機と忍はコスプレ組と被っちゃうし、E・HERO……安直過ぎるか? しかし一応大事な試験だしガチ……うーん、悩むぜ」

 

 

 

 

 ――――もっと奇怪な人間を、視界に収めてしまった。

 

 

 その者は芝生の上に座り込んでいた頭を悩ませていた。

 その男は目の前にレジャーシートを敷いてその上に大量のカードを並べていた。

 その少年は何枚ものカードを見比べながら悩ましげに正座をしていた。

 

 ――――決闘者(デュエリスト)が試験開始直前にデッキを作る姿があった。

 

「………」

 

 常闇は懐から受験者票を取り出し、雄英高校ヒーロー科入学試験と記載されているのを確認した。決してデュエルキングダムとかバトルシティ予選などと書かれてはいない、いないのだ。

 再度目の前を見る。決闘者がコンビニ袋から取り出したカードパックを嬉々として開封いるのが見えた。数度、決闘者と受験者票の間で視線を往復させて変化の無い事から、目の前の光景が現実である事を知った。

 

 何も言わず、天を仰ぎみる。〝黒影〟がナニコレェと言っているが、そう声に出して言いたくなる程の光景だった。カードを汚さないためにしっかりシートを敷いているが、もっと他に気を使う所はなかったのか。

 周囲に意識を向けると参加者たちがひそひそと何してんだあいつとか、誰か話しかけて来いよとか、嫌だよお前行けよとか。それはもう散々な言われようだった。そりゃ言いたくもなる。

 

 会場をカードショップか公園のベンチにしか思ってなさそうな態度。これだけ注目を集めても動じない神経の太さ。

 圧倒的近寄りがたさを持つ故に注目を集めるその姿に周囲の人間、そして常闇は呆然として足を止めてしまった。まるで動かなければこのまま何事も起こらないとでも言うように。

 

 

 しかしながら、世の中には行動しないからこそぶち当たる物事もあるのである。罠カードを警戒しすぎて上級モンスターを召喚されワンショットキルされたり、除去カード出し惜しみして奈落で消されるなどなど……。

 

 

「……うん?」

 

「あっ」『アッ』

 

 

 今回落とし穴に堕ちたのは常闇踏陰だった。それだけの事である。

 

 

 

 

「よしっ、先陣はBFで行くぜ!」

 

「おい、貴様俺の何を見て何を決めた」

 

 

 そして落ちた穴が粘着落とし穴だった。ただそれだけの事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし今日は絶好の試験日和だぜ。そう思わないか、暁のシロッコ君」

 

「誰がシロッコかっ……常闇踏陰だ」

 

「ほう、BF-常闇のフミカゲか。格好良いじゃないか」

 

「どんな耳をしている! ……その呼び名は確かに格好良いが」

 

 堕天の黒翼(ブラックフェザー)なる響きに少し心奪われながらも、常闇はウンザリとした表情を浮かべてもう何度目かの溜息を吐いた。

 

 正面に立っていたのが不運、目と目が合ったのが運の尽き。

 謎の一言に反応してしまった常闇は周囲の参加者からありがたくない無言の賛辞を浴びつつ、決闘者とのファーストコンタクトを試みていた。

 じろりと視線を背後にやれば、一斉に視線を逸らし口笛を吹く参加者たちがいる。

 この恨みは試験で返してやると心中で呪い、常闇はデッキを弄り続ける決闘者との対話を続けた。

 

「ちっ……名前はともかく貴様は何をやっている。試験前にカードゲームなど……ずいぶん余裕な事だ」

 

「何言ってやがる、試験中もやるに決まってるだろ」

 

「貴様本当に何しに来たのだ!?」

 

 二人を取り囲む参加者たちの内心を代弁した叫びに、決闘者は半分冗談だと手を振りながら言葉を続ける。

 

「会場で相棒と合流したんだが、その後会場が分かれちまってな。一人でジッとしてるのもなんだし、説明に出た試験内容に合わせてデッキ調整してたんだよ……相棒、上手くやってるかな」

 

 そう言って遠くを見つめる決闘者。常闇は、コイツの相棒をやっている奴がいるのか……と戦慄する。一体どんな人間だと冷や汗をかく常闇に向かって決闘者はニカッと笑って続けた。

 

 

「緑谷出久って奴なんだけどな」

 

 

 ――――――相棒じゃなーーーい!!

 

 

 同時刻、遠く別の会場で、緑谷出久の絶叫が響き渡ったのは、今は全く関係の無い話。

 

「緑谷出久か……覚えておこう」

 

 そして絶対関わらないでおこう。そう心に決めた常闇だった。

 

「……フンッ、そろそろ試験開始時刻だ。カード遊びも大概にするんだな」

 

 試験会場を取り囲む壁、そこに設置された時計を一瞥し、常闇は会話を切り上げる。

 もう十分だろう、これ以上は限界だ。何が悲しくて試験開始前の大事な時間をこんな風に消費しなければならないのか。

 この男が極めてマイペースな変人――――本人曰くデュエリストである事は身をもって知った。個性が分からない以上実力の程は分からないが、それを含めても脅威だとは考えられなかった。

 

 周囲の参加者たちも、いつの間にか決闘者への興味を無くし……た訳ではないが少なくとも警戒するに及ばない間抜けな存在だと認識したようで散り散りに離れて行く。中にはラッキーだとあからさまに口に出して笑う者もいた。

 

 当然、その笑いは決闘者の耳にも届いていたが、全く気にした様子を見せずにデッキのカードを一枚ずつ確認しながら返答した。

 

「俺はテスト開始直前まで教科書読む派、体育前はしっかり柔軟するタイプ、そして決闘用意(デュエルスタンバイ)はサイドデッキの一枚まで徹底的にチェックする男だ。それに試験に持ち込みはオーケーなんだろ? デュエルが始まる前から、既に勝負は始まってるぜ」

 

 そう言い切ると同時、決闘者は最後の一枚を確認し終え、よしっとデッキを指で叩いた。

 それを横目に常闇は最後の溜息を吐き、決闘者に背を向け歩き出した。

 

 結局よく分からない男だった、それが常闇の出した結論だ。大物なのか馬鹿なのか、どちらでも構わない。試験さえ始まれば、そして試験が終わればもう二度と会う事も無いだろう。

 そう心中で裁定を出し、常闇は背後の決闘者に向けて吐き出すように言った。

 

「先程、貴様は半分冗談と答えたが……例え半分でもこの登竜門たる試験に全力で挑まず冗談交じりに参戦する者に――――大事な試験にゲーム感覚で挑むような者に、ヒーローの資格は無い」

 

「……確かに今の俺にはヒーローの資格は無いのかもしれない」

 

 間を空けず返って来た声に思わず足が止まる。

 自身の無い言葉、だがどうしてか、弱音を吐いた声には聞こえなかった。

 

 デュエリストの資格はあってもな、と決闘者は続け手に持った二つのデッキの内一つを腰ベルトに付いた専用のホルスターにセットする。パチリと音を立ててホルスターの口が閉じたのを確認した後、少年は真っ直ぐに常闇を見据える。

 

「――――だが、ヒーローになる為の資格は持っているつもりだぜ」

 

 そして、不敵に笑った。

 自身に溢れ、瞳は輝き、影一つ無い、心を震わす力ある笑みだった。

 

「そいつは受験票でも経歴でも個性でもない、誰でも手に入れる事ができる唯一つの事。ヒーローになる為に必要な資格を持って俺は此処に居る」

 

 笑みだけではない。言葉に芯が通り、厚みが加わる。足は強く地面を踏みしめ、背筋は真っ直ぐ伸びている。表情、声、身体から強い力が吹き出て、見えない闘志が決闘者の姿とオーバーラップするのが分かる。

 そのまま決闘者は足元に置いてある機械――――デュエルデスクを拾い上げ左腕に装着した。右手に持っていたデッキをセットすると鋭い電子音が鳴り、呼応してディスクが機械音を立てて変形する。

 やがてガチンッとロックを固定する音が変形の完了を告げた時、

 

「――――決闘用意完了(デュエルスタンバイ オーケー)、いつでも行けるぜ」

 

 其処には一人の戦士が立っていた。

 まるで人が変わったかのような決闘者に常闇をゴクリと喉を鳴らす。

 何も変わっていない。運動に向いてなさそうな学生服も、足元に散らばったカードもそのままのただのデュエリストだ。ただ真剣な顔を作って恰好良さそうな台詞とポーズを取っただけだ。

 なのに、何故ここまで変わる?

 

「……なる為の資格、だと? それは――――――」

 

 

 

 

 

 

 

『レディィスアーンドゥジェントルメェェン!!』

 

 

 

 

 耳をつんざくような絶叫(シャウト)が会場を揺らした。

 

『ヘイヘイヘイ! 待たせたな、デュ……ヒーロー希望のひよっ子どもォ! Fooo!!』

 

 聞き覚えしかない声が鼓膜を殴りつける。先の試験説明を行った雄英教師、プレゼント・マイクその人の声だ。会場に備え付けられたスピーカーからパワーボイスが掃射され、結構な数の参加者が耳を手で塞いだ。

 

「……っ、何でもない。精々無様を晒さぬようにする事だ」

 

 舌打ちをして吐き出す直前の言葉を飲み込み、常闇は再度決闘者に背を向け歩を進めた。馴れ合いは終わった。戦いの時が訪れる。

 

「そうか……お互い頑張ろうぜ、常闇君」

 

 決闘者は少しだけ目を閉じて、離れ行くライバルの背に向けて告げた。

 そうこうしている間に、プレゼント・マイクのアナウンスは進んでゆく。

 

『戦いの舞台はこの演習場全域! これより――――この会場はバトル・エリアと化す!』

 

 参加者たちの視線が一斉に会場のゲートへ向く。試験内容(ルール)は既に説明された通り、エリア内の敵ロボを倒しポイントを獲得するというものだ。誰かの唾を飲み込む音がいやに大きく耳に届いた。

 

『ここから先、勝敗を分かつのは、己の実力のみだ! 連携! コンビ―ネーション! 仲間! 友情! どれもこれも大事なモンだが、そいつは合格してからの話だ今は足元に置いとけ! それが嫌なら力でエゴを押し通せ!』

 

「ヘッ! 上等だ、臆病者はどいてた方がいいぜ!」

 

「今日この演習場は戦場と化すんだからよ!」

 

 幾人かの猛者がひび割れた絶叫に負けぬよう大声で叫び返す。他の参加者も声に出してこそいないが、拳を強く握り目を見開いている。常闇もその内の一人だ。

 会場周囲の空気が気炎で熱くボルテージが上がってゆく。ある者は乾いた唇を舐め、またある者は額の汗をぬぐった。横目に見える決闘者もいそいそと広げていたカードを片付けている。

 

『オーケイオーケイ、今回のリスナー諸君の元気は良いようだ……ではここで俺から一つ伝えたい事がある! 聞き逃すなよベイベー!!』

 

 参加者の視線がスピーカーに集中する。ボリューム全開、トークは途切れず否が応でも参加者たちの心臓を震わせ、鼓動を早めていく。

 ついに開幕のベルが鳴らされるのだ。空気が引き絞られた弦の様に張り詰め破裂寸前、今か今かと響き渡るであろう絶叫に身構えて――――――

 

 

 

 

『はい、スタート』

 

 

 

 

 だから、いきなり普通の声でそう言われて反応できなくても仕方がないだろう。

 

『……ん?』

 

 いきなり目の前にポンと置かれた一言に、参加者たちの思考に空白が生まれた。

 思考が止まったのが一秒。何が起こったのか把握したのが一秒。発言の意味を理解したのが一秒。

 

『……!?!?!?』

 

 そして、リアクションを起こすのに一秒かかった。

 

『どうした? フェイズ移行にカウントなんざねぇんだよ!! タイミングを逃した奴が悪い! 走れ走れ、運命のダイスロールは始まってんぞぉ!?』

 

 スタート、試験が開始した事を理解した頭が一気に冷え、次いで急激に沸騰し始めた。どうする、どうする、パニックになりそうな思考を何とか押さえつける。先程まで絶好調だったギアはローまで下がり、必死にエンジンをかけ直そうと高速で回転し始めた。

 そうだ、ともかく走り出さねば始まらない。そう混乱する頭で参加者たちは一斉に会場の入口へと身体を向け――――――

 

 

 

 

 

「――――全速前進だ!!」

 

 

 

 

 

 決闘者が一人、集団を抜けてスタコラサッサとゲートをくぐり抜けているを目にした。

 

『――――なぁっ!?』

 

 驚愕する常闇たちを尻目に、決闘者は試験会場にゲートへと突撃していく。いや、決闘者だけではない。その後ろを集団が――――例のコスプレ集団がシュタタタと音を立てて追随しているではないか。

 

 

「先攻はこの俺様が貰うぜ!」「いや某の槍が頂く!」「ランニングデュエル! アクセラレイション!!」「私も風になってみせる!!」「半端な気持ちで入ってくるなよ……ヒーローの世界によぉ!!」

 

 

 やんややんやと声を上げ、決闘者とコスプレ集団は土煙を巻き上げながら演習場の入り口に踏み込んでいく。

 

「……っ!! 俺たちも行くぞ、〝黒影〟!!」

 

『デュエ!!』

 

 呆気に取られていたのは一瞬だった。すぐさま気を取り直し相棒へと声をかける。相棒――――〝黒影〟が常闇の身体から現れ、鋭利な爪を携えた腕を広げる。戦闘準備は既に整っている。鋭く息を吸って腹に力を入れ、常闇は疾風の如く駆けだした。

 同時、周囲の参加者も怒涛の勢いでゲートへと殺到する。

 

 かくして、ヒーロになる為の資格を奪い合う戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、まだ戦火は起こっていない!」

 

 常闇たちがゲートをくぐり抜けた時、入り口付近にロボは配置されていなかったのかまだ戦闘は起こっていなかった。コスプレ集団も入り口付近からそう離れてない距離で周囲を窺っている。

 

 そもそも先手を取られたといってもそれほど大きな時間ではない。十分取り返せる。いや、この場で追いついたも同然。

 後続の参加者たちは急いで辺りを見渡し、ポイントとなる敵ロボを探し始めた。

 

「何処だ……何処にいる」

 

『フミカゲ、アソコ!』

 

 視線を張り巡らせる常闇に〝黒影〟が慌てた様子で話しかける。言われた方向を見れば、そこには探し求めていた敵ロボ――――しかも3ポイントの大型タイプがコンクリートの道路に罅を入れながら何者かと対峙していた。

 

 言わずもがな、決闘者であった。

 決闘者はデュエルディスクを付けた左腕を構え、正面に数枚の大きなカードを浮かばせて敵ロボと向かい合っている。

 

「あいつ、何してんだっ……」

 

「知らねえよ! ポイントに手を出さないんならオレが頂いて……なっ!?」

 

 攻撃のそぶりを見せない決闘者に参加者から困惑の声が上がる。見かねた一人が出し抜いてロボを倒さんと駆け出すが、その時、上空から轟音を立てて落下してきた物体に急ブレーキをかけ尻餅をついた。吹き上がる粉塵に周囲の参加者が顔を抑え。

 

「何が起こって……っ、これは、増援!?」

 

 舞い上がる土埃から現れたのは新たな敵ロボが二体、それも先の一体と同じく大型の機種。ギラギラと照準を定めるカメラアイが周辺を見やり、やがて三つ全てが決闘者を捉えた。

 

「3ポイントが三体……来るぞ!」

 

 近くで様子を見ていた参加者が叫ぶ。その言葉通り敵ロボがコンクリートを傷痕をつけながら一斉に決闘者に殺到する。対して決闘者はデュエルディスクを構えたまま立ち尽くしている。襲い掛かってくるロボたちを不敵な笑みでただ待ち受けているだけだ。

 

「フン! 俺の前に雑魚モンスターを展開する事の恐ろしさ……身をもって教えてやる!!」

 

 危ないと誰かの叫びが響いた時、決闘者はカッと目を見開いて伏せ札を発動させた。

 

 

「罠カードオープン! 威嚇する咆哮!」

 

 

《威嚇する咆哮》

通常罠

①このターン相手は攻撃宣言できない。

 

 

 捲りあがったカードから衝撃をともなった咆哮が響き渡り、たたらを踏んだ敵ロボたちは攻撃を取りやめ姿勢を維持する。ついでに近くに居た参加者も数人、咆哮の余波を受け体勢を崩した。

 ……文句を言おうとした参加者たちだが、一番至近距離にいて悶絶している決闘者の姿を見て閉口する他なかった。

 

「ぐっ……そちらのバトルフェイズは終了、メインフェイズ2もやる事は無さそうだな……なら俺のターンだ! ドロー!!」

 

 引き抜いたカードを一瞥し、決闘者は脳を高速回転させ瞬く間にデュエル戦術を組み立てる。卓越したデュエリストは、ほんの数秒の間に時を引き延ばしたような長考を可能とする。デッキに眠る勝利への可能性、それを引き当てるための戦術を決闘者はこの一瞬で組み立てようとしているのだ。

 

「俺は手札より毒風のシムーンの効果発動! 手札を一枚除外しデッキから黒い旋風をフィールドに置き、シムーンをリリース無しで召喚!」

 

 

《BF-毒風のシムーン》

効果モンスター

星6/闇属性/鳥獣族/攻1600/守2000

 このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札からこのカード以外の「BF」モンスター1体を除外して発動できる。

 デッキから「黒い旋風」1枚を自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。

 その後、手札のこのカードをリリースなしで召喚するか、墓地へ送る。

 この効果で置いた「黒い旋風」はエンドフェイズに墓地へ送られ、自分は1000ダメージを受ける。

 この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 

 

《黒い旋風》

永続魔法

①自分フィールドに「BF」モンスターが召喚された時にこの効果を発動できる。

 そのモンスターより低い攻撃力を持つ「BF」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

 

「黒い旋風の効果によりデッキからそよ風のブリーズをサーチ、更に効果により特殊召喚。続いて手札からゲイル、ブラストをそれぞれの効果によって特殊召喚! 最後に、蒼炎のシュラを反転召喚してメインフェイズを終えるぜ」

 

 フィールドに幾つもの竜巻が生まれ、数瞬後内側から食い破るように鳥人たちが躍り出る。

 疾風のゲイル、そして黒槍のブラスト。この二枚は場に自分以外の「BF」が存在する時、通常の召喚権を消費せずに手札から特殊召喚できる効果を持っている。そよ風のブリーズはカード効果によってデッキから手札に加わった時、同様の効果を発揮する。

 まっさらだったフィールドがあっという間にモンスターで溢れかえる。この圧倒的速度の展開力こそがBFの強さの秘密。()()使()()()()()()()()()と謳われるのは伊達ではない。

 

 

 ――――その分カード回し(ソリティア)が長くなってしまうがそこはご愛嬌だ!

 

 

「ここでゲイルの効果発動! 1ターンに一度相手モンスターの攻撃力守備力を半分にする!」

 

 宣言と同時に決闘者は自身を囲む敵ロボの内、正面のロボを指差す。瞬く間にロボの周りに黒い竜巻が立ち昇りその身をきつく拘束した。

 

「さあ、これで準備は整ったぜ」

 

 デュエルモンスターズのルールにおいてアドバンス召喚―――過去に生贄召喚と呼ばれていた―――や儀式召喚とは別に、十五枚のエクストラデッキから上級モンスターを呼び出す手段がある。

 

 条件となるモンスターを素材にする融合召喚。

 同じレベルのモンスターを複数枚捧げるエクシーズ召喚。

 リンクとモンスター数の条件を満たして召喚するリンク召喚。

 そして――――

 

 

「レベル3疾風のゲイルにレベル3そよ風のブリーズをチューニング。合計レベルは6……漆黒の力! 大いなる翼に宿りて、神風を巻きおこせ!」

 

 

「――――シンクロ召喚! 吹きすさべ、BF-アームズ・ウィング!」

 

 

 要求されたレベル数に調整してモンスターをリリースするシンクロ召喚だ。

 闇を纏った暴風がカードからあふれ出し、それを突き破るように武装した黒翼の鳥人が舞い降りた。

 

『CRo00w……!!』

 

 黒翼をはためかせる強靭なモンスターの出現に、周囲からどよめきが起こった。それを意に介さず、決闘者とアームズ・ウィングの切先の如き眼光が敵ロボを射止める。既に手に構える銃剣の撃鉄は起き、後は指揮官の号令が振り下されるのを待つだけだ。

 

「バトルフェイズ! この瞬間、手札から月影のカルート、極夜のダマスカスの効果を発動! 手札から墓地に送る事で場の任意の「BF」の攻撃力をそれぞれ1400、500アップさせる。俺はブラストとシュラの攻撃力を強化するぜ!」

 

 アームズ・ウィングを挟むように飛んでいた二羽の身体が闇色に輝く。纏う風はより荒々しく鋭さを増した。

 機は熟した。決闘者の右手が振り下される。

 

「バトルだ! ブラスト、シュラ、アームズ・ウィングで相手モンスターを総攻撃! ブラック・トルネード!」

 

 掛け声一閃。三体のモンスターは敵ロボへと黒い光となって一斉に襲い掛かる。。

 

 左後方。蒼炎のシュラが敵ロボのアームを潜り抜け、一息でバラバラに解体する。

 

 右方。黒槍のブラストが持ち前の大槍で敵ロボの胴体に風穴を開けた。

 

 そして――――

 

『Croaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

「……っ! 速い!」

 

 敵ロボが打ち出すミサイルを右へ、左へ避けながら。風の様な、否、風を切り裂く剣の様な高速移動で間合いを詰める。牙をむく嵐に、敵ロボAIは防御を選択する。鋼の両腕をボディ前面で交差させ――――

 

「アームズ・ウィングは守備表示のモンスターを攻撃する時、攻撃力が500ポイントアップする」

 

 そのまま銃剣で両腕ごと頭部を貫かれ、即座に放たれた弾丸で機能を停止させた。

 

 火花を散らす鉄屑が音を立てて地面へ崩れ落ちる。

 まさに通り抜ける旋風が如く、一瞬の出来事であった。

 

「シュラの効果発動、相手を倒した時、デッキから攻撃力1500以下の「BF」を特殊召喚……おれは空風のジンを選択する。これで……ターンエンド、だ」

 

「い、一度に三体の敵を……ワンターンスリーキルゥゥ……!」

 

 余りの早業に呆気に取られ、思わず参加者たちは足を止めた。

 カードを具現化する個性、そこから生み出される強靭なモンスターの群、そしてそれをサポートし勝利への采配を行う決闘者の姿に目を奪われてしまったのだ。

 焼けるような視線を受けながら、決闘者はゆっくりと振り向き四体のしもべを背に、

 

「おせーよ! 俺にはお前らが止まって見えるぜ」

 

 そう言って、ニヤリと笑った。

 その姿を見て誰が間抜けだと言えようか、誰がラッキーだと思えようか。

 会場にいる誰よりも先に、誰よりも苛烈に――――決闘者はヒーローへの一歩を踏み出した。

 

「さあ、お楽しみはこれからだ!」

 

 挑発的な――――いや、圧倒的挑発の意を含んだその言葉に常闇たち参加者の瞳に炎が灯り、拳が固く握られる。負けてたまるか、固く噛みしめられた口を、マグマの様に吹き出す言葉が跳ね上げた。

 

『――――上等だ!!』

 

 もはや止める者は誰一人いない。引き絞られた弦は今手を離れた。

 決闘者の言葉を合図に、ヒーローを志す若き矢の群は一斉に周囲の敵ヴィランへと飛びかかる。

 

 

 格付けも、勝負も、そして試験も終わってなどいない。

 実技試験は、始まったばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ:NGシーン

 

「魔法カード! システム・ダウン!!」

 

 

《システム・ダウン》

通常魔法

 1000ライフポイントを払う。

 相手フィールド上と相手の墓地の機械族モンスターを全てゲームから除外する。

 

 

「か……会場の敵ロボがぁぁぁぁぁ…ぜ……ぜん…め…めつめつめつ……」

 

「もうやめて! とっくに敵ロボの残数はゼロよ!」

 

「フフ……これぞ究極の殺人コンボ!! 見たか相棒!!」

 

「ある意味人殺しよりよっぽどえげつないよ!!」

 

「俺の進む闘いのロード!! その足跡でも辿るがいい!! のろまな弱者共!! 全力で驀進(ばくしん)しろ!!」




BFの速攻展開、書くの大変過ぎ笑えない。
一応もうちょいコンボ組めれたけど今はこれが精いっぱい。

後、前話と少しカード関連の書き方を変えてみました。
カード名を『』で囲うのを止めたり、遊戯王知らない人向けにある程度カードの説明記述入れたり。前のが見やすかったとか、ここをこうして欲しいとかあったら感想まで。
遊戯王Wikiとかで検索した方がよっぽど分かりやすいけどね!

そして、そろそろ主人公のヴィジュアルを考えないとね・・・
活動報告で簡単な募集やってますので良かったらどうぞ。

最後に。読んで、または評価して頂いててありがとうございました。

主人公の髪型を決めよう。

  • ウニ頭
  • ワカメ頭
  • サザエ頭
  • 帽子(コナミ君にならって)
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