Fate/Sirius Garden   作:watazakana

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あらすじ。

サーヴァント同士の争いに巻き込まれた天城千歳と千代田昌子。彼女らはセイバーと契約を果たし、聖杯争奪戦に参加する。セイバーの能力は2人でやっとへっぽこ魔術師1人分の彼女らの魔力の少なさによって本来と比べ落ちていた。そしてセイバーは基本的に親のいない千代田の家で居候することに。次の日、教会へ行くと約束した天城たちは、それぞれの家路へついた。


名士、遠坂

翌日

 

冬の日は、まだまだ寒いものである。

布団から出たくない怠惰な心はサヨナラバイバイ。

 

「おはよー」

「おはよう千歳」

「あぁ、おはよう」

 

リビングに降りて、両親におはようの挨拶。

 

「今日は何するの?」

「課題やった後千代田さんと外に」

「珍しいね、二日連続で千代田さんって」

「そうかな……?」

 

確かに千代田さんとはあまり話さないし絡まない。彼女が何かしら騒いで、それを少し離れてから見るのがこれまでのスタンスだった。一昨日話しかけられたのだって、誰とでもつるむ千代田さんがたまたま私に話しかけて来ただけ。昨日のお出かけは、冬木大災害という共通の話題の延長線上だ。聖杯戦争は、その延長線上にどこからともなく乗り込んできた秒速1mで動く点Pのようなものだ。冷静になって考えると、聖杯戦争がさも当然のように私たちに降りかかるって理不尽すぎる!話の流れと何の関係もないのに!

 

「ああ、出かけるなら最近物騒なようだから、気を付けろよ」

 

ふと、お父さんが気になる言葉を吹っかけてきた。

 

「物騒?」

「深山町の方で行方不明の人が何人か出たらしくて、その上ウチの会社の同僚が一昨日路上で倒れて入院した」

「入院⁉︎」

「とはいっても足の骨が折れたのとひどい風邪くらいで、命に別状はないんだが、本人が言うには『あかいあくまが襲ってきた』だと」

 

悪魔がってことは、聖杯戦争と関係あるのかな。一般人にバレないようにしてるって言ってたけど、そこそこ目立ってるじゃん……

「今年の冬木は少し危ないから、日が暮れる前には帰ってきなさい」

 

お父さんはそう言うと、新聞に目を戻した。

 

 

新都、冬木大橋前

 

課題とはめんどくさいものである。なんとか時間までに終わらせて、彼女たちと落ち合えられた。

 

「よっ!」

「チトセ、夕暮れぶりだな。待たせたなら申し訳ない」

「いや、全然。じゃあ行こっか」

 

私たちは歩き出した。

 

 

冬木教会前

 

「私が前に出よう」

 

突然にセイバーが険しい顔で言い出した。

 

「貴様!霊体化していようが魔力がだだ漏れだ。姿をあらわせ。闇討ちなぞ趣味ではなかろう、バーサーカー」

 

しんと静まる教会に続く坂。私たちから少し離れた正面に人が現れた。

 

「やっぱバレるかァ。流石最優のサーヴァント。一般人マスターとか、正気かぁ?舐めプかよ」

「む、意思疎通ができるとは。ランサーであったか?」

「バーサーカーだよ。今でも必死に抑えてんだ。てめえら全員殺す衝動をよお」

「……私は、この子たちを守ると約束した身でな。バーサーカー、来い。どの道私たちは殺し合いしかできない幽霊だ」

 

セイバーは槍を虚空から現す。その槍は、美しかった。穂先は美しく、刃元には龍が刻まれている。刀匠の技術がこれでもかと凝らされた、名槍と呼ぶにふさわしいものだった。そして、それはバーサーカーが持つ槍と瓜二つだった。

 

「オイオイ、オイオイオイ!冗談にもいい冗談悪い冗談あるんだぜ。他人の槍、パクってんじゃねえよッ!」

 

バーサーカーは怒り、一歩踏み込む。その一歩で舗装を粉砕し、10mはあろう距離を瞬き一つ許さない合間で詰めた。流石のセイバーもこれには防戦するばかり。

 

「くっ…聖杯の掟に従い……この争い、この理に従うなら閉じよ!」

 

結界もない日中からこんなことでは神秘の秘匿も何もない。セイバーは呪文を唱え出した。

 

「バトルオープン……っ!剣を執れ、しからば…「待ちなさい!」⁉︎」

 

突然どこかで聞いた声がして、双方の動きが止まった。セイバーの首にバーサーカーの切っ先が触れ、バーサーカーの額に穂先が触れていた。

 

「邪魔すんなよ女ぁ!ぶっ殺すぞッ!」

「そのサーヴァントは再契約の直後。一般人のマスターであれなんであれ、こうなったからには教会で戦争参加の意思を告げなければ交戦できないわ。そのルールを無視すればアンタのマスター、秒で死ぬわよ。何よりも冬木のセカンドオーナーであるこの遠坂が許さないわ。権力と財力と人脈でアンタ達を必ず真っ先に殺すから」

 

数秒間の沈黙。バーサーカーの殺意と高揚に満ちた目は途端に無気力に還り、威嚇するネコの毛皮の如く膨らませていた魔力を一気に萎ませた。

 

「チッ……萎えた。じゃあな。次会ったら必ず殺す」

 

バーサーカーは撤退した。途端に遠坂さんはへたり込む。

 

「あぁ怖かったぁ……ハッタリなんて英霊相手にするもんじゃないわ全く……!」

「あの……遠坂さん?」

「ん?昨日の中学生達じゃない……危ないわよ、こんなところにいたら。今は見逃してあげるから、すぐに……えっ⁉︎」

 

遠坂さんの目線が私、千代田さん、セイバーの順に移っていく。そしてセイバーと目が合った瞬間、凍りついた。

 

「どちら様で?」

「セイバーと契約する前に訪ねてた、遠坂さん。冬木の名士ってお寺の一成さんが言ってた」

「はぁ⁉︎セイバー⁉︎アンタ、セイバー⁉︎ランサーじゃないの⁉︎」

 

ランサー?と首を傾げる私たちを他所に、遠坂さんはまくし立てる。

 

「……あぁ、いや、私の真名に深く関わることになるので、そこは訊かないでほしい」

「あらそ。じゃあ訊かないであげる。それよりもアナタ達、その手の甲の模様は……やっぱりマスターね、セイバーのマスターが一般人…はぁあああああ……アイツみたいじゃない!」

 

 

縁とは奇妙なものである。

 

冬木教会に至る坂道、遠坂さんから話を聞く。

「貴女たち、聖杯戦争についてはセイバーから聞いてるわね?」

「はい、七人の魔術師が願いを叶えるために七騎の英霊を呼んで戦う、殺し合い、ですよね」

「だいたいそうよ。じゃあクラスについては知ってるかしら」

「クラス?」

「そう。世界の外側にいる英霊たちは、基本的にそっくりそのまま召喚できないの。だから生前得意としていた分野に応じてそこだけ秀でさせる。その分野をクラスと呼ぶのよ」

 

剣に特化した英霊・セイバー

槍に特化した英霊・ランサー

弓に特化した英霊・アーチャー

乗り物を乗りこなす英霊・ライダー

暗殺に秀でた英霊・アサシン

魔術に才のある英霊・キャスター

狂うまま全てを破壊する英霊・バーサーカー

 

ちなみに私たちのサーヴァントが剣の英霊、セイバー。第一次から第五次まで最後まで生き残り続けた、汎用性の高い最優のサーヴァントらしい。

 

「まあ例外はいるけどね、私のアーチャーもそうだったし」

「「えっ」」

 

この一言は、何故聖杯戦争について知ってるのか、という疑問を解決すると同時に最大級の驚きを持ってきた。

 

「「ええええええええええ!?」」

 

遠坂さんが、聖杯戦争の経験者だったなんて!

 

「あ、そうよ。言っておくけど、私は魔術師。聖杯戦争で生き残った勝者よ!」

 

崇めなさい♪と言わんばかりのドヤ顔である。待って欲しい。聖杯戦争は勝った人が願いを叶えるために行われて、遠坂さんが勝者になったなら……訊きたいことはただ一つ!

 

「どんな願いを叶えたんですか⁉︎」

「そうだよ遠坂さん!億万長者?あの屋敷も願いで叶えたの⁉︎」

「アンタ達、結構下世話なのね……」

 

そりゃお金は欲しいわよ。でも魔術師の願いなんてお金なんて低俗なものじゃないわ。私は勝負に選ばれて、選ばれたからには勝つって思いで挑んだのよと遠坂さんは嫌そうな顔して否定した。

 

「それに、あの時の聖杯は使えなくなっていたわ」

「使えなく…?」

「そうよ。聖杯は汚染されて、すべての願いが人に危害を加える方向性を持っていたの。お金が欲しいなら殺した人の金が入って、世界平和を願ったら人類絶滅で達成する、そんなドス黒い代物に変わっていたわ」

「世界平和を願ったら人類絶滅って……」

 

戦争は人間のすることだから人間がいなくなれば戦争はなくなる理論ですか、めっちゃやばいですねそれ。

 

「そんなものをみんな取り合ってるんですか?」

「いや、今回の戦争が始まる前にその元凶は取り除かれている。アトラス院の稀代の錬金術師によって」

「そうよ。セイバーの言うように、今ではそんな厄ネタはないわ。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……?どういうことですか?」

「この話は後にしましょう。着いたわよ」

 

正面を見ると、門の向こうにあるのは荘厳な白い建物。冬木教会だ。

 

「貴女たち、用心しなさいよ。魔術師は人でなしの集まりだから。あと、セイバーはここに居なさい。教会は中立地帯。サーヴァントは立ち入り禁止よ」

 

そう言って遠坂さんは門を開け、ずかずかという擬音が聞こえそうな様子で教会の敷地へと入っていった。私たちはさっきの言葉の真意もわからず、後に続いた。

 

 

「何か御用でしょうか」

 

いつぞやの綺麗な人は、お祈りの最中だった。

 

「聖杯戦争……いえ、聖杯争奪戦のマスターを連れてきたわ」

「それは……わざわざご苦労様です。貴女たちは、確か昨日の子達ですね。私はこの聖杯争奪戦の監督役、カレン・オルテンシアです。聖堂教会の者ですが、三組織の協議の末魔術回路もない私が中立派にふさわしいと、このような役になりました。では早速ですが、貴女がたは聖杯戦争をどこまで知っておいでですか?」

 

遠坂さんといい、カレンさんといい、魔術師でない人には「どこまで知っているか」は気になるようだ。

 

「私が教えたわ。ある程度はね」

「ありがとうございます、と言うべきですか?それとも余計なことを、と言うべきですか?」

「ホンッとムカつくわねアンタ」

「冗談はさておき、貴女がたは殺し合いをすることと、サーヴァントを使役すること、その令呪は三回までしか使えないですが、奪えばその限りではないということ、そして、他の人にこのことを言えば貴女がたの命は無いことは抑えておいてください」

「「えっ…」」

「言い方がわかりにくかったですか?他の一般人に聖杯戦争のことを話したら即座に殺します」

 

その目は本気だった。そういうものを経験したことはなかったが、全身が泡立つような感覚で、間違いなく嘘やハッタリではないと本能が告げていた。考えてみたらそうだ。軍人のサーヴァントが私たちを殺しにかかったのも、一般人である私たちが巻き込まれたからで、生かせば聖杯戦争がバレる。それが不都合だったからだ。

 

「ちょっと、そんな言い方無いでしょう⁉︎」

「皆貴女のようにできていると思うのは傲慢というものですよ。口に戸は立てられませんが、死人には戸を立てる口などありません。それはどんなに着飾った言葉でも誤魔化せない事実でしょう?」

 

見逃さなかった。私は見逃さなかった。カレンさんは笑ってた。嘲笑ってた。千代田さんも見ていた。千代田さんは私の手を握って、震えていた。いや、震えていたのは私かもしれない。私が先に強く握って、千代田さんはそれに応えただけかもしれない。

 

「さて、話題を変えますね。貴女がたが行っていた調査、幽霊説、でしたか?あれは当たらずとも遠からずです。先ほどまでの会話で分かったかもしれませんが、冬木大災害、アレは汚染された聖杯が原因です。ビルの倒壊も、第四次のセイバーのマスターがランサーのマスターを殺すためにやったこと。二十年前の子供の連続失踪はキャスター陣営が誘拐し虐殺していた事件です。寺の半壊は第五次のサーヴァントの宝具の影響です。サーヴァントとは人類史に名を刻んだ亡霊ですから、十年周期で起こる不思議な事件は全て、幽霊が絡んでいたと言っても過言ではありません」

「アンタねぇ、私たちも用事があってきたんだから、早くやることやりなさい」

「あらまあ、私としたことが、すみません。この子達がいじらしくて、貴女のことは眼中にもありませんでした」

「アンタが監督役で良かったわ。でなきゃ即座に殺してた」

「まあ!聖職者を殺すなど!主よ、この者の蛮言をお許しください。時計塔とは野蛮な故に居るだけで心が荒むものなのです、この野蛮な彼女の心をどうか救いたまいますよう……なんて冗談はさておき、この勝負から降りるというなら、聖杯争奪戦の期間中命の安全は保障しましょう。一般人に聖杯争奪戦のことを話さない限りですが、少なくとも死の危険は少なくなります。ですが降りないなら、この勝負に乗るなら、此処に誓いなさい」

 

そう、私たちは被害者なんだ。本当なら私たちは何も知ることなく、あの橋で別れていた。何も知らずに夕飯を食べて、寝て、これから起きる事件に少しの不思議を感じながらなんてことない日曜日を過ごしていたんだ。軍人の英霊に銃を、バーサーカーに殺意を向けられたり、死と隣り合う目なんて遭わなかった。

ただ……

 

「私たちが降りたら、セイバーはどうなるの?」

 

ただ、セイバーがどうなるのかは訊きたかった。

 

「魔力の補給路が絶たれ、消滅します。要するに死にます」

「そんな……」

 

それじゃあ私たちが、セイバーを殺すみたいだ。でも、遠坂さんやセイバーの言葉を借りるなら、セイバーたちは幽霊。殺しても、私たちが罪に思うことはない。

 

「セイバーには悪いけど、私は降りることを勧めるわ。サーヴァントは所詮亡霊。今を生きる人間が、今じゃないものに振り回されちゃいけない。魔術師なら話は別だけどね」

 

遠坂さんだってこう言ってくれる。

なら、言おう。私は……

 

「私は、降りたいです」/「私は参加する」

 

私は降りたかった。だって、死んでしまったら怖いから。お父さんやお母さんが悲しむから。いろんな人に迷惑がかかる。ならこの二日間に封をして、ずっと秘密にしていようと、そう決めようとしたのに。

 

「……何で?」

「千歳……?」

 

何で、この人は私を引きずっていこうとするの。

 

「何で⁉︎千代田さん、死ぬのは怖くないの⁉︎」

 

何で、この人は他人のことが考えられないの。

 

「何で⁉︎千代田さん、この二日間を誰にも言わなきゃいいのに!それだけなのに!」

 

何で、この人はできることができないの。

 

「貴女はあれだけ死にたくないって言ってたのに、何で千代田さんは参加するなんて言うの⁉︎」

 

千代田さんはすこしうろたえていた。私がここまで言うなんて初めてだったからだろう。でも私は、梯子を外された感じがした。どうしても我慢ならなかったから、ぶつけるしかなかった。

 

「それは……理由がないから」

「理由がないって……!」

 

今にも私は理性を投げ捨てようとしていた。殴りたい衝動を抑えて抑えて、それで精一杯だった。

 

「降りる理由がないから。もちろん死ぬのは怖いよ。でも、セイバーを死なせたくないの。私たちが拾いあった命だもん。遠坂さん、セイバーが亡霊って言いましたよね」

「えぇ。そうよ。魔術世界では最高位の降霊術、英霊召喚。英霊は過去の人間で死んでなきゃ召喚できないわ。だから亡霊と言ったの」

「遠坂さんの言うことは正しいと、そう思います。でも、直感的には違うと思いました。なぜって、遠坂さんは幽霊を『よくわからないもの』と言ったからです。私たちの心でそう感じて、手の届かない場所にいる。それが幽霊だって。でもセイバーには手が届いて、何よりセイバーはセイバーです。よくわからないものでも、幽霊だと感じるものでもない。だから私は、振り回されてもいいと思ってます。セイバーは、紛れもなく今を生きていますから」

 

遠坂は目を丸くした。カレンはその顔がツボに入ったのか、顔を後ろに向けて笑うのを必死に我慢している。

 

「言うじゃない……一般人のくせして。アイツとは違うけど、アイツと相手してるような気持ちになるわ。それで?天城さん、千代田さんはこう言ってるけど」

 

会話の主人公は千歳へと切り替わった。

 

───恥ずかしい。

 

千代田さんは堂々と反論した。逃げなかった。でも私はどうだ?やらない理由ばっかり。逃げる口実を作ってた。千代田さんのようにセイバーを殺すことへ異を唱えず、私はセイバーを殺すことを正当化しようとしていた。最低だ。私と彼女との差は、こんな選択の違いできっぱり現れる。

 

私は、頭を下げた。

 

「すみません遠坂さん。やっぱりこの勝負、降りたくありません。私はセイバーを殺したくありません。どうしても!セイバーを見殺しにするような人には、なれません!」

「……」

 

呆れてるだろうか。馬鹿にしてるだろうか。諦めてるだろうか。遠坂さんの顔を見るのが怖くて、下げた頭が上がらない。

 

「はーもう全く、私の世話するヤツらはなーんでみんなこうなのかしら!」

「それだけ野蛮なところが頼りになるということでは?」

「野蛮じゃないっつーの!なら、私のやるべきことは決まったわ」

 

その声は、どこか嬉しそうに聞こえた。

 

「この冬木のセカンドオーナーたる私が監督役たるカレン・オルテンシアに要求します。このふたりに関しては私が保護することを認めていただきたい」

 

「「───え?」」

 

「いけません。それは遠坂がセイバー陣営に参加することを意味し、遠坂が中立の立場を貫くという条件に抵触します。監督役として認められません」

「はぁ?じゃあアンタ、中学生が殺されたり行方不明になったりでもしてみなさい。アンタの仕事めちゃくちゃに増えるわよ」

「……」

 

カレンさんは黙り込んだ。

 

「別に、聖杯争奪戦での戦いについてとやかくするつもりはないわ。でも、防げる暗殺は防いでおきたいの。それに、サーヴァントは1騎なのに、そのサーヴァントが守る人間が2人というのは不公平よ。せめて負担を分けないと、あまりにも不遇すぎるわ」

「……わかりました。その申し出を特例として認めます。今のセイバー陣営は中立勢力ですし、遠坂は中立として振る舞いなさい」

「ありがとう!話のわかる監督役で良かったわ」

 

不承不承了解するカレンさんに、屈託のない笑みで返す遠坂さん。

ありがたいけどこれって脅しでは?

 

「では誓いなさい。正々堂々と、メイガスシップに則って、この聖杯争奪戦で生き残ると」

 

もうこうなったらやけだ。私と千代田さんは目を合わせ、頷く。

そして、

 

「「誓います!」」

 

聖杯争奪戦参加を、ここに宣戦布告した。

 

 

午後3時過ぎ、教会前

「む、遅かったな。これでようやく聖杯争奪戦が始まるぞ。トオサカ、今回はありがとう」

「んなっ⁉︎」

 

素直に頭を下げられると、さすがの遠坂さんも戸惑うものである。

 

「い、いや、そんな大したことしてないわよ。私は冬木のセカンドオーナー。管理者として、当然のことをしたまでです」

「む、そうか。では頭の下げ損だな」

「一言多いわねこのセイバー……!」

 

十年前はもっと可愛げのあるセイバーだったわとぷんすかして坂を下る。私たちはそれについて行った。そして、遠坂さんは訊いた。

 

「そういえばセイバー、家はどうしてるのかしら」

「チヨダの方に住まわせてもらっている」

「あらそう、じゃあ私は天城さんの護衛をやるわね。千代田さんを送り届けたら私の家に来なさい。住まわせてあげるわ」

 

ナチュラルにズカズカとセイバーの寝床を指定する遠坂さん。

 

「なぜだ。私のマスターはチヨダとアマギだ」

 

それにブーたれるセイバー。

 

「アンタだと事案にしかならないっつってんのよ!いつ中学生の乙女を散らせるかもわからないアンタには私の家の物置で寝なさい!念話できるしそれでいいでしょう!」

「なっ⁉︎そんな趣味を私は持ち合わせていない!」

「そうかしら?とにかく、聖杯戦争経験者の私がこう言ってるのよ。大人しく従わないとアンタのマスターどうなっても知らないわよ」

「くっ、マスターを人質に取るとは卑怯な!」

 

そんな和気藹々とした雰囲気が、帰り路に沸き起こっていた。しかし、その空気はよからぬものも引きつけたようで。

 

「随分楽しそうにしてるじゃねえか。えぇ?聴いたぜ、お前ら、聖杯争奪戦に参加するってなあ!だったらちょっと混ぜてくれよッ!」

 

バーサーカーは霊体化を私の目の前で解き、その槍は私の左胸を目掛けて突きを繰り出す予備動作。そして声を出す間も無く破壊された3m先の植木。

 

(速くて見えなかった……!これが、サーヴァント!)

「また俺の槍かよ……お前みてえなの知り合いにもいねえからよォ、その槍ァ偽物ってことだよなぁ!」

 

バーサーカーの突きを私から逸らしたのは、セイバーの槍。昼間も見た、あの綺麗な槍!

 

「それは、どうだろうか?……ッ!」

「俺の槍をパクリやがって……オレァなあ、贋作作ってるヤツとノリの悪いヤツぁ大ッ嫌いなんだよォッ!」

 

剣戟。セイバーもバーサーカーも、その技術はとうに人間離れしていた。しかし、バーサーカーの圧倒的で暴力的な力をいなしきれないセイバーがだんだん追い詰められていく。

 

「貴女たち、手を握りなさい!2人で1騎のマスターなら、2人が触れ合ってないと結界の中に入れないわ。呪文を唱えましょう。急いで!」

 

 

─── 聖杯の掟に従い、この争い、この理に従うなら閉じよ!

 

 

「「バトルオープン、剣を執れ、しからば死せよ(sword or death)!」」

 

 

現実が歪み、聖杯の結界が顕れる。いつ見ても綺麗な花畑だが、セイバーとバーサーカーの剣戟でその花たちは無残に散る。

 

「まさかここまで一緒とはね、仕方ない。いくわよ2人とも、これが初陣よ!」

「「はい!」」

 

聖杯争奪戦の初陣が早くも切って落とされた。

 

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