Fate/Sirius Garden 作:watazakana
千歳が藤村先生に連行された直後のことだ。突然、みんなが糸を切られた操り人形のように倒れ込んだ。
「何⁉︎」
クラスメートを揺すってみるも、全く返事はない。呼吸はしているから生きているだろうけど、これはどういう……?
「魂喰いだな」
「わ、セイバー」
良かった……って、そうじゃない。みんなが倒れてるんだ。
「セイバー、これは……?」
「魂喰い。人間から精気を奪ってサーヴァントを強化する大規模な魔術だ。規模が大きければ、肉体を溶かして魂丸ごと、ということもあり得る。私の時代にはそういうことをする獣がいた」
「それまずいじゃん!」
「ああ。陣地を早急に見つけて潰し、マスターを仕留める!」
「おっと、その必要はないぜ。陣地なんてチャチなモン使わねーよ」
「!!!」
声の方を見れば、金髪のいかにもという雰囲気の外国人が、したり顔で教室のドアにたたずんでいた。この金髪は先生じゃないじゃないことは明らか。じゃあやってやる。
「セイバー!」
「応!」
飛びかかろうとするセイバーを、金髪は静止した。
「おっとぉ、やめときな。アーチャーはいつでもお前を撃ち抜ける。もちろんこの倒れ伏したガキ共もだ」
「なっ……⁉︎」
「人質⁉︎嫌なやつ!」
「魔術師はみんな汚いし嫌なやつだぜお嬢ちゃん」
どんなことをしてでも勝つ。そんな執念を見た気がした。
「……セイバー、もしかして千歳は……」
「……分断されたな。まずいぞ、これは……トオサカは何をしていた⁉︎」
「トオサカ…?あぁ、
「サーヴァントがいるというのに、見上げた根性だ。そんなことを許すと思うか?」
セイバーは虚空から剣を出し、険しい顔で魔術師に向ける。対する魔術師は目を細め、したり顔は崩さない。
「ああ思うね。あとその武器をしまいな。立場ってもんがわかっちゃいない。ナンセンスだ」
魔術師が口を閉じた瞬間、近くで倒れていた生徒の三寸先が抉り取られた。直後、銃声が響く。そして更に銃声。今度はセイバーの脚を穿った。
「ッ!!?」
「セイバー、脚が!」
慌てて私は倒れかかるセイバーの身体を支える。
「もう一度言う。『俺は無駄な争いなんて御免だ、穏便に終わらせたい』、『そこのガキはこっちに来い』。どうせ片方のガキも詰んでる」
「千歳に何をするの⁉︎」
「おっと、いやだな、俺は何もしねえよ。ただ、
「……降霊か……!」
「惜しいな、違うね。ま、教えないけど」
セイバーは動けない。私じゃあの魔術師に勝てない。
「セイバー、どうするの……⁉︎」
「……無理だ。この距離ではアーチャーは潰せない。たとえあのマスターを斃したところでアーチャーは数日間現界し続ける。そのまま狙撃に徹するだけだ」
「……詰みじゃん」
なんだそれ。魔術に関わるヤツが、こんな大胆になるとか聞いてないよ。
「……セイバー、私たちは二人で一騎分のマスターだよね」
「あぁ」
「私が死んだら、セイバーはどうなるの」
「……消えるまではいかないが、まともな戦闘はできないだろう」
おそらく、今ならできて当然な剣を出現させることも……と、セイバーは苦々しく語る。
じゃあだめじゃん。私が死んでも誰も助からない。今の私の命に取引ができるような価値はないのだ。私は、なす術なく殺されるしかないのか。
そう悟った瞬間、身体がふわりとした感覚に襲われた。
「あれ……?どうして……?」
まるで、私の
「なんで……」
「入ったな、諦めのいいガキでよかったよかった。さあ、こっちに来い」
やだ。いきたくない。いったらころされちゃう。なのに、どうしてわたしのからだはそっちへいくの。
「いや、だ、や、めて、まだ、しね、ない、しにたく、ない……!」
「心の底じゃあ諦めてるくせに、いじらしいな。セイバーがいるからか?あの千歳とかいうガキがいるからか?いや、ガキは違うな。だって死ぬんだから。じゃあセイバーか。残念だよなぁ……なまじ一般人のくせして最優のサーヴァントのマスターになったってんだから、救いがねえ。ま、魔術師ってのはそういうもんだ。対処できない奴から死ぬんだよ。一等以外は皆んな死ぬんだ。アーチャー。令呪のある右手、潰せ」
「──────ッ!!!」
「マスターっ!」
みぎてをあついものがつらぬいた。じゅうせいがひびく。まじゅつしがないふをとりだした。ちからのいれかたがわからない。
いたい、いたい、いたい、いやだ、いたいいたいいたいいやだいたいいやだいやだいやだいやだいやだ……
けんお、げきつう、それときょひがわたしのこころをせんりょうする。めのまえはまっくろになって、それで、それで……
「せい、ばぁ……!」
せいばーをよんだ。むがむちゅうで、わらにもすがるおもいで。そうだ。まだしねない。ちとせだって、あれだけいきたがってた。わたしだけあきらめるわけにはいかないんだ。でも、わたしにどうこうするちからはない。せいばーにたよらなきゃいけないむりょくをしのんで、いきぎたなくてもいいと、さいごまでいきぬかなきゃと、そうこころのそこからおもった。
すると、あたまのなかでなにかがつきぬけた気がした。
「……ん?魔力?……なんでお前が令呪使えてんだよ……!アーチャー、ガキの右手!」
「れい、呪…を…使い……せい、ばぁに、願う!」
ちにぬれているしたからあかく光る右手を、更に赤い血が塗りつぶす。また銃声。アーチャーのものだ。私の右手を穿って、再び教室出口に赤い液体をぶちまけた。
───それでも
「宝具、を!使って……!」
ひとかけらでも令呪が残っているなら。わたしはセイバーに全力で頼る!わたしの聖杯争奪戦は、「みんなで生きる戦い」だから!
「……!了解した」
───今、神をも超える偉業を示そう。
「くそっ、アーチャー!今すぐセイバーを撃ち抜け!」
魔術師はアーチャーに命じるも、銃声も、破壊もなかった。
───それは鍛治。それは神と袂を分かつ我が業なり。
「……はぁ⁉︎ライダー⁉︎バルトラ先生んとこのアサシンは何してんだよッ!!!」
どうやら同士討ちか、別の派閥と争いを始めたようだ。
───我は鍛治の父。星に『鍛造』を教えた、原罪を継ぐ神の模倣
「───ならば、
「……は?今、なんて……?」
魔術師が顔を豹変させた。焦りや怒りで好調した頬が、一瞬で青白くなっていく。
「解析記録引用、構築開始。『
瞬間、彼の手には光り輝く剣が編まれていった。金と青の装飾、それはとても綺麗だった。わたしのズタボロな右手の痛みが、綺麗さっぱり忘れられるくらいには。
「構築完了。真名、開放。『
教室を守るように、結界が張られた。なんとなくわかる。その結界は、世界を断絶するくらい強固なものだと。そして、それは瞬く間にセイバーを癒した。
「さぁ、形勢逆転だな」
「……くそ、こんなことでッ!来い、アーチャー!」
魔術師の左手が赤く輝き、一画が弾けて消えた。アーチャーは顕れる。
「……マスター、ライダー陣営はセイバーに付くようだ。旗色は悪い。一度撤退すべきだ。生きて明日も戦う、それはアメリカの魂ならば」
「全部言うのは無粋ってやつだぜ。あぁ、あぁわかってるさ。全く、
魔術師は奥歯を噛みしめ、今にも達成できるはずだったことを運によって為せなかった歯痒さを苦悶の表情として出力した。
「いくぞ、アーチャー」
「逃すと思うな!」
「やめておけ、令呪による魔力ブーストがあっても魔力の足りないお前では、私に敵うことはない。少なくとも今では。たとえ神造兵装を作れたとしても」
アーチャーに向けられる銃は、「それ以上進めば殺す」という宣言であった。
「それよりも、この学校、
アーチャーはそう言い残して、教室を去った。
「待て!」
セイバーが教室を飛び出した後には、倒れた生徒や教師だけが転がっていた。
*
「……トバルカイン、旧約聖書における七代目の人類の一人。鍛治の祖であり、これを以て消費文明が始まったとされる、神代と袂を分かった最初の人類……」
もう一人の魔術師は遠坂さんと戦闘していたが、撤退するアーチャー達を見て撤退したらしい。
セイバー曰く、「千歳とのパスは失ってはいない。健在だ」だそうだ。とにかく、今はアーチャーの魔術師が学校で放置したままになっているゴーストや下級の妖精を駆除しつつ、千歳を探しているところだ。
「神造兵装を造れるその権能に限りなく近い宝具、アンタ達、とんでもないサーヴァントを引いたわね……!」
魔術をかけてゴーストを可視化すると、早速退治する魔術を使って霧のように霧散させる。お茶の子さいさいのように見えて、これは並の魔術師なら割とめんどくさい作業になることをセイバーが教えてくれる。
「星の聖剣にその鞘ですって……⁉︎ったく、冗談じゃないわよ!なんで第五次のセイバーの宝具をアンタが造れるわけ⁉︎あんなの、神霊でも造れはしないわよ!」
「だが私は造れる『だけ』だ。神造兵装の真の担い手にはなれない。現にこれらはあと数時間で消滅するし、『全て遠き理想郷』も三度の再生治癒の能力と一度だけの結界構築だけだ」
「そんなこと言ってるわけじゃないわよ……」
まったく、こんなチートが本来のマスターの下で動いてたんだったら聖杯争奪戦は話にならなかったわ。と、かなりおかんむりの様子。だいぶ怖いです、この人。第五次のアーチャーは苦労しただろうなぁと、勝手に想像し同情する。
「……これは私のくだらない
これがアキレウスだったら、かかとを執拗に狙われるところだったし、オリオンならサソリ地獄が待っていたらしい。
それにしても、だ。
「……令呪、一画使っちゃった……」
三度しかない絶対命令権。そんな貴重なものを、使うしかなかったとはいえ、使ってしまった。
ボロボロだったはずが跡形もなく完治している右手がどうもむずかゆい。それは原型を留めなかった右手が『全て遠き理想郷』で元どおりになった違和感、決してそれだけではなかった。
「……何か気に病んでいるようだけれど、貴女の一連の行動は別に間違いではなかったわ」
「……でも」
「いい?生き残ることはこの戦いにおいて最も重要な要素よ。生きて、戦う。そして、そのために生き残る最も可能性のある手段をとる。これが出来る人が勝てるの。貴女は、その決断をした。それは責められないし、むしろ素人が魔術師を撃退できたっていう大手柄だわ」
誇っていいのよ、と遠坂さんは言ってくれた。
「うん……ありがとう、遠坂さん……」
それでも、心のどこかに罪悪感は残る。息を吸うにも、重石が肺に乗せられた感覚は、完全には取れなかった。
そして、上の階からどたどたと大きな足音が聞こえてきた。
「っ、今度は何⁉︎」
遠坂さんは臨戦態勢に入り、宝石を5、6個取り出しては階段を降りていく足音の方向を睨む。
「………ぁ………ぁあ………」
徐々に鼓膜が声を捉え始める。ん?待って、この声なんか聞いたことが……
「ぃぃぃぃぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
「悲鳴?」
「この中学校、気を失ってないのは貴女だけよね?」
「セイバーと契約してる千歳もたぶん失ってないんじゃないかな」
あ、わかった。この悲鳴……
「やめて!やめてください!私もう走れますから!下ろしてください!それかせめて!せめて抱っこからおんぶに変えてください!恥ずかしいし貴女の背後めちゃくちゃ怖いんです!!!!!!」
「はっはっは!!!!!あれだけ威勢よく登場してもーしわけない!!!!!何度も言ってるけど貴女みたいな可愛い女の子を走らせるわけにもいかないし今体勢変えると冗談抜きで私たち死ぬから却下!!!!!!!」
階段を降りてきた人影は、予想外をふたつ持ってきた。
一つは、走ってきた人影が不審者で千歳を抱っこしながら猛スピードで走ってくること。
もう一つは、ゴーストをこれでもかというほど引き寄せてきたこと。
聖杯争奪戦って、なんなんだろう。
穂群原会談へ続く
プロフィールを更新しました
サーヴァントステータス
【CLASS】セイバー
【真名】トバルカイン
【性別】男性
【身長・体重】180cm・72kg
【属性】秩序・中立
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A+
【クラス別スキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能。Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
セイバーであるという名目で付与されたスキルのため、ランクは低い。
【固有スキル】
始祖のカリスマ:C
詳細不明。
魔力放出:B
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
???:D
詳細不明??????
【宝具】
『神に告げし鍛治なる原罪』
分類:対人宝具
ランク:EX
最大捕捉:1人
レンジ:0
クェット・マクォリ・トバルカイン。鍛治の始祖であるトバルカインは、バビロニアを除くアフリカ・中東において神代を完全に終わらせた人類の一人である。当時、神の持つ武装は権能の変化であり、神造兵装という概念すらなかった。そこに「造」という概念を作ったトバルカインは、その後に造られることとなるオリュンポス艦隊が製造したもの以外の神造兵装のモデルとなった。それは約束された勝利の剣も例外ではない。彼はサーヴァントとして刻まれた記録から神造兵装の情報を引っ張り、複製する。しかし、それは作るだけであり、本物の担い手にはなり得ない。よって彼の作った神造兵装は寿命が極端に短い。
第二宝具
???????