願い星のもとで   作:縞野 いちご

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犯人(矢澤にこ Part1)

 

 

 

 

 

今朝の真姫の様子は明らかに変だったとしか思えなかった。

 

 

真姫『にこちゃん?どうして学校に…』

 

にこ『どうしてって、部活に決まってるでしょ?』

 

真姫『部活って、だって今は!』

 

 

 

希『どうにも様子がおかしいけど、平気?』

 

真姫『ラブライブって、私たちはもう敗退してるじゃない…。』

 

 

 

 

記憶喪失ではなさそうだけど、明らかに私たちとは意見が合わない。

 

ラブライブ決勝前だというのにどうしてこう次々と厄介ごとが増えてくるのか。

 

 

 

3年間我慢し続けてようやく掴んだ夢舞台への切符を簡単に捨てるわけにはいかない。それにこれがラストチャンスなのだ、これでダメなら本当に終わりだ。

 

 

にこ「にこが気合い入れ直してあげないと。」

 

 

 

 

 

 

選択授業制になって生徒数が減った教室から我先に部室へと向かっていった。

鍵番は部長である私だ。私がいかなきゃ部室が開かない。

 

よって当然、私が一番乗りになる。

 

 

にこ「はあぁ…寒いわね。いつもいつも!」

 

 

エアコンの効いていない部室は冷蔵庫のように寒い。こんなところで1日生活してたら確実に風邪をひく。

 

 

カバンを置いて、私の特等席に座るとあるものが視界に入った。

 

 

 

(何よ…。この封筒。)

 

 

 

机とキーボードの間に挟んである白い封筒を手に取る。こんなもの昨日までは無かったはずなのにしっかりと挟まっているのは、誰かの悪質な悪戯か定かではないものの薄気味悪さを醸し出すのには十分だった。

 

 

にこ「悪趣味ね…。誰よ、こんなことするの。」

 

 

 

希「何しとるん?」

 

にこ「ひゃあっ!?」

 

 

突然希に声をかけられて、私はおかしな声を挙げて飛び退く。

 

 

 

希「何か隠し事でもしてたん?」

 

にこ「そ、そんなわけないでしょ……?」

 

希「なら、その手に握っている封筒は何かなあ?」

 

にこ「うっさいわね!何でもないわよ〜!」

 

 

こんなことで気味が悪いなんて言ってたら、希のことだからどうせバカにしてくるだろうと思って何も話さないでおいた。

 

 

 

希「ちょっと気になっただけやのに。」

 

絵里「希、あんまりにこをいじめないの。」

 

 

遅れて部室に入ってきた絵里が希に注意した。絵里にしては珍しく私よりの意見。

 

 

 

 

希「にこっちは可愛いいからイジリ甲斐があるんよ?」

 

 

(散々言ってくれるじゃないの……。)

 

 

にこ「絵里の言う通りよ。メンバー内のいじめなんて発覚したらとんでもないわよ?」

 

 

まさかだったのか私の一言で希が目をまん丸にさせた。

 

 

希「そんなに嫌やった?」

 

にこ「そうね。」

 

 

私がぶっきらぼうに言うと、希はらしくなくシュンとしてしまった。

 

 

 

絵里「まったく……自業自得よ?」

 

希「えりち……。そんなに言わんでも、ええやん……。」

 

 

 

落ち込んでいる希を見て、流石に悪いことをした気がした。

 

 

 

にこ「ああ、もうっ!そんなに嫌でもなかったから落ち込むんじゃないわよ!」

 

希「本当に?」

 

にこ「本当よ。」

 

希「……にこっちならそう言ってくれると思ってた♪」

 

 

私が怒ってないと分かるや、希はすぐにケロッとしてしまった。

これじゃあ反省もしなさそうね。

 

むしろこうなることがわかって嘘泣きのようなことをしたまである……。

 

 

 

絵里「私も大概だけど、にこも甘いわね。」

 

にこ「何言ってんのよ。あんたは激甘よ?」

 

 

 

満足げな顔で控え室に消えていった希を見ながら、私は小さくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、全員が部室に集まりガヤガヤとしている中、真姫は相変わらず上の空という様子だった。

 

 

 

絵里「みんな揃ったかしら。」

 

海未「はい、みんな着替えていますね。」

 

凛「早く練習に行くにゃーっ!」

 

花陽「あぁ、走ったら危ないよ、凛ちゃん!」

 

真姫「ま、待って!」

 

 

かと思えば突然、大声をあげた。あまりのことにみんなが真姫に視線を向けている。

 

 

 

 

絵里「どうしたの?」

 

真姫「本当にこれで全員いるって言うの?」

 

絵里「だ、誰かいなかったかしら…。」

 

凛「えーと……みんな居るよ?」

 

 

 

真姫の言っていることは私だけではなくメンバー全員が理解できないと言った様子だった。まあ、当然なのだけれど。

 

 

 

真姫「8人しかいないじゃない!」

 

 

ことり「8人居るなら、全員…だよね?」

 

真姫「そんなはずないわ!μ'sは全員で9人よ!」

 

 

 

これはいよいよおかしい。

 

真姫はこんなことを冗談で言う子じゃない。でも、それなら尚更異変でしかない。

 

 

 

 

にこ「はぁっ!?あんた、朝から今日はどうしたのよ!?」

 

 

思わず感情を抑えられなくて真姫に怒鳴りつけてしまった。

それでも真姫は私を気にすることなく希に向き直して口を開いた。

 

 

 

真姫「の、のぞみ……。μ'sって全員で9人よね?」

 

 

 

 

 

希「真姫ちゃん…何言ってるの?μ'sは8人で全員や。」

 

 

 

 

 

希の一言で真姫の表情が凍りついた。錯乱していた様子から完全に思考停止したのか、何も話さなくなってしまった。

 

 

 

 

海未「真姫、今日は具合が悪いのでは?」

 

凛「真姫ちゃん、今日は練習お休みしたほうがいいにゃ。」

 

花陽「このまま練習するのは、私も心配かな……。」

 

 

 

優しく声をかけるメンバーたちの声で我に返ったのか、真姫はようやく

 

 

 

真姫「そうね……。今日は先に帰らせてもらうわ……。」

 

 

と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫抜きでやった練習が終わり、着替えてから部室を出る。

希が部室に残る用事があるらしいから鍵を渡して学校をあとにする。一緒に残っても良かったけど、こころ達のご飯も作らないとならないし、勉強だってやらないといけないと考えると時間を無駄に使うことはできない。

 

 

(さてと、今日の夕飯は……ん?)

 

 

 

スーパーに向かう途中、すれ違った子と目があった。

一瞬すれ違っただけだけど、どこか頭の片隅に引っかかる感触があるのが気持ち悪い。どこにでもいそうな雰囲気なのに、あの子のことはなぜか頭に残った。

 

 

 

 

にこ「ねぇ!」

 

 

振り返って声をかけようとしたが、後ろにはあの子の姿は見当たらなかった。居なくなるには異常なくらい早いから、すれ違ったあとに走ったのだろう。

 

 

 

(あの茶髪……どこかで会ったことがある?)

 

 

 

思い出そうとするとガンガンと頭が痛くなるような感覚があったので、私は深く考えないようにしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

今日もそつなく一通りの家事を終わらせて、お風呂、勉強も終わらせたのでようやく好きなことができる時間になった。

SNSをチェックし終わって次は何をしようか考えていると、カバンに入れていた封筒のことを思い出した。

 

 

 

にこ「見るべき、よね?」

 

 

 

正直見る気が進まないけど、ファンレターだったら読まないとファンの子がかわいそうなので一応目を通すことにした。

封筒の中には手紙が入っているだけで何もなかったので、そのまま手紙に目を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

μ’sのみんなへ

 

 

今は前を向けていますか?

それとも、大変なことが起きていますか?

今よりも悪い状況になってしまったらごめんなさい。

そうなっていたら、私のせいなのでなんとかします。

 

もし1人でもメンバーの誰かに悲しいことが起きてしまったら助けてあげてください。

ひとりぼっちで抱えている悩みもみんなで助け合えばきっと乗り越えられると思います。

みんなと一緒に最後まで頑張ってください。

 

 

高坂穂乃果

 

 

 

 

 

(こうさか、ほのか……。)

 

 

 

ファンからの手紙とは考えにくい内容だった。

きっと関係者からの手紙なのだろうけど、一体何者だったのかが思い出せない。

 

 

でもこれで真姫のおかしな言動の合点がいった。

今日のことはこの手紙の主である『高坂穂乃果』が起こした事件だったということ。

 

 

 

にこ「見つけたらとっちめてやろうじゃない。」

 

 

 

犯人のことを思い出したら、場所を探し出して真姫を元に戻す。

良かれと思ってそいつは何かをしたのだろうけどいい迷惑だ。

 

 

にこ「そういえば……。」

 

スーパーですれ違ったあの子が妙に心の中でモヤモヤと残っていた。すぐに走り去っていたのもおかしいし、色々と不可解な点が多かった。

 

 

 

 

にこ「まさか……。」

 

 

 

 

 

確証は持てないものの、あれこれ考えても進展しなさそうだし、とりあえずアイツを高坂と仮定しておいて今日は寝ることにした。

 

 

 

 

 

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