敵(絢瀬絵里 Part1)
真姫の様子がおかしかったのには理由があると思ってずっと気になっていたけど、次の日になって希の顔色もおかしなことに気づいた。ただ、当の希自身はそのことに気づいていなそうで、ご機嫌そうに部活のことについてお喋りしていた。
絵里「希、大丈夫なの?」
希「うん?急にどうしたん?」
絵里「今日は顔色があまり良くないわ。」
希はペタペタと自分の顔を確かめるように触った。それだけじゃ、わかるはずないじゃない。
希「えりちにはそう見えるんや。確かに、昨日はあまり寝付けられなかったんよ。」
絵里「今は大会前だし入試前でもあるから、あまり無理しないでね。」
希「えりちは心配性やね。睡眠不足で調子悪くなるほどうちは弱くないんよ。」
絵里「ふふっ。丈夫なら何よりよ。」
単なる寝不足とは考えにくいけど、誤魔化すってことは言いにくいことなのでしょうから、無理に詮索するのはやめることにした。
希「そういえば。」
絵里「どうかしたの?」
希がわざとらしく人差し指を立てて、話題を変えてきた。
希「昨日、可愛い妹が来たんよ。」
絵里「え、希にも妹なんていたの?」
希「ううんううん。妹のような友達ができたって感じかな。」
今まで知らなかった新事実を話されるのかと思って焦った。本当にいたずら好きよね、希って。
絵里「びっくりさせないでよ、もう。」
希「でね、その子が可愛くて、えりちの気持ちが少しわかった気がするんよ。」
絵里「私の気持ち?」
希「そう。アリサちゃんと一緒にいるときのえりちの気持ちが。」
希の顔がフニャッと柔らかくなる。今まで悟ったことはなかったけど、亜里沙の話をしているときの私もきっとこんな顔をしているのだろうと思って、心の中で少し笑ってしまった。
絵里「ああ、そういうことね。そうね、確かに亜里沙のことはとても大事だし、自慢の妹だと思ってるわ。」
希「それでね、ウチが眠れなかったのは、急にそんな子ができてドキドキしてたからかもしれないなって。」
しかし、よく考えるとその新しくできた妹さんは、妹なんて言うくらいだし、希の家にいるということになるのかもしれない。本当にそれって大丈夫なのかしら。
絵里「ちょっと待って、希。つまり、その子は希の家にいるの?」
希「昨日から一緒に住んでるよ。」
絵里「……大丈夫なの?」
希「何が?」
絵里「何がって、希の負担になっていないか心配してるのよ。」
希「ほのかちゃんは良い子やし、何よりも一人じゃないから安心するかな。」
「ほのか」は妹さんの名前のようだけど、どこか懐かしい響きだと感じてしまう。前にも聞いたことがある。そんな気がした。
絵里「そう、希は優しいのね。」
希「優しいというか、お節介焼き?」
絵里「確かに、そうかもしれないわね。」
希「そこは否定してほしかったなあ。」
絵里「それで、その子としては希の家にいて大丈夫なの?」
希「ううーん。なんか家出してるっぽいから、気が済むまではいさせてあげようかなって。」
絵里「あまり良くないとは思うから、なるべく早く帰してあげないとよ?」
希「わかってる。けど、可愛いから離したくないなあ。」
絵里「のぞみ。」
希「大丈夫やって。そこの節操はしっかりしてるつもりだから。」
絵里「まったく、もう……。」
この子は本気で言っているのか、冗談で言っているのかわからないことがよくある。その家出しているほのかちゃんの親御さんにも心配をかけさせないためにも、希には早く妹離れしてもらわないといけなそうね。
にこ「『希ったら。』で済ますあたり、絵里も甘いのよ。」
不意に後ろに立っていたにこに毒づかれた。
絵里「い、いつの間にいたのかしら?」
にこ「希の『否定してほしかったなあ。』からよ。」
希「えりちの優しいところがたっぷり見れたね。」
にこ「優しいのは希にだけよ。」
ジトッとした目でにこが見つめてくる。どうして二人に冷やかしの目線を向けられているのか全くわからない。
絵里「二人して私をからかっているのかしら?」
希「いやいや、まさか。」
にこ「その言い方じゃ説得力ないわよ!」
絵里「もう、いいわよ。」
このまま話していても希のペースに持っていかれちゃうし、話を終わらせることにした。
にこ「ほら、拗ねちゃったわよ?」
希「ごめんてえりち。今度何か奢るから。」
にこ「やり方が古いわね。」
絵里「……チーズタピオカ。それで許すわ。」
希「また、意外なところを……。」
にこ「一本食わされたわね。あそこ、人気だから並ぶの大変よ?」
希「ムムム……。」
絵里「うふふ♪」
この勝負、私の勝ちね。なんて、いっぱい食わせてあげた希を見ながら満足していると、続けて希が口を開いた。
希「まあ、いいや。それでね、その子を今日の練習に呼んだんだ。」
にこ「急すぎるわよ。」
絵里「学校の許可は?」
希「学校見学ってことにして♪」
にこ「やりたい放題ね……。」
希の強引さには呆れるくらいだけど、臆病者な私にはこれくらいの方がいいのかもしれない。そう、μ’sに入った時みたいに……。
絵里「なら、今日の練習は張り切らないとかしら。」
希「そうやね!」
にこ「まったく。しょうがないから、にこの虜にしてあげちゃうにこ。」
希「うーん、にこっちはブレないね。」
にこ「冷めた目で見ないで!」
にこの叫び声が廊下に反響している中、明るい茶髪をした少女がこちらに駆け寄ってきた。
希「きた、きた!」
ほのか「遅かったかな?」
希「平気だよ。」
希と自然な会話をしているあたり、どうやら彼女がほのかさんらしかった。
絵里「その子が?」
希「そうだよ。」
ほのか「初めまして、ほのかって言います。」
にこ「えっ。」
希「にこっち?」
にこ「な、なんでもないわよ。」
にこの意味深な反応が気になるものの、ほのかちゃんがどんな子か見ることができて安心した。見た目は、悪い子じゃなさそうだし、何よりも希が一緒にいて楽しそうにしているのが見れたから何も文句はなかった。
絵里「初めまして。私は絢瀬絵里。高校三年生で希の友達よ。それと、この前までこの学校の生徒会長をしていたわ。よろしくね。」
ほのか「よろしくお願いします。」
ほのかさんの挨拶が終わって、にこの様子を気にした希が顔を曇らせた。
希「にこっち?」
にこ「あなた、本当に初めまして?」
ほのか「え?」
にこの質問でドロッとした嫌な空気が流れ込んだ。にこに悪意はない、でも、この雰囲気はとても重苦しくて嫌なものだった。
にこ「……ごめん、気にしないで。私は矢澤にこ。希たちと同じ三年生で、アイドル研究部の部長をしているわ。」
ほのか「よろしくお願いします。」
にこはそう言ったけど相変わらず怪訝そうな目をして、ほのかさんを見ている。何があってにこに懐疑心を抱かせているのかは、皆目見当がつかないけれど、きっとほのかさんには何かがあるのだとやんわりとだけ感じた。
希「そうしたら挨拶も済んだから、部室に行こっか。」
ほのか「うん。」
ほのか「今日はみなさんの練習の様子を見学させてもらいます、こうさかほのかです。よろしくお願いします!」
ほのかさんの挨拶はまるで新入部員のような感じで、こんな時期には不思議な感じだったけど、みんなも私と同じような反応をするだけで、邪険な態度をしている子はいなそうだった。にこ以外は。
凛「この時期に部活見学なんて珍しいにゃ。」
花陽「希ちゃんの友達なんだよね?」
ほのか「よろしくね。」
凛「でも寒い中なのに見学に来るなんて、希ちゃんと大の仲良しさんだにゃ。」
希「そうやね。」
海未「よろしくお願いします、高坂さん。」
ことり「よろしくね、高坂さん♪」
ほのか「高坂さん……。」
少し顔を曇らせたほのかさんを気にして海未が近づいていった。察するのが本当に早いわね、海未って。
海未「高坂さん?」
ほのか「ほのかって、呼んでくれないかな?」
ことり「え?」
ほのか「他のみんなも、私のことは『ほのか』って呼んで欲しいなって。」
驚きの提案に面食らった私たちは、思わず顔を見合わせる。
海未「下の名前で?」
希「ほのかちゃん♪こんな風に気軽に呼んでほしいんやって。」
希の助け舟もあって、みんなの中にその呼び方をすることを受け入れる心ができた。
凛「わかったよ、ほのかちゃん!」
ことり「えへへ、じゃあ私も。改めてよろしくね、ほのかちゃん。」
花陽「ほのかちゃん、今日はよろしくお願いします。」
私と違って、すぐに距離を縮められるのは妬いちゃうくらいに羨ましいわね。
絵里「ハラショー♪溶け込むのが早いわね。」
ほのか「みんな、ありがとう。」
海未「私はあまり、ちゃん付けで呼ぶのに慣れていないので……。」
ほのか「海未ちゃんは『ほのか』でいいよ。」
海未「え?わ、わかりました。」
海未の様子を察してか、呼び捨てを提案するあたり何かのエスパーの域に感じてしまう。
花陽「本当は真姫ちゃんって子がいるんだけど、今日はお休みで……。」
凛「昨日から調子が悪そうだから心配だにゃ。」
ほのか「真姫ちゃんは怪我していたりするの?」
海未「いえ、そのようなことはないはずですよ。」
ほのか「そうなんだね。」
ことり「ほのかちゃんは真姫ちゃんのことを知ってるの?」
ほのか「ううんううん。少し気になっただけだよ。」
この馴染むスピードの異常さには、少し違和感を感じるけど、仲良くなってもらう分には悪くないわよね。
にこ「さあ、ラブライブまで時間ないんだから、早く練習を始めるわよ!」
にこの声でゾロゾロと部室を後にする私たち。そんな中、希とにこがやりとりしているところを私は見逃さなかった。
海未「ここで一旦休憩にしましょうか。」
絵里「希?本当に大丈夫?」
希「おかしいなあ。ちょっと動いただけでこんなに頭痛くなるなんて、今までなかったんやけど……。」
凛「希ちゃん、具合が悪いの?」
希「昨日寝つけられなかっただけだから、平気。」
にこ「睡眠不足はアイドルの敵よ?」
凛「アイドルじゃなくても良くないと思うにゃ。」
にこ「特によ、とくに!」
練習が始まっても希の体調は良くならないままで、むしろ顔色はどんどん悪くなっているようにも感じた。
ことり「とりあえず、調子が良くないようだし休んでる?」
希「ううんううん。時間もないことやし、このまま進めよ?」
絵里「あまり無理だけはしないでね。」
希は首を縦に振るだけで、何も言わずに水を飲みにいってしまった。嫌な感じがするけど、今は希を信じるしかないと思ってしまった。
練習も進み、フォーメーション練習に取り掛かっているところで、明らかに希の調子がおかしくなっていた。足元はおぼつかない感じがするし、ポジションもズレていて、あまりにもいつもの様子とかけ離れている。一旦練習を止めようと思ったその直後だった。
希「っい。」
にこ「希!」
ことり「希ちゃん!?」
希「頭がっ、割れそうにぃ……!」
絵里「希!」
ほのか「希ちゃん!!」
希が頭を押さえながらしゃがみこんでしまった。急なことに動揺しているメンバーもいれば、希のために動こうとしているメンバーもいたから救われる。屋上の入り口のところで見ていたほのかちゃんも走り寄ってきていた。
海未「できるだけゆっくり深呼吸して、頭を自分で押さないで!」
ことり「誰か保健室の先生を呼んできて!それと、水をお願いっ!」
凛「り、凛が呼んでくる!」
花陽「水は持ってきたよ!」
希「はぁ、はぁ……。」
そのまま、私に寄りかかる形で希は倒れこみ、養護の先生と一緒に希を保健室に連れていったところで、今日の部活はおしまいということになった。練習をもうしないことをほのかさんに伝え、希の部屋の鍵を希の荷物から拝借して渡して、先に帰るようにした。とても心配そうな顔をしていたのだけど、とりあえず帰ってもらうことになった。
絵里「希……。」
海未「あまり思い詰めないでください。」
にこ「そうよ、絵里だけの責任ではないわ。」
絵里「でも、私は朝から希と一緒にいて、体調が悪そうなことも知っていたから、悔やまれるわ。」
にこ「あんたらしくないわね。切り替えてシャキッとしなさいよ。」
凛「にこちゃんの言う通りだと思うよ?先生も寝たら大丈夫って言ってたにゃ。」
落ち込む私の様子を見てみんなが励ましてくれる。優しさは嬉しかったけど、今は希のことが気が気ではなかった。
花陽「でも、大事じゃなくてよかったね。」
ことり「それは、そうだね。」
凛「しっかり寝ることが大事だって改めて思ったよ。」
にこ「当たり前よ。」
海未「ことりは寝る時間が少なくなりがちですから気をつけてください。」
ことり「海未ちゃんもだよ?」
花陽「希ちゃんは受験勉強だったのかな?」
希の頭痛の原因は何となく察していた。今までの違和感からして、多分……。
絵里「いえ、違うわ。」
凛「原因はわかってるの?」
にこ「はっきりしてるわ。」
ことり「そうなの?」
にこの自信ありげな語気に少し驚くけど、ずっと訝しむような目を向けていたところからすると、私の推測ときっと同じ意見なのだろうということは瞬時に理解できた。
絵里「にこも知ってたのね。」
にこ「あんた達の会話は聞こえてたし、それに……。」
にこはカバンから紙切れを取り出して、私たちの前にそれを突き出した。
凛「これは?」
花陽「何かの手紙、みたいだけど……。」
にこ「これが今回の希の頭痛の原因よ。」
にこの持っていた手紙にみんなの集中が注がれる。一見、何の変哲も無い手紙ではあるのだけど……。
海未「手紙にはなんて?」
にこ「何かおかしなことが起きるっていう予言よ。」
ことり「これって、どこにあったの?」
にこ「部室にあったわね。」
凛「名前にほのかって書いてあるけど、これって、まさか?」
にこ「あの子でしょうね。」
そこまで知っていたからこそ、会ってからずっと睨むような視線を彼女に浴びせていたのね。
花陽「ほ、本当なの?」
絵里「希の家に泊まっていたみたいだし、間違いないわ。」
凛「えっ。」
海未「では、彼女が希の睡眠を妨害したかもしれないと。」
私の一言で急に現実味を帯びたようで、みんなの顔に焦りの色が見えるようになった。
にこ「わからないわね。希が仲良くしている以上、その線は考えにくいけど。」
花陽「でも、それだと体調が悪くなる理由が……。」
にこ「変なことが起きたら、それは自分のせいだって手紙に書き残していたのよ。」
凛「じゃあ、やっぱり……。」
みんながほのかさんのことを訝しむようになっている中で、ことりだけは私たちとは違った悩ましいといった表情をしていた。
ことり「……そう、かな。」
海未「ことり?」
ことり「うまく言えないんだけど、ほのかちゃんは悪い子には見えなかったんだ。むしろ懐かしい気がするなあ、なんて思ったりもしてて。」
花陽「ことりちゃんも?実は、私もで……。」
二人が白か黒か決めるのが苦手なタイプだということは知っていたし、そういう判断をすること自体には驚きもしなかったけど、ことりが話しの流れを切るように話してきたことにはびっくりした。
にこ「真姫が昨日言ってたこと覚えてる?」
凛「μ’sが全員で九人だって言ってたこと?」
絵里「にこ、それは……。」
にこが次に言うことがわかったからこそ、それを聞くのはあまりいい気がしなかった。
にこ「私はアイツがそうなんじゃないかと思ってるわ。」
花陽「ええっ!?」
海未「そんなこと、ありえるのでしょうか?」
凛「凛、ほのかちゃんのことは覚えてないにゃ……。」
にこ「そう、もし私の考えた通りなら、真姫以外はみんな忘れてるってことになるわ。」
ことり「なんでそんなことを……。」
絵里「私たちに隠したい事情が、何かあるんでしょうね。」
一つだけの理由とは限らないけど、彼女から打ち明けてこない以上は疚しいことがあるからだと思う。
にこ「とりあえず、真姫は私の方から説得しておくから、絵里は希の家にいるアイツをつまみだしてきて。」
花陽「つまみ出すなんて……。」
にこ「当然でしょ。メンバーが二人もおかしくなってんのよ。チームの危機よ、危機!」
にこにしては言葉に明らかな熱を帯びているから真剣なのは伝わってくるし、何よりもこの時期にこれ以上の問題を起こされるわけにはいかない。なら、歳上としてまず動き出してあげるのが筋よね。
絵里「普通は賛成できないけど、こうなっている以上は見過ごせないわ。」
海未「絵里、いいのですか?」
絵里「状況が状況なの。私はみんなのことが大事だし、彼女にも何か事情があるのかもしれないけど、希の家からは出ていってもらうわ。」
ことり「うみちゃん……。」
海未「ことり、ここはにこ達に従いましょう。確かにこのままでは良くないですから。」
ことり「そう、だけど。」
否定気味な二人の意見は押し切る形にはなるけど、きっと悪い方向に話が進むことはないはず。
にこ「決まりね。とりあえず、今後はコウサカホノカが変なことをしてきたら、私か絵里に相談しなさいよ。」
凛「わかったにゃ。」
花陽「うん。」
海未「それでは今日の部活はこれで。」
早急に手を打たないといけないと思った私は、希を連れて家に帰った後にに希の家に立ち寄ることにした。早々にあの子には出て行ってもらわないといけないのだから、モタモタしている時間なんてなかったから半ば強行的だけどしょうがない。
希の家に着くと、部屋の明かりが点いているのが分かった。家主がいないのにおかしな話だと改めて思う。呼び鈴でほのかさんを呼び出して、玄関までくるように伝えた。
ほのか「えり、さん。どうしましたか?」
絵里「少し、いいかしら?」
ほのか「希ちゃんがいないから、勝手に上げていいかわから」
絵里「話す場所はここでいいわ。」
ほのか「い、いや!お話しするのなら中で落ち着いてから」
どうもお茶を濁すような態度が気になって、はっきりと伝えたほうが良いと感じた。
絵里「単刀直入に言うわ。明日までにここから出て行きなさい。」
ほのか「え?」
絵里「今すぐに出て行けなんて言わない。でもね、あなたがずっとここに居ると希が困るの。」
呆気にとられた様子だったけど、なんとか絞り出して希のことを聞いてきた。
ほのか「希ちゃんは、今どこにいるの?」
絵里「今は私の家にいるわ。」
ほのか「具合は?」
絵里「大丈夫よ。でも、このままだと良くない状況だからここに来ているの。」
ほのか「……どういうことですか。」
状況が理解できていないみたいだったから、隠し通すことはやめにした。
絵里「あの頭痛の原因は、あなたかもしれないって話になっているの。」
ほのか「わたし、ですか!?」
絵里「詳しい事情は話せないけど、私たちの中ではそういう話になっているの。」
ほのか「そんな……。」
ショックを受けた様子が見られたけど、あまりに大きな反応だっただけにワザとらしさもどこかで感じてしまう。
絵里「ねえ、あなたって何者なの?」
純粋な質問。話してくれて正体がわかれば解決するかもしれない、そう思ったのだけど。
ほのか「わ、わたしは……。」
そのまま黙り込んでしまった。
絵里「話せない以上は、疑ってかからせてもらうわよ。とにかく、希のことを思うなら、明日の朝までにここから出て行きなさい。」
私はそう伝えてその場から去った。去り際に昔何処かで感じたようなイライラした気持ちがあったけど、それは今日の出来事のせいだと自分を誤魔化して違和感を拭い去った。帰ったら希がいるのだから、しっかりと看病しないとならないし、何よりも大会までの残り少ない期間を惜しみなく過ごさなければならないと自分を鼓舞してほのかさんのことは一旦忘れることにした。