暗闇の中。
ニコは目覚めた。
「……はっ。ううん……?」
ニコは偏頭痛のような痛みを頭に覚え、しかめっ面をしながらマットレスと掛け布団の隙間から這い出てくる。
くぁ、と可愛らいあくびを一つ、何もない空間に向けてから、ニコは辺りをきょろきょろと見渡した。
「……ここ、どこだろう?」
どうやらニコには、この場所についての記憶がないらしい。
「それに、頭がすごく痛い。風邪を引いちゃった時みたい」
どうやらニコは、頭が痛いらしい。
まあ当たり前だ。一瞬にして世界を越えてやってきたのだから、頭の一つも痛くなるだろう。ヤマタノオロチを除いて。
ニコは柔らかい緑の明かりのさす窓に駆け寄り、その明かりを頼りに部屋の四方八方を眺め始めた。
隅にある枯れ木の鉢植え、壊れたテレビ、埃の詰まった棚……。
そして最後に、こちら側。
「カメラだ!おーい、誰か見てるー?」
ニコはこちらに手を振った。
愛らしい瞳が真っ直ぐに、明るく光る。
彼女?彼?どちらにせよ、ニコは黄色い青色のレインコートを着ていた。
先程それで眠っていたが、肩がこったりはしないのだろうか。少なくとも現在のニコに疲労という文字は見えないが。
「いないのかな……」
ニコは部屋を物色し始めた。
棚を叩き、テレビの内側を覗き、枯れ木を調べた。
「あ」
枯れ木が折れた。
……なんの問題もない。ニコはそれを持っていくことにした。
「……読めない字で書かれてる。なーにんもわかんない!」
ニコは手記を棚に戻した。
「テレビだ。電源がつかないみたい」
ついても液晶がないためにテレビとして機能はしないはずだが。この状況でテレビを見ることに、ニコは何を見いだしたのだろうか。
「テレビの下に開くところがある!」
ニコはSDカードを手に入れた。
「他に調べるものはないみたい。……だけど、何かできそうなことはあるかな?あっ、SDカード!カメラに入れれば何かわかるかも!」
ニコは監視カメラの一つが家庭用のものであることに気付いたらしい。
「それじゃあ、枯れ木で落とせないかな」
一つのカメラからの信号が消えた。どうやら落とすことに成功したらしい。
ニコはカメラにSDカードを挿入し、中のメモリーを読み始めた。
『ハーイ』
「えーと……こ、こんにちは?」
『これはテストです。あなたはこの世界を救わねばなりません。あなたは選択し、苦悩します。手始めに、外に出ましょう。外に出れば、あなたはきっと後悔します』
ニコは部屋の扉から、カタリと開錠の音が響くのを聴いた。
「出られるようになったみたいだ。でも、出ると後悔するんだよね?」
ニコは首を傾げ、唸り始めた。
───運命の選択だ。
ニコは現在、知らないところで知らない人物に話しかけられた。
これから、あなたはニコをどうするか選ばなければならない。
……え?あなたとは、誰かって?
お前だよ。
スマホか?パソコンか?タブレットか?デバイスはなんでもいい、この物語を軽率な気分で見ている君の事を言っているんだ。
そう、テスターとは君たちのことだ。
先ほどのメッセージも、君たちに向けてのものだ。
今、ログを遡ったね?
そう。それが君たちにある力の一つ。過去を見ることができる。
それでは、君たちのセンスが、いいチョイスを選ぶことを望む。
くれぐれも、君の画面の中にいる小さな冒険者を殺さないでくれよ。
さぁ、どうする?
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扉から出る
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扉から出ない