【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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更新します。

今回はシホの葛藤を少しいれてみました。
うまく書けてればいいですが…。
それとタイトル通り前半ほのぼの。後半バトルに分けました。

では、どうぞー。


第十話        『海鳴温泉(前編)』

 

 

 

 

Side シホ・E・シュバインオーグ

 

 

本日は毎年の連休で恒例という家族旅行にいくらしい。

家族旅行といっても高町家だけでなく、アリサとすずか。

それに忍さん、ノエルさん、ファリンさんも誘った大勢の旅路である。

車の割り当ては、

士郎さんが運転する車には桃子さんと美由希さんとなのは達三人。

ユーノとフィアは二人とも士郎さんの方に乗っている。

そしてなぜか私は忍さんが運転する車の方に乗っている。

忍さんと恭也さんが前の席で後ろの席に私を真ん中に左右にノエルさんとファリンさんが座っている。

前を先に行っている車からたまになのは達が手を振ってくるので私も一応返しておくけど、どうにもこの配置は変だと思う。

普通なら見た目子供である私もなのは達と一緒の方に乗っていると思うから。

 

「あの…忍さん。別に構わないんですけど、なぜ私はこっちに乗員しているのでしょう?」

「ん。ちょっと聞きたい事があってね。…恭也から聞いたんだけど、シホちゃん、この世界の住人じゃないんだって…?」

「えっ…?」

「こら、忍。ストレート過ぎるにも程があるぞ?」

「でも無駄に話を引き伸ばすよりは効率的だと思うわよ? あ、安心してね。すずかには話していないから」

「そ、そうですか…。でも、ということはノエルさんとファリンさんがこの場にいるって事は…」

「ええ…。当然知っているわ」

「はい。恭也様からお話は伺わせてもらいました」

「うん…。シホちゃん、ごめんね」

 

ノエルさんとファリンさんは少し声のトーンを落として気まずげに答えた。

 

「やっぱり、そうですよね…」

「…シホちゃん。悪いと思ったがどうしても忍達には話しておきたかったんだ。

いざという時にシホちゃんの素性がバレでもしたら…俺達だけじゃシホちゃんを守りきれないかもしれないから…」

「…大丈夫です。その時はまた姿をくらまします。慣れていますから…」

「そうじゃない…そうじゃないんだ。シホちゃんはもう俺達の家族も同然だ。

だから一人で背負い込まないでいつでも相談して欲しい。

もう…俺はこの間の時のような目をシホちゃんにしてほしくないんだ…」

 

恭也さんはなにかを搾り出すような掠れた声で私に問いかけてきてくれた。

 

「この、前…?」

「そう。あの時はうちの不備でもあるんだけど防衛装置が作動しちゃったでしょ?

それで私達は直接見ていないけど、恭也がいうにはロボット達がすべていなくなったのにそれでも緊張状態を解かないで恭也を敵だと思って睨んでしまったそうじゃない?」

「あ、あれは…ただ…」

「分かっている。シホちゃんの前の世界の話を思い出せば容易に想像がつく。そうでもしないとすぐに追っ手から逃げられなかったんだろう?」

「………」

 

私は恭也さんの言っている事がほぼ真実なだけに無言で俯くことしか出来なかった。

そしてリン達の助けがなければ、私は当の昔に死人と化していただろう。

恭也さん達に迷惑をかけたくなかったのに少し話しただけでここまで心配してくれる…。

嬉しい、という思いとともに…同時にこうなるなら最初から素性などを話さずに隙を見て逃げ出せばよかったという思いも頭を過ぎる。

…この世界に来る前までの私ならまだ冷徹に振舞えていただろうに、今ではもうそれもうまくできない。

私は…いつからこれほど弱い人間になってしまったのだろう…?

少しの心遣いの言葉だけですぐに心が揺らぐ。

もうがらんどうではなく、確かに目指すものが心の中にあるというのに…ッ!

そう、もう『全てを救う正義の味方』にはなれないけど、だけどイリヤの願いの一つでもある『大切な者達を護れる正義の味方』という目標…。

そして、私にとっての幸せの探求…。

それらの様々な思考がグチャグチャになって上手くまとめられない…。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

Side 高町恭也

 

 

 

…シホちゃんが俯いてしまい少ししてファリンさんの方に体を預けて気絶してしまった。

安心させようとしたけど、どうやら逆に精神的に追い込んでしまったらしい。

気づけばシホちゃんの目じりにはわずかだが光るものが見える。

 

「どうやらまだ自身の中で葛藤をしているのでしょう。

おそらく迷惑をかけたくないというところですね…。

まだお嬢様達と同い年くらいだというのに、シホお嬢様の世界の裏は非情なものだったのですね…」

「シホちゃん、シホちゃん…大丈夫ですよ? もうあなたを襲う人はいませんから…だから安心していいんですよ?」

 

ノエルさんがシホちゃんの頬をまるで硝子細工を触るように優しく撫でている。

そしてファリンさんが涙を流しながらシホちゃんをギュッと抱きしめてくれている。

そう…もうシホちゃんは一人じゃないんだぞ?

シホちゃんには俺達家族がついている。

だから、今は安心してお休み…。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

Side 高町なのは

 

 

 

シホちゃん…どうしたんだろう?

途中のパーキングエリアでシホちゃんが車の中でファリンさんと一緒になって寝ていました。

お兄ちゃん達がいうには途中で疲れがたまっていたらしく寝てしまったんだろうと言っていたけどなにか隠しているみたいだった。

でも少ししてシホちゃんは起きたら、

 

「大丈夫よ、なのは。私は大丈夫…」

 

シホちゃんは笑顔を浮かべてそう言ってくれていたけど、やっぱり無理しているように見える。

やっぱり後でお兄ちゃんになにかあったか聞いてみよう!

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

そうして少しの不安が残る中で一同は海鳴温泉に到着した。

だがここに来て一変、一同は楽しそうに頬を緩ます。それはシホも例外ではない。

むしろ楽しみにしていた節すらある。

元・日本人として温泉というのはひどく魅力的なものである。

高町夫婦は後でゆっくりと浸かるというので男性である恭也以外…否、シホ(…とフィアット)のたっての希望でユーノは恭也に預けられた。

その事になのはは不満の色を示していたが、一方でユーノはシホ達に感謝の視線を送っていた。

だが二人はもしユーノが女風呂に入ってこようものなら沈める心髄だった。

…それを言うと、シホも中身は衛宮士郎という青年体の魂を持ち合わせているのだから後で入るとでも言えばいいのだが…シホ自身もう男性としての意識を持っていない節がある。

シホは気づいていないが、

『女性の体に適応してきているので別に恥ずかしくない。』

『逆に男性に見られたら恥ずかしい…』

という気分を無意識に実行しているので、美由希とも普通にお風呂を一緒に出来る。

そして以前お風呂場で入浴後にばったり恭也と遭遇してしまい自身でも信じられないくらいの“女性”の叫び声を上げてしまったのも苦い思い出であるらしい。

その際に士郎が恭也を気絶させて、どこぞに連れて行ったが、シホはその時思わず恭也に心の中で謝罪した。

同時にもう男性にもし戻る事があっても戻れないだろう…と、密かに涙したシホである。

 

まぁ、それが意味することは脱衣時に、

 

「忍さんって胸、大きいよね」

「アリサちゃんだって前よりでかくなっているんじゃない?」

「キャー! 忍さん、やめてー!」

「美由希さんも綺麗な肌をしていますね」

「すずかちゃんだって綺麗な肌じゃない…」

 

というように一般男性が見聞きすれば偏見かもしれないが涙を流しそうな光景が広がっているがシホは特に関心はないらしい。

と、いうより逆に自身も恥ずかしいという気持ちが沸いてきている。

 

(…私もとうとうここまで麻痺してきたのかな?)

 

一同と少し離れた場所で、(なのはは隣にいるが…)シホは衣服を脱いでいた。

だがシホが服を脱ぎだした辺りからなぜか急に周りが静かになってきた。

なぜだろう? と思いながらも気にせず服を丁寧に畳んでタオルを体に巻き終わると、

 

「なぜ、皆さんは私の方を凝視しているのでしょうか…?」

 

シホがそう尋ねてみたけど一同は一度咳払いをして何事もなかったかのようにお風呂場に向かっていった。

 

「…? どうしたのかしら」

《それはきっとお姉様の肌がとても綺麗で魅力的だったからですよ》

《そうなの…?》

《はい!》

 

シホは少し釈然としない様子だったが気にしてもしょうがないと思って銭湯の中に入っていった。

少しして隣の男の風呂から恭也の声が響いてきて、「ユーノをそっちにやるから受け止めてくれ」と言ってきた。

シホとフィアットは同時に『馬鹿なッ!?』という感想を抱いて未然に防ごうと思ったが、すでにユーノはこちらに投げられていた。

それをなのはが見事にキャッチして三人娘に弄られまくっていたが、

 

《兄さん! 殺されたいんですか!?》

《恭也さんに言ってよ! 僕の力じゃ抵抗できないよ!》

《…恭也さんも無謀なことを…。狼を放り込んだにも等しい行為なのに…》

 

それからなのは達三人は露天の方に(ユーノはなのは。フィアットはアリサに掴まれて)行ってしまった。

シホはやれやれと溜息をつきながら、美由希達がいる場所の隣に沈んだ。

 

「お風呂はもっと静かに過ごすものだと思うのですけど、そこの所はどうなんでしょうか?」

「別になのは達の年齢ならあれくらいがちょうどいいと思うよ? むしろシホちゃんの方が落ち着きすぎている感じだけどね」

「そうでしょうか…」

「その通りよ。それで、少しは落ち着いた…?」

 

忍の問いかけにシホは微笑を浮かべながら、

 

「はい。一度頭の中をクリアにしたらスッキリしました。

それに一気に想いが押し寄せてきてくれたおかげでこれからについても色々と考える事が出来ました」

「そう…。それならよかったわ。気絶しちゃった時はどうしようと思ったんだから」

「ご迷惑おかけしました。でももう大丈夫です」

 

それで会話は途絶えてしばし経過した頃に、

 

「…まだ、胸をはって頼るってことは私には難しいです。今まで一人で不器用に道を貫いてきましたから…」

「「………」」

 

二人はシホのその言葉に無言で耳を傾けた。

 

「だけどいつか…ううん、もう少し時間を置けたら少しずつでも頼っても…いいですか?

私は…もう道を踏み外したくない。

美由希さんや忍さん…それになのは達や士郎さん、桃子さん、恭也さん達には…、前の世界で家族のように接してくれた人達のように悲しい想いをしてほしくない。だから…」

「…うん。それだけ聞ければもうなにも言わないよ。

それに遠慮なんてしなくていいんだからね? 私達は家族なんだから」

 

美由希がシホの後ろから手を回して抱きしめてくれた。

 

「そうよ。もうシホちゃんにとって二度と取り戻せない過去かもしれないけど、まだやり直せるんだから現在(いま)を精一杯生きなきゃ…そうでもないと置いてきた人達に申し訳つかないわよ。

だから遠慮なんてしなくていいの! わかったら返事!」

 

忍も励ますようにシホの手を握ってくれた。

それでシホは心が満たされる気持ちになって久しぶりに眩しい笑顔を浮かべて「はい」と答えた。

だがその際二人は思わず顔を赤くしてしまった。

そして『やっぱりその笑顔は反則ね…』と思っている事が重なったりした。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

Side シホ・E・シュバインオーグ

 

 

 

なのは達より先にお風呂から出た私は広間で一人コーヒー牛乳を飲んでいる。

周りからなにやら視線を感じるが気にしない。

どうせ異国の人が珍しいというものがほとんどだろう。

おまけにコーヒー牛乳を飲んでいれば尚更だ。

 

「ふぅ…でもやっぱり私は少し涙もろくなったかもしれない。

それにすぐに心が揺らいでしまう…」

 

言葉に出すとさらにへこむ。

精神が幼くなってきていると同時に、男性としての自覚も無くなって来ている事を実感し始めているし。

まぁ自己を形成する心象世界『剣の丘・無限の剣製』があるから別に構わないけど…そう、体は剣で出来ている。

これがある限り私は私という自我を保ち続けられる。

 

「はーい、おチビちゃん達」

 

…少し詩人の気分に浸っていたところで外の廊下から最近聞いたような声が聞こえてきた。

それで覗いてみるとなのは達がなにか知らない女性にからまれていた。

少し考えて、ふと髪の色や額の宝石を見た時に「ああ…」と思い至った。

だからしかたなく私が出て行くことにした。

そろそろアリサが暴発しそうだったから。

 

「なのは達、どうしたの…?」

「あっ!」

「ッ…!」

 

なのは達三人は私の声にすぐに振り向いた。

それと同時に女性が少し苦笑したのを私は見逃さなかった。

判明…この女性はアルフだ。

敵情視察かもしれないけどさすがに出すぎだろう?

 

「お姉さん、なのは達になにか用があるんですか…?」

「いや…ちょっと知り合いに似ていた子がいてね」

「あはは、そうだったんですかー」

 

私は少し演技のこもった笑みを浮かべた。

しかしおそらく目は笑っていないだろう。

多分今の私の顔は具体的に言うと、

 

『こんばんわー! みんな元気? わたしがいない間にシロウと仲良くしてる? え、してる? うんうん、良きかな良きかな。―――殺すわ。』

 

と、笑顔で言うイリヤみたいな表情になっているだろう。

………私は心の中でなにを言っているのだろう?

ともかく、それでアルフ(断定してはいないけど)はバツが悪そうにしているし、なのは達も少し怖がっている。

そう、今私はここら一帯に限定的に威圧感を発生させているから。

『ここで暴れるなら容赦はしない』という意思表示もこめて。

 

「ご、ごめんよ。別に悪気はなかったから…じゃあねー」

 

威圧に当てられたのかアルフは顔を蒼白にしながらこの場から離れていった。

それで私は威圧を悟られないように解くと、

 

「大丈夫だった? 変な事されていない…?」

「う、うん…」

「平気だけど…シホ、あんたって可愛い顔しているのにあんな怖い表情もできるのね」

「思わず私達もビクッと震えちゃったよね」

「ごめんね。でもあーいう人にはあれくらいが丁度いいのよ」

 

なのは達と会話をしながらも目を強化して少し見回してみた。

すると少し離れた木の枝の上にフェイトの姿が見えた。

あ、目があった。すごい狼狽えているのが分かる。

それでなのは達に気づかれずに手を振ってみると条件反射なのだろうか…手を振り返してくれた。

やっぱり性根はいい子ね。

でもフェイトがいるって事はここにもあるってことかー…。

少し鬱な気分になりながらもその場を後にした。

 

 

 




hollowでのイリヤのセリフを拝借しました。
笑えたらいいですね。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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