【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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タイトル通りの展開に進めていきたいと思います。


第百三十話    『ティアナとのお話(前編)』

 

 

 

Side シホ・E・S・高町

 

 

 

…オークションが終了し、色々な報告が行われている最中。

ティアナはやはり暗い表情のままだった。

あれはいけない。

このままだったらティアナは心を病んでしまう。

 

「報告は以上かな?

現場検証は調査班がやってくれるけどみんなも報告してあげてね。

しばらく待機して何もないようなら撤収だよ」

「「「「「はい」」」」」

 

フォワードのみんなは、なのはの言葉に返事を返すがティアナだけは返事がない。

それでなのははティアナと少しお話をしようと言って二人で歩いて行った。

私も行きたかったけど、今はなのはに任せてみよう。

それからしばらくしてなのはは戻ってきた。

 

「…なのは。ティアナはどうだった?」

「うん。もう無茶はしないって約束はしてくれたよ」

 

なのははそう言って笑うけど、きっとティアナは納得はしていない。

あの子は昔の何度鍛えても腕が上達しなかった私にかぶる。

それになにか思いつめているものがあるのだろう。

やっぱりティアナのお兄さんの事で思いつめているのだろう。

それでフッ…と一緒に調査報告をしているスバルとティアナに目を向ける。

見れば今は元気にはなったけど…やっぱり私の勘が訴えている。

このままだとティアナはまた間違いを侵すかもしれないという予感が。

と、そこにフィアがやってきて、

 

「兄さんは相変わらずですね~」

「ユーノと会ってきたの?」

「はい。今はフェイトと話をしています」

「それじゃ私達も会ってきましょうか」

「そうだね、シホちゃん」

 

それでティアナの事は今は一旦置いておいてユーノと話をしに行った。

そしてユーノと会話を始める。

フェイトが、

 

「アコース査察官が戻られるまでユーノ先生の護衛を頼まれているんだ。なのは、交代お願いできる?」

「うん。了解」

「それじゃ私達はお邪魔かしらね?」

「そうですね。私達はランとレンと一緒に現場検分をしていましょう。兄さん、頑張るんですよ?」

「フィア、からかうなよ!」

「あはは。それじゃです」

 

それで私とフィアは一緒にランとレンと現場検分を行うのだった。

なのはとユーノは和気藹々と話をしている。

いい雰囲気ね。

でも二人共私ほどでもないけど鈍いからまだ当分は仕事一筋かもね。

その最中、

 

「…ラン。それにレン」

「はい?」

「なんですか、シホさん…?」

「ティアナなんだけど…二人でちょっと見てもらっていいかしら? 少し不安なのよ」

「わかりました!」

「任せてください! しっかりと見ておきます」

「何かあったら報告よろしくね?」

「「はい!」」

 

これで一応安心だけどまだこれからだな。

状況がひどくなる前に言葉はかけといた方がいいと思うわね。

 

『はーい! 機動六課前線メンバーの皆さん。撤収準備が出来たから集合してねー?』

 

そこに声がかかってきたので私達は機動六課の隊舎へと帰るのだった。

そして隊舎前で集合して、

 

「それじゃみんなお疲れ様でした。今日の午後の訓練はお休みだよ」

「明日に備えてご飯食べて、お風呂に入ってゆっくりとしてね」

「無茶な訓練はしないようにね。私がいつも言い含めているからそこは守ってちょうだいね?」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

ちゃんと返事は返してくれたからよかったけど、やっぱり無茶はするんだろうなぁ…。

なのは、フェイト、私、シグナム、ヴィータ、フィア、シャーリーのみんなで隊舎の中を歩いている時に、ヴィータが声をあげて、

 

「あのさ? なのは、フェイト、シホ。

三人共、ちょっといいか?

ティアナのことに関して話してーんだけど…」

 

そう呼び止められる。

やっぱりヴィータも気になったようね。

ま、気にするなと言われても無理か。

それでロビーで話し合われる。

 

「強くなりてーっていうのは若い魔導師なら当然の思いだし、無茶も多少はするもんだ。

だが、ティアナは…時々度を超えてる。

あいつ、ここに来る前になにか思いつめるような事があったのか?」

「うん…」

 

それでなのはは話し始める。

 

「ティアナにはね、執務官志望のお兄さんが、いたんだ…」

「いたんだって、なんだ? もう管理局をやめち………いや、もしかしてもうこの世には…」

「うん…」

 

それでモニターを開き、そこにはティアナの兄の姿が映された。

 

「ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター。

当時の階級は一等空尉。所属は首都航空隊。享年二十一歳…」

「かなりのエリートだったんだな…」

「そう。エリートだったから…なんだよね」

 

フェイトが声のトーンを落としてそう呟く。

 

「ティーダ一等空尉はとある亡くなった時の任務中、逃走していた違法魔導師に手傷を負わせたんだけど取り逃がしちゃってて…」

「陸士部隊に協力を仰いだお陰でその日のうちに犯人は捕まったそうなんだ。

だけど、その任務のことで心無い上司がひどいコメントをして問題になっちゃったんだ」

「コメントって、なんて…?」

「犯人を追い詰めたくせに取り逃がすなんて首都航空隊の魔導師としてあるまじき失態だ。

たとえ死んでも取り押さえるべきだった。

しかも行方不明になるなんてどういう事だ。馬鹿者め!ってね…」

「そして、さらにその上司は言ってしまった。

任務を失敗するような役立たずは云々…とかね」

「ティアナはその時、まだ十歳で、たった一人の肉親をなくして、そしてその最後の仕事が無意味で役に立たなかったと言われて、きっとものすごく傷つき苦しみ、悲しんで…」

「ティアナはそれで躍起になっているのよ。

きっと証明したいのよ。

お兄さんの教えてくれた魔法は役立たずじゃないって事を…。

それにティーダさんの体はまだ処置すれば助かる見込みがあった傷の状態で誰かに奪われてしまったらしいのよ」

「そうなのか…」

 

私はそれで過去を思い出す。

ティアナはやっぱり私の過去にかぶるところがある。

それで糸口が見つけ出せずにもがき苦しんでいるんだ。

今も、きっと無茶をし続けている。

 

「シホちゃん…」

「なに、なのは?」

「シホちゃんはやっぱり自分とかぶるとか思っているんでしょ?」

「まぁね…養父の願いという点では私とかぶるわね。

だからティアナがまた無茶をしようとしたら、それがどんな事かを叩き込もうと思う…」

「叩き込むって…」

「物騒だな…何をする気だ?」

「なに、別に。

私やなのは達の教導の意味を教えたいだけよ。

なのはが目指している教導の事も教えたいしね」

「そう…」

 

そう言ってお話はそこで終了となった。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

Side ラン・ブルックランズ

 

 

 

お風呂でスバルさんからティアさんの事を詳しく聞いて、やっぱりティアさんは無茶をしているんだな…と率直に思った。

私も家族を失ったけどシホさんのおかげでそこまで思いつめることはなかったからこうして余裕を持っていられる。

だけど、もしシホさんがいなかったら私とレンは世界を恨んでいたかもしれない。

だからティアさんは今まで人一番頑張ってきたけどそれが身についていないと思って焦っているんだと思う。

なのはさんの教導は確かに派手じゃないけど、でも基本に忠実だしわかり易い。

シホさんの教導も決して無茶はしてはいけないというのを徹底しているし。

なんでもシホさんが言うには反面教師だという。

昔、シホさんも無茶をしていて死にかけた事が何度もあったという。

だから私達にはそんな思いをしてもらいたくないのだろう。

隊舎の中を歩いていて、ふと外を見るとティアさんがいまだに訓練をしている光景を目にする。

ヴァイス陸曹が何度か言葉をかけてこちらへと戻ってきた。

 

「…ヴァイス陸曹」

「見ていたのか。ラン」

「はい。ティアさんはどうでした?」

「かなり思いつめてんな、ありゃ…。

俺からすりゃ羨ましい位の才能をあいつは持ってんのにな」

「シホさんもティアさんの射撃の腕は前に褒めていました。あれは伸びるって…」

「シホさんがね。シホさんから褒められたんなら相当のもんじゃねーか。

知ってるか?

シホさんの二つ名は『魔弾の射手』。

だから射撃型のほとんどの魔導師からすれば憧れの的なんだぜ?」

「はい、知っています。私にそんな二つ名は恐れ多いと言ってくるくらいですから…」

「あの人は謙虚だからな。ま、そこが憧れの的だって気づいていないのがあの人らしいけどな」

「ですね」

 

ヴァイス陸曹も分かっている。

そんなところがシホさんの魅力を余計引き立たせているのだ。

でも、やっぱりティアさんの件、これはやっぱりシホさんに報告したほうがいいね。

 

「ありがとうございます。シホさんに報告しておきますね」

「おう。お前もティアナに会ったら無茶もほどほどになって言っておいてくれ」

「はい!」

 

それでヴァイス陸曹と別れてシホさんの部屋へと向かう。

そこではやっぱり色々となのはさんと同じように訓練内容やチームでも連携について考え込んでいるシホさんの姿があった。

 

「…あ。ラン、来ていたのね」

「はい。シホさん、無茶はしていないですか?」

「私は無茶はあまりしないようにしているから大丈夫よ。昔にひどい目にあったからね」

「そういえばシホさん達の過去話ってまだそんなに聞いたことがないですけど、まだ教えてくれませんか?」

「そうね。なのは達と一緒に話せる時があったら教えるわ。それに私自身の話になると長くなるから」

「わかりました」

 

いつか話してくれるって言うなら今は我慢しよう。

そしてアルトリアさんとネロさんも部屋に入ってくると、

 

「あ、ラン。いいところに。明日の早朝は私と剣の訓練をしませんか?」

「いいんですか。アルトリアさん!?」

「ええ。あなたには才能があります。ですから私の剣を教え込んであげましょう」

「しかし、アルトリアの剣は剛の剣…余のように柔のように舞うように剣を振るうのもいいだろう?」

「どちらも学ばせてもらいますので安心してください」

 

アルトリアさんとネロさんは剣の振り方は違いがあるので色々な動きを模索できるんだよね。

アルトリアさんは文字通り叩きつけるように切り裂く剛の剣。

逆にネロさんは舞うように横を切り裂いていくような柔の剣。

だから二人が剣の話になると長くなっちゃうんだよね。

それでシホさんも昔は苦労したそうだし。

それにネロさんの剣はどっちかっていうとレンの方が向いているんだよね。

あの子は防御の後に反撃してカウンターで切り裂くスタイルだから。

 

「それよりティアナはどうだった…?」

「ヴァイス陸曹に聞いたんですけど、どうも自分は『凡人』だと思っているらしくて人の倍以上の訓練をしているそうです」

「そう、やっぱり…。ティアナは凡人じゃなくて非凡の才能なのにね」

「そうですね、シホ。ティアナはとても才能を持っています。

ただ、ティアナ本人はそれを自己の意思で正面から見ないようにしているのかもしれません。見ていて不憫ですね」

「そうだな。ティアナはもっと自信を持ってもいいと思う。そうすればもっと才能を伸ばせるだろう」

 

シホさん、アルトリアさん、ネロさんは口々にティアさんを褒めている。

これを聞けばティアさんも思い直すと思うのにな。

 

「私からしても才能があるのは羨ましいくらいなのにね。私、魔術や武術の才能はないから…」

「…え? シホさんって、才能はないんですか!?」

 

信じられない。シホさんは私からすればかなり才能はあると思うのに。

 

「ええ。シホには剣や魔術の才能はほとんどないのですよ?

今は色々と事情もあって様々な魔法を使えますが、それでも師匠の人達全員からどこまでいっても二流を越えられないだろうと言われてきたんですよ。シホは…」

 

アルトリアさんの言葉も信じられない。

 

「で、でもシホさんって『魔弾の射手』って呼ばれるくらいの腕を持っていますよね?」

「この弓の腕もだけどね。私のは魔術や魔法の腕は後付けみたいなものなのよ。

昔に話したわよね? 私は昔に災害で一度心を壊したって…。

私の弓の腕はね、それが原因ですぐに心を空にできるから異常な精度を持てるのよ」

「心を空に…」

「うん。それでそれ以外の私の技術はほとんどがツギハギの腕で戦場で何度も繰り返していくうちに身に付いたシグナム風に言うなら謂わば長年の努力と修練の賜物なのよ。

でも、ティアナにはそんな厳しい道には入って欲しくない。

だから無茶はダメだって言い続けているのよ。

なのはも昔に無茶をして一度体を壊したから、無茶をし続けるのはダメだっていう思いは誰よりもわかっていると思うから…」

「なのはさんも…」

「ランよ。力というのはそんなに簡単に身につくものではない。だが無茶をしてまで身につける力はいずれ身を滅ぼす。それを覚えておいてくれ」

 

ネロさんの言葉には妙に説得力があった。

 

「はい…」

 

それで私は素直に答えておいた。

それがきっと正解なんだって。

 

「叱ってもらえるうちが一番幸せなのよ? 私は、その言葉も無視して昔は駆け抜けてしまっていたから…」

 

シホさんはそう言ってどこか寂しくて遠い目をしていた。

やっぱりシホさんの過去というものを知りたい。

レンと一緒に私達の家族になってくれたシホさんの過去を。

そんな想いを抱きながら私は自分の部屋に戻り、就寝した。

そして早朝の四時過ぎ。

隣のスバルさんとティアさんの部屋から物音が聞こえてきた。

それで悪いと思ったけど盗み聞きしてみると、どうやら二人で内緒の訓練を開始するらしい。

そしてなのはさんの早朝訓練の時に、

 

「それじゃ引き続き個人スキルね。基礎の繰り返しになるけど、ここはしっかりと頑張ろう!」

 

なのはさんの言葉に、スバルさんとティアさんはかなり大きい声で反応していた。

それになのはさんは「元気が出たようだね!」と声を出していたけど、反面シホさんは少し険しい顔になっていた。

やっぱりシホさんは見抜いているんだ。

でも、私も自分を鍛えないといけないから今はシホさんに任せるしかないね。

それでシホさんやアルトリアさん、ネロさんに様々な剣技を習っている間に、

 

「少し、様子見してみるわ。それでもまだ無茶をするなら私が直々に教え込むかもしれない…」

 

少し声のトーンが落ちてシホさんがそう言っていた。

私からはもう何も言えないけどティアさんがいい方向に改善できるように祈った。

それからティアさんは毎日スバルさんと内緒の訓練(バレているので内緒とは言わない)をしていった。

そんなある日に、ティアさんはシホさんの部屋へと呼ばれたのだった。

 

 

 




次回、ティアナとの話し合いになります。
その際、ティアナにある言葉を送ります。お楽しみください。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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