ついに出撃します。
それではどうぞー。
Side ラン・ブルックランズ
………私は、今、なにをしているのだろう?
わずかに残る意識で隙間を縫う感じで外の光景を覗ける。
だが、ただそれだけだ。
私の体は、心は、自由に動いてくれない。
歯がゆい…。
シホさん、レン、みんな…。
みんなに私の不甲斐なさを謝りたい。
もっと、強く…。
あの魔術事件で家族を失ってしまい願った想い。
それをシホさんが叶えてくれた。
私は確かに強くなれたんだ、って実感も湧いてきていた。
でも、それは思い上がりだった。
あんな洗脳で私の意思は簡単に操られてしまう…。
今も頭になにかの電波が聞こえてきて今のこの僅かな意識もまるで湖の底に沈んでいくように暗くなってくる。
(挫折してはダメだ…!)
心が折れてしまったら私は完全に敵…トレディの操り人形になってしまう。
だから僅かな意識だけでも抗うんだ!
きっと、チャンスは来る。
その時まで完全に沈まないように頑張ろう。
それに予感がする…。
私の弟が、レンが私を助けてくれるかもしれないというそんな漠然とした想い。
いつまでもウジウジしていてシホさんや私の後ろにいつも引っ付いてきていた弱虫のレン。
でも機動六課に私とともに来て、強くなっていくにつれてそんな弱気な姿は減ってきていた。
だから期待しているんだ…。
きっと、弱さを克服してさらに先へと進むレンの姿を…。
だから、
(…待っている。待っているよ、レン。助けてくれることを、待っている…)
その一心を胸に秘めて私はまたこの電波に抗い続ける。
◆◇―――――――――◇◆
「………ランさん?」
トレディは隣でライディングボードに乗って飛行しているランの微妙な表情の変化に気づいた。
だがそれだけである。
「………気の、せいですね。………私のマインドハウリングは意思を断ちます。だってドクターがそう作ったのですから…」
でもと、思う。
私達戦闘機人とは違って人間の意思は時にして思いもよらない力を発揮するということを。
だからトレディはランの洗脳操作に使っている複数ある意識領域をさらに追加して洗脳を強化した。
それによってランの表情からはもうなにも感じられなくなった。
(………これ以上の洗脳はランさんの脳を壊しかねない。………だからこれが限界ですね。謝れる立場ではありませんが、すみません、ランさん…)
トレディがその表情に苦心を浮かべていると同じ地上本部班であるチンクが隣までやってきて話しかけてきた。
「どうした、トレディ? 表情が沈んでいるぞ。なにか悩み事があるのなら姉に相談してみろ」
「………いえ、ただ時にして人は計り知れない力を発揮するとドクターに話をされた事があるのです。
………だから戦闘機人である私達にも感情はあります。
………だから、そのような力を出すことができるのかと…」
「…ふむ。“心”の力か。姉はそんな光景は…」
見たことがない、とチンクは続けようとしたがそれはかつて戦ったゼストとの戦闘でゼストが死に際に対して起死回生の反撃をしてきた為に右目を負傷した事を思い出した。
「そうだな…。姉にはそういうものは理解できる。ゼスト殿のあの時の心は、強かった」
「………?」
いつの事を話したのかわからなかったのかトレディは首を傾げる。
そんなトレディにチンクは苦笑してトレディの頭を撫でながら、
「トレディ。お前にもいつか分かる時が来るかもしれないな。…そうだな。案外近いうちに知れるかもしれないぞ?」
「………そうでしょうか?」
「ああ。姉の言うことだ。だから信じろ」
「………はい。チンク姉様」
トレディはそれで瞳に力を灯す。
そして思う。
(………レンさんならば、見せてくれるのでしょうか…?)
そう思うのだった。
それからウーノによりメンバー選別が話される。
まずウーノはドクター…つまりジェイル・スカリエッティとともにラボに入る。それをトーレとセインが警護。
『それと魔術師殿から一人援軍が貸し出されました。これで警護は完璧です』
援軍とはおそらく地上本部襲撃にて現れた謎のフードの集団だろう。
そこにセインが手を挙げて、
「はい、ドクター。その魔術師さんの仲間は信頼できるんですかー…?」
『おや、セイン。魔術師殿の仲間を信じられないかね?』
スカリエッティがモニターに顔を出してそう言ってきた。
それに対してセインはというと、
「んー…信頼できないかって言われると、そりゃ信頼しなきゃやってられないと思うんですけどー…なんかきな臭い、と言いますか…」
「あ、それはあたしも思ったッス」
ウェンディもそれには賛同のようでセインに続く。
それにスカリエッティも苦笑を浮かべながら、
『大丈夫だよ。魔術師殿は私のれっきとした協力者だ。私が信じるのだから君達も信じたまえ』
「あー…まぁ、ドクターがそう言うんだったら信じますよ? うん」
「そうッスね」
すぐに沈静化した二人だった。
それでウーノは話を再開する。
クアットロとディエチが聖王のゆりかご行き。
オットーがルーテシアの警護。
残りのノーヴェ、ウェンディ、ディード、チンク、トレディ…そしてランが地上本部行き。
…という事になった。
それから各自健闘するようにと声をかけたウーノだったが、ここでもやはりセインがまた手を上げる。
「あ、もう一つ」
『セイン。今日は質問が多いわね』
「ごめん、ウーノ姉。でもさ、もうゆりかごが動いている以上関係ないと思うけど、聖王のクローンであるヴィヴィ様はもう放っておいてもいいんですか?」
『そうだね、セイン。確かにひと時の間でも計画の中核を担っていたのは確かだ。
だがね。もうクローンより聖王本人がいるのだから計画には彼女は必要はないのだよ』
「そっか。結構会うのは楽しみにしていたんですけどねー」
セインは残念がるがその顔には「ニシシ」と笑みを浮かべているのだった。
◆◇―――――――――◇◆
アースラでは艦長席に座っているはやてがカリムとともに話をしていた。
「…さて、状況的にはなってほしくない状況にまでなってしもうたな」
『ごめんなさい、はやて。聖王教会の、いえ私の予言の不手際だわ。
あの予言はオリヴィエ陛下から聞かされていた対軍宝具である『聖王のゆりかご』だって分かっていたのに、ゆりかごのありかまで探し出すことはできなかった…』
「それはしょうがないわ。すでにスカリエッティの手に落ちていたんだから探しようがないと言うもんや。だから気に病んだらあかんよ、カリム」
『ありがとう、はやて…』
はやてが沈んでいるカリムを励ましていると、そこにクロノがモニター越しに姿を現して、
『割り込み失礼するよ、はやて』
「クロノく…いえ、クロノ提督。こんな時にどないしましたか?」
『事態は分かっているんだろう…?』
「当然や。目の前にすでにそれがあるんやからな」
『ああ、そうだな。本局はあの巨大戦艦…『聖王のゆりかご』を極めて危険なロストロギアと認定した。
それで僕達はもう動き出しているところだ』
「それは当然といえば当然やな」
海の主力部隊がすでにミッドに向かっているという報告を聞いて、はやてはひとまず保険ができたと思う。
『地上部隊と協力して事態に当たるとするよ』
「任せたよ」
『ああ。それで機動六課は動けるか…?』
「もちのろんや。もうみんなはいつでも出せる…。あの襲撃で奪われたもの、なにもかも取り戻すつもりや」
『そうか。なのは達を、頼んだぞ。はやて。それにユーノから伝言を預かっている』
「ユーノ君から…?」
『ああ、なのはを無事救出できたら伝えて欲しい。『なのは、もう君を一人にしない。僕が君を守るよ…!』ってな…。あいつらしくもない慌てようだったよ』
そのキザなセリフにはやては思わず「クスッ」と笑みを浮かべて、
「残念やけど、ユーノ君に伝えておいて。そのセリフは直接本人の前で言え、ってね♪」
『くっくっく。確かに…。承知した。伝えておこう。それじゃそちらの健闘を祈るよ、はやて』
「任せとき!」
それでクロノとの通信を切ると、はやては笑みを浮かべて、
「なのはちゃん…。ユーノ君の重い腰を上げさせるほど心配させたんやから、無事に帰ってこないと承知せんからな…?」
はやてがそう言葉を零し、さてと、とモニターを開き会議室にいる機動六課戦闘員一同へと通信を繋ぐのだった。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・S・高町
『…というわけで、理由はどうあれ…レジアス中将と最高評議会はジェイル・スカリエッティを利用しようとしたけど、逆に利用されて裏切られてしまった。それがまさに今の現状というわけや』
やっぱり、組織なんてそんなものね。探せばどこにでも闇は存在する。
最高評議会はジェイル・スカリエッティという魔物を生み出してしまった。
そして下克上をされてしまった。
まさに革命ね。
そんな計画にオリヴィエ陛下となのは、ランが利用されていると思うと腹が立ってくる。
『おまけでいまでも空にゆりかごは飛んでいて、地上ではガジェットや戦闘機人が闊歩している。それで地上の人達の平和を脅かしている。見過ごすことのできない事態や』
「そうね」
『だからなんとしてでも止めなあかん』
それで私達全員は頷く。
「ゆりかごには主力艦隊が向かっている。戦闘機人とガジェットにも各部隊が対応に当たることになっている」
フェイトがそう切り出す。
「だから私達は部隊を三つに分けて、行動しましょう」
私が続けてそう話す。
『まずスカリエッティのラボにはフェイト隊長とランサーさんが向かってもらう』
「任せて、はやて」
「マスターは俺がしっかりと守ってやるぜ!」
フェイトとランサーが力強い声を上げる。
『シグナムとリインは中央本部に向かってもらうで』
「了解しました」
「お任せです!」
二人は揃って声を上げる。
『そして地上にはフォワード陣のティアナ、スバル、エリオ、キャロ、レン、ギンガのチームA。
そしてガジェット迎撃部隊に回ってもらう士郎、キャスター、志貴、アルクェイド、ヴァイス君のチームBや』
「「「「「「はい!」」」」」」
「任せてもらおう」
「倒させていただきますよー!」
「機械の群れには俺の力を発揮する時だな」
「ストレス発散するわよ~」
「俺の手ならいくらでも貸しますよ!」
みんなが続け様に声を上げていく。
『そしてシャマルとザフィーラは後衛でもしもの時の待機や』
「わかりました!」
「任された」
シャマルさんとザフィーラも声を上げる。
『最後に、私を含むシホ隊長、アルトリアさん、ネロさん、フィアット副隊長、ヴィータ副隊長はゆりかごに向かう!』
「わかったわ、はやて」
「任されました、ハヤテ」
「うむ。承知したぞ」
「なのはさんを助けにいきましょう!」
「そうだな。フィアット!」
私達も元気に声を上げるのだった。
それから会議は終わり、それぞれが外に出ていく中、見ればフェイトの前にエリオとキャロが集まって会話をしていた。
聞き耳を立てる気はないので私も出ていこうとすると、私の前にもレン…それとギンガがやってきた。
…ふむ、ここで話しておくのもいいかもね。
「シホさん…」
「ごめんね、レン。家族であるランを助けたいのは私も同じ気持ちだけど、別々になっちゃったから…」
「いいですよ。シホさんはなのはさんを助けに行ってあげてください。僕は僕でラン姉さんを助けます!」
「(ホントに強くなったわね、レン…)」
それで私はレンの頭を撫でながら、
「頑張るのよ。ランにあなたの言葉を届けるのよ。そうすればきっと、ね…」
「はい! 頑張ります!」
「それと…」
私はギンガの方へと視線を向けて、
「ギンガ。レンの事、お願いね」
「はい、シホさん。任せてください。レン君は私が守ります!」
「それなら安心ね。任せたわよ」
「はい!」
それから少し時間が経過して降下ポイントに近づいてきていた。
その残りわずかの三分で私達とフォワード陣は集まっていた。
私が代表して前に出る。
こんな時になのはならどんな言葉をみんなにかけるだろうか…?
いや、なのはを模倣するんではなくて、私自身の言葉をみんなに伝えよう。
そう意気込み私はみんなに面と向かう。
「…さて、みんな、聞いて。今回の任務はかなりハードなものになると思うわ。
なのはとオリヴィエ陛下、ランが誘拐されたこんな時だからみんなは思いつめていると思う。だからまずは目を瞑って心をリラックスして」
そう言うとフォワード陣は目をつぶり何度も深呼吸をしていた。
「…どう? 肩の力は抜けたかしら?」
「「「「「「はい」」」」」」
「なら、まだ目を瞑っていて。そして瞼の裏に思い出して。今までの訓練を。なのはと私達が教えてきた教導を…」
すると少しみんなは苦い表情をする。
おそらく訓練の日々を思い出しているのだろう。
私としてもかなり苦しいものがあったと思うからその気持ちはわかる。
「さて、思い出したところでもう目を開けていいわよ」
それで全員は目を開ける。
「みんなは挫けそうになったことも何度もあると思う。でも耐えてきた。そして強くなった」
「そうです。スバル達は強くなりました」
「はいです。すぐにバテてりた時から成長しました」
「うむ。初日の頃に比べれば見違えたぞ」
それで全員は少し喜びの表情を作るが、上げて落とすを体現するかのようにヴィータが口を開き、
「でも、思い上がんなよ? まだまだお前達はヒヨっ子だ。だから油断や慢心は絶対にするな。常に本気で挑んでいけ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「ふふ…。さすがヴィータね」
「あったりめーだ。あたし達はそんなやわな鍛え方はしていなんだからな。それだけ成果を出してもらわなきゃ困るってもんだ」
「確かにそうね。ね、みんな。聞いて。前に『ストライカー』の話があったでしょ?」
「あ、はい…」
「もう、みんなは立派にストライカーになっているわ。今はランがいないけどみんなのチームワークは抜群よ。だからみんなはやれば出来るってところを私達に見せてね!」
『はい!』
「どんな困難な事態、状況、絶望にも打ち負けない強い心を持ったみんなにはもう怖いものはないはずよ。だから…」
私は一度言葉を切り、
「みんな全員無事にまた集まれることを祈りましょう! それじゃ健闘を祈るわ! 私からは以上よ! それじゃ機動六課フォワード隊、出動!!」
『はい!』
そしてみんなが出ていく中、スバルがその場に残って、
「あ、あの、シホさん! なのはさんの事をお願いします!」
「ふふ…言われなくとも。スバルの憧れのなのはさんは必ず助け出してくるわ」
「お願いします!」
何度もお辞儀をしてスバルは部屋を後にしていった。
そしてスバル達がヴァイスの代わりにアルトが運転するヘリで出ていった後、
「ほんなら、隊長陣も出動や!」
はやての声に私達は声を上げる。
降下ハッチが開いて私達は飛び出していった。
降下している最中でそこにカリムの通信が聞こえてくる。
『機動六課隊長、そして副隊長の能力限定、完全解除…はやて、シグナム、ヴィータ、シホ、フェイトさん、フィアットさん…皆さん、どうか』
「しっかりとやるよ!」
はやてが答える。
「迅速に解決します!」
フェイトが答える。
「任せなさい、カリム!」
そして私が答える。
『はい! リミット、リリース!!』
カリムの解除宣言に私の中で力が完全に解除された事を自覚する。
「アルトリア!」
「はい、シホ!」
さぁ、今こそ完全解放された私の力を見せるとき、
「「ユニゾン・イン!!」」
制服姿から赤原礼装のジャケットを通り越してアルトリアの甲冑姿になりその手にエクスカリバーフォルムを携えて私は空を翔ける。
霊体化しているネロが話しかけてきて、
《奏者よ。余を出すタイミングはいつでもよいぞ! さぁ、華麗に暴れようではないか!》
「そうね、ネロ!」
そしてゆりかごへと向かう途中でフェイトが近寄ってきて、
「シホ…。シホのアンリミテッド・エアのリミットブレイクはなのはのブラスター以上にとても強力…だから最後の切り札として取っておいてね?」
「わかってるわ。こんなものは使わないに越したことはないんだから」
私はそうフェイトに言いながらも心の中で、
(ごめん、フェイト…。多分使うことは決定事項。私のラストフォルムでならきっとできるはずだから…無茶しちゃうと思うけど許して)
と、心の中で謝罪しておく。
「それと、なのはの事、お願いね。シホ!」
「任せて! なのはは必ず救出するわ!」
「フェイトちゃん、そろそろコースが外れてまうで?」
そこにはやてがそう言ってきたので、
「うん! わかった!」
「フェイト隊長、地上と空はあたし達に任せろ!」
「はい! お姉様のために、このフィアット、本気を出させていただきます!」
「うん。それじゃお互い頑張ろう、シホ」
「そうね、フェイト」
私達は拳を合わせた。
それでフェイトはスカリエッティのラボへと向かっていった。
そしてレイジングハートも、
《シホ、マスターのもとに!》
「ええ!」
そしてゆりかごに到着して私達は戦闘を開始しながら侵入経路を探りながらガジェットを倒していく。
「ストライク・エア!!」
風の衝撃波を幾度も放ち、
「ソードバレルフルオープン!!」
魔法の剣軍を展開し一気に放つ。
「ッ! キリがないわね! でも…!」
なのはとオリヴィエ陛下を救出することはもう決定事項なのよ。
だから、通させてもらうわよ!!
あ
ランは僅かながらも抵抗を続けています。
ユーノが重い腰を上げました。これで少しは進展するでしょう。
出撃する人が多いですね。まぁ、戦力が多いのは今に始まったことではありませんね。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。