今回はレンとギンガです。
それではどうぞー。
アルクェイドと志貴はガジェットが攻めてきている道を一気に駆け抜けて次々と倒しているところだった。
アルクェイドはその爪を硬質化させて潰していき、志貴は短刀・七夜を振るい切り裂いていく。
背後から二人に当たらないように魔導師達の援護射撃が飛んできて二人の打ち零しを倒していく。
ゲンヤはそれを背後で控えている車両から見守りながら、指示を出していた。
「…しかし、あの二人はあのタヌキの切り札らしいが、かなりのもんじゃねーか。圧倒的だ」
そう呟く。
それほどに二人は戦果を上げていたのだった。
これなら突破されることはないか…? と安心しているところに、
「ナカジマ三佐!」
「どうした?」
「それが、なにかの反応がすごい勢いでガジェットの背後から迫ってきます!」
「なんだと…?」
それでサーチでその光景を映し出す。
そしてそこに映し出されたのは、ガジェットではなかった。
「な、なんだ。あれは…?」
スクリーンの先に映し出されたものは異常な存在だった。
巨大な黒い狼にも似通った魔獣が剣や槍、盾などの様々な武装をその体から突き出してこちらに「■■■■■ーーー!!」と理解できない叫びを上げながら突っ込んでくるのだ。
それでゲンヤはマイクを急いで持ち、
「全員警戒しろ! なにか化物が突っ込んでくるぞ!」
と警戒を促す報告を出す。
それを聞いていたアルクェイドと志貴は、
「ふんっ。木偶の機械だけでつまらないと思っていたところなのよ。相手になるわ!」
「…後悔してもしらないぞ? アルクェイド」
「そんなことを言いつつ着いてきてくれるんでしょう? 志貴…?」
「ふっ…当たり前だろ? 多分、報告にあったサーヴァントに似た気配を持つ奴だろ? なら俺達の出番だ」
それで二人はその黒い獣へと向かっていくのだった。
◆◇―――――――――◇◆
ギンガとチンクは廃都市の退れた道をじぐざぐに移動しながらもお互いに攻撃を繰り返している。
しかし、それは地上本部襲撃事件の時の焼き回しのようなものであった。
ギンガは近づけば直接攻撃できる、だがそれはチンクのテリトリーに侵入するということ。
逆もまたしかり、チンクは近づけばランブルデトネイターで攻撃できる、だが近づきすぎるとギンガの素早い攻撃に対処できない。
ゆえにどちらも中々一歩を踏み出せずに膠着状態に陥っているのだった。
「はぁ、はぁ…あなたのナイフ、後何本あるの?」
「ふぅ、ふぅ…さてな。そちらもいい加減体力は尽きないか?」
「お生憎様。体力には自慢があるのよ」
「なるほど…。ならばやはり直接私が手をくださなければいけないようだな」
それでチンクはさらにナイフを数本構える。
それに対してギンガはリボルバーナックルを回転させていつでも突撃できるように構える。
「…ブリッツキャリバー、ここで彼女に遅れを取るわけにはいかないわ。イチかバチかの賭けを仕掛けてみようと思う。一緒に駆け抜けてくれる…?」
《どこまでもお供します、マスター》
「ありがとう…。いくわよ!」
《はい!》
それでブリッツキャリバーは魔力を注がれてスバルのマッハキャリバーと同じく翼を宿す。
その翼が大きく羽ばたき、魔法陣も輝きを増していく。
左手のリボルバーナックルも回転速度を上げさせて唸りを上げる。
「…むっ? ついに賭けに出たか?」
「ええ。あなたを倒すためには一歩踏み出さないといけないようだからね」
「ならばこちらも相応のものを用意しよう」
それでチンクは空中に何十本ものナイフを浮かばせる。
普通に考えればそれを見ただけで気力を削がれてしまうかもしれない光景であったが、ギンガは対照的に笑みを深めた。
「なぜ笑える? この状況、お前に勝ち目は薄いのだぞ?」
「…いえ、どうもこの光景は少し、というかかなり見慣れているんですよね」
「見慣れてる…?」
「あー…気にしないでいいわよ。こちらの事だから」
チンクの姿がどうしてもシホの劣化版の光景に見えて仕方がないギンガだった。
「さて、それじゃ行かせてもらうわ!」
「来い! 姉には負けは許されないのだ! オーバーデトネイション!!」
そしてギンガは一気にギアをトップにまで持っていきウィングロードを展開してチンクへと吶喊する。
それをチンクはまるでシホの
「ブリッツキャリバー! 全方位プロテクション!! 致命傷コース以外のものは捨て置いていいわ!」
《はい!》
ギンガはナイフの嵐の中を駆け巡る。
だがすぐに爆発の連鎖に襲われていく。
度重なる爆発により起こる煙によってギンガの姿がどんどん見えなくなっていく。
「くっ!」
『ボンッ!』という破裂音と共にまた一つナイフが爆発する。
それをギンガは最小限の防御だけでなんとか凌いでいく。
部分部分で爆発する箇所をブリッツキャリバーが計算してそこにだけ絞ってプロテクションを展開する。
そしてギンガは目視で避けられる物は自力で避けていく。
それの繰り返しが数分続いた。
「これで、仕留められたか…?」
チンクはほぼ手持ちのナイフを消耗しきった状態でこれ以上の戦闘には支障をきたす状況だった。
だからこれをもし掻い潜ってくるとしたらもう手がないと思った。
ゆえに倒れていてくれよ? と願うだけ。
だが、それは爆煙の中から伸びてきていたウィングロードが健在である事でナイフの嵐が破られたことを悟る。
『ギィィィィンッ!』というブリッツキャリバーの駆動音が聞こえてきて、次いでギンガの『はぁあああーーー!!』という叫び声が聞こえてきてチンクはせめて防御することだけを考えて腕を交差させた。
「決めるわよ!」
爆煙の中から飛び出してきたギンガは体中に傷を負いながらも、しかし致命傷は一切受けていない状態で抜けてきたのだ。
ブリッツキャリバーとの息の合った連携があったからこそできた芸当である。
「くっ…!」
「リボルバー…シュート!!」
リボルバーナックルから魔力弾が放たれナイフも構えていない無防備なチンクに激突した。
「ぐぅっ!!」
『ズザザッ!』と地面を踏ん張りながら耐えて防ぎ切ったが、次の一手がもうないチンク。
それでチンクはもうダメだと諦めて両手を上げて降参ポーズをする。
それを見てギンガは振りかぶっているリボルバーナックルをチンクの顔一歩手前で急停止させる。
「勝負、ありってところかしら…?」
「ああ。降参だ。私にはもうナイフがほぼないからお前に太刀打ちできる力は残されていないのでな」
「そうですか。だったら騒乱罪の罪であなたを逮捕します」
それでチンクは素直にギンガのバインドによる拘束に従ったのであった。
「さて、レン君!」
ギンガは今二対一で孤軍奮闘しているレンの元へと向かおうとしているのだった。
◆◇―――――――――◇◆
Side レン・ブルックランズ
「はぁあああーーー!!」
「くっ!」
ラン姉さんのバルムンクによるおお振りの斬撃がまた僕とアウルに襲いかかってくる。
それを防ぎ、また距離を取ってアブソーププロテクションを展開する。
それは思ったとおりでトレディのクラッシャーバイトが迫ってきたからだ。
それもさらに防御する。
「………理解できません。………レンさん、あなたは先程からガードばかり。………なにがしたいのですか?」
「それはまだ話せないんだ。でも、トレディ、僕は君と戦いながらも話がしたいんだ」
「………話、ですか?」
トレディはコテンと首を傾げて怪訝な表情になる。
その表情一つ一つは無機質な感じながらもその中に可愛さも秘めているからつい見とれてしまう。
でも、そんな邪な気持ちは今は抑えて話を続ける。
「…ねぇ、トレディ。君は恋という感情を知りたいんでしょう?」
「………はい。………レンさんに抱くこの感情がまだ恋だとはっきりとわからない以上、それが本当なのか確かめたいのです」
「僕をそこまで思ってくれるのはとても嬉しいよ、トレディ…」
「おおおおおーーー!!」
「ラン姉さん、今は邪魔しないで!」
僕とトレディの会話など関係なしだと言わんばかりに攻撃してくるラン姉さんの攻撃をアブソーププロテクションで防ぐ。
プロテクションとバルムンクの魔力刃の衝突により『ギギギギギッ!』と削られる音が響くが今は耐えなきゃ…!
それで何度も斬撃を受けながらも話を続ける。
「でも、一方的じゃダメなんだ。お互いに想いあっていないと無理矢理僕の心を奪っても後悔するだけだよ?」
「………ですが、レンさんに振り向いてもらうためにはこうするしかないのです…」
シュンッと顔を俯かせてそう弱々しい声でトレディは語る。
そうか…。戦闘機人だからそう言った方面の感情にはやっぱり乏しいんだね。
「それなら、まずはお友達から始めよう。トレディ!」
「………お友達から、ですか?」
「そう…、まだ僕は君のことをそんなにわからない。だからお友達から始めてその気持ちがトレディの本当のものなのか確かめていこう!」
「………ですが、私はあなたの敵なのですよ? レンさん?………そんな時間が与えられるなんてことが…」
「まだわからないじゃないか! トレディの罪はきっと重いものになると思う…。でも、いつか償ってまともな道を進むことができる!」
「………それは、つまり私に投降しろということですか? レンさん」
「うん! こんな事はもうやめて、僕達と一緒に歩いていこう!」
そう言って僕はトレディに手を差し出す。
だけどトレディは少し悲しい表情になる。
「………できません。私は、あなたの姉君であるランさんを捕らえたばかりか洗脳までしてしまいました…。こんな私がレンさん達と歩んでいくことなど…」
「そんなことはどうだっていいよ! ラン姉さんはまだ死んでいない! まだ手遅れじゃない! なら、まだやり直せるから!」
「………レンさん。ですが…」
「…そんな悲しい表情をしないで、トレディ。周りがなにか言ってきても僕がトレディの事だけは信じるから…!」
「………あっ………」
それでトレディは目を見開いて涙を一滴垂らす。
「………こんな私を、信じてくれるのですか?………こんな、私を…」
それで僕は笑顔を向けながらも、
「うん、信じる! 僕は君の味方になるよ。だから…」
「………レン、さん…」
もう少しで説得できるかもしれないと思った時だった。
『トレディちゃん? そんなガキの言葉なんて聞く必要はありませんよ~? 私がその耳を閉ざしてあげるわ』
「………クアットロ姉様!? なにを…グッ!?」
スクリーンにメガネの戦闘機人が移り出すとなにかを操作したのかトレディが頭を押さえだして苦しみ出す。
「トレディになにをした!?」
『あら~? あなたの世迷い事に聞く耳立たせないように意識を手放させただけですよ~?』
「そんな…!?」
『それじゃトレディちゃん。そんなガキなんて倒しちゃいなさい!』
「……………は、はい。クアットロ姉様」
それでトレディの瞳から光が消え失せて僕に向けてクラッシャーバイトを向けてきた。
ラン姉さんもバルムンクを構えて仕掛けようとしてくる。
「なんてことを…」
許さない…。あと少しでトレディを説得できたかもしれないのに。
でも、なら一回倒すしかないんだね…。
それで僕はアウルに話しかける。
「…アウル。アブソープ充填度は、今どれくらい…?」
《はい。ライトシールド、レフトシールド共に現在90パーセントです》
「そっか…もう少し充填度を上げておきたいけど、でも…いくよ! アウル!!」
《はい! カートリッジロード!》
それでアウルはカートリッジを装填する。
それによってラン姉さんとトレディによる攻撃でシールドに吸収していた魔力と、そして足りない分の魔力を一気に補い100パーセントにする。
「アウルヴァンディル! サードモード、リリース!!」
《シェルブローフォルム、展開します!》
そうして円上の盾が両方共光り出す。
そして肘あたりまでシールドが伸びていき関節部分に噴射口が出現する。
さらに手にまで光は及んでいきスバルさんのリボルバーナックルのようにナックルを纏う。
手の甲にはアウルのシールド部分についていたスフィアが現れる。
そう、これこそアウルの戦闘形態。
「う、うぅ…!」
「あああああーーー!!」
トレディとラン姉さんが僕に向かってくる。
でも、僕はそれを迎え撃つ!
まずはラン姉さんだ!
「アウル! ライトシールド、魔力開放!」
《はい! ライトシールド、充填魔力開放します!》
瞬間、右腕のシールドに溜まっていた魔力が爆発して肘部分の噴射口から炎が吹き上がる。
僕は右腕を掲げてラン姉さんに向けて腕を構える。
そしてラン姉さんに向けて円上のゲートが出現する。
「アウル! 駆け抜けるよ!」
《はい! シールドエネルギー、拳に集束! ゴー!!》
そして僕は噴射口からの炎を推進力に一気にラン姉さんへと突撃する。
「あああーーー!!」
「これが、僕の、覚悟だーーー!! ライト・シルト・シュラーゲーーーン!!」
拳にシールドを纏いながらラン姉さんのバルムンクと激突する。
ラン姉さんは負けじとバルムンクの魔力を上げて強度を上げているようだ。
でも、負けない!
押し通る!!
「いっけえええええーーーッ!!」
裂帛の叫びとともに力を込める。
そしてラン姉さんのバルムンクの魔力刃に罅が入りついには砕け散り、もとの大きさに戻ったバルムンクを足で蹴り飛ばして勢いのままにラン姉さんに拳を見舞う。
「ッ!?」
そのままラン姉さんは壁に激突して意識を失って気絶する。
「あああああーーー!!」
でも、まだ暴走状態のトレディが残っていた。
だけどまだ僕にはレフトシールドが残っている。
「アウル!」
《はい! レフトシールド、充填魔力開放します!》
そしてまた噴射口から魔力による炎を吹かす。
「クラッシャーバイトーーー!!」
「うぉおおおーーー!! レフト・シルト・シュラーゲン!!」
クラッシャーバイトと僕の左のナックルが激突する。
それで拮抗する。
ガリガリと音がしてアウルに罅が少し入る。
でも、まだだ!
《ラケーテン・ブースト!》
アウルの言葉とともに噴射口からさらに炎が上がりその炎の勢いはついには僕の体以上に吹き上がる。
「貫けーーー!!」
そして『ガシャンッ!』という破砕音とともにクラッシャーバイトは粉々に砕け散る。
「ッ!!?」
「いっけえええーーー!!」
クラッシャーバイトが砕けて無防備なトレディ目掛けて僕は再度拳を叩きつける。
「ああっ!?」
トレディは叫びを上げてその場で蹲る。
「はぁ、はぁ…」
僕はもう魔力をほぼ使い切ったために息もキレキレでこれ以上戦えることはできない状態だ。
「………レンさん」
でも、そこで正気に戻ったのかトレディの淡々とした声が聞こえてきた。
「………参り、ました」
それでトレディはその場で気絶した。
「やった…のかな?」
《はい。やりました、マスター》
それで僕もシェルブローフォルムを二度も使用した為に凄まじいGの影響で力を使い果たしてその場で倒れそうになる。
だけど、そこで誰かに支えられる。
それで顔を上げるとそこにはラン姉さんをその手で支えていたギンガさんの姿があった。
「…やったわね、レン君。かっこよかったわよ」
「ありがとうございます。ギンガさん…」
僕が感謝の言葉を出すと、次にはもっとも聞きたかった人の声がギンガさんの隣から聞こえてきた。
「―――まったく…。雑な助け方をしてくれたわね、レン。私もバルムンクもボロボロよ…?」
「ら、ラン姉さん!」
「…ま、助けてくれてありがとね。レン」
「うん!」
僕はついに取り戻したんだ。ラン姉さんを!
やったよ。シホさん!
最初の方で魔獣を出しました。さて、この人は誰でしょう…?
そしてチンク降参。
レンもトレディの心を開いて、最後には力押しですがランも取り戻しました。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。