【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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更新します。

今回は会場隔離施設のゼスト等とナンバーズが中心のお話です。

ではどうぞー。


第百七十二話  『外伝20 海上隔離施設の人々のその後』

 

 

 

暦が十一月に入り、肌寒くなってきた今日この頃。

シホとランとレンの三名は海上隔離施設にやってきていた。

ここにはシホはいつかは来よう来ようと思っていたのだが、なかなか三人でいけるタイミングが掴めずにズルズルと十一月まで引き伸ばしてしまったのであった。

だが、やっと来れる事が出来た。

ここにはチンク、セイン、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディード、トレディ、セッテの戦闘機人九名。

そしてルーテシアにアギト、ゼストも一緒に過ごしている。

そう、シホが特に会いたかったのはゼストであったのだ。

シホが作成したエリクシール………その初めての使用者というある意味検証の証明者といっても過言ではない人物だからだ。

ゼストは一度、死んだ身である。

だがスカリエッティの手により人造魔導師として復活を遂げた。

しかし、その代償とも言うべきか体の細胞が戦うたびに傷ついていき、あの決戦の日の時点で戦えていたのも奇跡と呼ぶにふさわしいほどの評価を治療した医師に言われたそうだ。

そして、エリクシールでその破損していく細胞を一気に活性化させて死ぬ前の健康体の体まで回復して残り短かった命が延命できたというのはさらに奇跡と呼ばれている。

それでシホはエリクシールを作成した者として、ぜひゼストの体を解析して不慮の事態が起きていないかを検査したかったのだ。

 

 

―――急に死亡したという事になったら不良品としてまた一から作り直さなければいけないからだ。さらにゼストに申し訳が立たなくなる。

 

 

そんな簡易検査もどきと、後、もう一つはトレディにも会いたかったからである。

家族であるランを誘拐して洗脳し、さらにはレンまでシホの手から奪おうとしたトレディという子がどういう子なのかを一度見たかったためである。

実はシホは廃都市戦や聖王のゆりかごで戦闘した戦闘機人以外とはまだ改めて顔合わせをしていないためにお互いに自己紹介をしておいた方がいいというのも今回の訪問の理由である。

……まぁ、レンが自らトレディと会いたいと言い出したからの三人での訪問なのでもあるわけだが、レンの気持ちの問題でもあるため、シホはあまり深くは触れないでいるのであった。

そして受付を終えて、シホ達はまずこちらから一方的に更正プログラムを受けているメンバーの様子を見れるようなガラス越しの場所に移動する。

そこではギンガの更正プログラムを聞いているナンバーズの姿があった。

 

「まぁ、改めて見てみるとゼストさん以外は本当に女の子しかいないのよね……」

「そうですよ、シホさん」

「だからゼストさんは少し肩身が狭いというのが現状だという話です」

 

更生施設の現状にシホは苦笑いを浮かべて、ランが相槌を打って、レンが現状の状況を的確に伝える。

だが、しかし別にそれはスカリエッティのラボ時代と大して変わらないし、寡黙なゼストならば男性と女性という違いの垣根はあまり気にされないのかもしれないが……。

ルーテシアとアギトなどは特になついているのか、ルーテシアはゼストのあぐらの上に座っていてアギトは頭に乗っていたりする。

そんな微笑ましい光景を見られて、シホは改めて助けられてよかったと思うのであった。

しばらくそんな更正プログラムの光景を見ていたが、一旦休憩に入るらしくギンガがいくつか発言してこちらの扉に向かってくる。

プシューッ!と扉が開きギンガが皆のいる部屋から出てくるとこちらに気づいたのだろう、

 

「シホさん! レン君、ランも! よく来てくれましたね!」

 

笑顔でシホ達に対応してくれるのでそれにつられてシホ達も笑顔を浮かべて、

 

「久しぶりね、ギンガ。ナンバーズのみんなの様子はどう……?」

「はい。やはり閉鎖的な空間でしか暮らしていなかったせいか、社会的知識は乏しいですが……それでも出所後には戦闘機人としてではなく“人間”として暮らしていくんですから、みんな誠意的に更生プログラムに取り組んでくれています」

「そう……。それならなによりね。あ、ギンガ。私、ほとんどの子とはまだ顔合わせをしていないのよ。だから時間は作れる? 挨拶をしておきたいのよ」

「大丈夫ですよ! 時間はいくらでもありますから。それに彼女達の数名もシホさんに会いたがっていますからちょうどいいです」

「私に……?」

 

それでシホは首を傾げる。特別、彼女達と接点は持たないからであるから不思議なのである。

でも、それを見越してギンガが、

 

「シホさんは色々と有名ですからね。やっぱり一番大きい理由はゆりかごの破壊ですかね。あれほどの事をしておいて興味を持たれないというのは正直ないと思います」

「やっぱり、そうかしらねぇ……」

「「うんうん……」」

 

それで困り顔で頭を掻くシホ。背後で「うんうん」と何度も頷いているランとレンの姿があった。

 

「後は、そうですね。ゼストさんが助けられたのが大きいと思います。彼女達はみんな大なれ小なれゼストさんの事は心配だったそうです。

当然ですが、シホさんの薬がなければ今はもうもしかしたら鬼籍に入っていたかもしれないんですから」

「そう……」

 

なにを思ったかシホは目をつぶり少しばかりの笑みを浮かべるのであった。

それになにか良いものを感じたのかギンガにラン、レンもつられて笑みを浮かべる。

 

「さ、それじゃ準備をしますね」

 

そう言ってギンガが先導しようとするが、先にシホが声を上げる。

 

「あっ、ギンガ。彼女達と会う前にまず先にゼストさんとだけ会わせてもらっていいかしら?」

「ゼストさんと、ですか……?」

「ええ。私の魔術で色々と簡易検査をしておきたいのよ。あの薬を作ったものの責任として一度診ておきたいから」

「わかりました。それでは個室を用意しますね。ランにレン君はどうする……?」

 

それで黙って成り行きを見守っていたランとレンの二人は笑みを浮かべて、

 

「それじゃ私達は先に彼女達と会っておきます」

「うん。トレディともお話したいですし……」

「そう……。レン君はトレディにご執心よね」

 

それでギンガの目つきが少し鋭くなる。

それに対してレンは「あれ? 僕、なにか変なこと言った……?」と小声でランに相談し、ランには「あんたも鈍感だよね」と返しているのであった。

もしここにゲンヤがいれば「おい、ボーズ?」とか怖い笑みで肩に手を置かれてさらに妙に力が込められながらどやされていたに違いない。というかあの親バカなら普通にやりかねない……。

それはともかくとしてランとレンは先にナンバーズのみんなに会いに行った。

それとは別にシホはどこか別の部屋でゼストと面会を受けることになった。

 

 

 

 

 

部屋に通されてシホはゼストが入ってくるのを待つ。

しばらくしてゼストが部屋に入ってきた。

そこには寡黙な表情ながらも少しばかり緊張しているのか表情筋が引きつっているゼストがいた。

 

「……シュバインオーグ一尉」

「ゼストさん、ですね」

「こうして会うのは、初めてだな……」

「ええ……」

 

二人してこうして初めて会うもの同士、緊張もあるのだろう、どう切り出していいのか分からずに少し沈黙が降りる。

しかしいつまでもこうしてはいられないとシホが切り出そうと口を開きかけるが、それより早くゼストがシホに向かって頭を下げる。

 

「八神士郎二尉から聞いている。まずはお礼をさせてくれ。俺のこの体を、命を救ってくれて感謝する。シュバインオーグ一尉」

「気にしないでください。私はとある理想をかつて心がけてただ人助けを昔からしてきたもので、少しでも救える命があるならと知識にある薬を作ったわけで、使ってもらえるなら薬も幸せでしょう。私もゼストさんを助けることができたことが嬉しいですし……」

「昔から人助けか……。君のその知識というのも興味を持たされるが、よかったらでいいが君のかつて志していたという理想である正義を聞かせてくれないか?」

 

ゼストのその問い……。

それは、シホの過去に問いかけるものであった。

衛宮切嗣の理想を受け継ぎ、この世界に来る前まで志していた『すべてを救う正義の味方』という自身の生き方の一つだったもの。

それをここで話していいものか、いや、とシホはかぶりを振り、隠す必要などないと素直に話すことにした。

 

「……私はかつて、養父のかざしていた理想である『すべてを救う正義の味方』を志していました」

「正義の味方、か……」

「はい。私の経歴はご存知ですか……?」

「ああ。スカリエッティ経緯で知っている。別の世界の人間だということを」

「はい。私はその理想を実現するために、前の世界ではあらゆる手を尽くしてきました。紛争地域に自身の力である魔術で乗り込んでいき、この手で悪の行いをする犯罪者を時には倒し、そして最悪は手をかけてきました」

「それは……つまり」

 

話の内容を察したのかゼストは少しばかり険しい表情になる。

 

「はい。私は養父同様に歪んでいたのでしょう。十のうち九を生かすために一を切り捨てて事態の解決をはかってきたんです」

 

自身を曝け出すシホ。

そこまで話すことでもないのについつい語りだしてしまうシホ。

ゼストの瞳には嘘偽りは許さないという意思が込められていたのも一つの要因とも言える。

 

「……そうか。察するにそれで世界を追われた、というのか?」

「当たらずとも遠からずです。すべてはさすがに話すことはできませんから。でも、この世界に来てから私の理想は変わったんです」

「ほう……変わったのか」

「はい。そのきっかけを作ってくれたのは最初は死んでしまった義理の姉の手紙からでした。そして、その後に高町なのは一尉の家族に拾われて、私は少しずつ自身の理想が変わっていくのを自覚したんです」

 

そう。この世界に来てからシホは『自身の正義とは一体なんだったのか?』と思い悩むようになり、思いつめ過ぎてある時には気絶してしまう事態にもなったことがあった。

でも、その度になのはや桃子に士郎、恭也、美由希と言った家族達が支えてくれて、仲間が増えていくうちに自身の血生臭い過去を打ち明けるという傷を開くことと同義の行為も行うほどにシホはみんなに心を開いていった。

そして、最初は姉の願いから来るものだった『大切な人達を護れる正義の味方』という理想……。

まだ当時はあやふやなものだった理想。しかし、それも今となっては本気で志しているシホ。

過去の自分と決別したわけではない。むしろ反面教師として未だに心に残している。

だがしかし、新たな理想を得たことで視界がさらに広がったことも確かなことで……。

広がった視界は、大切な人達をしっかりと映し出す。

かつては体を救うだけで心までは救えなかった……、だが今はしっかりと心も救っているとシホは思う。

いや、それはシホの生き方を見てきた周りも認めている。それを一番分かってくれるのはアルトリアだ。

彼女はこの世界に来る前の自身のことを知っている数少ない人物だ。

彼女の口からいつだっただろうか、こう話されたことがある。

 

『シホは、もうかつてのシロウではないのですね。……いえ、もう一人のシロウももうあの時のシロウではないのは分かっています。

話は戻します。告白しますが、今のあなたの生き方はとても私には眩しく、そして愛おしいものです。

かつて誓った事ですが、私はあなたがその理想をずっと掲げるというのなら最後まで付き従います。

だって、過去も含めて私はあなたの一振りのシホを守護する剣なのですから……』

 

そう眩しい笑顔で言われた時にはとても心が満たされていくのをシホは感じた。

それを、思い出していると、ふとゼストが穏やかそうな声をシホにかけてくる。

 

「……その様子だと、心配はいらないようだな」

「えっ?」

「最初は『正義の味方』という絵本の中だけの絵空事を本気で目指している危うい思考を持つ人物だと思ったのだ。

しかし、その表情を見るに俺が助言をする前にすでに答えを見つけていると思ったのだ。……改めて教えてくれないか? 君の今の正義を……」

「はい。『大切な人達を護れる正義の味方』です。この理想を志す限り、私は必ず仲間や家族達を守りぬく事を誓います」

「そうか。安心した……」

 

その、心の底から安心した表情を見て、切嗣の死に際と被ったと、シホは思った。

 

「それを聞いて俺も君の夢を応援したくなった。……話を変えるつもりはないが、レジアスも、また新たに立ち上がって欲しいものだな」

「はい。レジアス元中将も生きている限りはまだ立ち上がれることができます。そして今度こそ管理局の未来の礎になってくれると思います」

「そうだな」

 

それでシホとゼストは二人して笑みを浮かべるのであった。

それからシホは本来の目的であるゼストの体の検査を解析の魔術で行っていき、エリクシールが欠陥なく機能していることを確認できたことに安堵をするのであった。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

そしてゼストとの少し長い話を終えて、シホもナンバーズ達の場所にやってくるのであった。

そこでシホは改めて対面する。

スカリエッティが残した遺児とも言うべき彼女達と。

シホが来たことに気づいたのか、まずアギトがシホの元に飛んでくる。

 

「シホさん! あたしはアギトっていうんだ!」

「ええ。よろしくね、アギト」

「それで前々からお礼が言いたかったんだ……。旦那の事を助けてくれてありがとう!」

「旦那? もしかしてゼストさんの事……?」

「ああ! 旦那とルールーはあたしの命の恩人なんだ。だからもう助からないことは分かっていたのに、それをシホさんが覆してくれた……。だからあたしはシホさんの頼みならどんな事でも協力するぞ!」

「ありがとね。でも、そんな簡単に『どんな事でも』というのはよした方がいいわよ? あなたの身も大事にしなさい」

「おう!」

 

それでアギトは笑顔を浮かべながらゼストの頭に乗っかりに行った。

続いてルーテシアがやってきて、

 

「……私はルーテシア・アルピーノです。お母さんを助てくれたと聞いています。ありがとうございます」

「いえ、よかったわ」

 

そう、ルーテシアの母親であるメガーヌもシホのエリクシールで意識を取り戻した一人である。

シホの作成したエリクシールはほとんどは捕らわれていた人達のために使われていったのである。

 

「これからも、長い付き合いになると私は思うわ。だからよろしくね、ルーテシア」

「はい、シホさん…」

 

それでルーテシアもゼストの元へと向かっていった。

手を繋いでいることから仲は良好とのことである。

それから他のナンバーズのメンバーも近寄ってくる。

チンクが少し恥ずかしそうなノーヴェを後ろに従えながら、

 

「あなたがシュバインオーグ一尉……いえ、シホさんだな。私はチンクだ」

「あ、あたしはノーヴェだ。よろしくな、シホさん」

「ええ。よろしくね、二人とも」

「ああ。ところでギンガに戦い方を教えたというのはシホさんか?」

 

それでシホは言伝で聞いたチンクの戦闘方法を思い出す。

 

「確か、あなたのISは武器爆発系だったわね」

「そうだ。だから初手では見破られないと過信していたのが災いしたのかギンガにはすぐに見破られてしまってな」

「そういえば、私が武器を爆発に使う敵の場合の戦闘法を伝授したっけ……」

「やはりな。あなたも武器を爆発させる特技を持つという。出所したら一合わせ願いたい」

「わかったわ。いつでも相手してあげるわよ。でも、当然……」

「分かっている。威力は抑えることをここに宣言しておくさ」

 

それでチンクはニヤッと笑う。それにシホも釣られてニヤッと笑う。

どうやらシホとチンクも相性は悪くないようだ。

続いてやってきたのはウェンディとセインだった。

 

「私はセインだ。よろしく。シホさん」

「あたしはウェンディっす。よろしくっす!」

 

そう言って握手をするシホと二人。

しかし、セインはともかくウェンディの表情は幾分硬い。

どうしたのかとシホは思い、ふとウェンディとの初めての出会いを思い出す。

 

「……あぁ。そういえば、ウェンディの盾の武器、破壊してしまった事があったわね」

「あ、大丈夫っすよ? 幸い量産されていたんで数はあったっすから。予備はまだまだあるしね」

「ならいいけど……」

「でも、ただの投擲であたしのライディングボードを貫通して破壊するとかどんだけ力が込もっていたっすか……?」

「あれは私の技術の一つでね。やろうと思えば習得は難しくないわよ。投げ方にコツがあるけどね」

「はー……すごいっすね」

 

ひたすら感心しているウェンディだった。

そこに少し怯えながらもディエチが近寄ってきた。

 

「……ゆりかごの時には世話になりました。あたしはディエチです」

「あの時はあんまり構ってやれなくてごめんなさいね。時間もそんなになかったから……」

「いえ、あの時はしょうがないと思っています。聞けばなのはさんはシホさんの家族というではないですか。ならあの時の対応は当然です」

「そう言ってくれると心休まるわ」

 

それでディエチとも話を終えて次にやってきたのはオットー、ディードの二人。

 

「僕はオットー……。そしてこちらは僕の双子のディードです」

「ディードです。さっそくで悪いのですが、あのオレンジ頭……ティアナ・ランスターに双剣の対応の仕方を伝授したのもシホさんですか……?」

「ええ、そうよ」

「そうですか。あなたが双剣でゆりかごを破壊したほどの腕を持っているのも知っています。それで相談なのですが、私に双剣の技術を伝授して欲しいのです」

「それって、やっぱり……?」

「はい。正直にいえば悔しかったのです。私のISは『ツインブレイズ』。双剣を操る技術です。なのに私の攻撃はティアナさんには徹底的に防がれてしまったのです。しかも片腕だけで……」

「そう。あなたに足りないものはなにかわかる……?」

 

そう、シホは問いかける。

それにディードは自信を持って、

 

「経験と技術です。能力があるだけではただ使えるだけとわかったのです。ですから私も能力に頼るだけではなく経験と技術も磨いていきたいのです」

「そう……。私の教えは厳しいわよ?」

「構いません。ぜひ、お願いします!」

 

ディードはそう言って頭を下げた。

そこまで誠意を見せられては断ることもできないな、と思うのでシホはいつか教えることを約束したのだった。

そして次にやってきたのは、物静かな子。セッテであった。

 

「セッテ、です……」

 

少し怯えが入りながらも挨拶するセッテ。

セッテは唯一記憶をクアットロに消されたために家族とも言えるナンバーズ達との記憶が共有できないという申し訳ない気持ちがある。

それでも自分に良くしてくれる姉達に少しずつであるが心を開いてきていて全員の事を『姉様』をつけて呼んでいる。

記憶を失う前は本来の戦闘機人のコンセプト通りのまるで機械と言ってもいいほぼ無機質な子であった。

それが、記憶をリセットされただけで性格改変の効果も見られるのは、はたして幸せなのか不幸せなのかは、一見して判断はできない。

だがしかし、それでもセッテ本人は良くしてくれる姉達の事をとても大切に思っているのは確かだ。

だからこのまま記憶を失っていてもいいかな、とも思い出しているらしい。

 

「記憶がないのは大変だと思うけど、頑張るのよ」

「は、い……」

 

それでセッテもわずかに笑みを浮かべるのであった。

そして最後にやってきたのはトレディである。

 

「……………トレディです。よろしくお願いします、シホさん」

 

その独特の間がある喋り方の少女。

彼女に会うために今回シホは来たといっても過言ではない。

 

「そう、あなたが……。よろしく、トレディ。それとランがお世話になったようだけど……」

「……………はい。大変申し訳ありませんでした。私の身勝手な思いのためにランさんを利用してしまったのは私のれっきとした罪です。

……………生涯をかけて償っていくつもりです。もちろんレンさんの心も傷つけた事も含めて、あなたの家族を苦しませたことを今、謝罪します」

「「トレディ……」」

 

そう言ってペコリと頭を下げるトレディ。

それでランとレンも少し感情移入したのか泣きが入っている。

 

「いいわ。許してあげる。聞けばランの洗脳の力をもっと上げろとスカリエッティに言われていたらしいけど、あなたの判断でそれはしなかったのでしょう?」

「……………はい。ランさんの心が崩壊してしまう危険性がありましたので、ある程度までで抑えておきました」

「ありがとう。そのおかげでランは何も後遺症は残らずこうして無事に過ごせているわ」

「……………いえ」

「それに、あなたの身勝手な思いって奴。それは感情としては別に悪いものではないわ。あなた、レンの事が………なんでしょう?」

「……………はい。私は最後の戦いの時からさらにレンさんの事を、想うようになりました……」

 

そう言って少し俯きながらも頬を赤く染めるその姿はまさしく乙女であり、人間とまったく変わらない姿であった。

それでレンも釣られて顔を赤くしていたり。

 

「よかったわね、レン。将来の彼女候補ができたわよ?」

「か、からかわないでくださいよ、シホさん!」

「えー? そんなこと言って内心嬉しいんでしょう?」

「ラン姉さんも乗っからないで!!」

 

それでランレンの姉弟喧嘩が始まりそうだったが、そこにギンガが割り込んできて、

 

「レン君……?」

「は、はい……? なんですか、ギンガさん?」

「いつか、私も宣言するから覚悟しておいてね?」

「は……?」

 

それはつまりトレディのライバル宣言である。

それでトレディも表情が乏しいながらも少し好戦的な目つきになり、

 

「……………負けません」

「受けて立つわよ」

 

それで二人の間で火花が散っていたのをシホは見たという。

それからレンを中心にいじられる光景が続いたという。

 

 

 

 

 

……ちなみにだが、チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、トレディ、セッテの六人はナカジマ家の子にならないかとゲンヤに誘いを受けているらしい。

他にもセイン、オットー、ディードの三名は聖王教会にスカウトされているという。

アギトはシグナムの融合騎として八神家に誘われているし、ゼストもルーテシア、メガーヌと一緒に隔離世界で静かに暮らしていくという話である。

更正プログラムが終了後は色々と賑やかになりそうな気持ちでいっぱいだな、とシホは思うのであった。

 

 

 




この小説で一番の成長を感じさせるキャラはやっぱりシホだと思うんです。
一回の挫折から世界の別離を経験し、新たな世界で悩み苦しみながらも新たな理想を誇れる自分になれたのですから。

それはともかくとしてナンバーズ達もそれぞれの方針は決まってきているようですね。これからの描写が楽しみです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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