【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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第十七話      『決戦! 虹色の輝き、迸る極光!』

 

 

 

 

Side シホ・E・シュバインオーグ

 

 

私達がゲートに向かうとクロノが待っていてくれた。

一瞬私の格好に驚いたがそれだけ。

事態は一刻を争う…!

後からリンディさんも出張ってくるらしいけどもう事態は秒読みを開始している。

 

「クロノ…プレシアとは私が決着をつけるわ」

「…勝算は?」

「あるわ。これでも私の世界の五人の内の魔法使いの一弟子を侮ってもらっては困るわ」

「そうか…だが無理は禁物だぞ?」

「それはプレシアの出方次第よ」

「ずいぶんと説得力の欠ける言葉だな…」

「…でもクロノとしてはこんなギャンブル的思考もたまにはした方がいいわ。ガチガチになってもしかたがないし…臨機応変も大事よ?」

「違いない…」

 

それで私とクロノはお互い微笑する。

最初の印象はもうほとんど感じられず、もう親友に近いものになっているのかもしれない。

それと後一つ。

 

「フィア」

「はい、お姉様」

「…本気でやる事を許可するわ。だから盛大に暴れなさい!」

 

そして私はフィアに不釣合いとは思うがゲイ・ジャルグを授ける。

なのはもバリアジャケットをまとってユーノと一緒に待機している。

 

「これは…!」

「さぁ…準備は整ったわ。いきましょう!」

「ああ!」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

時の庭園に転移してきた私達を迎えてくれたのはジュエルシードでありったけ召喚した傀儡兵。

なのはが構えようとするがクロノがそれを片腕で制し、

 

「君達にはまだ魔力を蓄えてもらう。ここは僕が…!」

「私も…!」

 

そう言ってクロノとフィアは迫ってくる兵器達にS2Uとゲイ・ジャルグをかざして、

 

《Stinger Snipe》

「はぁっ!」

 

光の一閃を放ち迫ってきた敵を一掃した後、空中でそれが凝縮し再度、魔法が構築され、

 

「スナイプショット!」

 

さらにもう一閃放ち前線を掃討していき、最後にでかい斧を持った奴の頭に乗り、

 

《Break Impulse》

 

杖を直接突きつけて光が放ったところで離れたら即座に爆発した。

 

「へぇ…魔法にも振動系があるのね。いいものを見させてもらったわ。さて、フィアは…見るまでもないわね」

 

そう、フィアはクロノとは違いほぼ完全に近距離戦を挑んでいたが苦戦というものは一切感じられなかった。

瞬動を使い、敵の背後に回ってはゲイ・ジャルグを回転させ兵器達を次々と薙ぎ払っていくその姿は、比べるのも失礼だけど劣化版ランサーとでも言える。

そしてクロノとフィアが同時に私達のところまで戻ってきた。

 

「やるな、フィアット!」

「クロノもね!」

 

二人はタイプは違えどすさまじい戦火をあげていた。

なのは達はそれを見て唖然としていた。

だけどクロノの「行くぞ!」という一言で私達は先に進んだ。

しばらくしてクロノが扉を蹴破るとそこにはたくさんの傀儡兵が鉄壁のごとく立ち並んでいた。

そこでクロノが階段を見つけて、

 

「ここで二手に分かれよう。なのはとユーノは最上階の駆動炉の封印を!」

「それじゃ私達はプレシア行きってことね。好都合よ!

なのは! 私が道を作るわ。だから先に向かいなさい…!

投影、重装(トレース・フラクタル)。―――I am the bone of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)―――……」

 

そして私は弓と捻じれた矢を投影し番えて、魔力を溜める。

今回は前のように咄嗟の事ではないのでインターバル時間を稼ぐことにした。

それによりジュエルシードを破壊した時以上にカラド・ボルクの魔力量がありそれはすでにここの空気を一変させていた。

クロノ達もこの異常な魔力量に驚きを示している。

 

「これが真の威力よ。受けなさい! 偽・螺旋剣(カラド・ボルク)!!」

 

放たれた矢は音速を越えて突き進み魔導兵器を次々と屠り、抉り、貫き、それでもなお威力を緩めようとせずちょうど集まっている中心地点のところで、

 

「一気に吹き飛びなさい! 壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!!」

 

それでそこにいた全ての傀儡兵は跡形もなく爆風によって滅び去った。

残ったのは傀儡兵の残骸にクレーターのみ。

 

「これが真の威力か…爆発の考慮も考えるともう笑えない」

「今はどうだっていいわ。さ、なのは達は早く駆動炉へ」

「う、うん…!」

「それとクロノとフィアも向かってあげて。派手にやるから今は巻き込みたくない」

 

それからどうにかして二人を説得して、

 

「すぐに向かうからな!」

 

と、クロノが言ったので私は安心して一人でプレシアのもとに向かった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

私は敵を倒しながらも進んでいく。

そして最下層に辿り着き待っていたのは大魔導師…プレシア・テスタロッサ。

…一歩を踏み出す。

 

「…来たのね。私の事を、理想を否定した憎っくき魔術師のガキが…」

「ええ。来てやったわ…決着を着けるために!」

「でも勝算はあるとでもいうの? 今の私はジュエルシードを制御している。だから謂わば魔力は無限に等しいのよ?」

「勝つつもりよ。これでも私は魔導元帥…キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの一弟子だから」

 

そして私は投影をせずに腰に差しておいた宝石剣を使おうとしたけど、やめた。

こんな奴にこれを使う価値も、見せる価値もないのだから。

だからやはり私は投影を使う。

宝石剣は最後の切り札…いや、最後から二、三番目位かな?

きっとリンが聞いたら怒るだろうけどやはり私はこの戦いが生涯で一番馴染んでいるのだ。

プレシアは杖を構えたがおそらく戦闘経験はない。

だから、やれる…!

 

私はまず黒鍵を投影してプレシアの手から放たれた雷撃に向かって投擲する。

すべて着弾した時にはお互い消し炭になった。

 

「なっ!?」

 

プレシアは防がれると思っていなかったらしく驚いていた。だがこちらも驚いた。

あれは…もう非殺傷なんて生易しいものではない。

完全に殺す攻撃だ!

なら、当ってやるわけにはいかない。

追撃でまた雷撃が放たれるが今度は鉄甲作用を用いて投擲した。

そして、

 

「火葬式典!」

 

すべての黒鍵から炎が漲り雷撃を打ち消して地面に叩きつけられる。

だが、ふいに背後から悪寒がして、縮地を使いその場から離れる。

私がいた場所には雷撃が落とされていた。

 

「背後からの攻撃に気づくなんて…中々やるわね。でも次はこうよ!」

 

次は私の周りを雷撃が包囲した。それを子狐丸を投影して地面に刺し軌道を変えて瞬時に脱出した。

今のは危なかったわ…あれが直撃したら私はすでに生きていない。

油断も慢心もしていないが気を抜けばすぐに直撃をくらうだろう。

それだけプレシアはジュエルシードを操っている。

だが、

 

「確かに魔力は半端ないわ。でも、あなたの体はその魔力に耐えられるのかしら?」

「っ!? 気づいていたの?」

「ええ。あなたは何度も吐血をしていた。きっと不治の病にかかっている。だからきっと限界は近い…」

「そう…でもね。そう簡単にはやられないわ!」

 

そしてまた雷撃が放たれるが私は今度、ゲイ・ジャルグを投影して次々と雷撃を薙ぎ払う。

 

「その槍はなに!? 魔法を薙ぎ払うなんて…ありえない!」

「そのありえないが今まさに目の前にあるのよ。自覚しなさい…!

さぁ、今度はこちらの番よ! 停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!」

 

27本の剣群を放ち迫り来る雷撃をことごとく打ち落としプレシアの魔法障壁をも貫通させる。

そしてそれが刺さる前に、

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!!」

「きゃあぁぁぁーーー!!?」

 

壮大な爆音と共にプレシアはなんとか魔法障壁を張ったようだがそれでも勢いは殺しきれずに吹き飛び壁に激突する。

そして大量の吐血をするが、なお這い上がってきて私に雷撃を放ってくる。

 

「馬鹿の一つ覚え…? これじゃジリ貧よ」

「うるさいわ! はぁぁぁぁ…!!」

 

また放たれる雷撃を今度は干将・莫耶で受け流した。

今のところは優勢…! このまま体力の限界まで耐えれば私は勝てる。

 

「母さん!」

 

だけど、そこでここにはまだ来てはいけない人物の声が響いてきた。

見るとそこにはフェイトを始めとする駆動炉に向かった面々が姿を現していた。

 

「フェイト!? それにみんなも!」

「…ここで私にも運が回ってきたようね」

「みんな…! くっ…!」

 

プレシアは私ではなくみんなの方へ向かって殺せるほどの雷撃を放った。

間に合わないと思ったが、

 

「そうだわ! フィア、ゲイ・ジャルグを使いなさい!」

「はいです!」

 

私の心からの叫びが勝敗を分けた。

フィアは直撃する寸前にゲイ・ジャルグを雷撃に向かって放ち薙ぎ払った。

それで私はホッとしたけど、それがブラフだった事に気づいたのは眼前に雷撃が迫ってきた時だった。

みんなの悲鳴が聞こえるがとっさに私はアイアスを投影した。

しかし構成が甘かった事と、余所見をして一瞬意識をプレシアから外してしまったのが原因で四枚しか発動できなかった為に硬度も維持できず一瞬で盾は砕けて私は壁に叩きつけられる。

聖骸布のおかげで威力は緩和はできたがそれでも非常にまずい状態だ。

 

「形勢逆転ね…まったく本当に出来損ないの人形ね。あなたが来なければ彼女は私にやられることはなかった」

 

フェイトは一度ユーノに治癒魔法を受けていた私を一瞥してきた。

だから「私は大丈夫」という意思を思念通話で伝えて、「後はあなたの努力次第よ」とも伝えた。

そしてフェイトは頷き、プレシアに向き合って、

 

「私は…、人形ではありません…」

「そう…ではなんだというの…?」

「…あなたの、娘です…!」

「娘ですって…? だからなに? 言ったでしょ。あなたはアリシアの偽者だと…」

「でも母さんは私を生み出してくれた事には変わりありません!」

 

それで一時だが時は止まる。

だがプレシアは実に冷めた表情で、

 

 

「くだらないわ…」

 

 

そう言ってフェイトに魔力弾を放つが、フラッシュムーブでフェイトは避けて、

 

「わかりました。それなら私はあなたを止める!」

「私も手伝うよ。フェイトちゃん!」

 

なのはとフェイトが杖をかざしてプレシアと対峙する。

しかし、

 

「ダメよ、二人とも! 今のプレシアは非殺傷を解除している。防御しても砕かれてそれでお終いよ!?」

「それでも、もうシホには傷ついてほしくない!」

「シホちゃんは私達が守るよ!」

「右に同じだよ」

「お姉様には指一本触れさせません!」

「僕も足を引っ張りたくない!」

「そういうことだ。シホ、君は一人じゃないんだからな」

 

全員がそう言って私の前に立ってプレシアに戦いを挑んでいった。

でも今のプレシアの魔力は無制限…。とうていみんなの敵う相手じゃない。

こんなところでまた失いたくない…!

『大切な者達を守る正義の味方』を志した私には決して容認できない!

そして全員の周りに数え切れないほどの雷撃が形成されてしまい、その場にまだ刺さっていた子狐丸を発動し、

 

「天の鎖…!」

『なっ!?』

 

全員を強制的に縛り上げ私の後ろに下がらせた。

それが功をそうしたのかわからないが全員のいた場所には無数の雷撃によるクレーターが出来上がっていた。

子狐丸も強度の限界を越えたようでもうその場に残されていない。

 

「もう少し遅れていたら全員命はなかったわ」

『………ッ!』

 

それで全員は沈痛な表情をする。

 

「そして…もう、私は目の前で無残に散っていくものを見たくない!」

「そう…。でも、もう万事休すよ。あなた達の負け…もう私に対抗できる事は不可能よ!」

 

そしてプレシアはジュエルシードを使いただでさえ強力な魔力なのにさらに力を増す。

それと同じくして時の庭園が軋みを上げだし崩れ始める。

 

「この『時の庭園』を崩壊させるつもりね。でも、それはどうかしら? 最後まで取っておきたかったけどもう私も出し惜しみはやめたわ」

「なに…?」

 

プレシアは訝しげに私を見る。

その表情は余裕に満ちているが、その慢心が命取りよ。

私は使うまいと思っていた宝石剣を腰のホルダーから取り出す。

 

「…なに、その不細工な宝石もどきは?

魔力も感じない…そんなものでこの私に対等できるというの? 笑わせてくれるわ…」

「それはどうかしらね?

さっきもいったでしょう。私は本当の魔法使いの弟子だと…そして魔法の一端の軌跡、とくと見せてあげる」

「言ったわね。なら、見せてもらいましょうか!」

 

その言葉と同時にプレシアの手から雷撃が放たれる。

私は宝石剣をかざし、

 

接続開始(トレース・オン)!――魔力、装填(トリガー・オフ)!!」

 

宝石剣に同調し、無色だった刀身は七色に輝き始める。

そしてそれを振りかぶり、

 

Es last frei(開放).Werkzug(斬撃)!!」

 

放たれた閃光が雷撃をすべて飲み込み、プレシアの横の壁に光の軌跡が激突する。

 

「なにを、したの…?」

「さて、当てて御覧なさい…」

 

私はそういいながらも、

 

魔力、再装填(トリガー・オフ)!!」

 

と唱えて宝石剣の輝きを取り戻させる。

さて、後は長期戦に持ち込むのみ…!

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

そこからはシホの独壇場と化した。

プレシアが雷撃を放つと同時に、

 

Es last frei(開放). EileSalve(一斉射撃)!!」

 

またプレシアと同じ量の魔力は秘めているだろう光の極光を放ちすべてを消し去る。

だというのにシホの魔力は一向に減る気配を見せない。

それどころかシホが放つ極光はすでに限度を越えている密度だ。

これはさすがに異常だと思ったクロノ達はシホの攻撃について考察を始めていた。

 

「なによ、それは! 私はジュエルシードを制御して放っているのよ!?

それをあなたはどうして何度も打ち落とせるというの!?

それにそんな高威力の魔力の塊を一回放つだけであなたの魔力はすぐに空になるでしょうに!?」

 

まったくもってその通りだ。

プレシアが焦りを見せるのも頷ける。

そして今度は数十の数の雷撃を放つがそれも、

 

魔力、再装填(トリガー・オフ)全魔力装填完了(セット)Es last frei(開放). Aufeinanderfolgende Löschung(連続発射)!」

 

同じように分断して光の線をぶつけ合い相殺させる。

それでプレシアは顔を青くした。

この少女は一体どこにこうも連続で自身と対等の攻撃を行えるのか、と。

 

「…どうしてと言われてもね。私達魔術師はなのはのスターライトブレイカーのように大気中のマナをその身に汲み上げることで貯蔵以上の魔力を行使できるのよ」

 

しかしこれは衛宮士郎時代ではできなかった。

彼には魔力を大気から吸収する才能がなかったからだ。

だが、イリヤの体を手に入れた事で皮肉にも魔力を吸収できるような体になっていた。

 

「それがおかしいわ。確かに今、ここの中はジュエルシードの力も渦巻いていてたくさん大気に魔力は存在しているわ。

でも、それでもあんなに連続で魔法を放つことなんて不可能よ。その剣で魔力を増幅しているわけでもないし…別になにか供給源が存在するのかしら?」

「…すごいわね。やっぱりあなたはこちらの魔導師より私達の世界の魔術師よりの思考をしているわ。

それじゃ種明かしをしましょうか…二回は言ったわよね。私は魔法使いの弟子って…その魔法使いは五つの魔法の内、『並行世界の運営』を行えるのよ。この意味がわかる?」

「並行世界の運営……尽きているはずの魔力を何度も行使する…絶えず放ち続けられる魔力の波動…まさか!?」

 

プレシアはその解に至ったらしく顔が青どころか紫色にした。

そこでクロノがみんなの代表としてシホに「どういうことだ…?」と聞く。

それにシホはあっさりと、

 

「簡単なことよ。ここほど魔力が満ちていても使用できてもって数回。

でもここと『同じ場所』があったら使用回数は大幅に増えるわ」

「同じ場所って…まさか!?」

「そう…これ――宝石剣――は並行に存在する無限に連なる世界に向けて人も通れないほどの小さな孔を穿つだけの道具。

そして空けた孔から並列して存在するここ『時の庭園』から魔力を拝借しているだけ…。

私はあくまで弟子だからそれが今の限界だけど今はそれだけで十分よ。

さて…いい加減悪あがきは止しなさい! Es last frei(開放). RandVerschwinden(大斬撃)!!」

 

プレシアは真実を知ってなおも雷撃を放ってくる。

どうしてそこまで必死なのか。

だがシホ達はプレシアのその執念の意味を次の言葉で知る。

 

「どうして…どうして娘にもう一度会いたいという願いも許されないの!?」

 

ついにプレシアは本音をぶちまけた。

 

(…そっか。プレシアにしてみれば理不尽な事なのね)

 

シホはプレシアの願いは歪んでいるが、同時に実に純粋なものだと納得した。

だけど数多の犠牲を出してまで得る結果なんて悲しいもの…。

 

「なぜ世界はことごとく私とアリシアの間に介入してくるの!?

私はただもう一度アリシアの笑顔が見たいだけだというのに…!

私からアリシアを奪い、生き返らせる事をも邪魔してくる…なんでこんなに理不尽なの!?」

「世界はいつだって理不尽だらけよ…私もそれで幾度となく守ろうとしたものを失ってきたわ」

「シホちゃん…」

「シホ…」

 

全員がシホの底知れない悲しみのこもった声に涙していた。

だがプレシアは構わず、

 

「それなら…どうしてあなたは私の邪魔をするの!?」

「当然よ。プレシア・テスタロッサ…あなたが行おうとしている事を見逃せば多くの人達が次元震に巻き込まれて死んでしまう。

だからそれをさせない為にも私はあなたを止めようとした。そうすれば犠牲は出ずにすむ…」

「…そう」

 

プレシアは小さく呟き、その目に狂気を宿す。

それはとても暗く深い底なし沼の如き闇のようだ。

憎しみの感情が周囲に溢れてくる。

そして突然左胸を押さえて思い切り握り締める。

すると胸から青い光が点滅し始める。

 

「…? まさか! プレシアは胸にジュエルシードの制御装置を仕込んでいたの!?」

「今更気づいてももう遅いわ…! 私は、アリシアを奪おうとするもの、たとえ世界だろうとすべてを否定するっ!!!」

「やめなさい!」

 

シホの声も虚しくプレシアは制御装置を暴走させてしまった。

暴走したプレシアは所構わずに雷撃を放ちそれは当然シホ達に向かうが、シホがそれを宝石剣で一閃。

 

「クロノ! みんなをもう少し安全な場所まで避難させて! 暴走を止めるわ!」

「できるのか!?」

「やってみせるわ…!」

 

シホはそう言うと右腕を上げて、

 

投影開始(トレース・オン)!」

 

その右手に武器としては効率が悪すぎる歪な短剣が握られる。

全員はそれを見て、この事態に何をするのかと思い見守ったが、事は単純。

その歪な短剣をプレシアに向かって投擲したのだ。

 

「なっ!? ただの投擲であの強力な雷撃を突破できるわけがない!」

「いえ、あれならどんな魔法だろうと突破する…殺傷力は皆無に等しいけどね。あれには最高の効果があるわ」

「お姉様! その効果って…!?」

「見ていれば分かるわ」

 

シホに施され見れば短剣は雷撃の渦の中をまるで何事もなかったかのように突き進む。

いや、短剣が通る道だけ魔法がすべて掻き消されているのだ。

そしてなお暴走をしているプレシアの腹部にそれが当たったと認識したシホは、

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

その短剣の真名を開放した。

この歪な短剣はキャスター…メディアの「裏切りの魔女」たる象徴が具現化した宝具。

初級魔術から魔法まであらゆる魔術効果を打ち消してしまう、最強の対魔術礼装。

それを受けたプレシアは「ビクンッ!」と体を震わせた次にはそのまま地面に崩れ落ちた。

それでプレシアから一切の魔力反応がなくなり当たり一面に飛び散っていた雷撃もすべて消え去った。

それを確認したフェイトは「母さん!」と叫びながらプレシアに駆け寄った。

 

「…僕の予想だけどついさっきの短剣は…ゲイ・ジャルグと同じく魔力の効果を打ち消してしまうものと見たが?」

「そう…まぁ今しがたの光景を見ればその効果なんてすぐに検証できるでしょうね。

ついでに言うけどジュエルシードとの繋がりも多分断ち切ったからもう暴走することはないわ」

「…本当に君には頭が上がらないな。これでもう次元震は起こる事はないだろう。感謝する」

 

シホは「そんなことは別にいいわよ」とクロノに言おうとしたが、そこで先に向かっていったフェイト達。

特にフェイトの叫び声が聞こえた。

それでシホとクロノは向かうとプレシアの心臓部が見るも無残に破裂していた。

そのせいでプレシアは息も耐え耐えに呼吸を繰り返していた。

 

「これは…!」

 

シホはこのような事態を予想していなかった為にあせるが、隣にいたクロノが、

 

「…おそらく、ジュエルシードを制御していた装置が膨大な魔力に耐え切れずに機能を停止して壊れたんだろう…」

「それじゃ私は…結果的に。ごめんなさい、フェイト…今更謝れる義理じゃないけど…」

「シホが気に病まないでいいよ。きっと…しょうがなかったんだよ」

「でも…私は直接ではないにしても…」

 

シホの言葉に後悔の念が込められている。

しかしそこでまだ息があったプレシアはフェイトの方を向く。

 

「…アリ、シア?」

「えっ…?」

 

プレシアはフェイトに向かって確かに『アリシア』と言ってフェイトの頬に手を伸ばす。

おそらくもう思考がうまく回っていなくてフェイトをアリシアと完全に勘違いしているようだ。

 

「目を、覚ましてくれたのね…アリシア」

「母さん…私は…」

「フェイト…プレシアの最後の願いだからそれを叶えてあげて…」

「…うん…」

 

シホの一言でフェイトはアリシアを演じることにした。

それから少しの間、フェイトとプレシアは仮初とはいえ本当の家族になれたのだ。

そしてプレシアは最後に、

 

「ごめんなさい…アリシア。私はもう眠くなったわ…」

「うん…うん…!」

 

もう大量の涙を流しながらフェイトはプレシアの手を握って何度も頷いた。

 

「アリシア…聞いて。私はあなたのクローン…名前はフェイトっていうの。その娘にひどい事をたくさんしてしまったわ。

でも、もう償うことも叶わないでしょうね…こんなひどい親、きっと許してくれないわ…」

『!!』

 

そこでプレシアの思いもよらないフェイトに対しての謝罪を言い始めてフェイトはさらに涙を流した。

 

「そんなことないよ!? フェ、フェイトは母さんの事が今でも大好きだよって私の隣で言っているよ!」

「本当…? よかった…アリシア、これからフェイトと二人きりにしちゃうけど…頑張って生きていくのよ?」

「うん…!」

「さ、ようなら…私の愛しいアリシア、にフェイ、ト…」

 

…そしてプレシアは安らかな表情をしてまるで眠るように息を引き取った。

 

「母さん…ッ!!」

 

それから庭園にはフェイトの泣き叫ぶ声が響き渡った。

そしてしばらくして、

 

「フェイト…プレシアとアリシアの体をアースラに運ぼう?

そしてちゃんと埋葬してあげよう…だから…」

「うん…私はもう大丈夫。ありがとう、シホ…」

「ううん。お礼なんて言われる筋合いはないわ」

「それでもだよ」

「そう…ありがとう。クロノ、護送、お願いできる?」

「…任せてくれ。しっかりと送り届けよう」

 

全員がそこで悲しい出来事だけどようやく「終わった」という実感が沸いた。

だがそのとき、まだ空中に浮いていた七つのジュエルシードが脈動をしている事を全員は気づいていなかった。

 

 

 




プレシアですが、賛否両論あると思いますがこういう結末もあるかなと思いました。
やっぱり仮初でも救いがあった方がいいと思いますし。
それとクロノの出番を奪ってしまいました。

それでは、ご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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