【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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更新します。

今回はシホとヴォルフ・イェーガーの関係についてのお話です。

ではどうぞー。


第二百一話    『ヴォルフ・イェーガーの真の目的』

 

 

 

「オジキ! オジキーーー!!」

「そんな………おじ様……」

「隊長ッ! くっ………」

「ジグルド提督………」

 

戦闘を中断してロボ、セイラ、凰華、ティーダ………他にも生き残っていたブリューナク隊の魔導師達がゼストの腕の中で息絶えているジグルドを見て涙を流していた。

そんな中で機動六課は全員集結して交渉をしたいというヴォルフ・イェーガーと向かい合っていた。

セイバーにランサー、アーチャー、アサシンはヴォルフの命令なのか戦闘は中止している。

しかし唯一いまだにモリアの体から生み出された黒い獣は数を増やしていっている。

もう数えるのがばからしく思えるほどに増えているので厄介だ。

 

「………シホちゃん。三提督達は志貴とアルクェイドが確保したからもう安心してええよ」

「ありがとう、はやて。でも、こいつらは一体………」

 

そこにふとあの四日間の記憶を覚えているアルトリア、ランサー、ライダーはシホと士郎に言う。

 

「シホ、それにシロウ。思い出してください。あの四日間の出来事を………あなたならば覚えがあるでしょう?」

「ッ! そうか、アヴェンジャーの無限の残骸達!」

 

そう、今も際限なく増殖し続けている黒い獣はあのアヴェンジャーとうり二つの姿をしていたのだ。

姿はおぼろげながらもその鋭い爪で何度も戦ったのをシホと士郎は忘れない。

 

「それによー………そこのヴォルフ・イェーガーがなんか知ってんじゃねーのか?」

 

ランサーの言葉にシホは再度ヴォルフ・イェーガーに問いかけようとする。

 

「………ヴォルフ・イェーガー。聞くわよ? あの黒い獣はなに………?」

「………なに。疑似的に作り出した聖杯のカケラを埋め込んで暴走させたなれの果てだよ」

 

こともなげにヴォルフはそう言う。

 

「聖杯、聖杯………か。とことん私達は聖杯とは縁があるのね」

「そのようですね、シホ」

 

ユニゾンを解除していたアルトリアがシホの隣でそう話す。

そしてヴォルフ・イェーガーがある提案をしてくる。

 

「さて、それではシホ・E・S・高町よ。私のもとへと着いてきてもらえないか?」

「なんであなたに着いていく必要があるのか事情を説明してちょうだい?」

「私はお前に渡したいものがある。そのためにはどんな非道な行いでもしよう。………そう、この黒い獣をミッドチルダ中で暴れさせるとかな」

『なっ!?』

 

それに全員は驚愕する。

するとヴォルフ・イェーガーはこの黒い獣を制御できるというのかという話になってくる。

 

「胡散臭いな。お前がこれを全部制御できているとでもいうのか?」

 

士郎がそう言う。だがヴォルフは「フッ……」と笑みを浮かべて右手をすっと上げる。

そして士郎を指さす。

士郎は何を行うのかと思った次の瞬間には黒い獣一体が士郎目がけて飛びかかってきた。

それを士郎はとっさに干将・莫耶を投影して受け止める。

だが、

 

「ぐっ!?」

 

パワー負けしているのかどんどんと後方へと追いやられていく士郎の姿に一同はすぐに魔法や攻撃をかまして黒い獣を葬った。

それでヴォルフ・イェーガーは「どうだね………?」と言ってくる。

それで嗾けられた士郎本人も含めて全員はヴォルフ・イェーガーが黒い獣を制御化に置いていることを悟る。

 

「さて、もう一度問おう。シホ・E・S・高町………私に着いて来い。そうすればその間だけでもこいつらの暴走はさせないことを保証しよう」

「くっ………ッ!」

 

それでシホは悔しいのか拳をギリギリと握りながらも、

 

「………わかったわ。ヴォルフ・イェーガー、本当に私がついていけばこいつらは暴走させないのね?」

「約束しよう」

「それなら、いくわ」

「シホッ!?」

「シホさん!?」

「奏者!?」

 

みんながシホの苦渋の決断に驚く。

 

「シホちゃん! みんなで倒せばなんとかなるよ! こいつらの核を潰せば………ッ!」

「そうです! だからあの男に着いていく必要はありません!」

 

みんながみんな、シホを呼び止める。

しかしシホは首を振り、

 

「ダメよ………。見たでしょう? たった一体の黒い獣に士郎がパワー負けしている光景を。そんなものが今も増殖し続けている。すでに数はわからないほど膨れ上がっているわ。こんなものが全部暴走したらたとえサーヴァントであるネロ達の力があっても多勢に無勢。だから私はいくわ」

「でもッ!」

 

スバルがそう叫ぶ。

そんなスバルの頭に手を乗せて笑みを浮かべながらシホは、

 

「大丈夫よ。少なくとも殺されることはないと思うから。だからみんなはもしもの事があったら私を抜きにしてあの黒い獣を倒して……士郎、いざって時は固有結界で殲滅してね?」

『………ッ!』

「わかった……」

 

全員がシホの決意に仕方なく従うしかなかった。

そこでネロが声を上げる。

 

「奏者よ! なにかあったらすぐに令呪を使って余を呼ぶのだぞ! 余がいれば奏者は大丈夫なのだからな!!」

「ええ、ネロ」

「では行くとしようか」

「………ええ」

 

それでシホはヴォルフ・イェーガーの近くに寄ると地面に転移のための魔法陣が浮かび上がり、シホとヴォルフ・イェーガーはその場から姿を消した。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

………そしてシホとヴォルフ・イェーガーが転移した場所はどこか薄暗い洞窟の中のようであった。

 

「ここは……?」

「私の研究施設だよ。さて、着いてきたまえ」

「わかったわ」

 

それでシホは警戒をしながらもヴォルフ・イェーガーの後を着いていく。

そして到着した場所はまさに実験室と言えるような空間であった。

そこでシホは驚きの光景を目にする。

 

「なっ!? 人が培養液の中に入っている!?」

 

そう、そこには何十個にも及ぶ培養カプセルが存在しており、その中には男女関係なく約三十人ほどの人が入っていた。

そこでシホはふと思い出す。

 

「三十人くらいの人? そういえば………そうだ!」

 

それでシホは思い出す。

そう、その三十人とは以前に行方不明になったという魔術師たちの人数と同じ数だったのだ。

それでシホはその瞳に怒りのようなものを宿す。

 

「ヴォルフ・イェーガー! この人たちに何をしたの!? 答えによっては………ッ!」

「安心しろ。この者たちは私の計画が済めば解放する手はずになっている」

「その言葉、信じていいのね………?」

「ああ」

 

それでシホはまだ手を出さずに事を見送る。

まだまだ秘密がありそうだからだ。

叩くのならば全部の秘密を知ってからでも遅くない。

そう考えてシホはヴォルフ・イェーガーが歩いていく姿を黙って着いていく。

そしてさらに奥に進んだ先にはまた培養カプセルがあり、その中にはとある男の子が入っていた。

その男の子の顔を見てシホはまたしても驚く。

 

「ノア!?」

「そう………君の知るノア・ホライゾンだ」

「どうして彼が………言峰綺礼に心臓を抉り取られて死んだはずだったのに」

「そう、確かに彼は死んだ。そして管理局に死体を持っていかれた。しかし最高評議会は彼の死体はホムンクルスというだけで興味の対象となり、結果研究対象として色々な実験に使われようとしていた。だから私はさせまいと彼を強奪した」

「最高評議会はノアまで………」

「しかし私の目指す道には彼の体は好都合だった。彼は元・小聖杯を宿した少年だった。だから私は彼の体に七つのジュエルシードを宿した。見てみろ、彼の胸を」

 

それでシホはノアの胸を見る。

心臓を抉られた場所は塞がっていないが、代わりに七つのジュエルシードが魔法陣を描くように円状に埋め込まれていた。

そしてヴォルフ・イェーガーは語る。

 

「私は考えた。彼を再度疑似とはいえ聖杯の器として役目を果たさせることを………。それでジュエルシード七つに私は願った。『聖杯であれ』と………。そうして結果、ノアは深い眠りにつきながらも聖杯の機能を取り戻した。しかもしっかりと中身があるな」

「中身がある………? それってつまりノアに願えばどんな願いも叶うってこと!?」

「いや、そう簡単なことじゃない。一定期間の間、魔力を充填しないと願望器として効果を発揮しないのだ。そのために三十人もの魔術師を誘拐して魔力をノアへと送るように設定した。

そして魔力は何度か充填してその数少ないチャンスを生かして私は七体のサーヴァントをクラスカードとして具現化した。ある、目的のためにな」

「そのある目的って、なに………?」

「その前にシホ・E・S・高町………いや、シルビアよ。本来の姿に戻ったらどうだ? そうすれば私も正体を君に話そう」

 

その言い回しにシホは驚く。

本来の姿に戻れ………という事はシルビアの姿になれという事。

でも、

 

「どこで知ったの………?」

「さてね………」

 

とぼけるヴォルフにシホは「まぁいいわ」と言って一度目を閉じる。

 

《イリヤ………行くわね?》

《はぁ、わかったわ》

 

そう言ってイリヤに話しかけてとある作業を手伝ってもらう。

そして、

 

「………リバース。モード、シルビア………」

 

シホがそう呟いた瞬間、シホの朱銀色の髪が光り輝いて粒子を散らすように朱色の成分が抜け落ちていく。

そして先ほどまで朱銀色であったシホの髪は完全に銀色へと変わっていた。

しばらくしてシホは眼を見開く。

するとシホの特徴的な琥珀色の瞳はルビー色へと変貌していた。

つまるところはアインツベルン製のホムンクルスと同じく銀髪赤目の状態になったのだ。

その姿はかつてのイリヤの母であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンとほとんどうり二つである。

当然だ。この体の素体はイリヤなのだ。

だから似ているのは必然。

 

「………では、話していただきましょうか。ヴォルフ・イェーガーよ」

 

しかも先ほどまでのシホの口調ではなく、喋り方はどこか貴族を感じさせる丁寧なものである。

そう、今シホはシルビアへと姿を変えているのだ。

いや、この言い方はおかしい。

シホとシルビアは魂を融合したのだ。

だからこの姿はシルビアでありシホでもある。

シホの時の姿もシホでありシルビアでもあるのだ。

少しややこしいが、まぁそんなところである。

 

「フフフ………会いたかったぞ。シルビアよ」

「私はあなたのことを知りません。できれば私を知っているわけを教えていただけませんか?」

「いいだろう。私はヴォルフ・イェーガーという名は偽りのもの。本名は『セヴィル・アインツベルン』。この右目の宝珠に宿っている意識生命体だよ」

 

そう言ってヴォルフ・イェーガーは右目を開く。

そこには確かに宝石が収まっていた。

しかしそれよりもシルビアは驚く。

 

「その名前は………ッ! まさか、セヴィルなのですか!?」

「思い出したかね? “姉さん”………」

 

ヴォルフ………いや、セヴィルはシルビアの事を姉さんと呼んだ。

つまりは、そういう事だ。

 

「し、しかしあなたは………!」

「そう……。アインツベルンの一族は予言でも危険視されて姉さんを残して全員が殺されてしまった………。でも、私は意識を宝石に転換してどうにか生き残ったのだ」

「セヴィル………ッ!」

 

そう言ってシルビアはセヴィルに抱き着く。

もう死んだと思っていた弟が目の前に姿を変えてるとはいえ生きているのだ。

嬉しくないわけがない。

しかし、シルビアはしばらくしてセヴィルから離れて、

 

「………しかし、セヴィル。あなたは今までヴォルフ・イェーガーとして悪事を重ねてきましたね。許されないことです」

「ああ、ああ………わかっているとも。だからこれで最後にしようと思っているのだ。長い年月を送り私の魂はなんとか保ってきたがそれももう限界だ。

あと、一年もしないでこの宝珠は朽ちて私は死んでしまうだろう。

だから私の願いはただ一つ。姉さんが『創造物質化』を再び使えるようになることなのだ」

「再び、創造物質化を………?」

 

それでシルビアは思った。

セヴィルは魔術の世界のアインツベルンと同じく失われた術を追い求めるあまりかつての威光に取り憑かれているのかもしれない、と。

 

「………キャスター」

 

そう言ってセヴィルは今の今まで姿を見せなかったキャスターを呼ぶ。

するといつの間にかそこにはフードを着た女性が立っていた。

 

「キャスター、ですか………? しかし、メディアでも私が失った創造物質化を蘇らすことは不可能では………」

「何を勘違いしているのかは想像はつくが、このクラスカードは裏切りの魔女メディアではない。ルールブレイカーを使ったのは“投影”したからだ」

「投影………? まさか、ではそのクラスカードの正体は!」

「そう、英霊エミヤ。いや、本来のエミヤとは違うが、シホ・E・S・高町が英霊化してクラスカードに宿ったのがこのキャスターの正体だ」

 

そう言ってキャスターは無言でクラスカードを地面に置く。

それを恐る恐るシルビアは拾う。

そしてキャスターと呼ばれたホムンクルスは役目を果たしたのか塵となって消えてしまった。

 

「セヴィル……。聞きます。今までどうして敵対行動を行ってきたのですか? こんな回りくどいことをしなければ私達は素直に巡り会えたというのに………」

「姉さん、いや、シホ・E・S・高町には成長してほしかったのだ。危ういままでは姉さんの魂と融合していても不安だからな。だが、結果シホ・E・S・高町は自身の正義を明確にできた。だから私はこうして姉さんと会う決意をしたのだ」

「セヴィル………」

 

 

―――キシッ!

 

 

すると右目の宝珠に突然ヒビが入る。

 

「くっ!? 予定より早く私の魂の崩壊が始まったか! 姉さん、そのクラスカードを胸に当ててくれ! そうすればクラスカードはシホ・E・S・高町の魂と協調して融合するはずだ!」

「し、しかしセヴィルは………!?」

「私の事はもういいのだよ。それより今まで使わせてもらっていたこの体の本来の持ち主を保護してやってくれ……。ノアや捕らえていた魔術師達も………そして、最後に私がいなくなり制御が外れて暴走するであろう黒い獣の群れを退治してくれ。無責任だとは思う。だがお願いする」

 

そうセヴィルは言う。

宝珠のヒビはどんどんと広がっていき、

 

「さよならだ、姉さん………」

 

完全に砕け散ってセヴィルはその場に倒れこむ。

 

「セヴィル………さようなら」

 

シルビアはもう間に合わなかった事を悔やみながらも、

 

「………リバース。モード、シホ………」

 

本来のシホに戻っていく。

そして、

 

「ヴォルフ・イェーガー………いえ、セヴィル。あなたの気持ち、受け取ったわ。全員助けるから……。でも、ライダーとの約束、『あなたを殴る』って約束、果たし損ねてしまったわね……」

 

そう愚痴りながらもシホはクラスカードを胸に当てて、

 

協調開始(トレース・オン)……」

 

協調を開始する。

するとクラスカードはシホの体へと吸収されていき、そして、

 

 

―――ドクンッ!

 

 

シホの体に失われた力が戻ってくるのを感じる。

しかしシホは同時に悲しい思いを感じていた。

 

「便利だけどこんな災いを呼ぶかもしれない力………。私は欲しくなかったのにね」

 

そう言いながらもシホはアンリミテッド・エアの格納スペースに入れられている宝石剣を取り出して、

 

「またここに来るわ。ノアに魔術師のみんな。必ず助けるから待っていて……」

 

シホはそう言って暴走しているであろう黒い獣に襲われようとしている機動六課のみんなのもとへと七色の光に包まれながら転移するのであった。

 

 

 




ヴォルフ・イェーガーさん。いえ、セヴィルさん。
なんだか最後はいい人そうに見えてましたがとんでもない。自己満足で勝手に逝ってしまい、ここまでの過程でたくさんの人を不幸にしてきたのですから魂の消滅というのは少し温いかもしれませんね。

そして新たに『創造物質化』を再取得してパワーアップしたシホ(シルビア)。
さぁ、次回は黒い獣の掃討戦かもしれませんね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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