【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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残りの戦いの前の小休止の話です。
今回はノアの過去を書いてみました。


第七十六話    『光と影の人達の想い』

 

左腕を失いあまりの痛みに絶叫をあげているトーラスが管理局の魔導師達に連行されていくのを尻目に、

 

 

「フィア!」

「兄さん!」

 

ユーノとフィアットが感極まったという感じでお互いに抱き締め合う。

 

「よかった…よかった…」

「心配かけて、ごめんなさい…兄さん…」

 

フィアットはやっと安心することができたのかその目から涙を流しだす。

うれしいのだろう、ユーノも一緒に涙を流している。

ユーノはフィアットが捕らわれてから今日この日まで心配しない日なんてなかった。

できることなら自分自身で助けにいきたいという思いだった。

でもユーノは自身の力がどれだけ小さいかはよく分かっていたのでシホ達に任せる他なかったのだ。

自身の無力さを痛感しながらも、同時にフィアットがなにも後遺症もなく無事な姿で戻ってきてくれたことにユーノは安堵の息をもらした。

しばらく兄妹の再会の時間が続いたが、フィアットはまわりにいるなのはにはやてにそしてシホを見て、

 

「お姉様! 怖かったです! もう私はダメなんじゃないかと思いました!」

 

今度はシホに抱きつき久しぶりのシホとの抱擁を味わった。

 

「ふー…やっぱりお姉様はいい匂いがします。戻ってきたんだと実感します…」

「そう…無事でよかったわ。フィア」

「…でも、キャスターの洗脳で操られていてもかろうじて意識だけはありました。だから私のサーヴァントが消滅してしまったのはわかります…」

「フィアちゃん…」

 

なのははそれで少し伏し目になる。

自分とオリヴィエの戦いでクラウスを倒してしまったのだから。

何か言おうと思うけどなかなか言葉が出てこないのである。

でもフィアットはなのはのその視線の意味を察したのか、

 

「なのはさん、大丈夫です。私はファイターとそんなに話す機会はなかったですけど、トーラスからファイターには何度も守ってもらっていた気がするんです。

それに令呪のつながりでファイターは悔いなく消えていったということも知っています。だから…なのはさんは気にしないでください」

「うん。ありがとう、フィアちゃん…」

 

それでなのはも笑顔を取り戻す。

 

「…そういえば、はやてはよくキャスターの宝具をやぶる事ができたわね~」

 

ファニーヴァンプがはやてにそう聞く。

それは他のみんなも思っていたことなので気になっていた。

 

「んー…なんていうのかな。私にどこか関係ありそうな子に助けてもらったんよ」

「助けてもらった…?」

「うん。私は悪夢の中で「もうダメや…」と本当はあきらめていたんや。でも、いきなりってわけでもないんやけどその子の声が聞こえてきて私に励ましの言葉をかけてくれたんよ」

「そうなのですか、主はやて…」

 

リインフォースが話し掛ける。

でもそこではやては心の中で(リインフォースに似ている…?)と思った。

 

「なんや、その子、喋り方は似てなかったんやけど、だけど雰囲気がえらくリインフォースに似ていたな…?」

「私に、ですか…?」

「うん。たぶん私の予想では…」

 

はやてはそこで一度黙り込んだ。

 

「…はやて?」

 

ヴィータは突然黙り込んでしまったはやてのことが心配になって声をかけるが、

 

「ヴィータ。これから生まれるだろう私達家族の末っ子の事、可愛がってあげてな?」

 

突然そんなことをはやては言い出した。ヴィータはよくわからなかったがとりあえず「わかった」と返事を返しておくことにしたのだった。

その後もはやてはなにか思うところがあるのか終始笑みを浮かべていた。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

月村邸に戻り、フィアットが無事救出できたことに喜ぶ一同。

特にすずかがフィアットへと駆け寄り、

 

「フィアットちゃん! これからはシホちゃんをかけて正面からの全力勝負だからね!?」

 

フィアットはすずかのライバル発言に驚きの表情をするがすぐにニヤッと挑戦的な笑みを浮かべて、

 

「私も負けません。お姉様は絶対に渡しません!」

 

それで二人は同時にいい笑みを浮かべて握手をしたのだった。

ライダーから応援する仕草が見られる。

しかしシホはシホでやっぱりというかこれでこそ正常運転のごとく、

 

「フィアとすずかは仲良しねぇ…」

 

と、のんきに呟いていたり。

それを聞いていたなのは達はアリサが代表して、

 

「この鈍感!」

 

とシホに言ったり。

そしてはたから見ていた士郎もさすがに他人事になると分かるらしくアリサと同じく「鈍感だな」と思っていたり。

だがザフィーラが士郎の肩に手をおき、

 

「士郎、シュバインオーグもお前だけには言われたくはないと思うぞ…」

「は…?」

 

と、諭していたり。

結論、どっちもどっちと言う事である。

それによって聞いていたリインフォースが顔を赤くしたりと。

場はなかなかにカオスと化していた。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side シホ・E・S・高町

 

 

それから一応の落ち着きを見せたみんなでやっとのこと話し合いを始めた。

 

「さて、それじゃフィアも助けだすことができて不安要素もなくなったわね。できればクラウスも仲間内に引き込みたかったけどもう過ぎたことを言ってもしょうがないわね…」

「これで後残す敵はセイバーとギルガメッシュのみだな、奏者よ」

「ギルガメッシュは最後まで姿を現わすことはないでしょう。ですから先にセイバーである私が仕掛けてくると思うのです」

 

アルトリアの言葉に私達は「そうね」と相槌を打つ。

 

「相手はアルトリアさんだから次は総力戦だね!」

「えぇ、なのは。もちろん私達も全力で挑んでいきます」

 

なのはが総力戦だという。そうかもしれない。

セイバーもギルガメッシュも敵になるとこうも油断ならない相手だから。

 

「そうですね。セイバーの最大の強みはやはりエクスカリバー…それに単騎でも全員を圧倒するでしょう」

「ライダーは一度エクスカリバーの直撃を食らったことがあるんだよね?」

「えぇ、スズカ。私のベルレフォーンがあっけなく破れてしまいましたからその威力は絶大でしょう…」

 

そう、セイバーのエクスカリバーはアルトリアのエクスカリバーよりおそらく出力は上だろう。

そこをどうやって差を補うかが勝敗に繋がってくる。

 

「過去に俺のゲイ・ボルクも当てにいったが致命傷を避けたからな。運も直感もいいだろうな」

「そうなんだ…必中の槍も避けちゃうんだね」

 

あのランサーとの最初の戦いの時か。

そう考えるとアルトリアって最初にやられる可能性も持っていたわけね。

 

「呵呵呵、儂にとっては誰もが等しく強敵よ。倒しがいがあるわ!」

「アサシン、やるんだったら一発で仕留めなさいね?」

「おう! 見ておれよアリサ!」

「えぇ!」

 

アサシンとアリサはもう強気ね。

その意気込みが最後まで保てばいいけど。

 

「…私はサーヴァントとしては最弱ですから正面からはあまり戦いたくはありませんねぇ。バーサーカーとの戦いもかなりギリギリで切羽詰まったものでしたから…」

「キャスターは後方で支援に撤したほうがいいな」

「はいです、ご主人様(マスター)…」

 

…そうね。確かに危なかったわ。

聖杯にあまり魂をくべるわけにはいかないからみんなが死なないように戦わないといけない。

といってもそんなこと言ったら戦いなんてできないからやっぱりその時の運任せになってしまうのが痛いところね。

 

「セイバー相手なら私もより本気を出せそうね」

「アルクェイドが本気を出したらサーヴァントを上回るからな…」

「頼りにしとるで。ファニーヴァンプにアサシン!」

「まっかしといてよ、はやて!」

「ま、足手まといにならない程度に頑張るとするか…」

 

真祖に直死の魔眼使い…この二人はやっぱりかなり心強いわね。

 

「みなさん、話し合いもいいですがそろそろ夕食にいたしましょう」

 

ノエルさんとファリンさんが料理を持ってきたので全員それに頷く。

そしてその後はみんなでお食事会を開いてみんなで勝利を祈った。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side ノア・ホライゾン

 

 

僕の運命は生まれた時から決まっていた。

アインツベルンの人形という役割で。

そして第五次聖杯戦争のために同じホムンクルスでありながらも特別な小聖杯を宿したイリヤスフィール・フォン・アインツベルンお嬢様がかの冬木の地へとセラとリーズリットを連れて旅立っていった。

僕にもイリヤスフィールお嬢様の予備として小聖杯としての機能を埋め込まれていたけど使われる機会は多分ないだろう。

そう、思っていた。

だけど、それは第五次聖杯戦争でお嬢様が敗れたという話を聞いてから僕は思った。

もしかしたら僕にも出番はあるのではないかと…。

そんな事を思っている時だった。

世界中はいきなり出現した謎の泥によって汚染されていきアインツベルンの領地だった場所も例外なく飲み込んだ。

他のホムンクルス達もどんどんと飲み込まれていきとうとう僕も飲み込もうとしてきた。

そして泥に飲まれそこで僕は様々な悪意を見た。

 

「これは…」

 

普通なら気が狂ってもおかしくないと思える程の絶望が溢れているはずだった。

でも自然と僕はそれを受け入れていた。

そうしてしばらく経ち泥はいつの間にか消え失せていた。

代わりに僕の目の前には一人の神父が立っていた。

 

「…祝福しよう。聖杯の泥に耐え切ったものよ。そして小聖杯の器を持つ者よ」

 

神父さんはそう言って僕の手を握ってきた。

なにがそんなに楽しそうなのか聞いてみた。

しかし逆に質問をされた。

 

「なぜそんなに楽しそうなのか…?」

 

そんな事を聞かれた。

楽しそう…?

僕が…?

手で顔をなぞってみると確かに僕は笑みを浮かべていた。

それに神父さんは何かを思ったのか…、

 

「…ふむ。よもや私以外にもこのような者が生まれるとはな…」

「…どうしたの? そんなに笑みを浮かべて…」

「楽しいのだよ。かつての私と同じ空虚の心を持ち合わせているものと出会えたのだから…」

「空虚…」

「どうだね? 私とともに新たな世界でまた戦いをしたいと思わないかね?」

「戦い…」

「君はそのために生み出されたのだろう…?」

「うん。僕は小聖杯として生み出されたホムンクルス…」

「ならばもう君は私の同士だ。さぁ、新たな世界で再びこの世界を再現しようではないか…」

「今のこの世界は楽しい…?」

「…いや、もうこの世界には私の楽しみは消えてしまったのだよ。

そして私の疑問も解消できないまま世界は滅びた。

だから目指すは新世界だ。そこで新たな聖杯戦争…いや、聖杯大戦を起こさないかね?」

「……………僕の存在意義。それを叶えてくれるなら僕はついていきます、神父さん」

「ふふふ…よろしく頼む。よければお前に名をやろう。…そうだな、ノア・ホライゾンという名はどうだ?」

「…ノア・ホライゾン…それが僕の名前…」

 

僕が名前をもらったところでそこに新たな人の気配を感じた。

 

「ふん…。言峰、我はもうこの世界は飽きたぞ? 何もなくなってしまったのだからな。王の次の居場所を選定しようではないか」

 

そこには黄金に輝く鎧を身にまとった王様がいた。

 

「王様…」

「ぬっ…生き残りがいたのか。言峰、こやつは…?」

「ふふふ…私の同士だ」

「そうか。ならば貴様と同じく性格破綻者なのだろうな。こういった存在は我の心を潤す。よい、我の家来になることを許そう」

 

一方的だけど僕はこの王様についていこうと思った。

そしてさらにそこから黒い甲冑の人が姿を現す。

 

「………」

 

その人は無言で佇んでいる。

でもその気配からして人間ではないと思った。

 

「そうだ。ノアよ。同士としての暁にお前にこのサーヴァントをやろう。受肉しているがマスターはいた方がいいだろう」

「わかりました…」

 

そうして僕にはサーヴァント…セイバーが護衛につくことになった。

それからというもの、言峰綺礼…師匠は僕を鍛えてくれて世界を渡る時も一緒にいてくれた。

僕に楽しみというものを教えてくれた。

だから、僕は師匠の役に立とうと思った。

 

そして世界を残りの聖杯の力を使って渡って最初の戦闘の時、そこにはイリヤスフィールお嬢様に似た少女がいた。

その少女は僕に向かって、

 

『あなたを止めるわ!』

 

と、言ってきた。

でも僕は止まらない…いや、止められないんだよ。

どのみち小聖杯としてのこの体は儀式が終了するまでしか生きられない。

そして少女は今度は僕に、

 

『それでいいの!? 言峰綺礼の操り人形のままで!』

 

操り人形、か。

それがどうしたっていうのさ。

僕が人形なのはもう百も承知でしょう…?

 

『ノア、あなたにも心があるなら自身の事も考えなさい。

そして言峰綺礼が起こそうとしている事を考えなさい!』

 

知っているよ。聖杯に願ってまたあの泥を呼び出そうとしていることは。

でも、それが…?

師匠はそれも誕生する命だと思っているんだよ?

それならそれでいいじゃないか。

 

『その生まれてくるものがこの世界に災いを振りまくことになるのよ!?』

 

うん…。知っているさ。そこまで知っているならどうして君は抗おうとするの?

もうこの大魔術儀式は止められないんだよ。

サーヴァントが脱落するたびに魔力は溜まっていってしまうんだから君達が戦うということはその手助けをしているだけなんだよ…?

…わからない。

…君のことがわからない。

…どうしたら君のことが理解できるの?

そして戦いは終了し、僕はセイバーとともに師匠のとこまで帰ってきた。

 

「お帰り、ノア。どうだったかね? 初の戦闘は…?」

「なんてことはなかったですよ。やっぱりセイバーは強いですから」

「ふむ、期待が外れたか…?」

「でも、変なことを言う子とは出会いました」

「変なこと…?」

「はい…」

 

それで僕は師匠にその事を包み隠さず伝えると、

 

「聖杯と私のことを知っているのか。その者の名は…?」

「すみません、聞き忘れました…。でもイリヤスフィールお嬢様にそっくりな外見でした」

「ほう…? アインツベルンの少女とか…」

 

師匠はそれで少し考え込む仕草をして、

 

「わかった。私の方でも少し手をつけて調べてみよう。その少女のことを…」

「わかりました」

 

それからしばらくして師匠はその子の名前を入手してきました。

 

「ははは。驚け、ノアよ」

「どうしたのですか、師匠…?」

「いや、なにね。彼女の名前がわかったのだよ」

「名前が? それのどこかおかしいところがあったんですか?」

「ああ。彼女の名前は“シホ・E・シュバインオーグ”…いや、今は“シホ・E・S・高町”だったか?」

 

シホ・E・S・高町…。

それが僕の心を揺さぶった少女の名。

 

「その名前の中に彼のシュバインオーグが入っていることにも驚いたが、彼女の最初のファミリーネームはE…つまりエミヤ…。

これが意味することは私を過去に倒した衛宮切嗣、そして今度は私が倒すことになった衛宮士郎に次ぐ新たなエミヤなのだよ。

くくく…これだから平行世界は面白い。またしても私に歯向かってくるものがエミヤだとは…。実に彼女の心の傷を暴いてみたい…」

 

師匠は実に楽しそうにそう語る。

でも、僕にとってそんな事はどうでもよかった。

僕の心を揺さぶる存在…シホ・E・S・高町。

彼女とまた会えれば僕は何を思うのだろう?

そしてそれから僕たちの陣営である仲間…いやこの場合は聖杯の生贄という駒と呼べる人達が次々と敗れていっている。

最初に敗れたのは三菱彩。

次はミゼ・フローリアン。

そしてアクア・アトランティーク。

最後にトーラス・スタリオン。

全員サーヴァントは敗れてしまったらしい。

 

「これで聖杯大戦で残された私達の陣営はノアと私だけになったな。まぁ、あいつらには期待はしていなかったがな…」

 

師匠はつまらなそうに顔をしかめてそう下す。

 

「まぁ、私とノア、我らがいれば大丈夫だろう。順調に聖杯に魂も流れているのだからな」

 

そう。僕の小聖杯にはもう四体ものサーヴァントの魂が流れ込んできている。

でも、まだ動ける。

僕の体は十四体魂を収めておけるように改造されているから。

まだ手足の感覚はある。

だからまだ戦える。

そして僕も間近で見るんだ。聖杯が降臨する様を。

 

 

 




はたしてノアに救いはあるのか否か…。
しかし運命は残酷なのです。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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