うちの言峰さんは答えを知りたいという妄執に駆られていますので少し暴走気味です。
「…さて、では最後の戦いといこうではないか。諸君…」
言峰綺礼は静かに、しかし全員の耳に届くようにそう宣言した。
なのはは言峰綺礼に対して恐怖を覚えているようで同じ感想を抱いているフェイトと手を握り合っている。
はやてにも守護騎士達が守りに徹している。
すずかとアリサも言峰綺礼のその不気味な笑みに顔を引きつらせている。
シホと士郎はその目を憎悪に染める。
そしてランサーが前に出て、
「…てめぇは正気か? 唯一の頼みの綱であるギルガメッシュを殺すなんてよ?」
「私は正気のつもりだが。ランサー」
「ならばすぐにてめぇを殺せる奴らがここに集まっているんだってことも分かるよな?」
「ああ、承知だ」
「なら………。いや、てめぇに問いはもう無意味なものだな」
ランサーはため息をついて、
「じゃ最後に質問だ。…てめぇ、なんの力を手にした…?」
「無論聖杯の力だ」
「そうかよ。なら、もう手加減はいらねぇってことだな?」
「分かっているではないか…? しかし、少しばかり私の話に付き合え。そこの衛宮士郎にもぜひ聞いてもらいたい…」
「…なんだ?」
警戒しながらも士郎は言峰に問いかける。
何を話したいのだと。
「私は前の世界で一度は衛宮切嗣に敗れた。しかし聖杯の泥の力で心臓を失いながらも生き残った。
そして十年後に起きた第五次聖杯戦争…その戦いでは私達は衛宮切嗣の意思を継ぐ衛宮士郎を殺した。
そして聖杯に私の中でくすぶっていた答えの意味を問いただした。
なぜ、私はこうも一般の人とは違うものなのかと…。
どうして人の不幸を愉悦として感じてしまうのかを…。
しかし、聖杯はどう判断したのか知らないが私の願いとは裏腹に世界に泥を撒き散らし世界を滅ぼした。
…そして私は今度こそ答えを得るために新たな世界で再度アンリ・マユを産み落とそうと考えた。
今度こそ絶対の問いかけで持ってして私の答えを得るために…」
そう言って言峰綺礼はその顔に笑みを刻む。
「それだけのために、そんな事のためだけに世界を滅ぼしたというのか、貴様は…?」
「ああ…。貴様がそんな事と評するだろうが私にとってはとても大事なことなのだよ。私はたとえ世界を犠牲にしてでもその答えを知りたい…!」
「この外道が…!」
「ああ、いいだろう。答えを得るためには外道だろうとなんだろうとなってやろう。
しかし、まだ死なん。
まずは貴様達を殺してから聖杯を降臨させまた見るのだ。あの愉悦の瞬間を…!」
言峰は恍惚とした表情をして笑みを浮かべた。
そしてもう言峰綺礼とはどんな話をしても埒があかないと判断したサーヴァント一同は、
「ならば、その答えを知る前に貴様はここで葬る!」
ネロが剣を構えた。
「貴様の道楽に付き合う気なんざ端からねぇんだよ!」
ランサーが槍を構え、
「あなたがいては世界に平和がやってきません。よってここで打倒させてもらいます」
ファイターが拳を構え、
「あなたの思想は歪んでいます。ですからスズカ達の未来のためにここで倒させてもらいます」
ライダーが鎖釘を構え、
「あなたの事は私、とっても嫌いです。だから死んでくださいな♪」
キャスターが呪符を構え、
「…同じ格闘家としては残念でならないな。貴様の息の根は儂が止めてやろう」
李書文が残念そうに、だが殺す決意をして拳を構え、
「貴様を放っておくことは害にしかならない。殺しきる…!」
「あんたの願いのために世界を滅ぼされちゃかなわないからね!」
殺人貴とファニーヴァンプが爪とナイフを構える。
全員が構えをとったことを確認した言峰綺礼は、
「ならば貴様達を倒すのも私の役目だ! いざ、いくぞ!!」
その体から黒い魔力の瘴気を発生させて周りの空間が陰気な空間に変わっていく。
そして次の瞬間には言峰の前には六体の黒い影が出現する。
その影はまるで本当に闇の底ではないかと思うくらい黒いもので顔は真っ黒い能面だった。
しかしその姿、形、輪郭…それらは今まで打倒してきたサーヴァント達と同じものだったのだ。
それはやってくるだろうと思っていた全員はそれでやりきれない気持ちで思わず歯噛みする。
「さぁ、サーヴァント達よ。こいつらを葬るのだ!」
そうして黒化したサーヴァント達は一斉に仕掛けてくるのだった。
◆◇―――――――――◇◆
「クラウス! 正気に戻ってください! クラウス!!」
「ファイター。無駄です。彼らはすでにただの人形…心もすでにありません…」
かつて自分もそうなった経験があるライダーとしては複雑の極みだった。
「だから遠慮なく倒してしまいましょう。それが彼らのためになります!」
「……………はい!」
ファイターも決断をしてクラウスを倒しにかかった。
「ディルムッド! てめぇも損な役回りだな。せっかく悔いなく消えたっていうのに操られちまうなんてよ! だから俺が今度こそ冥途に送ってやるぜ!」
ランサーはディルムッドへと槍を突きにかかった。
「セイバー! お前とまた戦うことになろうとは…だがもう余は負けられんのだ!」
ネロとセイバーはまたしても剣を交えたがネロは残念な気持ちになっていた。
これがちゃんとした戦いなら楽しかったものをと…。
「キャスター! 今度こそ迷わず座へと送ってやるわ!」
「アルクェイド! 同時に仕掛けるぞ!」
「ええ、志貴!」
ファニーヴァンプに殺人貴は同時にキャスターへと挑んでいく。
「貴様の相手は儂がしてやろう! バーサーカー!」
李書文はバーサーカーへと挑んでいった。
「先ほどより動きが短調でやりやすいです! お覚悟を!」
「キャスター。手伝います!」
キャスターはギルガメッシュへと挑んでいく。
さすがに一人ではきついものがあるが先ほどのように威圧感はなくあんまり宝具も射出してこないのでなんとか呪術でやり過ごしている。
ライダーもクラウスをファイターに任せてギルガメッシュへと挑んでいく。
そしてそれぞれの戦いが行われている中で士郎が言峰へと向かっていく。
「言峰、綺礼…!!」
「こい、衛宮士郎よ。私の手でまた引導を渡してやろう!」
「誰が…! ここで貴様を倒す!!」
干将・莫耶を投影して士郎は言峰綺礼にかかっていく。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・S・高町
くっ…! 腕が使えれば私も戦うことができるのに!
「シホちゃん! 無茶しちゃダメだよ!」
「そうだよ。シホは腕が焼き焦げているんだから…!」
なのはとフェイトがそう言ってくれるけど、でも言峰は油断ならない相手。
一人でも戦える人員はあった方がいい。
そこにアルトリアが目を覚まし、
「…シホ。手を…、アヴァロンを起動します。ですが、聖杯を破壊するのは私達の役目です。だから今は耐えてください」
そう言ってアルトリアは私の腕をアヴァロンを起動して癒す。
「…わかったわ。その時まで私は待っているわ。アルトリア、もう一回ユニゾン…いける?」
「はい。一回だけならエクスカリバーも放てるでしょう」
「そう…。それならみんなが勝つのを祈りましょうか」
「そうやね!」
「うん!」
「そうね!」
それで全員でみんなの戦いを固唾を呑みながら見守ることにした。
そしてまずランサーを見て、
「あの時より楽しめねぇな…。見ていて遣る瀬無くなってくるからさっさと決めるか…
ディルムッドへと槍を構えて吶喊し楽々と貫いていた。
ランサーはつまらなそうな顔をしながら、
「次があるならもっと燃え上がろうぜ…?」
消えていくディルムッドにそう声をかけていた。
そして次はオリヴィエ陛下を見て、
「クラウス…あなたをこれ以上苦しめません…。だから、決めます!」
「■■■■■ーーー!!」
クラウスが突っ込んでくるが構わずオリヴィエ陛下は拳を構えて、
「もう一度消え去りなさい! 聖王…鉄槌砲!!」
七色の光に巻き込まれてクラウスはまた消滅していった。
「もう…これで苦しむことはありませんね」
オリヴィエ陛下は辛そうに顔を俯かせた。
そして次は李書文を見る。
そこでは李書文が拳を構えて、
「見ていていいものでは無い…。よって儂の拳で朽ち果てよ。七孔噴血―――巻き死ねぇ!!」
それによってランスロットは頚動脈を貫かれてそのまま消滅した。
「今度こそ迷うな…」
そう言って消えていくランスロットに声をかける。
そして次にファニーヴァンプと殺人貴を見る。
そこでは二対一の戦いを繰り広げていた。
ヤガミが連続で砲撃を放つがそれを殺人貴が殺してファニーヴァンプが切り込みを入れている。
「さて、はやての写し身だからって手加減しないわよ!」
「迷わず逝かせてやる!」
そしてファニーヴァンプが掴んで空中に打ち上げたのを合図に殺人貴が空に飛び上がり魔眼を発動して十七分割されていった。
こんなところで宝具を使うことないけど、倒したのだからいいのかな…?
そしてネロを見る。
そこではやはり剣のぶつかり合いが発生しているがやはりネロは残念そうな顔をして、
「セイバーよ。やはりそなたには先日ほどの力は感じられない。
だから…ここで葬る。許せ!
それによって幾度も切り裂かれたセイバーは呆気なく消滅した。
「前の方が手応えがあったぞ…?」
悲しそうにそう呟いていた。
これでギルガメッシュ以外の敵は排除したことになる。
後はギルガメッシュと言峰だけになった。
それで戦っているキャスターとライダーを見てみると、黒化して思考力がなくなったとは言えさすがギルガメッシュ。
二人を圧倒していた。
それでも致命傷はなく二人はなんとか耐えていた。
しかしそこに士郎が吹き飛ばされてきた。
「ぐっ…!?」
「
「どうしたのだね、衛宮士郎? お前はこれほどの力しかないのかね?」
「小聖杯の力でサーヴァント並みの力を手にしている時点で反則ではないか!」
思わず士郎が悪態をつくがそれだけ士郎には荷が重いものなのだろう。
言峰は黒化しているギルガメッシュの横に立ち、
「さぁギルガメッシュ。こいつらに止めをさすのだ!」
「………」
言峰の命令に、しかしそこでギルガメッシュの動きは急に停止し止まる。
何が起こったのかと思ったが、突然ギルガメッシュの真っ黒な能面にヒビが入り砕けるとそこには憎しみの表情を浮かべているギルガメッシュの顔が出現する。
「コトミネー! 貴様だけは許さんぞ…!」
「なっ…!? ギルガメッシュ、まだ意識が残っていたのか!?」
「ふん! 我を完全に殺したくばあの三倍は持って来い!!」
そして乖離剣を構えて、
「最後のあがきだ。受け取れよ、コトミネ…!
「ぐふぅ…!?」
それによって言峰は体の中心を貫かれていき、心臓部も削り取られて小聖杯に悪影響が起きたのか言峰を中心に黒い孔が出現した。
それに言峰の体は少しずつ吸い込まれていき、ついでにその場に残っているギルガメッシュも一緒に吸い込まれていく。
ギルガメッシュは言峰の体を掴んで離さず逃さないように捕まえている。
「ふっ…つまらない終わり方だが、まぁよかろう…」
「やめろ! 離せギルガメッシュ! 私は、まだ答えを得ていないのだ! こんな、ところでぇ…!!」
「言峰…貴様はやりすぎた。これも報いよ…癪だが一緒に冥途まで付き合ってやろう」
「ギルガメッシュッッッ!! あああぁぁぁーーー!!?」
そして完全に言峰とギルガメッシュは黒い孔に吸い込まれていって呆気ない幕切れを迎えた。
あたりは静寂に包まれていた。
でも、これで戦いは終わったという実感がもてたのかなのは達は「やったー!!」と喜びの声を上げるのだった。
私も「やれやれ…」と呟きながら腰を地面に落とす。
これで終わったんだ。
だけど、アルトリアが私の隣に立って、
「さぁ、シホ。私達の役目、大聖杯を破壊しましょう…あれはあってはならないものなのです」
「そうね。アルトリア」
そして私達は再度ユニゾンをして、エクスカリバーを構えて、
「みんな、いいわね…?」
壊す前にサーヴァント全員に壊していいかという問いをする。
それにサーヴァント全員は無言で頷く。
ならもう容赦はしない。
魔力を溜めていきエクスカリバーが光り輝いていく。
そして、
「
最後の魔力をこめて振り下ろして大聖杯を完全に破壊する。
これでもうこの世界でも聖杯戦争が起きることはないだろう…。
後に聖杯大戦事件と呼ばれる事になるこの事件はこうして幕を閉じたのだった。
◆◇―――――――――◇◆
…それからというもの。
残りのサーヴァント達は全員現界を続けている。
大聖杯のバックアップが無くなったとはいえ、この世界は私達魔術の世界と比べるとマナがかなり濃いのが原因なのか宝具を乱用しない限りは現界していられるのだ。
しかしネロやファニーヴァンプ、ライダーは宝具を使えても一日一回が限度だろう。
その分キャスターやランサーは比較的宝具は燃費が良く魔力消費は少なく使いやすいので結構何回か余力はある。
殺人貴とアサシンはそもそも宝具というより保有スキルに近いものだから魔力消費はさして問題はない。
オリヴィエ陛下だけは、まぁ…令呪を使ってブーストでもしない限りは使えないだろう。それだけ私の予想では強大な宝具なのだから。
そしてさらにお得なのが霊体化も実体化も魔力的にさして問題ないくらいである。
やっぱりこの世界は異常ね…。
それでみんながみんなマスターである私達についていき支えていく事を決めているようである。
それからリンディさんの話によると、サーヴァント全員はもちろん、そして私は投影魔術と固有結界はバレなかったものの結局第二魔法、第三魔法の存在がおおやけにバレてしまった。
それではやてと同じく【歩くロストロギア】という不名誉な認定を受けてしまったらしい。
さらに私とアルトリアのユニゾンによる出力が今回の戦いでかなりおおやけになってしまった。
だから緊急事態並みの戦いがない限り上の承認がない以上ユニゾンができないようにユニゾンリミッターを私はかけられる事になってしまった。
…ま、こんなサーヴァント級の戦いなんてそうそうしないんだからその判断は正しいかもしれない。
それに完全に禁止されたわけではないのだからよしとしよう。
アルトリア単騎でも十分強いしね。
そして事後処理として今回黒い孔に巻き込まれて消滅した言峰綺礼に協力したマスターだが、アクア・アトランティークとノア・ホライゾンの二名が死亡した…。
それとまずフィアは操られていただけなので特になにもお咎めはないらしい。
次に三菱彩は管理局の言う事に反省の色も見せず従わなかったらしくそのまま幽閉だということになった。
そしてトーラス・スタリオンも切られた腕の傷が原因で錯乱したらしく何を言っているのか支離滅裂で分からないので精神科にかかりながらも刑務所に入っているとの事。
だが、ミゼ・フローリアンだけは自分の罪を前向きに償っていく想いがあるらしく、保護観察処分でリンディさんの話ではすぐにでられるだろうという話。
彼女には将来的に設立されるだろう魔術事件対策課というものに入ってもらいたい心算らしい。
そして私はというと…。
「シホ。また公園にいきませんか? 歌を聴かせてください」
「そうね。いいわよ、アルトリア」
「奏者の歌声か。聴いてみたいぞ」
「あはは…。あまり持ち上げないでね?」
《シホ、あまり謙遜しないの。私のお下がりだって言うけどシホの歌声はもう十分本物よ。だから自信持っていいよ?》
「イリヤも…。もう…」
それで私は公園で動物達に囲まれながらローレライを口ずさむ。
ネロも私の歌声に感動しているようなのでよかった。
さて、
「大師父はなにをしているのか分からないけど、私達もこれからも頑張っていこうか?」
「そうですね、シホ」
「どこまでも着いていくぞ。奏者よ」
《シホは私達が支えていくからね!》
みんなに支えられていれば私も大丈夫だろう。
そうしてもうすぐ春がやってくる。
◆◇―――――――――◇◆
…どこか人知れず闇の空間で、一人の少年が黒い孔から吐き出された。
少年は姿こそ裸だったがそれでもその体から溢れる魔力はすごいものがあった。
「…ふぅ、なんとか“片割れ”である僕と、“彼らの記憶と霊格”だけでも形を変えて生き残らせることができましたね」
少年はそう呟き、
「さて…せっかくこうして“受肉”し新たな体を得たのですから僕もこの新世界を楽しむとしましょうか」
少年は旅立とうとしている。
しかし、そこに…、
「もし…そこの少年よ」
「…ん? なんですか、お爺さん?」
「せっかくだ。儂と協力をせんかの? この世界に新たな組織を作る仕事だ。そこのトップになる気はないか…?」
「面白そうですね…。新たな楽しみができました」
「うむ。ではこれからよろしく頼むぞ」
「ええ」
少年はその手に五枚のカードを並べて眺めながら老人…“宝石翁”の手を握った。
そして少年の持つカード一枚一枚からも膨大な魔力が溢れているのだった。
こうして少年は新たな居場所を得た。
シホ達との道が交わることがあるのかはまだ、分からない。
はい。聖杯大戦は今回で終了しました。
言峰の結末は結構あっけなく終わってしまいました。
もっとしぶとく粘らせたかったのですが最後には逆襲でギルガメッシュに全部を持って行ってもらいました。
そして最後にすごい人がこの世界に降臨しました。
なにやら謎の少年wのその手には謎wのカード五枚が…。
善人の彼が宝石翁と一緒にこれから裏でどう動いていくのか…。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。