【完結】剣製の魔法少女戦記   作:炎の剣製

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前回の続きのような話。


第八十八話    『揺れ動く心、動き出す子鴉』

 

 

 

 

すずかの告白から数日、シホは大いに悩んでいた。

それは…。

 

「私は、どうしたらいいと思う…? 士郎?」

 

シホは本日は学校帰りに八神家にやってきて自身と同じ存在だった士郎に相談しているのだった。

 

「そうだな…。すずか嬢はシホのことを本気で好いているのだろう?」

「うん…。だから私はどうしたらいいのか分からないのよ。第一私はすずかと同じ女性だし、他にも理由はあるけどすずかの気持ちにどう応えればいいのか…それで悩みが尽きないのよ」

「シホの方はイリヤが言うには世界の修正で魂が完全に女性化したという話だろう? シルビアという人物とも魂が融合したというし…。ならば確かに悩みどころだな」

「そう…。私自身はそれでも男性を好きになるとかは想像つかないし、やっぱり男性としての記憶が残っているから考えただけで鳥肌が少し立っちゃうのよ。

それはシルビアとしての女性の記憶もあるけどさ。そんなのは些細な問題だわ」

「難儀だな…。これではシホは魔術師の子孫を残すのはとうてい無理そうだな」

「まぁね…」

 

そこに二人の会話を黙って聞いていたはやてが、

 

「そんならシホちゃんの好きにしたらどうや?」

「好きにって…」

「シホちゃんはすずかちゃんのこと、どう思ってるん?」

「どうって…それはやっぱり可愛い女の子だし、私の事を最初に肯定してくれた大事な親友だし、私にとってすずかは…」

 

そこでシホはふと「あっ…」となにかに気付いてしまった。

 

「私も、すずかの事が好き、なのかな…?」

「なにかに気付いたみたいやね? そんならシホちゃんの心行くまで走ってみればいいと思うよ?」

「なにか分からないけど心にストンとなにかがはまったような不思議な気持ちね…」

「それがシホちゃんがすずかちゃんを好きだっていう気持ちや!」

 

はやてはここぞとばかりにシホの気持ちを固める行動を取っていった。

内心とてもいじりがいがあるカモを見つけたな、とはやては思ってほくそ笑む。

 

「で、でもやっぱり女性同士じゃやっぱり色々な問題が…」

「そんなん気にしたらアカンよ! 他人の目なんて気にせず想いを突き進んだらそれだけで幸せはつかめる!」

「そう、かな…?」

「そうや。だからシホちゃんも素直にいったらええと思うんよ」

「そうか…。うん、少し心が楽になったかも。ありがとう、はやて。私、もう少し考えて…そしたら答えを出してみるわ」

「その意気や。私は当然として士郎も応援するからな!」

「あ、あぁ…」

 

士郎ははやてのペースに乗せられてつい返事を返してしまった。

 

「それじゃもう遅いし帰らせてもらうわ。おいとまするわね、また明日学校でね、はやて」

「うん。またな~」

 

それでシホは笑顔を浮かべながら帰っていった。

それを見送ったはやてと士郎はというと、

 

「ついはやてのペースに乗せられて賛同してしまったが…よかったのだろうか? 結構シホにとって大事な話だったようだが…」

「別にええやん。はっきりしないよりは気持ちをきっちりと固めさせた方がシホちゃんの為や。フィアットちゃんにはちょっと悪いと思ったけどな」

「シホは女性に好かれているからな…その代表的なのがやはりすずか嬢とフィアット嬢の二人と、後アルトリアとネロのダブルセイバーが含まれるわけだしな」

「そうや。士郎も分かっているやん………自分のことに関しては鈍感の癖にな」

「…なにか言ったか? はやて」

「いいや。ただ、士郎も罪作りな人やねって話や」

「なんでさ…?」

 

士郎の鈍感さにはやてはため息をつくのだった。

 

 

 

………………

……………

…………

 

 

 

その後、八神家に全員が帰ってきて一緒に『いただきます』をして食事を開始してそれぞれが食べおわった後の雑談として、話題は当然シホの話になった。

 

「それでな。シホちゃんもやっと自分の気持ちにも気づきはじめたんよ」

「シュバインオーグがか…それは、よかったのでしょうか…?」

「いいことだと思いますよ。はやてちゃん!」

 

シグナムが少し悩む素振りを見せるがシャマルははやてに賛成の意を示した。

 

「鈍感であるシュバインオーグが自身の気持ちに気づけただけでかなりの成果だと思われます。我が主」

「そうやろ。ザフィーラ!」

「すずかとシホがか…いいんじゃないか、はやて? でもそれだとフィアットは引き下がるしかないかな…?」

「フィアットちゃんはあきらめへんと思うよ? ヴィータ」

「そうだよなー…あたしとしてはすずかを応援するけどな」

「ヴィータはすずかちゃん派か」

「しかし、あの正義の味方を突っ走っていた男が片割れとはいえ少女になりここまで人間的になるとはな…」

「志貴。それは私に対する挑戦か…?」

「なにか言い返したいならお前もまずその鈍感を治せ」

「お前には言われたくないぞ…?」

「俺はもうアルクェイドについていく事を決めた後の英霊だぞ? お前よりは鈍感は治っているさ」

 

フッ…と志貴は士郎へと挑発的な態度をとる。

それを聞いていたアルクェイドがいやんいやんしていたのは全員は見なかったことにした。

 

「やるか…? 殺人貴」

「受けて立つぞ? 偽善者」

「残念だな。もう私は偽善者ではない…! はやて達の味方だ!」

「ならそれを証明してみろ!」

 

二人は喧嘩をする合図とも言う二人限定の呼び合いをして庭へと向かおうとする。

だが一家の大黒柱であるはやてが一喝した。

 

「士郎! 志貴! 訓練ならともかく殺し合いで暴れるんなら私は承知せんよ!?」

 

それで二人はすぐに殺気を抑えた。

 

「命拾いしたな…」

「貴様こそな…」

 

それで二人はまた席に着席する。

 

「さて、話が脱線してもうたけど私はシホちゃんを一生懸命応援するわ!」

「さすがです、はやて。恋は女性同士でも関係ありません。愛さえあればなんでもありなんです!」

「キャスター、いいこと言うた! 座布団一枚や!」

「いえい♪」

「ま、それとは話は別になってくるんやけどそろそろ士郎もいい年やし身を固めたほうがいいと思うんやけどどうやろう?」

「は…?」

 

士郎は自分に話が回ってくるとは思っていなかったのか間抜けな声を上げる。

 

「あ、主…! まだ!」

「リインフォースは黙っとき! 今は士郎に聞いているんや! それで士郎! あんたはリインフォースとキャスターをどう思っているんや?」

「どう、とは…? 良きパートナーではないのか? 私はリインフォースとは仕事ではよくタッグを組むしな」

「そ、そうだな士郎…」

「それにキャスターとも信頼は築けていると思うが…」

「はぁ…それだから士郎はダメなんや…。なんで私がせっかくシホちゃんの話をしていたと思っとるん?」

 

それで全員から向けられる視線に士郎は焦りの表情を見せる。

 

「な、なんだ…? 私は何か悪いことでもしたのか?」

「この鈍感が…」

ご主人様(マスター)~…もっと話に敏感になってください」

 

志貴がそう士郎を下し、キャスターからダメ出しされる。

シホはともかく士郎はまだ当分はこの関係が続くのだろう。

はやてはこれからも頑張らなな! と思った次第だ。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side シホ・E・S・高町

 

 

はやての家から帰って私はここはやはり一番信頼の置けるアルトリアにこの事を相談してみることにした。

 

「アルトリア、ちょっといい?」

「なんですか、シホ?」

「うん。今日はやての家に帰りに行ってきてすずかとの事について相談してきたのよ」

「スズカとの、ですか…?」

「うん。すずかの気持ちに私はどう答えたらいいのかという感じの話…」

「ああ、そういえばシホは告白をされたのでしたね」

「そうなのよ。それでなかなかいい答えがでない時にはやてに『周りの目なんて気にせず突き進めばいい』と言われたのよ」

「それは…。ハヤテもいい事をいいますね」

「アルトリアもそう言うのね。変に思われないかな? 女性同士っていうのは…」

「私は気にしませんよ。シホの思うままに行動すればいいと思います」

「そう…?」

「ええ」

 

それで私も素直になったほうがいいのかな…? と考え始めた。

 

「―――しかし、奏者よ。余達も構ってくれないと寂しくて泣いてしまうぞ?」

 

そこにネロがやってきてそんな事を言い出したので、

 

「そうね。大丈夫。私はアルトリアもネロも大好きだから」

「ありがとうございます。シホ」

「…う、うむ…ならばよいのだ。奏者よ」

 

私はネロに犬の尻尾がついていてそれをぶんぶんと嬉しそうに振り回している光景を幻視していた。

 

「ネロはやっぱり可愛いわね…」

「そ、そうか…? 奏者よ」

「ええ。とても犬っぽくて愛情が沸いてくるわ」

 

それでついネロの頭を撫でている私がここにいる、と。

 

「奏者よ。くすぐったいぞ…」

「暴れないの。もう少しこうさせて…」

 

私がネロを弄っているとアルトリアが、

 

「………シホ。あなたはもう十分変わってきていると思います。女性愛妻家みたいでまるでリンのようですよ?」

「そ、そうかしら…?」

 

それでつい気持ちよさそうに体をくねらせているネロから手を離すと途端寂しそうな表情をするネロがいて私はまた胸がドキッとした。

やばい。私、かなり変わってきたかもしれない…。

そうはっきりと自覚してきた。

それからなのはに呼ばれて晩御飯を食べようとする前になのはが、

 

「なんか、シホちゃん。ちょっとすっきりしてない? なんか考え事が解決したような…」

「なのはにも察せるということは私も変わったってことかしら…?」

「そのようですね、シホ」

「もしかしてすずかちゃんの事、決心ついたの?」

「まぁ、そこはまだ内緒ということで…」

「えー? お話聞かせてよ、シホちゃん!」

「なのは、あなたのお話を聞く姿勢は相手をまずボコるから始まるのと同義だから気をつけたほうがいいわよ?」

「…え? なぜかそれはちょっとショックかも…。…やっぱりそうなのかな?」

「自覚があるなら今後はもっと穏便にお話を聞くのよ?」

「はーい…でもお話聞かせて!」

「しつこいわね。今は内緒よ! 決心ついたら教えるから!」

「わかったの!」

 

それでなんとかなのはは引き下がってくれた。

なのはってちょっと強引なところがあるからそこが少し心配なところね。

それで食事中、

 

「あ、シホちゃん。忍さんから聞いたんだけどシホちゃん、すずかちゃんに愛の告白をされたんだって…?」

「ぐっ、ゲホゲホッ…!」

 

食事が器官に詰まって痛い!

それにしても忍さん、言いふらすことはないでしょう!?

今、あっちでは多分ほくそ笑んでいるのだろうな。

すぐに想像できる。

 

「…そうか。すずかちゃんとか。ま、シホちゃんは元は男の子なんだから妥当といえば妥当のところなんだがな。私としては少し寂しいな」

「そうね、あなた。こうして子供は親から少しずつ離れていくのね…」

 

士郎お父さんと桃子お母さんがなにやら二人して変な会話をしている。

…べ、別にそんな変なことではないでしょう?

いや、変なことなのかな?

 

「忍さん、喜んでいたよ。すずかちゃんが前より強気になったって」

「美由希姉さん、できればその話はもう勘弁してください…」

「えー? なんで? シホちゃんも気にしているんでしょ?」

「そ、それはですね…!」

「「ドキドキ…」」

 

なにかなのはとその主従のオリヴィエ陛下が期待の眼差しでこちらを見てきている!?

やめて! 恥ずかしいから! 私のライフはもう0よ…ッ!

 

「奏者よ。余は愛人でもいっこうに構わないからな?」

「おー! ネロさん、大人だね~」

「…いや、そうだな。むしろ奏者は余の嫁だ。異論は認めないぞ!」

「すごい! 言い切った!」

 

なにかネロがぶっちゃけている!?

やばい。ここの空間がなにか異様な空気に変わってきた。

唯一の正常なアルトリアは、

 

「…シホ、その、私もネロの意見には賛成ですよ?」

 

アルトリアもすでに正常じゃなかった!?

いけない。私だけじゃこのカオス空間を払拭できない!

恭也兄さんもすでに逃げの準備をしているし…!

私に味方がいないこの状況、どうしてくれようか!?

でも結局解決することはできず私はひたすら俯いて時が経つのを待つだけしかできなかった…。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

…翌日、シホは少し疲れた表情をしていた。

でも学校は毎日やってくるので休むわけにはいかない。

だからシホは気怠い気持ちを鍛え直して学校へと向かった。

でも学校ですずかと朝から出会うと、

 

「あ、っと…すずか、おはよう…」

「おはよう。シホちゃん!」

 

すずかは眩しい笑顔をシホに向けた。

それでシホは顔が赤くなるのを抑えることができない。

それにもうすずかとシホの関係はすでにクラス中に知れ渡っているのであちこちから「ヒューヒュー!」やら「きゃー!」という冷やかしが飛んでくる。

それでさらにシホは顔を赤くする。

 

「はいはーい! 冷やかすのも大概にしないとシホが発熱して倒れかねないからみんな静かにねー?」

『はーい!』

 

アリサの指示で全員は一応の落ち着きを見せた。

だがそれは一時凌ぎでしかない。

やっぱり噂が立っているのか色々とヒソヒソ話が聞こえてくるのは仕方がないこと。

 

「シホちゃんも大変だね」

「そうだね。なのは…」

 

なのはとフェイトは他人事のように話しているが近い将来この二人も同じ扱いを受けるようになるとは誰が予想できただろうか…?

ランサー、本当に不憫でならない。

アリシアは心の中でそう思っていた。

 

「それで、シホちゃんは結局すずかちゃんと仲を深めていくということでオッケイなん…? 昨日、私に相談してくれたやん?」

「はやて! それは内緒で…!」

「へー? シホちゃん、はやてちゃんとどんなお話をしたの? 聞かせてほしいな」

「す、すずか…えっと、あのね…?」

 

それでシホはまた顔を赤くして言い訳をしだす。

だがはやては手を緩めない。

 

「あんな。昨日シホちゃんがな、すずかちゃんの気持ちにどう向き合っていくべきかと必死の相談を受けたんよ」

『おー!』

 

聞き耳を立てていたクラスメート一同は一斉に声を上げる。

それでシホははやてに話すべきではなかったかと少し後悔している。

 

「今でも思い出せるわ。シホちゃんはなにかに思い至ったのか『私も、すずかの事が…―――」

「わーわー! 本当に勘弁して、はやて!!」

 

シホは必死にはやての言葉を止めようとするが時すでに遅し。

もうこの先の言葉を想像した一同はさらに騒ぎ出す始末。

それでシホはもうゆでダコのように顔を赤くして、

 

「…はやてぇ」

「…なんや、シホちゃん? そない地の底から聞こえてきそうな声を出して…?」

「後で、一緒に全力全開で模擬戦をしようか。今なら本気を出せると思うのよ…!」

「シホちゃん!? 力に訴えるなんてシホちゃんらしくないで!!?」

「ええい、うるさい! 今の私の羞恥心に比べれば容易いでしょう!? だから一体一で模擬戦しましょうね。

今ならソードバレルフルオープンとフルンティングで許してあげるから!」

「それってリンチや!?」

 

フルンティングにどこまでも追いかけられ高機動タイプではないはやてはすぐにサンドバックにされ、ソードバレルフルオープンで滅多打ちにされる光景を予想したのかはやてはシホに恐怖する。

ちなみに全部魔力刃でできたものなので宝具ではなくその宝具の効果を追加しただけのデットコピー攻撃だからバリアジャケットを抜く可能性はほとんどないので心配はない。

シホもそこまで鬼ではない。

 

「さすがに援護はできないよ。はやてちゃん…」

「はやて、ご愁傷様…」

「はやて、ガンバ…」

「ま、自業自得ね…」

 

なのは、フェイト、アリシア、アリサに見捨てられてはやては顔を青くする。

しかしそこに救いの女神(?)が現れる。

当然だがその人はすずかで、

 

「シホちゃん。『私も、すずかの事が…』の続きが聞きたいなー?」

「すずか…! そのね…!」

 

それで騒がしくなるクラスだったのだ。それは先生がやってくるまで続いたという。

今日も日常運転で平和である。

 

 

 




こうしてシホはまず回りから逃げ場を埋められていきます。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。
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