ISオリ主最強系二次創作   作:XYZ+

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前回のあらすじ:対決は引き分け、クラス対抗戦は原作どこ行った状態


5/26:旧9話、10話を結合・改訂。


第7話:無人IS大戦争

「くっ………!」

 

管制室で歯噛みするのは織斑千冬。

モニターには3機のISと対峙する織斑一夏・凰鈴音の姿が映る。

しかし、決して旗色がいいとは言えない。

 

【くそっ、こいつっ!!】

 

織斑一夏が戦っているのは四足獣の如きIS。

地上を、そしてPICを応用して空を駆けまわり、その爪と牙で彼を攻めたてる。

完全にスピードに振り回されているのが現状である。

 

【このぉっ! 舐めるんじゃないわよっ!!】

 

凰鈴音が戦っているのは腕の長さが特徴的ながっしりした人型のISである。

長大な腕のリーチとその頑丈さを生かした力押しの戦術で彼女を押し込んでいる。

 

さらに二人を苦しめるのは上空の飛行型ISだ。

そもそも、空を飛ぶISに飛行型もへったくれもないと思うだろうが、

本来腕のある部分が翼であり、その足もまた猛禽類のような爪になっている辺り

完全に空を飛ぶことを前提にされている。

攻撃力こそ目立たないものの、的確な援護攻撃が二人に逆転の糸口を掴ませない。

 

こちらから増援を送ろうにも、現在戦場となっている中央フィールドに展開された遮断シールドの

強度は最大レベルに設定され、さらにはそこへ通じる全ての扉がロックされている状態。

また、アリーナ自体も幾つかの箇所が電子的に占拠された状態になっており、有体に言えば

この第2アリーナは正体不明の<敵>に掌握されたと言ってもよい。

 

当然、こちらも対抗策は打ち出しているが後手後手なのは否めない。

大本である侵入者3機を撃退しない限りはどうにもならないのだが、その為の

増援すらいつ投入できるか不明な状況であり。

 

「そう言えば、ウルクの奴はどうした?」

 

ふと思う。

彼女がこんな事態で大人しくしているわけがない。

「ここが祭りの会場か。」と真っ先に突撃してるはずなのだが………。

 

「山田先生、ウルクの奴から何か連絡は?」

「そ、それがですね………。」

 

関係各所への連絡やら何やらを一手に引き受けてた山田先生(1-1副担任。童顔巨乳眼鏡)が、

どことなくひきつった顔でモニターの一つを指差す。

アリーナの外を映すモニターの一つなのだが………。

 

【この程度で余をどうこうするつもりでいたとはな………他愛もない。】

 

巨人のごとき巨大なIS‐と思しき残骸‐の上で勝利宣言を出しているネロの姿が映っていた。

思わず額に手を当ててから、通信用のインカムを引っ手繰ると彼女のチャンネルに呼びかける。

 

「貴様はそこで何をしているウルク。」

【知れた事、余は余がなさねばならぬ勤めを果たしていたのだ。見ればわかるだろう。】

 

確かに正体不明のISを撃墜しているわけで、<勤め>は果たしているのだが………。

 

「搭乗者は?」

【本気で言っているのか? これは無人機だぞ。】

「確信が欲しかっただけだ、予感はあった。」

 

少なくとも内部で暴れてる3機は有人機とは思えない。

四足歩行だの完全飛行型だの、そんな機体が存在するとは思えない。

 

【まぁ、ISコアだけは完全に破壊させて貰ったが。」

「………そうか。」

 

残っていても碌な事にならんからな、と言うネロの言葉に同意する千冬。

調査に必要な代物なのは事実だが、そのコアを巡って委員会やら各国やらが喧々囂々やるのに

巻き込まれるのは勘弁である。

 

「とにかく、こちらも織斑と凰が無人機と交戦している。直ぐにでも戻って応援に来い。」

【いいだろう、ちょうど少々食い足りんかった所だ。

そもそも、余をどうこうしたければこの3倍は持ってくるべきで………】

 

そう言っているモニターの向こうのネロの後ろ側。

残骸になっているISと同機種と思しき無人機が3機、地面に着地したのがこちらでも見えた。

無論、ネロが把握していないわけでもなく。

 

【本気で3倍持ってくるな、あの戯けが。】

「おい、それはどう言う………」

 

ことだ、と尋ねる前に通信が切られる。

結局彼女たちができるのは、モニターから送られる映像を見ていることだけなのである。

 

 

「まだ開きませんの!?」

「………落ち着いて。」

 

第2アリーナBピット。

そこで携帯端末を片手に持って、ピット・ゲート相手にごそごそしているのは次の試合の為に

ピットにて待機していた更識簪。

それを見守ってるのは彼女に呼ばれてやって来たセシリア・オルコットである。

 

「ウルクさんはこれを予想していたのでしょうか?」

「分からない。」

 

セシリアの質問に手を動かしながら答えながらも同じ疑問を抱いている簪。

ネロが彼女に事前に渡していた携帯端末は最新技術の粋を尽くした特注品と言うべきもので。

それを用いてピット・ゲートを開くべくハッキングを掛けている最中なのだ。

 

本人に聞こうと思ったのだが、どうも現在取り込み中らしい。

【余は余のやるべき事をやっている。貴様は貴様ができる事をやれ】

の一言だけ送ってきて後はうんともすんとも言ってこないのだ。

 

「心配はしてないけど………。」

「叩き殺しても死にそうにありませんものね。」

 

この辺りの認識は共通項のようである。

 

そうこうしている内にゲートの強制ロックが解除された音がする。

後はこちらで開ければいいだけの事。

 

「………でも、恐らく一度開閉してしまえば………またロックされると思う。」

「一度入れば出られないと言う奴ですか………。」

 

簪の説明に少し思案してしまうセシリア。

管制室へと連絡を入れ、早急に救援部隊を派遣してもらうのが最善にして最良なのだが。

しかしそれまで二人が無事でいるのかどうか。

こう逡巡している間にも時間は過ぎていくのだ。

 

「行きましょう。鈴さんはともかく一夏さんが心配ですわ。」

「ちょっとそれは………ひどいと思う。」

 

ジト目でセシリアを見る簪。

 

「べ、別にそう言う意味ではありませんわ!一夏さんは私達のような代表候補生からすれば

まだまだ素人、そんな一夏さんを早く助けに行かなければと………」

「私も行くぞ!」

 

自分でもそう思ったか、慌てて弁解を始めるセシリアを遮るように箒の声。

二人が声の方を向けばそこには<打鉄>を身にまとった箒の姿が。

 

「どうしてここが………?」

「セシリアの後を付けさせて貰った。」

 

簪の質問に堂々と答える箒。

済まないとは思っているが謝らないと言わんばかりの態度である。

 

「き、気が付きませんでしたわ………。」

「私も………。」

 

篠ノ之流は剣術だけに非ず。

まぁ、単純に抜け駆けを嫌った乙女の執念かも知れないが、

その辺りは読者の判断にお任せしよう。

それにしても気になるのは箒は<打鉄>をどこから持ってきたかである。

 

「Aピットから持ってきたに決まっているだろう。」

「それって、簪さんの対戦相手が使う<打鉄>って事では………。」

 

恐る恐る尋ねるセシリアに「そう言う事になるな」とさも当たり前のように答える箒。

 

「使わせて………くれたんだ?」

「非常事態だと誠心誠意を持って懸命に(物理的に)訴えれば理解してくれた、心配はいらん。」

「今、凄い不穏当な発言が飛びましたわよ!?」

「ええい、まさか放送ブースに乗り込んで一夏に激を飛ばすわけにも行かないだろう!?」

 

まぁ確かにと納得する二人。

 

「ま、まぁ怒られるのは箒さんですわ。私達ではありませんし。」

「うん………今はこんなことで時間を費やしてる場合じゃない。」

「そうだ、一夏を助けなければならん。そのついでに鈴の奴もだ。」

「何か………凰さんが不憫になってきた………。」

 

散々な扱いの鈴に同情しながらも、簪は思考はこの後の事を考える。

篠ノ之箒のISの腕前は自分達の中では下の方である。

とは言え、これは専用機を持ってない事とそれに伴う練習量の不足が原因であり、

IS抜きの腕前ならば剣術限定で織斑一夏と互角。

けして足手まといにはならない。

 

「敵は3体………空を飛んでる<鳥>、それから凰さんと戦ってる<腕長>と

一夏と戦ってる<獣>。私が<鳥>を押さえるから………

オルコットさんは<腕長>を。篠ノ之さんは<獣>をお願い。」

 

いつの間にか仕切っている簪に頷くセシリアと箒。

箒としては一夏の援護に行けるならそれで満足で。

オルコットも代表候補の端くれとして現状は理解しており。

そして、そんな二人の思考を読んだかのような簪の采配である。

 

「それじゃあ………行くよ?」

 

二人の頷きを待たず、ゲートを解放する簪。

ピット・ゲートの開く音。

その時になってようやくBピットの状況を掴んだのか、山田教諭の声が聞こえてくるのだが。

 

「………状況、開始!」

 

そんなものは聞こえなかったとばかりに合図をしつつ飛び出す簪と、

それに追随するセシリアと箒だったのである。

 

 

「お、織斑先生見て下さいっ!?」

「あいつらは………」

 

モニターに映るフィールドを見て慌てた様子の山田先生と、額を抑えた織斑千冬。

何しろ、ついさっきBピット・ゲートが開いたかと思えばこちらからの呼びかけ

を無視するかのように3機のISが飛び出したのである。

 

彼女たちが飛び出す前に戦況は変化しており、一夏と鈴は互いの戦う相手を交換している。

運動性に優れた<獣>を戦闘経験が上の鈴が受け持ち、パワー重視で動きの鈍い<腕長>を

一夏が<白式>の機動性で攪乱している現状であったのだ。

 

そこに新たに現れたのが簪、セシリア、箒の3人である。

<打鉄・弐式>に搭載された高性能誘導ミサイル<山嵐>の全弾発射が

敵IS3機へと襲い掛かる。

<鳥>:<腕長>:<獣>に24:12:12の割り当てである。

マルチロックオン・システムとそれを十全に操る簪の管制の見せる業だ。

 

「ちょっと! 撃つなら撃つって言いなさいよ!!」

「少し………狙いを外した。………ごめん。」

 

一部巻き込まれかけた人間がいるのはご愛嬌。

 

「一夏さん、ご無事ですか!?」

 

そう言いながらもセシリアの<ブルー・ティアーズ>から打ちだされたBT兵器が<腕長>へ。

4基のそれがまるで踊るかのように<腕長>に纏わりつき、立て続けにレーザーを撃ちこむ。

 

「助かったぜ、セシリア!!」

 

長期戦を想定して<零落白夜>を使用していなかった一夏。

<獣>との戦いで予想外にエネルギーを食ってしまったが、それでも1度2度なら発動はできる。

そして、手数と選択肢が増えた今が使い時!

そう判断を下し、唸りを上げた<零落白夜>が一気に相手のシールドエネルギーを削り切る。

今が好機とばかりに食らいつく<ブルー・ティアーズ>からのレーザーの雨あられ。

 

「何で一夏じゃないんだ!」

「残念だったわね!って言うか文句言ってる暇があったら動きなさいよ!!」

 

その傍ではきゃんきゃんと言い争いをしながらも、<獣>相手に奮闘する鈴と箒。

2VS1となった現在、箒を前衛に立てて疲労の大きい鈴は後衛に下がって援護に徹している。

仮にも国家代表候補生である、あらゆる立ち位置においてベストを尽くせるだけの腕はあるのだ。

箒の隙をついて飛びかかろうとする<獣>へと撃ちこまれる<衝撃砲>。

危なげなくそれを回避する<獣>であったが………。

 

「そのタイミングなら避けられんだろう!!」

 

隙だらけに見えた箒が振るった刃を避ける事は出来ず、まともに体勢を崩し。

 

「ナイスよ、箒!!」

 

そのチャンスを逃す鈴ではなく、威力よりも手数を重視した<衝撃砲>の速射が<獣>を捉える。

立ち直る暇もない猛打が<獣>を襲う。

 

「って言うか、アレわざとだったわけ!?」

「お前なら………やってくれると思ったからな。」

 

ほんの少しだけ、この場の誰もが篠ノ之箒への評価を少し上げた瞬間である。

 

「すげぇな箒!!」

「と、当然だ………! と言うかそっちは片付いたのか一夏!?」

「一夏さん、攻めの手を休めないで下さいませ!!」

 

訂正。

一人だけ感心すれど評価を上げた訳ではない男が一人。

 

そんなやり取りをやってる上空では簪と<鳥>が空中戦を繰り広げていた。

嘴部分からのサークル・レーザーと全身にまとったエネルギーフィールドによる体当たりを行う

<鳥>であったが………。

 

「威力が………足りない。」

 

元々、妨害目的であったのか<鳥>の攻撃力は通常のISの用いる兵器に比べればお粗末な物で。

それでも空戦に特化されたその機動性は、簪の技量を持っても捉えるのが

困難な物であったのだが。

 

「それでも負けられない………!」

 

こちらへと体当たりをかけようとする<鳥>に撃ちこんだのは再装填が完了した<山嵐>。

再び放たれた48発の高性能誘導ミサイルは急速回避を試みた<鳥>を包み込むように襲い、

結果として侵入してきた3機のISのうち、真っ先に撃墜されることになる。

 

次に撃墜されたのは<獣>。

<衝撃砲>の猛打でぼこぼこにされて機動力を潰された上で近接攻撃でぼこぼこにされたのだ。

鈴と箒の前衛コンビネーションが優れていた(ある程度は鈴が合わせた部分もあるが)とも言う。

 

「後一機………!」

 

誰が言った言葉か、事実残っているのは<腕長>のみ。

散々にレーザーを浴びせ、切り裂かれているが戦闘継続には問題ないらしく。

 

「まだ倒せてなかったのか一夏!」

「しょうがないだろ箒、硬すぎるんだこいつは!!」

「それでも、この数で押せば………。」

 

簪の言う様に、既に5対1であり。

常識的に考えれば圧倒的有利な状況である。

 

「少し卑怯な気はするがな。」

「何言ってるのよ!ついさっきまでアタシと一夏は2人っきりで3体とやりあってたのよ!?」

 

箒のセリフに反論する鈴。

 

「大丈夫………私達は1の力を5つに分けて戦ってるだけだから。」

「いえ、それもどうなのかと………。」

 

鈴のフォローのつもりの簪だったが、セシリア的には納得できなかったらしい。

そのやり取りを黙ってみていた(わけではないだろうが)<腕長>だったが、

両腕を地面と水平に上げると、独楽のように回転を開始する。

 

「な、何をする気だよこいつ?」

 

と言う一夏の言葉に答えた訳ではないだろうが、<腕長>の各部スラスターから放たれたのは

電磁竜巻・EMトルネード。

たちまちの内に広がったそれは、一夏たち5人を弾き飛ばすのに十分な威力で。

 

「何をするつもりですの、一体?」

「これは………まさか………」

 

体勢を立て直し、状況を把握しようとするセシリア。

何やら嫌な予感が広がってくる簪。

 

「知ってるの、簪?」

「冗談だとは思いたいけど………。」

 

鈴の質問にも口ごもってしまう。

何せ、想像してる事が事実だと認識したくない、と言うのが本音だからだ。

 

「勿体ぶるな、さっさと話せ!」

「あれは………。」

 

焦れた箒に促されるように口を開いたところで、EMトルネードが消失し。

 

「………3機が合体、してる………。」

 

予想を確認の形に変えてそう告げる簪。

その視線の先には3機のISが合体した大型ISの姿。

 

「合体って言うか、頭部と胸部のパーツがついて下駄をはいただけって感じだけどアレ。」

「浪漫だけど無茶苦茶だろ!?」

 

そのデザインセンスはいかがなものかとツッコミを入れる鈴。

そして頭を抱えそうになる一夏。

 

「大破した機体を加えた所で寄せ集めただけだろう! 勝てない道理はない!!」

「そうですわ、この程度、最後の悪あがきに過ぎませんわ!」

 

一歩前へと出る箒。

行きましょうみなさん!と音頭を取るセシリア。

今ここに、最後の戦いが幕を開ける事になったのである。

 

 

一方、アリーナの外。

そこでの戦いもクライマックスを迎えようとしていた。

 

「3の3倍で9体………逐次投入は戦術の中でも愚策という事を知らぬのか?」

 

3体の<タイラント>(命名:ネロ・ウルク)を迎撃したと思ったら

次に降下してきたのは9体の同型機。

食い足りんとは言ったが、こうも同じものばかりでもウンザリするのが彼女だ。

<王の財宝>から放たれた無数の武器群がお前たちのような有象無象に

これ以上関わっていられんとばかりに降り注ぎ、

次々と先の機体と同様スクラップへと変えていく。

それでも、大きさはそのままタフネスと直結するのか数機の<タイラント>は健在で。

その内の1機が体格に相応しい両手剣を携え、叩き潰さんと襲い来る。

 

「くたばり損ないのデカブツ風情が!」

 

振り下ろされる巨大な両手剣を右の拳で‐正確には展開した<ラ・オー>で‐迎撃するネロ。

その一撃で両手剣を砕き、左の拳が<タイラント>の1機に突き刺さる。

文字通り、突き刺さったのだ。

よく見ればその拳はドリルになっており。

 

「これが<ラ・オー>のオプションパーツ、<轟天>よ!

貴様のようなウスノロには勿体ないが今日は特別サービスだ!!」

 

突き刺さったまま高速回転し体内に食い込んでいくドリル。

無人機相手にだからこそできる手段でもある。

そしてそれは<タイラント>のISコアへと到達し。

 

「その命に届けば………後は穿ち抜くだけよ!」

 

ISコアごと爆砕する<タイラント>。

それに恐れを成したか、後ずさりする残りの機体。

………無人機が恐れるわけはないのだが、その光景を見ればそうとしか見えず。

少なくとも、ネロにはそう見えた。

 

「意思もないデカブツが、人の振りをするとは………不愉快だぞ、貴様ら。」

 

<轟天>と入れ替えるように両手持ちの巨大なハンマーがその手に現れる。

彼女の身長より、いや<タイラント>の全長よりも長い柄をしたハンマーだ。

頭部のサイズは柄が折れるのではないか?と言わんばかりの大きさで。

 

「余の特別サービスはまだまだ続くぞ? とくと味わって行け。

そう、<ラ・オー>を用いねば振るえぬこの<鋼鉄粉砕槌:ゴルディオン>をな!」

 

まさに光になれと言わんばかりの裁きの鉄槌が振り下ろされる事になったのである。

なお、その衝撃音と振動はIS学園内に相当響いたようである。

 

 

そしてその頃。

合体したISと戦っていた一夏たち5人は。

 

「誰よ、寄せ集めだなんていった奴は!?」

 

鈴の愚痴とも言えるセリフが現状を物語っていた。

目の前には巨人とも言える合体IS‐<鉄巨人>と呼ぶことにする‐の偉容。

見た目通りに動きは鈍く、攻撃はまず当たっているのだが………。

 

「一夏さんの<零落白夜>でも削り切れないほどとは………。」

「3機分の………ISコアを使ってるんだから想定するべきだったかも。」

 

感嘆するセシリア。

読みが足りなかったと反省する簪。

元より頑丈な装甲と、ISコア3機分を用いた強力なシールドバリアがこちらの攻撃を阻み。

 

「接近戦主体と思ったら砲撃戦仕様かよっ!?」

「近づけんっ!」

 

ギリギリのエネルギーで白兵戦を挑む一夏、それに合わせて動く箒を阻むのは

<鉄巨人>の全身から放たれてるビーム砲だ。

指や胴体各部・翼にマウントしてある砲から放たれるそれは、

一発一発が致命傷になりうる砲撃だ。

 

「ダンク○ガだと思ったら………サイコ○ンダムだったなんて………。」

「訳の分かんない事言ってんじゃないわよ!」

 

簪にツッコミを入れながらも鈴は考える。

現状では千日手だ。

いや、向こうのシールドエネルギーを考えれば不利なのはこちら。

 

特に自分と一夏は長時間戦闘し続けてきた事で、機体も身体も消耗し続けている。

自分はまだ問題ない。

これでも代表候補生、この程度で参る軟な鍛え方はしていない。

<甲龍>は元々低燃費の継戦型のISだ。

だが、問題は一夏の方。

実戦と言う普段とは違った別の空気の中で、体力よりも集中力が持つかどうか。

それに何より<白式>の燃費の悪さが問題だ。

 

「まずいっ!?」

 

焦ったような一夏の声。

そう考えていた所に懸念通りの事態が発生する。

<白式>の具現維持限界(リミット・ダウン)。平たく言えばエネルギー切れだ。

手に持っていた<雪片弐型>が霧散するかのように消滅する。

 

「箒、一夏を守ってっ!」

「言われずともっ!!」

 

躊躇うことなくその一夏に砲撃を加える<鉄巨人>。

その射線上に割り込むと肩部のシールドでその攻撃を受け止める箒。

<打鉄>の防御力の高さは第二世代ISの中では最も高い。

 

「箒、無茶だ!下がれっ!!」

「馬鹿者っ! お前がいるのに下がれるか!!」

 

それでも<鉄巨人>の砲撃の前に無傷はあり得ない。

ガリガリとシールドエネルギーを機体ごと削られる箒の<打鉄>。

防御シールドの修復機能はあるが、とても追いつくものではない。

だが、ここで引くわけにも行かないのだ。

 

「最後の<山嵐>………! 一夏を連れて下がってっ!」

 

簪の<打鉄・弐式>から放たれる無数のミサイルが<鉄巨人>へと次々と炸裂し、

辺りを爆煙が覆う。

砲撃が止んだ隙に一夏を連れて交戦区域の外へ出る箒。

もっとも、このフィールド内にいる以上はどこが交戦区域になってもおかしくないのだが。

 

「鈴さんも一夏さんを守っていてくださいませ。」

「ちょっと、アタシはまだ………」

 

戦えるとセシリアに反論しようとするが、直ぐに遮られる。

 

「今の攻撃で箒さんも色々ギリギリなはずですわ。二人を守りきる役が必要になります。」

「何言ってんの、アンタ達二人であのデカブツをどうすんのよ!?」

 

主兵装とも言える<山嵐>が尽きた簪、そして攻撃力と言う点では恐らく最も貧弱なセシリア。

この二人だけで押さえられるのか?

鈴の懸念はそこだ。

 

「倒す事はできなくとも、時間稼ぎ程度なら私たちで十分ですわ。」

「分かったわ、でも絶対に無茶するんじゃないわよ! 一夏が悲しむんだから!!」

 

こうしている間にも簪一人で<鉄巨人>とやりあっているのだ。

これ以上の問答は時間の浪費。

故に、納得はできないがそう答えて二人がいる場所まで下がる。

 

「くそっ、俺は………っ!!」

「一夏………。」

 

何もできず、見ている事しかできない一夏。

そんな彼の血を吐くような苦悶の声に何も返せない箒。

鈴がやって来たのはそう言うタイミングだった。

 

「鈴、どうしてこっちに!?」

「アンタ達のカバー役よ、カバー役。

アイツがこっちに来たら、誰かが止めなきゃいけないでしょ?」

 

箒の質問にそう答える鈴。

現時点でほぼ無力となっている一夏だけを逃がすわけに行かない以上は当然とも言える。

 

「また俺は………誰かに助けられるのかよ………!」

「当たり前でしょ、箒はともかくアタシ達の方がアンタより強いんだから。」

「鈴!」

 

暗い顔をする一夏にそう言い捨てる鈴。

箒がそれを咎めるが、気にしない。

 

「あのね、代表候補生ってのはホイホイ負けてられないのよ。

セシリアだってアンタに一度負けてからは簡単に勝たせてくれないでしょ?」

 

その通りだ。

何度か模擬戦も行っているが、勝率はそこまで高いわけではない。

むしろ一番勝率の低いのが一夏だったりする。

(箒はそもそも毎回やってるわけではないので除外)

 

「一夏が弱いって言うつもりはないわ。実際、アタシも戦ってみてびっくりしたもの。」

 

生身でこそそれなりに強いが、搭乗時間だけで言うなら代表候補生には遥かに及ばない。

その天性とも言える才能が足りない時間を補っているのが今の織斑一夏。

 

「でも、敢えて言うわ。

今現実にこうやってアタシ達の足手まといになってる時点で、アンタは弱い。」

 

反論の術がない。

言い訳なら幾らでも浮かぶ。

だが、所詮は言い訳であって見苦しいだけのモノだ。

結果として自分が足を引っ張っているのだから。

歯を食いしばり、俯くしか一夏に取る方法はなかった。

 

「悔しかったら、強くなりなさい一夏。アタシの知ってるアンタはそう言う男でしょ?」

 

優しくかけられた声に、俯いた顔を上げる一夏。

元気を出せと笑みを浮かべる鈴の姿がそこにあった。

 

「アタシは知ってる、一夏があの日からずっと頑張って来たって。

何でそんなに頑張るのかは知らないし、あのネロとどこでどうやって知り合ったのかも知らない。

でも、アンタがひたすらに頑張ってきた事だけは分かってる。」

「鈴………。」

 

言うだけ言い切って。

 

「だけど今は応援してあげて。アタシ達の為に戦ってるあの二人を。」

「………そうだな、その通りだよな。」

 

本当は「(主に)一夏のために」だったりするのだがそれを口に出すほど野暮ではない。

 

「本当にありがとな、鈴。」

「そんなしみったれた顔を見たくなかっただけよ! 代償は高いわよ?」

 

そんな二人の空気に耐えきれずに咳払いをする箒。

 

「一夏っ、私にも一言あるべきだろう!?」

「あぁ、そうだな。守ってくれてありがとな、箒。」

 

そんなラブコメ時空一歩手前の空気が発生している空間と同じ場所で。

 

「私達、空気ではありませんか?。」

「それはつまり………無くては困る存在って事だから、大丈夫。」

「その発想はありませんでしたわ………」

 

そんなやり取りをしながらも、<鉄巨人>相手に時間稼ぎを行っているセシリアと簪。

実際の所、悠長にやり取りをやっている暇はなかったりする。

面子が減った分、攻撃の密度が上昇しており攻撃する暇すら満足にない。

そもそも二人の攻撃力で<鉄巨人>のシールドエネルギーを削り切れるかが怪しい。

 

「自分たちで飛び込んでおいてなんですが、応援はまだですの!?」

 

外部への通信すら通じない現状に歯噛みするセシリア。

勝算なしに飛び込んだわけではないし後悔もしていないが、

そろそろまずいと言うのは理解できる。

このままでは確実に押し切られてしまう。

 

【何だ貴様ら、まだ片づけていなかったのか?】

「………ネロ?」

 

簪たちのプライベート・チャンネルに聞こえて来たのはネロ・ウルクの声。

こちらの状況を把握しているのか、呆れたような声だ。

 

「そういうウルクさんは何をなさってたのですか?」

【何、ちょっとした野暮用だ。それも今片付いたところでな。】

 

もし、ネロがいる場所を見る事が出来れば唖然としていただろう。

彼女の周りにはスクラップより酷い状態になったISの残骸が転がっているのだから。

 

「なら………。」

【これ以上は超過勤務だから貴様たちでどうにかしろ、と言いたい所ではあるが。

求められれば応えるのが上の務めよ。精々余の強さを見て驚き羨み悔しがれ。】

 

無性にムカつくセリフだがぐっと堪えるセシリア。

 

【少々派手にやるぞ? 全員衝撃と閃光に備えよ!】

 

そのネロの言葉と同時に上空から降り注ぐ強大な光の本流。

それは遮断シールドをたやすく粉砕すると同時に<鉄巨人>を飲み込むほどで。

凄まじい爆音と光が辺りを覆い包む。

 

「ちょっ、何よこれっ!?」

「一夏大丈夫かっ!!」

 

それは離れた位置で待機していた3人も例外ではなく。

特に、現時点で生身とほとんど変わらない一夏は全然大丈夫ではなく。

目がっ!耳がっ!とのたうってたりする。

 

「な、何だったんですの今のは………。」

「ビーム砲?………それにしては、威力が桁違いすぎる。」

【余が持つ兵装の中でもトップクラスの威力を誇る<軌道衛星砲:ネメシス・ハンマー>だ。】

 

その台詞を聞いた全員が呆気にとられた、と言うより何言いだしたんだ此奴?と言った顔をする。

管制室では山田先生がこれ幾らなんでもまずくありません?と言う顔をし、織斑千冬は

内心もう何もかも投げ出したくなって来たりしているが知る由もない。

 

【まぁ、色々あって連射も出来んし屋内では使えんし静止目標にしか満足に当たらんしと

作ったはいいが欠陥兵器も同然だったのだが、このアリーナが屋外で助かったぞ。

………ってどうした貴様ら?余のあまりの全能っぷりに声も出ぬか?】

 

どっちかと言うとどこから何を突っ込んでいいか分からないだけである。

真っ先に意識を戻したのは簪だ。

 

「あいつは………?」

「そ、そうですわ!?」

 

セシリアが<鉄巨人>のいた位置に目をやると。

そこには巨大なクレーターができており。

無論、堅牢な装甲とIS3機分のエネルギーを用いたシールドを持ってしても

大出力の衛星砲を防ぎきる事は出来なかったのか。

跡形もなく消滅していたのである。

 

「相当手こずったようではあるが、余に掛かればこの程度だな。」

 

代わりにその場にいたのは真紅と金色のIS。

ネロの<王の財宝>だ。

 

「一撃だなんて………。」

「これで立ってたら………どうしょうもないと思う。」

 

驚愕するセシリアと納得する簪。

そんな二人に近づくネロ。

 

「どうやら無事だったようだな?」

「うん………何とかなった、ありがとう。」

「ですがせめて何を撃つのかだけは先に言って下さいませ!」

 

礼を言う簪。

危うく巻き込まれる所でしたわ!とセシリア。

 

「そっちは………無様を晒したみたいだな?」

「その言い方は無いだろう!!」

 

こちらへ歩いてきた一夏とその幼馴染ズ。

エネルギー切れで実質役立たずになってた一夏を見てそう言うネロ。

それに噛みつく箒だが、一夏が止める。

 

「いいんだ箒、今日の負けを糧にして明日に繋げばいいだけだ。」

「そーよ、初めての実戦で課題も見えたんだしね!」

 

決意を込めた表情でそう言う一夏。

ポジティブに考えましょ、ポジティブにと鈴。

 

「まぁ、貴様自身が自覚していれば余は何も言わん。

一先ずこれで一件落着と言った所か。」

「ほぅ………もう終わったつもりでいるのか?」

 

まとめるかのようにそう告げるネロ。

しかし、現実は非情である。

 

「ち、千冬姉………。」

「織斑先生だ、馬鹿者。」

 

そう、彼女たちの目の前に現れたのはラスボス・織斑千冬!

無人機の消滅と同時にアリーナの全機能を取り戻す事に成功し、

真っ直ぐここまでやってきたのだ。

 

「織斑と凰はまぁいい。報告書やら何やら書いてもらう必要はあるが。だが………」

 

ぎろり、と残りの4人を睨みつける。

一人を除いてそのプレッシャーに後ずさる。

 

「無断出撃にISの無断使用、アリーナの損壊諸々………よくやってくれた。」

「こ、これは………。」

「もはや問答無用!!」

 

箒が何かを言おうとし、一夏も援護をしようと口を開きかけたのだが。

千冬の一喝が全てを黙らせる。

 

「お前たちは今日眠れると思うなよ? 話したい事と聞きたい事が一杯あるからな?」

『………はい。』

 

非常時とは言え規則に照らし合わせれば間違いなく非があるのは自分たちで。

だからこそ、項垂れながら肯定の意を返すしかなかったのである。

約一名、いつも通りに堂々としてた奴がいたが。

 

「余は悪いことなど何一つやっておらんからな。」

「まず貴様は善悪の基準を覚えろ。」

「そんなもの決まっているだろう?余が悪と断じれば悪であり、善と断じれば善だ。」

(織斑千冬、ぐっと拳を握りしめてネロを殴りつける)

 

それはさておき。

こうして一つの事件は幕を閉じた。

結局、クラス対抗戦は一連の騒ぎを鑑みて中止となったのである。




FAQ

Q:敵を目の前に揃って舌なめずりとか三流じゃね?
A:敵も空気を読んで待っててくれたのでお相子です。

Q:ネロさん色々やりすぎじゃね?
A:この転生者、実にノリノリである。

Q:箒さん頑張ってますね、って言うか一夏君はヒロインですか?
A:どうしてこうなったかのかは俺にも分からない。多分マドーのせい。

Q:ブルー・ティアーズって貧弱火力なの?
A:BT兵器の試験機の意味合いの方が強そうだから。
戦闘を想定していないとは言わないけど、実戦を想定はしていないと言うか。

Q:福音戦ばりに壮絶な死闘になってない?
A:福音が機動力重視ならこいつは防御力重視なだけ。今決めた(おい

Q:この一件でレベル上げた(あるいは上げるであろう)面子にラウラは喧嘩売るの?
A:どうしよう………(何)。いや一応腹案はあるんだけど。

Q:鈴の呼称、おかしくね?
A:あんまり気にするな、俺は気にしない。

Q:鈴ちゃんも頑張ってますね、幼馴染丼ですか?
A:どうしてこうなったのかは俺にも分からない。それにしても許せないのはマドーだ!

Q:そもそも安全な場所が存在するの?砲撃の流れ弾とかあるじゃん。
A:その為の箒と鈴ちゃんです。いざとなれば体を張って止める役w
むしろ、フィールド内から直接入れる退避壕みたいなのを作るべきなんですよねw
どういう状況で使うねんってのは置いておいて、作る分に問題はないと思う。

Q:一夏君不幸すぎね?
A:特にアンチとかそう言う意図はないんです、本当なんです信じて下さい!

Q:エヌマ・エリシュとかぶっぱしてもよかったんじゃね?
A;アリーナがひどい事になります(何

Q:そもそも一夏の機体にエネルギーを譲り渡せば戦えたんじゃね?
A:みんないっぱいいっぱいだったんだよ!

Q:千冬さん出席簿で殴らなかったの?
A:武器(?)で殴るのは手加減と言うグラップラー理論を振りかざしてみる。
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