特に改訂はしてないのでそのままです。
IS学園の生徒の朝は早い。
とあるイギリス淑女はルームメイトの都合も気にせず早朝から身だしなみを整えていたり
するのが良い例ではあるが、織斑一夏の朝も早い。
部活動の朝練に出る篠ノ之箒よりもやや早い時間に起きて運動着に着替えると屋上へ。
そこで待つのはネロ・ウルク。
「今日こそは一本取るぜ?」
「戯け。そう言うセリフは余の相手を5分以上務めてから吐くことだ。」
竹刀を構えた二人が交差する。
あのクラス対抗戦から何日か経ち。
織斑一夏は自らを鍛えるべく修行に励んでいた。
「よし、採石場とジープを用意してやろう。何、運転手は余がやる!」
とのたまったバカが一人いたが周りから全力で止められ。
「それならば剣を教えてやろう。これでも余は武芸百般で通っていてな。」
「何を言う、それは私の役目だ!!」
という事で急遽組まれた篠ノ之箒との剣術試合。
「この戦い、カウント10で決着をつけてやろう。」と言う事前の宣言通りにネロが勝ち。
ちなみに「決着がつかなかったら、どうする気だったの?」と言うルームメイトの
質問には「カウント0からが本当のクライマックスに決まっているではないか。」と
ありがたい言葉を残している。
そんなわけで早朝と放課後、二人は屋上で剣の稽古をしているのだ。
朝はともかく、放課後は乱入者と言うか見学者もいたりするのだが。
「よし、今朝はこんなものだろう。」
「くっそ………つえぇ。」
大の字になって寝転がる一夏と、汗一つかいていないネロ。
この時点で実力差は歴然ともいえる。
「何、日に日に貴様の腕も上がってきている。」
「それでも勝ててないぞ俺?」
「当たり前だ、余が負けるわけが無かろう。」
用意しておいたペットボトルを一夏に投げ渡しながらネロはそう言う。
「その気になれば古代レスリングからカラリパヤットまで使いこなすぞ、余は。」
「マジかよ………って言うか何だよその節操のなさ!?」
武芸百般だと言ったであろう、とネロは言うがそれにしたって範囲がおかしい。
「大体、古代レスリングって何やるんだよ一体。」
「簡単だぞ? 歩いて近づいて殴れば勝てる。」
「勝てるかよっ!」
よしでは試してやろうではないかと、どすんばたんと一しきり暴れて少し。
「お互いくんずほぐれつでいい汗をかいたと言うと実に盛り上がりそうではあるな。」
「止めてくれよ!」
どう考えても火種である。
それもあっという間に燃え広がる類の。
あるいは火薬庫でタバコに火をつけるような行為。
「しかし、あの戦いから2週間。時がたつのは早い。」
そう。
波乱のまま終わったクラス対抗戦。
彼らもそれに全く無関係と言う訳ではなく、むしろ当事者と言うべきであり。
最初に襲われた一夏と鈴は報告書やらの書類を書かされるだけで終わったのだが、
問題はそのほかの面子‐箒・セシリア・簪・ネロ‐である。
勝手にISを持ち出して無断使用した箒が一番重く、後を続くようにネロ・簪・セシリアとなる。
ネロはそもそも学年対抗戦自体を抜け出していたと言うのと、
広域破壊クラスの武装を持ち出してのアリーナへの<砲撃>辺りが大問題となっており。
簪はセシリア・(結果として)箒の2名を扇動しての無断出撃という事でやや重めとなっている。
それでも、彼女たちの行動が無ければ被害は甚大な物になっていたと思われる事からその辺を
加味して本来よりも軽い処分にはなっているのだ。
それ以外にもIS学園側は後始末に追われている。
例えば無人機の残骸の回収と調査。
いずれも完膚なきまでに破壊されており‐特にISコアは念入りに‐
調査は遅々として進んでいない。
織斑千冬は一体この一件を誰がやらかしたか大体把握しているが。
それと破壊された設備などの復旧。
特に、ネロと無数の無人機が激戦を繰り広げた辺りは酷い有様で。
彼女自身が費用を負担すると言い出したのは渡りに船であった。
IS学園の予算にも限りと言う物があるのである。
概ね表立ってはそんな感じになっている。
「そう言えば、余たちが反省室で反省している間に鈴との和解はしたようだな。」
「まぁ、元は俺が余計な事言ったのが原因だしな。」
実際の所は無人機との戦いの中である程度は溝は埋まっていたのだが。
「で、酢豚の一件は思い出せたのか?」
「あぁ、あれなら………。」
その答えを聞いて爆笑するネロ。
「な、何がおかしいんだよ?」
「いや………やはり貴様らは面白いなと思ってな。」
「そこでYESと言ってれば貴様のモノとなっていただろうに、愚かだな。」
「あぁ、もう何であんな事言っちゃったのよアタシの馬鹿っ!!
今からでもあの時間に行ってあん時のアタシをぶん殴ってやりたいくらいだわ………!」
時間と場所は変わって昼の食堂。
クラス委員としての仕事で遅れてる一夏を除くいつものメンバーが集まっていた。
「気持ちは分かる、気持ちは。」
「鈍いんだか察しがいいんだか………まぁ、一夏さんですし。」
何故か同情するかのように頷く箒と、呆れてる感じのセシリア。
しかし、二人の内心は簪の一言に集約されるだろう。
「よかった………。」
と。
「だが、仮にここで一夏と鈴がそう言う間柄になったからと言って諦める貴様らではなかろう?」
「………。」
ネロの一言に腕を組んで考え出す箒。
それも割かし真剣に。
「な、何を言ってるのですかウルクさん。
わ、私は祝福いたしますに決まってるではありませんか。」
「そ、そうそう………まだワンチャンあるとかいざとなればハーレムエンドでも構わないとか
そういう事は私は考えていないし思ってもいないしでも一夏なら全員受け入れるだけの度量は
あるかも知れないし言うだけはただだから言ってみるだけ言ってみてもいいと思うし
私はそういう風に判断する訳で………」
優等生的台詞を吐きつつも落ち着いてないセシリアと明らかにキャラがおかしい簪。
「あ、アンタらねぇ………。」
と頭を抱えたくなる鈴だが、それも「なら貴様は逆の立場なら素直に祝福するのだな?」と
ネロに尋ねられて一しきり「うーん。」と唸った後で。
「ま、まぁアンタ達ならまだ許せるかしら?
………って言っておくけど諦めた訳じゃないわよ!!」
えっ?マジで?みたいな顔をする面々に釘だけは指しておく鈴。
「予想外の回答だな………。」
「少なくとも<幼馴染>って立ち位置にはいるもの。もし、二人の仲が上手くいかないなら
横から掻っ攫うことだって不可能じゃないわ。」
「い、意外と黒いですわね………」
少し意外と言ったネロの言葉への鈴の返答を聞いてちょっと引き気味のセシリアである。
「まぁ、どちらにしろろくなフラグも立ててない貴様らでは射止めるのは夢の又夢だろうがな。」
「フラグってねぇ………恋愛ゲームじゃないんだから。」
「一緒に特訓したりしてるのに立ってない?」
ネロへの鈴の反論に乗っかる簪。
「わ、私は一夏と同じ部屋だぞ!それにそもそも幼馴染だ!!
この前の一件にしても身を張って一夏を守ったぞ!!」
「それを言うならアタシだって幼馴染だしこの前の一件で………」
「でしたら私にだって………」
「セシリアは、好意フラグの前のマイナス面が大きいから差引ゼロだと思う………。」
「そ、そんな………。」
それに負けじと自身のフラグの立てっぷりを主張するヒロインたち。
約一名圧倒的不利っぽいイギリス人ががくりと膝をついているがそれはそれ。
「で、そのご立派なフラグはイベントに直結したのか?」
『………』
と言うネロの一言で沈黙する羽目になったのである。
「やっぱり………一夏は鈍感。」
「そこが一夏さんらしいところではありますけど………。」
ぼやく簪に苦笑いのセシリア。
「って言うか、アイツが女性関係意識して動いてたら今頃大惨事よ?
中学校の時だって非公式のファンクラブがあったくらいだし。」
「そうなのか?」
「まぁ、刃傷沙汰になってたんじゃない?下手したら。」
中学校の頃を思い返す鈴。
小学校低学年の頃しか知らない箒ではピンと来ず。
こっそりと「ないすぼーと」と呟いた眼鏡っ子がいたのは置いておく。
「むしろ貴様らに足らんのは積極性だ、積極性。」
そう主張するネロ。
「鈍感帝王を振り向かせるのに半端な手など通用せん。
それこそ大火力で相手のシールドエネルギーを一撃で消滅させる勢いをぶつけるつもりでだな。」
「………例えば?」
そう簪に尋ねられた彼女は堂々と言い放ったのである。
「押し倒す。」
と。
しん、となる食堂。
それにも構わずネロの独演会は続く。
「押し倒してラブコールを囁けばいくら鈍感とは言え察するだろう。
雰囲気にもよるが、そのまま既成事実を作ってしまえば織斑一夏も男だ、責任は取る。」
『………』
あれやこれやと言われるかと思ったが沈黙したままの彼女たちに不審を覚えなかったネロ。
この時、彼女の<直感>スキルは「-」にまで下がっていたと言っていい。
「何、抜け駆けを狙わずとも全員で押しかければだな………」
「貴様は何を唆そうとしている。」
ぽこん、と一発拳骨を頭に食らうまで声の主に気が付かなかったのだから。
「幾ら私でも複数人から<お義姉さん>と呼ばれるのは真っ平御免だぞ。」
「一人ならばいいんだな?」
「そもそも、未成年に淫行を唆すなと言ってるんだ馬鹿者が。」
そう言いながらネロにもう一発拳を落とす声の主・織斑千冬。
「少しばかり話が必要なようだな。」
「余には話す事は何もないぞ。」
「私にはある。」
いいからこい、とネロの首根っこを引っ掴んで連れ出そうとする千冬。
その前に、唖然としたままの彼女たちの方を向き。
「いいか………余計な事は考えるな?」
『は、はいっ!!』
千冬としては箒たちへの警告のつもりだったのだが、(ある意味当然のように)食堂に
居合わせた全員が返事をすることになり。
それはそれで問題なかろう、という事でネロを引きずるように食堂から退場したのである。
なお、入れ替わりのように織斑一夏がやってきて「さっき千冬姉がウルクの奴を連れてったけど
何かあったのか?」とボンクラそのものの表情で聞いてきたのだが、当然のごとくその経緯を
説明するものは食堂にはおらず、一夏はただ首を傾げるだけだったのである。
まぁ、例え相思相愛だとしても他所の国の代表候補生とか孕ませちゃったら
色々と問題になるでしょうからねw
国からすれば「よくやった!」かも知れませんけどもw
その辺gdgdせずに付き合える相手ってのが箒くらいしかいないと言うのがねぇ。
これにて1巻終了、次回からは2巻です。
その前に全文見直して改訂作業に入ると思いますけど。
話をくっつけたり消したり付け加えたり。
全く別の話にはならないんでご安心を。
今日のFAQ
Q:ジープで何をする気だったの?
A:「一夏、逃げるな!車に向かって来い!!」みたいなの。
ジープで追いかけ回すだけの簡単な作業。
冷静に考えれば滝と丸太を用意してやろうとか言われないだけマシか?
Q:古代レスリングってそんな戦い方なの?
A:かの一国の軍隊にも匹敵する偉大なる戦士・プラトン先生しか本当は無理です。
決して真似しないで下さい。