ISは実質アーセナル=アーマードコア(真顔) 作:通りすがる傭兵
「いいのかルーキー。いや、俺は止めはしないが本当にいっちまうのか? お前の実力なら引く手数多だろ? 飯を食うのには困らないってのに。嫌気がさしたってなら、別に止めはしないが......」
「そうじゃないよ」
言い募るライバルの言葉を制し、私は空を仰ぐ。
空の色は少しづつだけど元の色に戻りつつあった。
戦いを象徴するような朱色は日を経るごとに薄くなり、元の青空が勢いを取り戻しつつある。
あの戦いで、たくさんの生命が死に絶え。
多くの人間が明日を望み、過去を振り切った。
そうして、世界は大きく変わった。
「世界は変わった。だから、私は......ルーキーとしての。アーセナル乗りのしての自分はもう必要にならないんじゃないかって思う。
それに、私は壁の内しか知らなかった。折角だから、壁の外に旅に出ようかなって。お金もたんまりもらったしね」
戦争が終わってから伸ばし始めた髪は、もうすぐ肩口まで届こうとしている。
それくらい悩んで、悩んで、悩んで。私は決めた。
「だから、私はここを出るよ。ジョニー」
「そうか......変わったやつだよ、お前は」
「ええ、お互いに」
「またな、ルーキー」
「またね、上等兵」
私は戦場と決別し、世界を見て回った。
素晴らしいもの、つまらないもの、美しいもの、醜いもの。今まで知らなかった価値観に目を輝かせながら、私は死ぬまで旅を続けた。
そして。
そして。
「......懐かしい夢を見たね」
そして私は今。
「チー姉、ルー姉。ご飯だよー」
「はーい、今行く」
まだ、旅を続けている。
「ほんとにルー姉は本が好きなんだな」
「いろんな世界を旅できるからね」
「......面白いのか? それ」
ソファでだらけながら読書にふけっていると、突然弟が私の読んでいる本を指差した。この本は世界の極地アラスカを旅した旅人の記録を綴ったものだ。挿し込まれている自然や動物を写した写真は、まるで自分がそこにいるかのような実感を与えてくれる素晴らしいものばかりなのだ。
「イッチーも読むといい。世界は広く、果てしなく美しいんだよ」
「よくわかんねえな」
「ふ、中学生にはむずかしいね。それに、友達と遊ぶ方が良い経験になるか」
「ルー姉だって同い年のくせに......」
「悪いね、生まれが早いんだ」
「1ヶ月は誤差だろ!?」
むーと不満をあらわにしてみせる弟、
「勉強しなくて良いのか貴様ら、受験生だろうに」
「休憩中なのだよ」
「やべ、もうこんな時間!」
「合格する気があるのか? 特に
「世界を救うより簡単さ」
「ゲームのやりすぎか?またよくわからないことを......五反田さんのところが吹き込んだんだろうが、とにかくA判定だからと言って油断するなよ。一夏もだ」
「わかってる。うっかり滑ったらたまったもんじゃないからな」
「では問題を出してやろう。世界史だ」
「いきなり急すぎない?!」
「受験の日は待ってくれんぞ。では問題、13世紀の〜」
隠し持っていた世界史の暗記本を取り出して読み上げるとウンウンと唸りだした。微笑ましい光景であるが全く、このような簡単な問題に苦戦してもらっては困るな。
純情で誠実、少し直情的でぬけたところがあるがじまんの弟、一夏。
寡黙でが厳しくあるが、優しさを併せ持つ一家の大黒柱、姉の千冬。
そして私......ただの読書が好きないち人間、こと織斑留姫。
ついぞ持てなかった家族というあり方を。この人生ではなんの因果か得ることができた。
物心ついた時には両親はなく、自身も拾い子で血の繋がりはないと聞くが、なに。
血縁だけが家族ではないことを私は良く知っている。
季節は春。
まだ朝晩は冷え込むが日中は麗かな陽射しが差し込む日々。
こんな日がずっと続けばいいのにとは、よく思う。
◇◇◇
この世界は、私の世界とは大きく異なる。
過去の世界なのかもしれないし、もしかしたらありえた進化の形なのかもしれない。
イモータルという対話不能な怪物はいない。かといって平和なわけでもない。
私の知る世界と同様に人間の紛争は止まらず、世界の水面下では醜い闘争が続いている。
そこで使われているのは、アウターのような限られた人間の行うアーセナルのような代理戦争ではない。
インフィニット・ストラトスという機体を使用した女性のみで行われる代理戦争だ。
アーセナルを起動する際にフェムト粒子に適合する必要があるアウターのように、ISにも起動するために必要な資格、女性であること、がある。適正の差異はあるが私を含むほとんどの女性が起動することができる。そこから生まれたのは女尊男卑の風潮と、ISの娯楽化。
そこに異論がないわけではない。
ISはアーセナルのように闘争を求めて生み出された存在ではない。篠ノ之束という博士が提唱し、生み出した存在。
その目的は星の外へ出るための翼なのだ。
初めてその理論、その機体を見たとき私は感動した。
アーセナルと同じく地上や空を駆ける。それはただ相手を倒すためではなく、手に届かないものを手に入れるための手段としたあり方が美しかった。
だから私はISを学ぶ場を欲した。その手段として、IS学園と呼ばれるIS搭乗者養成施設の門戸をたたくことを決意したのだ。
当然ISが嫌いであるという姉上にはひどく反対されたが私の決意を聞いて、渋々ではあるが目指すことを許してくれた。
そして筆記試験を終え、実技試験及び面接を通ることを許され、私はIS学園の門戸をたたく資格を得た。
一つ予想外があるとすれば。
「まさかイッチーまで合格するとは。よくぞあの難解な試験を対策なしで突破した。姉として鼻が高いが、なぜ家族には告げずに?」
「違う! 俺だってやりたくてこうしてるんじゃないんだからな! というかニュース見ないのか?」
「たかが例外が一つ生まれた程度で何か問題が?」
「姉ちゃんはこういう人だったなこの!」