ISは実質アーセナル=アーマードコア(真顔)   作:通りすがる傭兵

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第3話 悪魔と少女はかく戦いけり

 

 

 

学生にとって昼休みとは何か。

 

言わなくともわかるが敢えて言おう。

 

メシの時間である。

 

「いやもっと他に考えることあるだろ!」

「ふぁふぁんふぁふぁふぁんふぇふぇふぇ」

「口に入れたまま喋るな!」

「.....この食堂のご飯は美味しい」

「食事のことになると目がないんだからもー」

 

 あと食べ方汚い、とナプキンでわたしの口元を拭いてくれるイッチー。いつもすまんね。

 

「一夏。彼女は一体?」

「あそっか、箒はしらないのか。紹介するよ、同い年のルー姉さんだ」

「織斑留姫、ルーキーでいいよ」

「篠ノ之箒だ、よろしく......ルーキー?」

「昔からそう呼ばれてたんだよね」

 

 食事中なので握手はないが、お互いペコリと頭を下げた。ちょっとだけ昔の癖が出たのは内緒だ。

 

「しかし......失礼ではあるが繋がりがあるとは思えないな。髪質といい髪色といい顔といい、似ても似つかない」

「実際そうかはわかんないね。なんせ記憶がサッパリだ」

「......すみません」

「いいのいいの、わたしは気にしてないから。それで、君はイッチーのどういう関係なんだい」

「箒は俺の幼馴染みなんだよ、小学校まで一緒でー」

 

 本当のことなんて赤の他人の言えるわけがないので適当にごまかす。たとえイッチーが信頼している人間でも赤の他人にこの秘密は漏らせないからね。

 

「というわけ」

「入れ違いかぁ。昔の幼馴染みなんてスズっちとランランが聞いたらどう思うか」

「......?」

「ああごめんね置いてけぼりにして。ちょうど篠ノ之ちゃんと入れ違いにして隣に越してきた子なんだ。今は中国にいるんだよね」

「箒で結構です。苗字で呼ばれるのは苦手なので」

 

 篠ノ之、という名前を出した途端少しだけ嫌そうに顔をしかめた篠ノ之さん。なるほど、つまり......

 

「苗字が一緒だから束博士の親戚と勘違いされて困るって訳ね。それは申し訳ないことをした。確かに篠ノ之なんて珍しい苗字だから間違われても」

「親戚というか妹なんだよな箒」

「貴様はそう易々と人の墓穴を掘るか!」

「ほう」

 

なるほど親戚どころか家族。それはいいことを聞いてしまった。だったら是非

 

「是非束博士と連絡を取ってもらいたいね。一緒に天体観測がしたいんだ」

「......は?」

「だって宇宙に行く為にISなんてすごいものを作ったんだろう? だったら一緒に行ってみたい星を語り合えると思ったんだけど、なんであっけにとられてるの?」

 

 わたしの発言にぽかんと口を開けていた箒をイッチーが突くと、正気に戻ったらしく頭をブンブンと横に振っていた。そこまで変なことを言った試しはないんだよ?

 

「いえ、姉とそんな事がしたいっていう人は初めて見たので」

「勿体ない。きっと世界中の天文マニア垂涎のナレーションが聞けるのに」

「......不思議な人だな。姉さんとは別ベクトルの変人だ」

「ルー姉は変わり者だからな、あそういえば」

 

 横で静かに話を聞いていたイッチーがケラケラと笑っていたが、思い出したように真面目な顔をしだす。

 

「ISの操縦教えてくれない?」

「わたしはISの専門家じゃない」

「そんな! 頼れるのは箒だけなんだ!」

「私はISは好かん。姉さんに頼んでみたらどうだ」

「死ぬ気でやればぶっつけ本番でもなんとかなる!」

「こういう人なんだ、わかるだろ?」

 

 つっけんどんな態度から一転腕を組んで悩み始めた箒さん。しばらく唸っていたが、諦めたようにため息をついて立ち上がる。

 

「放課後剣道場に来い」

「剣道か、いいねえ箒らしいや」

 

 

「で、なぜここに」

「何を隠そう私は剣を振り回すのが大好きなんだ」

 

ドヤ顔ダブルソード、といいながら竹刀をいつものように構えると思い切りやな顔をされた。なにおう、私だってブレードはそれなりに扱えるんだぞ。

 

「剣道は防具がないとできないんだ、今日は見学してくれるか」

「当たらなければどうということはない」

「安全のためです!」

 

 そういう間にも箒さんはイッチーを強烈な振り下ろしでふきとばした、うわぁめっちゃ痛そう。しかし昔やってたとは聞いてたけどここまでへっぽこだったとはがっかり。にしても下手くそ以前に動きが悪いね、まるで新兵みたいにガッチガチじゃないのよこれは姉として見逃せないね。

 

「その新聞配達で鍛えた体は飾りかイッチーも少し頑張りなよー」

「新聞配達?! まさか一夏、中学の部活は!」

「三年連続帰宅部皆勤賞だぜ」

「このバカもの! 軟弱者! 唐変木! だからこんなに弱いのか叩き直してやる!」

「あだだだ!」

 

べしべしと子供みたいに竹刀を振り回す箒さん。よっぽどイッチーが帰宅部だったことが気に入らなかったらしいね。いっちー本人は続けたいって言ってたんだけどお金がかかるしバイトできなくなっちゃうからね、って断念したんだっけ。言い訳になるからって話さないいっちーも大概だけど、一方的に責められるのを見るのは気分が悪いね。

 

「君さ、ひとつ受けてくれないかい?」

「私と勝負ですか? しかしー」

「こっちは攻撃だけ、そっちは防御だけ。不公平で悪いけどこれならできるでしょ?」

「わかりました、いいでしょう」

「そうでなくっちゃ」

 

 防具を締め直す様子を見ながら、体をあっためる意味で二、三度軽く飛ぶ。ウンウン、素人剣術だし生身で振るのは初めてだけどなんとかなるかな? 

 

「じゃあ、30秒勝負でいいかい? それまでに一本とれば私の勝ち、しのげば君の勝ちだ」

「わかりました。一夏、合図を頼む」

「お、おう」

 

相手は刀を一本。両手で構えてまっすぐこちらに剣先を向けてくる構え。

 なるだけ自然体に、大丈夫。戦いじゃなし気楽に行ける。

 

「それじゃあ、はじめ!」

 

 

 

◇◇◇

 

不思議な人だ、と最初は思っていた。

 

日本人離れした銀髪とか、藍色の目とか外見的な問題はもちろんある。

マイペースな性格も、クラスメイトの布仏に似ているかもしれないが、少し違う。

無邪気なところもあるが何もかも達観してるような物言い、同い年だというのに年上の人と話しているような口ぶりに感じる。

 

成り行きで試合をすることになったが、構えは剣術のかけらもなく、何より通常の長い竹刀2本を選んでいる。

二刀流ならばもう片方が短い竹刀であるはずなのにそれを知らないとは素人そのものだ。

同時に侮ってはいけないと私の本能が警鐘を鳴らしていた。理由なんてわからないが、そう思わせるだけの覇気があった。

 

(この人は、強い)

「それじゃあ、はじめ」

 

「っ!」

「しゃあああっ!」

 

合図と同時に上段からの十字切り、しかも空中に飛び上がってから。

重力を十分に利用した攻撃を剣を横にして受ける。重いが対応できないほどじゃない、が。

 

(こうもデタラメな剣術では対応もあったものではない!)

 

息もつかせないほどの連撃。唐竹割り、袈裟斬り、逆袈裟、切り上げ、斬り払い、突き、薙技に体当たり。

反撃できないほどではないが、取り決めた以上防御専念に徹するのみ。しかしこの連撃異常なのがー

 

ーー全て繋がっている。

 

 剣道の基本である中段の構えが剣術に想定される構え全てに無駄なく繋がるように、デタラメな剣術につながる攻撃全てが最短距離でつながる最適解。無茶苦茶な攻撃に一切の無駄な動作を要求されない太刀筋を選び続けていることこそが異常。

 

(一体どんな経験を積めばこんな戦い方ができるというのか! こんなもの戦国の戦で使われるような戦い方が現代にあっていいものなのか?!)

「考え事とは余裕じゃない?」

「しまっー」

 

一瞬の守勢の空白をつきバシン、と面に竹刀が叩きつけられる。それを確認した一夏の右腕が上がった。

 

「一本!」

 

敗北したという事実を認識するより、汗を拭う目の前の人物の得体の知れなさへの恐怖が先に立つ。

一夏よ、あなたの姉は一体なんなんだ?

 

 

 

「私は先に寮の部屋に戻るが、一夏はどうするんだ?」

「しばらくはホテルから通学だって聞いてるし戻るかな、そうだよなルー姉」

「そだよー」

「そうか、では先に失礼しよう」

 

 その後素振りや基礎練習、型の確認を行ったところでお開きとなった。私はその間ずっと竹刀でお手玉するくらいにしかやることがなかったんだが、途中で怒られてしまって本当に暇だった。これでやっと解放されるね。

 

「さあてはやく予習しねえと......」

「一夏くん! ここに居ましたか!」

「おや山田先生? どうしたんですか息を切らして」

「水でも飲みます? 飲み差しですけど」

「は、はひー、ありがとうございます」

 

 息を切らして飛び込んできた山田先生にさっきまで飲んでいたスポドリを何事もなかったかのように手渡しするイッチー。

 

「ぷはー。留姫さんも一緒でしたかちょうどよかったです。

 実はですねーー」

 

「「え、今から寮生活ですか?!」」

 

「は、はい! やはり防犯上、人通りの多い都市部からIS学園に通学するのはよろしくないとのことで、急遽寮生活という事になりました」

「あちゃー、どうするイッチー。荷物がないぞ」

「今から買い物? 売店に服とか売ってないだろうし」

「そこは大丈夫です! 先輩......いえ織斑先生がさっき荷物をまとめてくれたそうです。ホテルの荷物もまとめて送ってもらってますから、生活には困らないはずですよ」

 

 ニコニコとこちらを安心させてくれるような笑みを見せる山田先生だが申し訳ない。きっとイッチーも同じことを考えただろう。

 

((チー姉が荷物を纏められるはずがない......!))

 

 先生に落ち度はないが、姉の生活能力には落ち度しかないんだ......!

 

「では部屋の鍵を渡しておきます。同じ部屋なので仲良くしてくださいね!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

「とりあえず......週末には外出許可証貰おうな」

「うげ、外出るのにも書類書くのか?」

「学生証の校則のところに書いてあった。規則は読んでおくと便利だぞイッチー。なんせズルをするにはルールをしっかり覚えないと穴をつけない」

「ルールは守るためにあるんだからな!」

「秩序は破壊されるためにある」

「物騒な物言いやめようって何回も言ってるじゃないか......っと1025はここか」

 

 しかし流石のマンモス高。寮も高層マンションかくもやの大きさだ。となると部屋の大きさも段違いだろうが......

 

「おお、こいつは凄いな」

「広っ」

 

 思わず感嘆の声が出るくらいだ。調度品は実用的であるが芸術性を捨ててはおらず、部屋の広さも驚くほど。さらにはテレビや冷蔵庫に洗濯機も完備とは嬉しい限りだろう。キッチンがないのは少し残念だけど、とイッチーがぼやくが私には十分すぎるな。

 

「しかしあれだな......高級感がすごくて肩身が狭いぜ」

「貧乏人だなイッチー。私もだ」

「おや、ルームメイトか」

 

ガチャ、とシャワールームらしき扉を開けて出てきた女性がひとり。

 バスタオルを体に巻き頭はタオルで拭いているせいかこちらを認識できていない様子。

 

というか、胸もあるし腰つきも細い。エッチじゃん......

 

ん? イッチーの目の前でこの格好。私や姉さんは気にしないが、赤の他人だったら

 

「こんな格好ですまない。剣道の練習をしていて汗を流していた。私の名前は篠ノ之箒だ、これからよろしくたの......」

「あ」

 

 固まるイッチーと箒さん。

はらりと落ちるバスタオル。

 

 尊厳を守るためにとりあえずイッチーの膝を折って転ばせたところで箒さんが再始動。

 

立てかけてあった剣道道具の竹刀を遠慮なく掴む。

 

面白そうなので羽交い締めを敢行する私。

 

「私に構わずやっちまえ!」

「ちょ、待っーー」

 

「この......変態がああああああああああああ!」

 

 

 箒ちゃんがルームメイトか。幼馴染みって事でチー姉あたりが手を回したんだろうけど、全く不器用なんだからもー。

 

「話せばわかる! これは事故だったんだ!」

「喧しい! わ、わたしの体をじろじろと見て! 変態! すけべ! 朴念仁!」

 

 なんやかんやで脱出して扉越しに剣道少女との攻防を見せる不幸少年にエールを送る。

 がんばれイッチー! まずは信頼関係を再構築するところからだ! 傷は深いぞ!

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