ISは実質アーセナル=アーマードコア(真顔)   作:通りすがる傭兵

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だいぶ手の方も良くなってきましたので


第4話 悪魔の安息日

 

 

 

 

「ルーキー? 寝ているのか?」

「......起きていますよセイヴィアーさん。少し考え事をしていただけです」

「寝てるなんて呑気だねー? 飴いる?」

「......欲しいところではありますがもうすぐで戦闘が始まりますよ、ヘブンさん」

「そうだったそうだった!」

 

 目を覚ますと、眼下には銅色の大地が広がっていた。ポツポツと廃墟が残り、戦闘の残滓であるクズ鉄(ジャンク)の山もちらほらとみて取れる。

 

「今回の任務はイモータルに占拠された生産工場の破壊だ。1匹も取り逃がしてはならない。

 徹底的に破壊する」

「オッケー! 任せといて兄様!」

「了解、こちらはどういった戦略で?」

「ヘヴンが前衛を、私が後衛を守ろう。貴殿は遊撃隊として撃ち漏らしを掃除してもらえればいい」

「了解しました」

 

 無線越しに聞こえてくる硬派で重い声。今回SHELLとは初めての同時作戦になるが、まさか代表と直々に組むとは思わなかった......

 もしミスでもすれば......そう考えるだけで、操縦桿を握る手が少しだけ汗ばむ。

 

「......緊張しているか?」

「は、はひっ!? セイヴィアーさん!?」

「秘匿回線だ。ヘヴンには開いていない。

どうやら緊張しているかと心配して回線を繋げたがその通りのようだ。

 無理もない。貴殿はまだ新兵(ルーキー)と聞く。それに私の威厳に気圧されるのも仕方のない事だろう。

 

 だがともに正義の執行者としてイモータルを討伐する責務を背負った同志でもある。今回の任務、期待しているぞ」

「は、はい......」

 

 そこで通信を切れば終わりだったのだろうが、緊張で茹で上がった頭はウイルスに侵されたOSよりも役立たずで突然こんなことを言い出していた。

 

「セイヴィアーさんは、どうしてアーセナルに乗っているんですか?

 噂で貴族と聞きました。無理に死ぬような立場ではないはずじゃあ」

「不躾な問いかけだな。今回のことは若気の至りとして不問としておこう。次はないぞ」

「ひっ......」

「しかし新兵を導くのも貴族の務めだ。私がこれに乗るのはーーー」

 

 

◇◇◇

 

 

 

「今日も特訓かい? せいが出るねえイッチーにモッピーちゃん」

「も、もっぴー?」

「のほほんさんがそう言ってたからね。ダメかい?」

「いえ、悪くはないですが」

「授業を始めるぞ、みな席につけ」

 

 1限が始まる少し前に教室にやってきたイッチとモッピーに声をかけたところでちー姉さんが教室にやってきた。間がいいのやら悪いのやら。

 

「それと一夏。昼休みは職員室に来てくれ」

「え、なんでだ、じゃなかったですか?」

「敬語を覚えんと社会ではやっていけんぞ織斑......まあいい。

 お前に専用機が支給されることになった。その手続き書類を書くために少し時間が欲しい」

 

 背中でもわかる、明らかにめんどくさいと思ってるだろ君。周囲がざわつく中、声を発したのは当然の如くイッチーだった。

 

「専用機って......すごいのか?」

「すごいよ! なんせIS一機を自由にできるんだよ!」

「よくわかんねえな」

「要はみんなが量産機乗ってる中で自分だけ攻撃力とか防御力の高いカスタム機体の乗るようなものだよ織斑くん!」

「パワーアップアイテム的なやつなのか?」

「さては参考書読み進めてないなイッチー」

 

 このバカ弟は世界に400機しかない核兵器に相当する兵器をなんか適当なアイテムだと勘違いしてるらしい。参考書の最初の方に書いてあるんだけど、勉強の方は大丈夫なのやら。

 

「安心しました。訓練機で負けたと言い訳されては困りますもの......勝負が見えているとはいえフェアではない勝負は嫌いですもの」

「なんの話だ?」

「あら、ご存知ないのね。

 いいですわ、庶民のあなたに教えて差し上げましょう。この私セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生。

 つまり、現時点で『専用機』持っていますの」

 

 授業が始まっていないので油断してるのか、それとも自身の現れなのか堂々と胸を張るオルコット。どうも自分の力を誇示したいらしいね。だけど、

 

「で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

寝言は寝て言ったらどうなのかね、新兵君?

 

「専用機だろうと訓練機だろうと、どんなにスペックに差があれISにかわりはない。そこで自慢げにしようと最終的にそれを決めるのは戦場だけ、違う?」

「っ......不愉快ですわ」

「そりゃ結構」

「......話は済んだようだな。血気盛んなのは良いが、問題は起こすなよ。

相川、号令」

「起立!」

 

 思惑から外れたのか嫌悪感をあらわにするオルコット。場が落ち着いたのを見てから先生が場を仕切り直し授業が始まった。

 

 とはいえあの口ぶりでは専用機と訓練機じゃグリーフとオルサ一式機体(初期装備)一対一(デュエル)するようなものらしい、やってやれないことはないがほぼ不可能に近い。依頼されたら10人中10人の傭兵が受けないに決まってる。

 

この対決が不可避な以上は、何か対策を考えないと。

 

 

 

 

 

IS学園図書室。

 

 国際的な学園であるという性質により古今東西、ありとあらゆる文化圏の本が収集されている。

 が、その真価は違う。

 

 圧倒的な映像資料。

 

 ISが世に出て10年、幾たびもの競技会や大会が行われた。また学園内ではクラス代表選、タッグマッチトーナメント、自主模擬戦闘、キャノンボールファストをはじめとした学園内での模擬戦闘も絶え間なく行われている。その映像全てがIS学園資料閲覧コーナーには並んでいるのだ、世界中どこをさがしてもここまでIS同士の戦闘データが蓄積された場所は存在しない。もちろん今年の入試での実技試験の映像も申請を出せば見ることが可能。

 

「一年生なのに勉強熱心ね、7番を使って」

「ありがとうございます」

 

 司書さんに軽く頭を下げ、閲覧室へ向かう。映画だとポップコーンを食べるのが定例ではあるけど、図書室は飲食物持ち込み禁止だからね。端末にデータを落としてと、

 

『ではこれより、セシリア・オルコットさんの実技試験を開始します』

『よろしくお願いいたしますわ』

 

 試験監督官が使うのは学園の訓練機、対してオルコットが使うのは、大型ライフルとブリッツのような非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)を持つ、青いカラーリングの機体。装甲は脚部に集中しているようでそこまで厚くはない。

 

(機動力はやはりかなりある。大型ライフルの威力も見掛け倒しじゃなさそうね)

 

 アリーナの中を弧を描くように飛び回る両者だがその内容は大きく異なる。

 

機動力を生かし、常に自身の有利な射点を作り続けているオルコット。

左手の盾で攻撃を防いでいれはするものの、窮屈な射撃を強いられる監督官。

 

オルコットの目もいい。まさに反撃の手を講じようという予兆を感じ取り、正確にその出鼻を挫いている。

しかし私からすれば、いやおそらく監督官からもすればまだまだ隙は多い。試験とだけあってなんども射撃をかいくぐって肉薄する機会を見逃している。もしその攻撃の密度の薄さが罠だとすれば、随分な食わせ者だけど。

 

「今年の新入生は勉強熱心だこと」

 

突然、背後から声が聞こえた。

 

「誰ですか」

「入学式で挨拶したじゃない」

 

 振り向くと背後に女性が立っていた。同じ制服であるが胸元のリボンが違う、ということは上級生。はねて整っていない水色の髪といい赤い瞳といい日本人離れした外見だがどこの出身か。いやそもそも見覚えが。

 

「はい時間切れ」

「あいた」

 

ぺし、とその豊満な胸元から取り出された棒状のようなもので軽く叩かれ思わず頭を抑えると、その女性は残念そうな顔を見せると、その口元で持っていたものを広げた。

『生徒会長』

 墨痕鮮やかな文字が書かれたセンスが広げられると同時に非難がましい声で、

 

「在校生代表の挨拶で歓迎の言葉を言ったのに覚えてないとは随分と忘れっぽい人なのね」

「弟のことが心配だったもので」

「あらそうなの。随分と家族思いなのね、羨ましいわ織斑留姫ちゃん?」

「それで、生徒会長が私に何の用です?」

「勉強熱心な後輩の応援をするのは悪いことかしら?」

 

 いつの間にか『頑張れ』という文字に書き換わったセンスを広げながらニコニコとする生徒会長。のらりくらりと質問や言葉を躱されているようでやりにくい。

 

「あの織斑千冬の家族であり、入学試験は学年次席。実技試験も高評価のあなたに期待しているのよ?

 もっとも、それがどうしてかは()()()()()()()()()()()

「……!」

「記憶喪失であり中学校以前の経歴は一切不明という胡散臭さ。その肌と髪の色を見るとどうしても日本人とは思えない。先生方は成績とネームバリューで入学を認めたらしいけど、私はその場にいれば絶対に反対した」

 

 先ほどとは打って変わって、いやこの人の目は一切変わってなどいない。先からずっと私を覗き込んでくる目は、値踏みするような目で観察しているだけ。

 

「けどあなたが入学した以上とやかくは言わないわ。あなたがどこの国の出身であれ、どんな経歴であれIS学園では意味を持たない、皆等しく歓迎するわ。

だけど」

 

『壁に耳あり障子に目あり』と書いた扇子で口元を覆いつつ私の肩に手をおいた生徒会長。

 

「学園に(あだ)なすのであれば私は一切の容赦はない。覚えておいてね?」

 

 抑揚の一切のない、殺意を孕んだ言葉。

久々に味わった殺意に思わず気圧されそうになるがそうなってはいけない。

 ナメるな。

 ナメられては、守れない。

 

「それはこちらも同じです生徒会長。

 もし私の大切な家族に仇なすならば、その(ことごと)くを私は容赦しません。それが誰であろうと、なんであろうと」

「あら怖い怖い。お互い上手くやっていくことにしましょう?

 

『触らぬ神に祟りなし』そう書かれた扇子を広げて、その場を辞する生徒会長。

 

「最後に可愛い後輩にアドバイスよ?

BT兵器。ブルー・ティアーズはその試験機なの。もしかしたら、武装は他に隠されてるかもね?」

「......ありがとうございます」

 

あの人のこと、好きになれる気がしない。

 

 

 

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