ISは実質アーセナル=アーマードコア(真顔)   作:通りすがる傭兵

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難産でした......なんとなく書きたいものを書いてるのですが少しだけ迷走気味


第5話 悪魔とそれぞれの願い

 

 

 

「ところで、るー姉はなんで立候補したんだ?」

 

 朝飯時、相席したイッチーと箒ちゃんと対面したとき突然そんなことを聞かれた。

 

「なんの話だ」

「クラス代表決定のとき。立候補したときガチでキレてたじゃんか。あそこまで怒ってるのを見るのは久しぶりだったんだぞ、なんでだよって聞いてたの」

「イッチーが馬鹿にされたんだぞ。絶対に謝らせる」

「私には怒ってたようには見えなかったが……随分と過激な姉だな」

 

そう言いながらお椀を傾け丁寧に味噌汁を飲む箒ちゃんに対し、イッチーはもう子供じゃねえってのとぼやきながら白米をかきこむ。この塩じゃけ美味しいね。塩気がちょうどいいしほんのり甘い感じが白米によく合うよ。

 

「イッチーには毎回言ってるけど、そこまでおかしいこととは思わないんだけどなぁ。自分の家族だよ? 馬鹿にされたらそりゃ誰だって怒りたくなるものでしょ」

「確かに、私とて育ての親を馬鹿にされたら怒りたくなる。しかし、何事にも限度というものがあるだろう」

「俺だって男なんだぞ、そこまで過保護にしなくてもいいじゃないか。家事できないくせに」

「むー。私とて料理くらいは」

「黒焦げの物体を量産するのは料理じゃねえって! 何度教えても焦がすは燃やすわどうなってるんだよ!」

「放っておいたら燃えるんだ。私のせいじゃないガスコンロの仕業だ」

「言い訳するなよ、あと箸噛むのはマナー悪い」

 

 手持ち無沙汰になって咥えていた橋をイッチーが引っこ抜く。無言で返すよう要求すると、ため息をついてから返してくれた。

 

「毎回言ってるけど過保護すぎなの、それに、俺だって自分の身くらい自分で守れるさ」

「あのとき誘拐されたくせに」

「その話は卑怯だろ」

「誘拐、なんの話だ?」

「それはーー」

「ごちそうさま。その話はもういいだろ」

「……ごめん」

「この話は人前ではやめてよって、約束したじゃないか」

「次は気をつける」

「すまない、不躾(ぶしつけ)なことを聞いてしまったらしいな」

「「箒(ちゃん)は悪くない(よ)、気にしないで」」

「そ、そうか」

「ほら箒、授業始まるぜ、急がないとちー姉に怒鳴られちまう」

「そうだな」

 

 

 時計を指させばもう10分前。食堂と教室には距離がある以上ここらがタイムリミットだ。先日こっぴどく叩かれたトラウマがあるのか残ったものを口に押し込み席を立つ箒。

 いつものように振舞っているように見せて、私が見逃すはずがないだろう。誘拐の話題を出した時一夏が強く唇を噛んでいたことに。あの頃から、全く決意は変わっていないらしい。

 

 あの事件を思い出す。2年前の夏のことだった。

 仕方のないことだったとしても、たとえ自分の力が及ばないことであったとしてもきっと背負い続けてしまうんだろう。私だって同じだ。もし私に少しだけ力があれば、アレがあったならば。

 

これは私達が背負っていくべき十字架だ。

 

 あれから一夏は自分の力だけで何でもこなそうとするようになった。

 掃除洗濯をはじめとした家事や出費の管理、食材の買い出し。新聞配達と別のバイトを掛け持ちするようになったのはこの頃からだ。他にも学級委員に立候補したりと学校行事でも自分がリーダーシップを取るようにもなっていた。

 

 それがあの出来事を忘れたくてなのかは私にはわからない。

 家族の仲は変わらないけど、少しだけよそよそしくなった気がする。しょっちゅう遊びに来ていた鈴と乱の転校が重なったのもあってか、少しだけ家の中は寂しくなった。

 

 私が明確に目標を口にしたのもそれからだ。

もし力があるならば。あの事件できっとそう思った、だからこそ私は調べていた願望を現実にするためにIS学園を目指して勉強を始めた。

 

もし、また同じことが起きるなら。

 

今度は、私が止められるように。

 

 

◇◇◇

 

 

「498、499、500! 終わり!」

「終わり! みんなお疲れ様!」

 

 汗を拭う暇もなく、剣道部の部長さんの掛け声を無視して竹刀を振り続ける。

 

「一夏くん大丈夫? 休憩の時間だよ?」

「男なんで大丈夫です、ハイ!」

「それでこそ一夏だ。私と打ち合うぞ!」

「おう、かかってきやがれ!」

 

 汗を拭う暇もなく箒と実戦形式の打ち合い。

流れる汗が滲みて痛くなるけど、箒がそれで待ったをかけるはずもない。

 俺のより素早く鋭い一撃をなんとか受けつつ、苦し紛れに小手を打ち込むが、よくわからないうちに竹刀が手から弾け飛んでいた。

 

「もう一回だ箒!」

「まかせろ!」

 

 後ろに飛んで行った竹刀を拾い直して、構える。昔と違って思うようにうごかない身体を叩いて、俺は雄叫びを上げて箒に突っ込むように走る。

 

とにかく、何かに全力を出したかった。

 

 よくわかんねえけどISを動かせるようになって、これで千冬姉に、留姫姉に迷惑をかけずに済むって思ってた。だが現実はどうだ。体格とか体力では確実に勝っているような箒に剣道ですら勝てない。

 

情けないにも程がある。

 

 その上向こう見ずに突っ込んだクラス代表選ですら留姫姉に庇われるような始末だ。

 

なにが男だ。なにが守るだ。

 

こんなんじゃあの時とまるで変わらない。そうだ、ずっと守られてばっかりだ。昔は千冬姉、中学の頃からは留姫姉、そして今じゃ2人がかり。過保護にも程があると怒りたくもなる。

 

「おおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!」

「その意気だ一夏! 気迫を見せろ、精神を研ぎ澄ませ! 他所見している暇はないんだぞ!」

 

 無駄なことを考えるな、箒の言う通り目の前のことに集中するべき。まずは......

 

「まずは箒に勝つ! セシリアにも勝ぁつ!」

「その意気だ一夏! だが私とて負けてやれるほど優しくはないぞ、かかってこい!」

 

 

 

「今年の1年は血気盛んで良いわねぇ」

「ですねー」

「先輩方、お二人が盛り上がっているところは申し訳ないのですがそろそろ鍵をかける時間では? 自習時間になってしまいますよ?」

「......どうやって止めようかしら」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「ふぅ......世話をかけるな、真耶」

「いえいえ、楽しくてやっている事ですから」

「そうは言っても、こんな遅くまで付き合って貰ってしまって、頭の下がる思いだ」

 

 やっと明日の授業に使う教材をまとめ終わったのは、時計が10時を軽く超えたところ。これでは食堂もしまっているだろう。

 

「また夕食を食いそびれてしまった......今日もカップ麺か」

「作り置きの惣菜か何かないんですか? 健康に悪いですよ先輩」

「生憎と家事は苦手だ、任せっきりだったからな」

「妹さんにですか?」

「一夏にだ。留姫は私に似て家事はからっきしだよ」

「へーえ、家庭的な面もあるんですね一夏くん」

「そこらの女子には負けないくらいだとは自負している。自慢の弟だよ」

「ふふっ、いいですねそういうの」

「真耶はひとりっ子だったか、羨ましいか?」

「そうですね......私も妹や弟が欲しかったです。頼りないとは、思われちゃうかもですけど」

 

 きっと可愛いんだろうなあ、と頬に手を当て妄想に浸り始める真耶。相変わらずの妄想癖だ。

 それと同時にやるべきことはしっかりとこなす責任感の強さも持っている、問題と向き合う姿勢も熱心だ。私と違って、これが天職というべきなんだろう。

 

「真耶、一夏と留姫の面倒をしっかりと見てやってはくれないか」

「家族だから、ですか?」

「それもあるが......少し、嫌な予感がするんだ。ここ1年は家に余り帰れなかったし、ここ一昨年はずっとドイツだった。

 そのせいもあるが、今の2人が少しだけわからないんだ」

「わからない?」

「ああそうだ」

 

 聞き返してきた真耶に対し肯定を示す。彼女にとっては突拍子のない話かもしれないが、一夏と留姫に1番近い彼女にしか頼めないこと。

 

「性格が変わった気がするんだ。大人びたといえばそれまでだが、そうではない何かを感じているんだ。

 一夏はなんというか張り詰めた空気を出すようになった。留姫は昔に戻ったようだった。それが......少し怖いんだ」

「怖い、ですか?」

「ああ、怖いんだ。2人が自分の手の届かないところに行ってしまうんじゃないかって」

「親離れってことじゃないですか? ただの杞憂ですよ。子供なんて高校生ともなれば自立する人も多いですし、当然のことでは? 私もそうでしたよ」

「そんなものなのか?」

「そんなものですよ。一夏くんが急にISに乗れるようになったりして、気を張るのもわかります。

もっとみんなに頼んでいいんですよ、私とか!」

「......そうだな、山田先生」

「もう先生だなんて! 他人行儀はよしてください先輩」

「いや、教師としてはそちらが先輩なんだが」

「先輩は先輩ですよ」

「難しいな......」

 

 早く寝ないと明日起きられませんよと言いながら鞄を片付けて立ち上がる真耶。そうだな、と相槌をうち、私も立ち上がった。

 

 家族と向き合わなかったつけなのかもしれない。だが、まだ立て直せるはずだ。学園で教師として振る舞っていない間はせめて......

 

「それと先輩、2人に厳しくしすぎないで下さいね」

「なって、突然急に? 私はただ普通に......」

「あれのどこが普通ですか。心配性なのはわかりますが、もう少し優しくしてあげてくださいよ」

「す、すまない......」

「いいですか、教師というのは!」

 

こんこんと教師かくあるべし、と自論を語り出した真耶。こうなると止めるのには手間がかかる。

 

「わ、わかった! 続きは私の部屋で聴こう」

「そういうところもです! 問題に真摯に向き合う姿勢が教師として足りないと思うのですよ先輩は」

「しー、声が大きい!」

 

 

 

 

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