ISは実質アーセナル=アーマードコア(真顔) 作:通りすがる傭兵
お久しぶりです。いやぁ、人間関係が最近薄いもんで人と話さないと文章もやる気が出ないですね......小説って難しい。
「と、いうわけで」
「「織斑君クラス代表決定おめでとー!」」
決戦から時は経ち月曜日のSHR、1組は歓声に包まれた。
「......は?」
「良かったなおめでとう。これで晴れて学級委員長だ。頑張れよイッチー」
「ちょっと待て状況が飲み込めないんだけど!」
ぽかんと口を開けて固まるイッチーの肩を叩いて起こすと、意味がわからないとこっちに向かって不満をぶちまける。
ただ私もこれについては知らないことだぞ、音頭は取ったがなんの経緯でこうなったことやら。
「おやおや、それでは生きていけないぞよ〜。感じろ」
「なんでそんな顔なんだよ! 落ちたくせに!」
「私は縦ロールをボコす為だけに立候補したし、不戦敗で結局2タコ。そんで」
「私が辞退したのですわ! この意味がお分かりでしょう?」
「......ということは、残ってるのは俺だけか」
「
「別にいいけどなんで辞退したんだよセシリア、勝ったからセシリアがクラス代表になるべきだ」
至極当然な反論に対し、セシリアはその自慢げな表情を少しばかり赤く染めながら答えた。
「そ、それはですね。英国代表候補生たる私が模擬戦で勝つのは 当 然 のことですわ。しかし、私の目線だけでなく客観的な視点から見ても、あの模擬戦でここまでわたくしを追い詰めたのは称賛に値します。
ですので、その伸び代を考えてあなたにクラス代表の座を譲渡して差し上げたのです!」
「......よくわかんないけど、褒めてるのか?」
「そうですわっ!」
「セシリアがそういうなら仕方ねえな。
クラス代表の座しかと受け取った、譲ってくれたセシリアに恥じないよう、もし戦う時があれば絶対に勝ぁつ!」
「おーすっごい気迫!」
「よっクラス代表! 期待してるよ!」
「さっすがセシリアさん分かってるねぇー!」
イッチーが拳を突き上げ決意を新たにする中、私はイッチーではなくオルコットの方に目線を向けていた。
発言し終わってからのもじもじとした態度と、時折妄想しているのか頬を押さえて体をくねらせ、頬は興奮したかのように赤色に染まっている。
(なるほど惚れたな)
どうやら手続き関連で私が四苦八苦している間に何やら一悶着あったらしい。この学校で記念すべき初撃墜になるな。
と、思っていたがそうでもないらしい。視界の端に映ったポニーテールが称賛の目線ではなく何やら怒りに満ちた目線をオルコットとイッチー双方に向けている。
箒ちゃんはイッチーの昔馴染みと聞くし、幼い頃から恋をしているとなればなるほど罪な男。
これで2人。さてスコアはどこまで伸びるんでしょうね。
「で、クラス代表が決まるとどうなるんだっけ?」
「知らんのか? クラス対抗戦に出る」
「へー」
「貴様説明を聞いていなかっただろう織斑。
まあいい、折角の機会だ説明する。
クラス対抗戦というのは、4組あるクラスそれぞれが代表を選び模擬戦を行う行事だ。
生徒同士の試合形式での模擬戦はこれが初めてになるだろう。出場しないからといって気を抜くなよ。全員出場が義務のタッグマッチトーナメントも控えているのだ、むしろ実戦の機会を減らし出遅れた事を自覚する良い機会になる」
つらつらと説教じみた事をいう我が姉、なるほど担任に選ばれるだけあって先生役に慣れているというわけだ。
なるほど、クラスでも選り抜きのIS熟練操縦者に先頭の場を与え、経験を積ませるだけでなく一般生徒にも触発されうる機会を用意するのが目的か。回りくどいね。
「ではSHRを終わる。10分後には一限を開始するぞ、予習はしてきたか? 準備は怠っていないな?生半可な取り組み姿勢ではついていけんぞ」
(やべ、何もやってない)
わかっているだろうな、と言わんばかりの気迫を向ける姉から目をそらす。ここ一週間はオルコットの模擬戦のことで頭がいっぱいで一切勉強していないことがバレたらなんと言われるか、先週出された宿題も手を付けてないし!
誰かこの空気を変えてくれないものか・・・!
「ティーチャー織斑、時間をもらってもよろしいでしょうか」
「オルコットか。いいだろう」
「ありがとうございます」
願いが通じたか、教室の空気が変わる。先ほどの良くも悪くも熱狂的だった雰囲気とは打って変わって粛々としたオルコットに気圧されたのか、もしくは気圧されたのか、その両方なのか。全員が黙り込みオルコットの動作を見守っている。
貴族らしい洗練された動作で彼女はクラスメイト全員のいる方へと向き直って。
「先日は、ほんとうに申し訳ありませんでした」
そして、深々と頭を下げた。
「クラス代表を決める経緯において私はあなた方にひどい暴言を吐きました、許されないようなことを言ってしまいました。その件について、皆様に謝罪したいのです。
セシリア・オルコット個人として。そして英国代表候補生として、私は未熟でした。
これからは一学生として心身ともに精進し、向き合っていこうと思います。
厚かましいことですが、その機会を私に許してはもらえないでしょうか・・・!」
不器用ではあるが、誠実さを表した気持ちのいいくらいの謝り方だ。ちー姉は何も言うつもりはなさそうだね、生徒間の問題だから自分たちで解決しろってことらしい。
でも状況を飲み込めてる人が少ないし、誰も彼も黙り込んでるせいか発言しにくい場になっている。仕方ない、ここは私が一肌脱いでやるとするか、と思った矢先に、
「こちらこそ、すまなかった!」
「一夏さん」
「俺だって、謝らなきゃいけないことがある」
オルコットと同じくクラスメイトに対して頭を下げているのは、イッチーだった。
そしてセシリアの方を一瞬だけ向いて、みんなと向き合った。
「言い訳するつもりはねえ、俺だってセシリアと同じに酷いことを言った。そっちが謝ってハイそうですかと済む問題じゃない。俺も、人間としてできたもんじゃないのはお互い様だ。みんなに頼みたい、セシリアだけじゃなくて俺も、みんなと真剣に向き合わせてくれ!」
男らしいと評価すればそれまでだ。だけど、これはイッチー、いや一夏の今できる答えなんだろう。姉として家族の成長が見られること以上に嬉しいことはない。
「いやー、これで一件落着だね」
イッチーが頭を下げて数秒経ったけど場は静まりかえっている。おかしい、仲直りしたねって感じでクラスメイトから拍手が巻き起こって一件落着な流れだったはずでは?
待て待て自分の発言を振り返ってみよう。うん、きやすい感じで言ってしまったけど悪いことは言ってない、それは良い。
で、そのあとなんて言ったっけ?
何も言ってないよね。何で黙られる筋合いがあるんだろう、不思議だなぁ。
「る、るー姉それはないだろ・・・」
そんなイッチーのセリフと同時に予鈴が鳴った。
私なんかやっちゃいました?
◇◇◇
「ごめんセシリア、ルー姉はこういう人なんだ・・・」
「なぜ謝るんだイッチー、私は何も悪いことしてないぞ」
昼休み開口一番、食堂につき流れで相席することになったオルコットとの開口一番のセリフがこれだ、訳がわからないよ。
「実際、かなりの藪蛇でしたわね。随分と不器用なのか無神経なのか態とやっているのかわかりませんわ」
「留姫もしっかり謝っていたから良いのではないか一夏? お前の言いたいことは理解できるが」
「あんなに棒読みな謝罪を謝罪とは呼ばないでしょう」
空気を読んでくださいまし、とこちらに不満げに細めた目を向けてくるオルコットに対し私は当たり前でしょと反論した。
「いやだって私全然悪くないもの」
「......
「自分の間違いを認めるつもりはございませんと?」
「いや、確かに言いすぎたとは思うけど謝るつもりはなかった」
「......」
不機嫌さに磨きがかかるオルコット。心なしかナイフとフォークを握る手にも力が入っているような。オルコットさんは随分と素直なようで、まだまだ子供っぽいね。
「私が10割悪いと感じてるなら私だって謝るさ。でも、軽々に頭を下げるつもりはないよ、私の謝罪はそんなに安くないからね。
イッチーの姉としてヘコヘコする気は微塵もないから。問題起こしても私は知らないよイッチー」
「昔っからこうなんだもんなぁ......流石に自分から仕掛けた時は謝るけど、自分は悪くないって一点張りすることも多くって、だから問題児呼ばわりされるんだよルー姉、仲良くしなよ」
「喧嘩売ってきた相手には絶対に弱みを見せない、次に問題起こす時付け込まれるからね」
「昭和の極道か何か?」
当たらずとも遠からず、傭兵家業は舐められたら終わりなんだぞイッチー。こちとら後ろ盾なんてなかったんだ、それこそ弱点一つ曝け出すだけで消されかける商売だったんだからね。
......なんてことは言えない。
「......昔それで酷い目にあった、これでその話はおしまい。さ、飯食おう飯。美味しい飯が冷めちゃうよ」
オルコットさんは相変わらず半目の冷め切った顔、箒ちゃんは困惑気味でイッチーはいつも通りの諦めた顔。
微妙な空気になってしまったのは申し訳ないけど生憎と、こんな平和にはなれないもんで。
「......ハァ、もっと派手にやってくれた方が落ち着くなぁ」
コクピット越しの無味乾燥な人間関係の方が、よっぽど楽に感じるよ。
銭湯帰りの殺伐とした人間関係に慣れた人って日常生活を送るのにも苦労しそう、そんな話でした。
ギスギスしすぎてすまん......