ガラル地方の、とある貴族が住まう屋敷。そこには屋敷に住んでいる筈の貴族の姿は無く辺りを使用人が警備している、いや、よく見ると使用人とは思えない目つきに腰に付いてる6つのモンスターボール。到底使用人とは思えない彼らが何故使用人なんかに扮して屋敷を警備しているのか、答えは単純。彼らにとって尊敬する『ボス』が屋敷にいるからだ。
屋敷の一室、書斎には二人の男女と椅子に座り彼らの報告を聞く男がいた。
「カントー支部からの定期報告ですが、ポケモンの捕獲数も徴収も順調とのこと。ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラも同様です。」
赤い髪を七三分けにし赤い四角メガネを掛け黒いスーツに見を包む中年男性『マツブサ』は各地方の支部から来る定期報告を上司に報告する。上司は特に反応せずもう一人の方へと向く、それと同時にそのもう一人である『イズミ』は報告を始める。
「研究室からはいつも通りの報告よ、強いて言うなら『B.G』の研究が順調に進んでいる事かしら」
「……………そうか」
褐色の肌をこれでもかと露出させ、青いメッシュの入った黒髪のロングヘアを縛ることなく垂らしている美女、イズミの報告にたった一言で彼らの上司は終わらせる。
普通、組織や会社ならここで労いの言葉や「よくやった」等と言うのが当たり前だが、
上司の男はそれを云うつもりは無いようだ。
ブラック企業かと思われるがそれは断じて違う、確かにやってる事はグレーどころか真っ黒なのだが。マツブサやイズミを含む部下達は自分上司に心底尊敬し、彼が命令するなら例え火の中水の中、どこにでも行く所存だ。
しかし、彼らとて不満はある。支部からの定期報告を資料に纏め、部下に指示を出し、いつも以上に身嗜みを整えてこの部屋にやってきたのだ。一言ぐらい声を掛けて欲しい、そう二人は思っていた。
自分の上司が喋るまで
「マツブサ、イズミ。二人共御苦労、組織が順調に進んでるのは君達のお陰でもある。これからも頑張ってもらいたい。」
「「は、はい!」」
これだ、マツブサとイズミは脳内で喜ぶ、自分の上司は欲しい言葉を欲しい時にいつもくれる。二人は先程の不満を微塵も考えずに、どうやったらまた褒められるかを脳内で高速に考えだした。しかし上司が喋りだした為、直ぐに意識を戻す。
「それから、1週間後に幹部を集めて今後の方針について決める。二人共くれぐれも遅刻しないように」
「「了解です、ボス!」」
二人が答えるとボスは扉近くにいる護衛に目配せし扉を開かせる。二人が扉から出ていくと、暫くの間書類に目を通し重要な物をサインしつつ時間を潰した。
ふと壁に立て掛けてあるアンティークな壁計を見ると、就寝の時間だとわかる。机にある珈琲をそのままに、椅子から立ち書斎から出て自分の部屋に戻る。
屋敷にある寝室の中で一番寝心地が良い部屋だ、元は"アイツら"が使っていたが今は自分の物。
寝間着に着替えてベッドに入る、チラッとベッドの影をよく見れば蠢いているのがわかる。自分が寝ている間に護衛するポケモン、恐らくゲンガーだろう。
護衛のポケモンを無視し目を閉じる、そうして男は眠りに付く、彼が何者なのかは誰も知らない。唯一知っている事は"悪"である、これに尽きるだろう。
犯罪組織ネーヴ団、団長"ブラック" 彼は長年の夢が叶うのが近いと確信し、口元が歪むのを理解しつつ夢の世界へと旅立った。