異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百五話 濃ゆい面子と診察結果

 

「本当にお騒がせしたわね。……ほらっ! 貴女達も謝って」

「「「どうもすみませんでした」」」

 

 バルガスの部屋を出て、エリゼさんは俺達に深々と頭を下げる。三つ子と思しきシスター三人組もだ。別に俺は気にしてないし、他の皆も特に気にした様子はないから大丈夫だと思う。

 

「この子達ったらここに泊まるヒトが居ると必ずちょっかいを出すの。いつも注意しているのだけど聞かなくて」

「だって院長」

「ここに泊まるヒトなんて」

「滅多にいないんだもの」

「「「ねぇ~」」」

 

 エリゼさんの言葉に、三人組は順序良く綺麗に最後はハモりながら言葉を返す。エリゼさんは困ったような顔をしてはいるが、怒っているという感じではない。このくらいのことは日常茶飯事なのだろう。

 

「ホントにこの子達は……もう。まだお客様に名前も名乗っていないでしょう」

「「「そうでした」」」

 

 エリゼさんの言葉に、三人組はしまったとばかりに姿勢を正してこちらに向き直る。

 

「コホン。では改めまして。長女のアーメです」

「次女のシーメだよ」

「ソーメです……末っ子」

「「「私達、三人揃って…………『華のノービスシスターズ』」」」

 

 そこで言葉を切ると、何故か三人でそれぞれポーズをビシッと決める。……なんだろう。彼女たちの後ろは壁のはずなのに、某戦隊ものよろしくドカーンと爆発が起きたように一瞬見えた。

 

 他の皆も唖然としている。というかこの場合、修道女としてのシスターと、姉妹としてのシスターの二重の意味だよな。微妙に名乗りが洒落ている。

 

「……大丈夫なの? このヒト達、頭でも打った?」

「本当にごめんなさいね。こんな子達だけど、悪い子じゃないの。ただちょっと悪ノリをする癖があるというか」

「すごい」

 

 エプリが理解できないという顔をし、エリゼさんが頭を抱えながらそう返す。……セプトはどうも興味深そうに見ているな。しかし……なんか濃ゆい人達だなぁ。

 

「前に来た時とは名乗りが変わっているようだな。前は『エリゼ院長をお助けし隊』と名乗っていただろう?」

「考えてみたらそれはここにいる以上当然のことでしたので。それにこっちの方が格好いいでしょう?」

 

 都市長の言葉にアーメが代表して答える。というか他にも名乗りがあるのか!? いちいちポーズを決めるのは大変なんじゃないだろうか?

 

 ちなみに俺は戦隊ものよりライダー派だが、決して戦隊ものが嫌いという訳ではない。……これもまた一つのロマンだ。

 

 それと、さっきの言葉からこの三人が姉妹だというのはハッキリした。そして、よく見てみるとまだ十代前半といったところか。

 

 それぞれ顔立ちも背丈もほぼ同じだけど、全員が少しずつ形の違うブローチを服に付けている。今はそれで見分けるしかないか。

 

「あの。紹介も済んだ所でそろそろ先に進みませんか?」

 

 一同濃ゆい自己紹介にどこか呆然としていると、ラニーさんがいち早く立ち直って声をかける。そうだった。こんな所で止まっている場合ではなかった。

 

「そ、そうね。貴女達もいつまでもそんなポーズをしていないで。まだまだやることは沢山有るはずよ。……遊ばず真面目にね」

「「「は~い」」」

 

 三人は元気よく返事をすると、再びバルガスの部屋に戻っていく。まだ仕事がやりかけの状態で遊んでいたらしい。エリゼさんが言ったように、今度は真面目にバルガスの看護をしてもらおう。

 

 

 

 

 気を取り直してまた歩き出す一行。そして少し行くと、エリゼさんはいくつかある部屋の一つに入る。俺達も続くと、そこは簡素な椅子とテーブル、ちょっとした家具が置かれているだけの殺風景な部屋だった。

 

「よいしょっと」

 

 全員が入るのを見届けると、エリゼさんは扉をゆっくりと閉める。

 

 ……あれっ!? やけに重そうだなと思ってよく見ると、ここの扉は木製をベースに所々金属で補強されている。さっきのバルガスの部屋や通路の途中の部屋と違ってかなり頑丈そうだ。

 

 おまけに扉の鍵穴の上に何か小さな魔法陣のようなものが刻まれている。何故にここだけ?

 

「ここは凶魔化に関わったヒト専用の診察室だ。ここなら万が一突然凶魔化したとしても、外への被害を最低限に抑えられる。防音、盗み見対策も万全だ」

 

 ドレファス都市長が気になったことを代わりに説明してくれる。なるほど。患者が暴れても良いように最低限の家具しか置いてないって訳だ。

 

 エプリは魔法陣を少し調べて、俺に向けてこくりと頷く。嘘じゃないってことらしい。

 

 エリゼさんが椅子に座り、俺達にも座るようにと勧めるのでお言葉に甘える。エプリだけは座らずに扉脇の壁に背中を預けて立ったままだ。そこまで警戒しなくても。

 

「じゃあ早速診察を始めるとしましょうか。セプトちゃん。ちょっとこちらに来てくれる?」

 

 エリゼさんの言葉にセプトは一瞬こちらを見てきた。行っても良いかという伺いを立てているみたいだったので、大丈夫だという意味を込めて軽く背中にポンっと手を当てる。

 

 それが伝わったのか、セプトはそのままエリゼさんの所に歩いていく。

 

「ドレファス坊やから話は聞いているけど、やはり実際に診てみないと何とも言えないから。もし良ければ……私に身体の魔石を見せてはもらえないかしら?」

 

 エリゼさんは優しく語りかける。この様子を見ていると、どちらかと言うとシスターというより医者のイメージがあるな。

 

 セプトはその言葉を承諾したかのように自身の服の襟に手をかける。そしてその綺麗な鎖骨の辺りと共にあの恐ろしい魔石が……って!? 見てちゃまずいだろ!?

 

「ご、ごめん。俺ちょっと後ろを向いてるよ」

 

 俺はそう言ってくるりと後ろの壁の方を向く。無表情でどこか子供っぽいとは言え女の子だからな。そういうのはじろじろ見るもんじゃない。

 

 ……何故かセプトからじ~っと視線が来ている気がするが、俺はけっして振り向いたりしないぞ。

 

「…………魔力の流れを確認したいから、少しだけそのままで魔法を使ってくれる? 簡単なもので良いから」

「分かった」

 

 その言葉と共にガタゴトという音が聞こえる。何が起こっているのかは分からないが、セプトがお得意の影の魔法を使っているのだろうか?

 

 考えてみれば、こういう闇属性の魔法は基本的に魔族の使うものだと前に聞いた。それなら影を操った時点でセプトは魔族だとバレることになる。驚かれたりしないだろうな?

 

「そのままちょっとだけ維持しててね。そのままよ」

 

 だが聞く限りではエリゼさんの口調に変化は見られない。無理しているという感じでもなく、ごく自然に診察をしているみたいだ。

 

 そのまま少しの間沈黙が場を支配する。小さく継続的なガタゴトという音は聞こえているが、これはセプトが魔法を続けているという事だろう。そして、

 

「…………ふぅ。もう魔法を止めても良いわよ。服も元に戻して良いわ」

「うん」

 

 その言葉と共にガタゴトという音が止み、服の擦れるような音がする。襟を正しているのだろう。もう振り返っても良いかな。俺はそう判断して振り返る。

 

 ……よし。しっかり服も戻っている。ラッキースケベもハプニングも要らないからな。あれもまたロマンではあるが今はおよびじゃないの。

 

「見ても、良いのに」

「いや見ないからねっ!?」

 

 セプトが何処か残念そうな顔をしている。見せたがりかっての。何でこんなに懐かれてるんだろうホント。

 

「それでエリゼ院長。何か分かったか?」

 

 そんなことを考えていると、都市長がエリゼさんに問いかける。そう。今はそのことだよ。俺はそっちに意識を傾ける。しかしエリゼさんの表情はどこか浮かない顔だ。

 

「あまり状況は芳しくないわねぇ。事前に聞いた通り、魔力暴走の一件でセプトちゃんの身体と魔石は完全に一体化してしまっている。後付けの()()()()()といっても良いわ」

「そんなっ!? じゃあその魔石を摘出したら」

「身体の一部を無理やり引き千切るのとおんなじことよ。当然身体に何らかの不具合が起きてしまうわね。治癒魔法をかけながら摘出したとしても、身体の奥にどんな影響が出るか」

 

 俺の言葉にも静かに返すエリゼさん。その静かさが、話していることはすべて真実だと暗に示している。そんな……じゃあセプトはこれからずっとあんな危ないのを身体に埋め込んだままで。

 

「大丈夫。まだ方法はあるわ」

 

 エリゼさんはそう言ってニッコリと笑顔を浮かべる。それは患者を不安にさせないためのものにも見えたし、迷える子羊を救おうとしているものにも見えた。ただ、

 

「待っていれば良いのよ。自然に魔石が外れるまでね」

 

 その言葉には不安しか覚えないんだけど。もうちょっと詳しく説明してくれませんかねぇ。

 




 この三つ子は大体これが平常運転です。毎回爆発は起きませんが。

今の所同行者の中でヒロイン力が高いのは誰か?

  • アンリエッタ
  • エプリ
  • ジューネ
  • セプト
  • (今はいないけど)イザスタ
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