異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百九話 彼女の地雷にご用心

 

「え~っと。……本当にその七神って奴なのか? アンリエッタは」

『本当だけど。何? やっと女神たるワタシへの崇拝と尊敬の念に目覚めたの? 遅すぎるわと言いたいところだけど、ワタシは寛大な女神だから平身低頭して「これまでの無礼をお許しください偉大な女神アンリエッタ様」と言えば許してあげなくもないわよ』

 

 映像の中でアンリエッタがおもいっきり胸を逸らしてふんぞり返っている。……やっぱり何度見ても神様と言うよりただの偉そうな小学生にしか見えない。絶対ランドセルとか背負っていても違和感ないって。

 

「崇拝と尊敬って言うか、本当に神様だったんだなぁって思って」

『何よトキヒサ。手駒のくせに信じてなかったの?』

「只者じゃないとは思っていたけどな。だけど俺のイメージする神様とはどうにもイメージが違うから」

 

 ジト目でこっちを見るアンリエッタ。世間一般のイメージする神様と言うと、例えば白い服を着てひげを蓄えた老人とか、後光とかで良い具合に顔の部分が見えない男性とかだろうか?

 

 ちなみに俺も大体そんなイメージ。後はまあ日本神道の天照大神とかの女神のイメージだ。間違っても目の前の金髪ツインテ少女ではない。

 

『人が勝手に神の姿を想像する分には自由よね。それは咎めないし、実際そういう神も何処かには居ると思うわよ。ワタシ達の中には居ないけど』

「なるほどねぇ。じゃあつまりアンリエッタは()()()()()神様なのか?」

『それは……っと。そろそろ通信時間が切れるわね。今日の分はあと一回あるから、十分後にまた掛け直しなさい。それと聞きたいことはまとめておくこと。気が向いたら話してあげるわ。じゃあね』

 

 その言葉を最後に映像が消える。アンリエッタへの報告で時間をくっていたからな。こんなことなら先に考えておけばよかった。さて、じゃあ質問をまとめておくとして……。

 

「エプリ。起こしちゃったか?」

「…………まあね」

 

 俺の言葉にエプリが毛布にくるまったまま片目を開いて応える。やっぱり起こしちゃってたか。以前も眠りが浅い体質だって言ってたもんな。

 

「……またアンリエッタとの連絡?」

「ああ。毎回こんな調子だから、やっぱりエプリは別の部屋の方が良くは無いか? 話の度に起こしちゃうと悪いし」

「……別に気にしないで。眠りが浅い分すぐに寝つけるように訓練してるから。……向こうが話を聞かれたくないなら少し離れていても良いけど?」

「う~ん。別にこのままで良いと思うぞ。どうせセプトの一件の時に顔を合わせてるし、アンリエッタも喋るなとは言ってないしな。それにエプリならここで聞いたことをペラペラ話したりもしないだろ」

 

 エプリは何も言わずに頷く。まだ短い付き合いではあるが、エプリが依頼主の情報を漏らすような奴じゃないのは分かってるからな。

 

「…………そう。じゃあ私はこのまま寝ているから、居ないものとして扱って」

 

 そう言うと再びエプリは目を閉じる。……本人の言う通りすぐに寝息を立て始めた。

 

 そのまま起きているという手もあったのだけど、再び寝直してくれるというのは話しやすいようにやっぱり気を遣ってくれたのだろう。俺の周りは気遣いの出来る人ばかりで困ってしまう。

 

 

 

 

「よし。そろそろやるか」

 

 今度は聞きたいこともいくつか考えてある。短い時間にしっかり聞いちゃるからな。俺は意を決してアンリエッタを通信機で呼び出す。

 

『…………プツッ。それで? まずは何が聞きたいのかしら?』

 

 開始早々アンリエッタも本題に入ってくる。こちらの考えを読まれているようでちょっと悔しいが、実際さっさと本題に入るのはこっちとしても望むところでもある。

 

「最初はさっきの質問の続きから。アンリエッタは()()()()()神様なのか?」

『そうよ。と言っても()()ってだけだけどね』

 

 アンリエッタによると、世界には基本的に管轄する神が一柱以上は存在するという。

 

 管轄と言っても大体はただ居るだけの管理者で、積極的に世界に関わったりする神の方が少数派らしい。アンリエッタはその少数派の方だ。

 

 元々は別の世界の神だったらしいが、今回のゲームのために一時的にこの世界に移動しているという。

 

「じゃあ自分の世界に神様がいなくなって大変なんじゃないか?」

『他の七神も全員そうだけど、勿論それぞれの世界には代理を置いているわ。それにちょくちょく元の世界に戻っているからそこまで問題にはなってないの』

 

 そりゃそうだよな。いくらゲームのためとはいえ、自分の管轄をほったらかしにすると言うのは正直どうよって話だ。

 

「では次の質問。そもそも七神って何なんだ?」

『この世界の住人からすれば一番メジャーな信仰の対象……といった所かしら。ヒトの間じゃ七神教って呼ばれているわね』

 

 聞いてみるとキリスト教などのように唯一神を頂点とするものではなく、あくまで同格の七柱の神を崇める宗教のようだ。

 

 ただし宗派によって細かく分類され、特定の神のみを崇める七神教~~派なんてものもあるという。好きなアイドル集団の中でも更に推しメンは誰みたいな感じかね? よく分からないが。

 

『まあ七神教の細かいことはそれこそエリゼにでも聞きなさいな。またセプトのことでそのうち会うでしょうから』

 

 それもそうだな。俺は宗教については絶対に正しい物はないと思っている。どれもそれぞれに真理があり、人によって捉え方もまるで違うのだから。

 

 ならまずはこの世界の人に話を聞いて、それから本人に問いただしても良いだろう。

 

『ほらほら。どんどん時間が経っていくわよぅ。他に質問はないのかしら?』

 

 アンリエッタは微妙に俺をおちょくるように言う。分かってるっての。しかし次は何を聞いたものか。

 

 願わくば七神繋がりで他の神様のことをポロッと漏らしてくれないかとちょっと期待したが、そう上手くはいかないみたいだしな。……そう言えば。

 

「なあ。一つ気になったんだけど、()()()()()()()神様はどうなったんだ? 世界には一柱以上神様がいるんだろ?」

 

 それは何となく聞いた質問。次の質問に繋げるまでのほんの世間話的なものだった。なのだが、

 

『………………言いたくないわね』

 

 それを聞いた途端アンリエッタの機嫌が目に見えて悪くなった。

 

 少しの沈黙と共に声が少し低くなり、今の今まで俺をおちょくっていたとは思えない変わりようだ。……これは何かアンリエッタの地雷を踏んだか?

 

「ああいや、別に言いたくないなら言わなくても良いんだ。俺もそこまで気になっている訳じゃないし」

『……ふぅ。賢明な判断よワタシの手駒。まだ時間が少し残っているけど、今日はここまでにしましょう』

 

 咄嗟に俺が発言を撤回すると、アンリエッタの機嫌も少しだけ戻る。しかしどうも話をする気が無くなってしまったようだ。これ以上はやめた方が良さそうだな。

 

「そうするか。……それとエプリのことなんだけど」

『私は構わないわよ喋っても。ルール上誰彼構わず話すのは面倒事が増えるかもだけど、彼女なら言いふらしたりはしないでしょう。それに依頼人に対して真摯な所は嫌いじゃないわ。富と()()()女神としては多少の無礼を許せる程度にはね。……それじゃ、また明日』

 

 アンリエッタも俺とほぼ同意見のようだ。そしてそのまま通信が終了する。……さて、一応お許しも出たけど。

 

 そこで俺がエプリの方をチラリと見ると、今度は本当に寝息を立ててぐっすり眠っているみたいだ。また起こすのは悪いな。明日話すとするか。

 

 出来るだけ静かに部屋にあった毛布を一枚床に敷くと、そこにゆっくりと寝転んで目を閉じる。掛け布団は以前ジューネから買った布で良いか。

 

 この世界に来た当初の牢獄やダンジョンでの寝泊まりに比べれば、ここは十分寝やすいのでこれで十分だ。

 

 明日も確実に忙しくなりそうだ。だがやっぱり、何だかんだワクワクは止まらない。こんな調子で寝られるかと思っていたのだが、目を閉じていると徐々に意識が薄れていく。そうして意識がなくなる直前、

 

「…………別にまた起こしても良かったのに」

 

 そんな言葉が聞こえたような気がした。……どうやら寝たふりだったらしい。

 




 神様にも言いたくないことはあります。特に同じ神様のこととかね。無理に聞き出すには……ちょっと好感度が足らないかな。

今の所同行者の中でヒロイン力が高いのは誰か?

  • アンリエッタ
  • エプリ
  • ジューネ
  • セプト
  • (今はいないけど)イザスタ
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