異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百三十六話 五分で分かる読み聞かせ

 

「七神教について聞きたい……ですか?」

「はい。ちょっと気になったというか。成り立ちとか神様についてとか」

 

 ではそろそろ出発しようかという時、ふと気になっていたことをエリゼさんに訊ねてみることにした。

 

「それは良い心がけです。信仰の門はいつでも誰にでも開かれているものですからね。ではまず簡単な所で、歴史上有名な聖女アルマリアの活躍と茶目っ気たっぷりの失敗談から……」

「ちょっと待ってください院長。院長のお話はとてもためになる話なんですが、一度始めるとなかなか終わらないですからね。……トキヒサさんはあまり時間が無いのでしょう? ここで聞き始めると間に合わないかもしれませんよ」

 

 エリゼ院長の言葉を遮り、三人娘の一人……長女のアーメがそっと忠告してくれる。確かに十分しかないからな。聞くにしても余裕のある時の方が良いか。

 

「なので……シーメ! ソーメ! あれの準備を」

「ほいきた」

「了解」

 

 アーメの呼びかけに素早く他の二人が行動を開始する。ささっとどこからともなく人数分の椅子を用意し、部屋の中央に何やら布を掛けられた物体を持ってくる。そこそこ大きいけど何だろなアレ?

 

「準備出来たよ姉ちゃん」

「こっちも……大丈夫だよ」

「よろしい。ではトキヒサさん達はお座りください。バルガスさんやエリゼ院長もご一緒にどうぞ」

「俺もか? まあ暇だし良いけどな」

「なるほど。そういう事ですか。……では失礼しますよ」

 

 何だかよく分からないが、それぞれ思い思いに着席を……と思ったらエプリだけは壁に背を預けて立ったままだ。ここは空気読もうよ!

 

「では行くとしましょうか。“五分で分かる七神教の成り立ち”はっじまっるよ~!!」

 

 どことなく某NHK番組を思わせる口調で、アーメはバッと中央に置かれた物の布を取り払う。するとそこにあったのは、

 

「…………紙芝居?」

 

 そう。そこにあったのは、最近ではほとんど見ることのない紙芝居だった。わざわざ台まで用意されていて、その上に紙芝居が鎮座している。懐かしいな。小さい頃は近くの図書館で読み聞かせを陽菜と一緒に聴いてたもんだ。

 

「昔々のそのまた昔。今ではもうどれだけ昔かもよく分からないほど昔。かつてこの世界は、一柱の神様が治めておりました」

 

 アーメはいつの間にか手に紙の束を持ってそれを朗読していた。これもう完全に読み聞かせじゃね?

 

 そしてアーメが朗読するのに合わせて、紙芝居の紙が引き抜かれていく。……あれはどうやらソーメだな。テンポよく紙芝居を進めるのは一人じゃ難しいからな。役割分担だ。

 

「その神様はとても悪い神様で、世界を自分の好き勝手にしていました。毎日空は黒い雲に覆われて陽も差さず、大地にはほとんど草木が育たず、人々はみな困り果てていました」

『ガハハハッ。世界は俺の物だぁ』

 

 全体的に暗いイメージのページに変わったかと思うと、いきなり紙芝居の台の下から黒っぽいいかにも悪者といった感じの人形が現れる。

 

 ……よく見たらシーメが下から棒で操作していた。声を当てているのもシーメっぽい。紙芝居と人形劇を混ぜた感じだな。

 

「勿論ヒト達は悪い神様に、世界を好き勝手しないようお願いしました。しかし悪い神様は聞いてくれません。逆にお願いしたヒトをひどくいじめる始末」

『この世界は俺の物なのだから好きにして良いのだ。歯向かう奴はこうしてくれる』

 

 今度は小さな人形が沢山現れて神様に群がっていく。しかし悪い神様人形が大きく身体を動かすと、小さな人形は皆吹き飛ばされてしまう。

 

 そこでチラリと横を見ると、セプトが食い入るように紙芝居を見つめていた。エプリはフードでよく分からないが、一応しっかりと見てはいるみたいだ。

 

「立ち向かってもこうして返り討ちに遭ってしまい、長い間人々は怯え苦しんでいました。しかし」

 

 そこで紙芝居のページがめくられ、今度は少し明るい雰囲気のページに変わる。そこには、小さな七つの光の球が描かれていた。

 

「ある時、この世界とは別の世界から七柱の神様がやってきました。別の世界の神様達はこの世界の荒れ様を見て心を痛め、悪い神様に悪いことを止めるように言いました。しかし悪い神様は言う事を聞きません」

『ふん。止めるつもりなどさらさらない。止めたければ力尽くでやってみるんだな』

「神様達は仕方なく、悪い神様を止めるために戦いを挑みました。けれど悪い神様も黙ってはいません。自分の力を分け与えた眷属をたくさん創り出して応戦します」

 

 また紙芝居は次のページに移り、今度は悪い神様のミニチュアみたいな人形がいくつも現れる。だが先ほど吹き飛ばされたはずの小さな人形も現れて、ミニ悪人形とぶつかりあった。

 

「戦いは七日七晩続きました。最初は怯えて動けなかったヒト達も、神様達の戦う姿を見て立ち上がり、悪い神様の眷属と戦いました。そして……八日目の朝」

『ぐあああっ!! や~ら~れ~た~」

「遂に悪い神様は別の世界の神様達に倒され、この世界に平和が戻りました」

 

 悪い神様人形が迫真の演技で倒れこんで下に引っ込むと、また紙芝居の内容がガラリと変わる。今度は空を覆っていた黒い雲が消え、荒れ果てた大地も少しだけマシになったような風景だ。

 

「しかしまだ問題はありました。()()()()()神様が居なくなってしまったことです。世界には神様が居なくてはなりません。それに悪い神様の眷属もまだ多く残っていました」

『ふっふっふ。俺の眷属達は俺が居なくても残って暴れるのだ。……ガクリ』

 

 わざわざ律義にまた悪い神様人形が出てきて説明したかと思うと、言い終わったらすぐに倒れて下に引っ込んだ。ガクリってわざわざ口で言わなくても。

 

「悪い神様の眷属は自分達で何とかしなければならないけれど、神様が居なくなったのは仕方のないことだ。優しい神様達は自分達の世界に戻ることをやめ、しばらくこの世界に残ってヒト達を見守ることにしました。こうして人々は新しい神様達に深く感謝し、それぞれの神様をお祀りする様になったのでした。おしまい」

 

 アーメの朗読が終わるとともに、おしまいと紙芝居の最後のページが表示され、これまで出てきた人形がまとめて出てきてこちらに向かって一礼する。全部まとめて動かすとは凄いなシーメ。……ってか悪い神様も一礼してるけどそこは良いのか?

 

 何はともあれ出来はとても良かったので、ついつい立ち上がって拍手をしてしまった。見ればセプトも珍しく少し顔を紅潮させて手を叩いている。余程気に入ったらしい。

 

 バルガスやエリゼさんも同じだ。エプリは……あっ!? 小さく手を叩いてる。

 

「大体ですがこんな所でしょうか。如何でしたか? 参考になりましたか?」

 

 紙芝居を終えて、三人娘がこちらにやってくる。

 

「ああ。ありがとう。なんとなくだけど七神教について分かった気がするよ」

「それは良かったです」

「へへっ! 成功成功ってね!」

「上手く出来て……良かったです」

 

 そう言ってアーメは静かに、シーメは得意そうな顔で、そしてソーメはどこかホッとした顔で、三者三様の笑顔を見せるのだった。

 

 

 

 

「そういえばどうして読み聞かせ風? いやまあ面白かったし良いんだけどさ」

「このところ教会に来る方も減ってしまって、どうにか来てくれるヒトを増やせないかと色んなやり方を前から考えていたんです。今回トキヒサさんが七神教について知りたいと言ってくれたので、考えていたものの一つを試しにやってみたのですが……どうでしょうか?」

「とても、面白かった。影絵の参考にもなるし、またやってほしい」

 

 俺より先にセプトがその言葉に食いついた。無表情ながらも目を輝かせていたもんな。それに人形を操るのは影絵の要領とも近い。

 

「今の読み聞かせは多分子供向けに作られたものだと思うけど、それでいてよく出来ていたし良いんじゃないかな。人形の動きとかも良かったし」

「……悪くはなかったわね」

「俺はこういうこまごましたのはよく分からんが、子供受けはすると思うぜ」

 

 俺の意見の後にエプリやバルガスも続々と感想を述べる。概ね高評価って奴だ。

 

「ありがとうございます。……院長先生。こうして参考になる意見も頂けたことですし、これからもこれは時々こうして教会で行っても良いですか?」

「お願いだよ院長。折角練習したんだから。ねっ!」

「お願い……します」

「……しょうがないですね。見たところ出来はしっかりしていましたし、あくまでも時々ですからね」

 

 三人娘の懇願に、苦笑いしながら許可を出すエリゼさん。なんか上手いことダシに使われたような気もするけど、七神教について少しは知れたから良しとするか。

 

「トキヒサくん。今回はこの子達に付き合ってもらった形になっちゃってごめんなさいね」

「いえ。良いんですよ。時間があればもう少し詳しく聞きたかったくらいです」

 

 エリゼさんが何処か申し訳なさそうに言うけれど、元々こちらが時間がないのに無理して聞こうとしたわけだからな。この三人はそれに応えただけで謝るようなことでもない。それにこういう神話とかは結構好きだしな。

 

「フフッ。そう言ってもらえると助かるわ。セプトちゃんの件以外でもまたいつでも来てくれていいからね」

「評判が良かったら、今度は“五分で分かる七神教の成り立ち『第二幕』”も考えていますからね。その時はまた来てくださいね」

「人形の動きが良いって言ってくれてありがとねっ! またその内観に来てよトキヒサさん。……なんかトキヒサさんって呼ぶのも堅苦しいからトッキーって呼んで良い?」

「また……来てくださいね。次も……頑張りますから」

「はいっ! セプトがしっかり治ったら改めてまた来ますね」

「うん。また観に来る」

 

  こうしてシスター達から熱いお見送りを受けながら、俺達は雲羊に乗り込んで都市長さんの屋敷に戻るのだった。

 




 日々布教のために様々なことを行っているシスターと三人娘ですが、中々上手くはいっていないようです。まあ別の仕事もありますからね。忙しいのです。

これからの話で、読者の皆様が重視して欲しい事柄は?

  • 金稼ぎ
  • バトル
  • 人間関係
  • 冒険
  • ゲーム
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