異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百五十話 後輩はラブ話がお好き

 二時間後。

 

 どうしてこうなった? 予想では長くてもせいぜい一時間で終わるはずだったのに、倍の時間かかってしまった。自分でも話すことがそれなりにあったらしい。

 

「…………とまあ大体こんな感じだ」

「ほへぇ~。……ちょっと凄すぎないっすかセンパイ?」

「そうかな?」

「そうっすよっ!」

 

 何故か大葉は目をキラキラさせ、鼻息荒くこちらにグイグイと迫ってくる。いや近いっ! 近いからっ!

 

「これもう大冒険じゃないっすかっ! 牢獄に入れられたり謎の美女とお近づきになったり、牢獄に襲撃があったと思ったら今度はダンジョンに跳ばされ、なんとかそこから出たと思ったら今度は月夜の大決戦っすか? いやもうお腹いっぱいっすよ!」

 

 改めて考えてみると……自分でも結構色々あった気がするな。内容が濃い日々だったことは間違いない。

 

「それと……お二人のこともなんとなく分かりましたっす」

 

 そう言うと大葉はエプリとセプトの方に向き直った。二人もその視線に気づき、それぞれ大葉と視線を合わせる。

 

「つまりお二人共……センパイのことが好きなんっすね?」

「…………はぁっ!?」

 

 大葉は真面目な顔でそんなことを言ってのけた。何言っちゃってくれちゃってんのこの人っ!? エプリはフードをギュッと被り直し、口元だけ見えるようにする。セプトは……特に反応がないな。

 

「…………意味がよく分からないのだけど、何故そんな風に思ったの?」

「だってそうじゃないっすか? さっきのセンパイの話では微妙に濁してましたけど、牢獄でセンパイが戦った内の一人って多分エプリさんっすよね? 最初は敵だった相手と突然二人でダンジョンに跳ばされて、そこで一時的な共闘。そして外に出た後もセンパイが助けに入ったり、それフラグバッチリ立ってるじゃないっすか!! もうムネアツっすよムネアツ」

 

 さっきから大葉のテンションがおかしい。……いや、俺が知らないだけでこれが素なのだろうか? だとしたら話すだけで疲れそうだ。

 

「……私はただの傭兵よ。雇われて付き合っているだけ」

「え~っ? そうっすか~? 話を聞く限り、ただの傭兵にしては親身にしすぎな気がするっすけどね。特にダンジョンを出た辺りから」

「…………雇われたからには最善を尽くすというだけよ。契約が終わるまではね」

「本当にそれだけっすかね~?」

 

 エプリは表情がうかがえないが、大葉はもう嬉しそうに口元に指を当て、ムフフとした顔でそんなことを言っている。お前はアレか? 人がちょっと仲良くしたりするとすぐに恋愛感情に結びつけようとする類か?

 

 それと、エプリの契約が終わるまでという言葉に少しだけ寂しいという気持ちが湧く。……そうだよな。エプリも家族のために金を稼がなきゃならないみたいだし、いずれは別れないといけないんだよな。そしてそれは、俺が指輪の解呪をして換金するまで。もうそんなに先の話ではないのだ。

 

 心の中でそんなことを考えていると、大葉は今度はセプトの方に話を切り出す。

 

「じゃあ次っすね。セプトちゃんはセンパイのこと好きっすよね?」

「うん。トキヒサは好き。私のご主人様」

 

 こうストレートに好きと言われるとなんか照れるな。う~む。子供に慕われる親の気持ちはこんな感じなのかね? ……あくまで保護者(仮)のつもりだけど。あと何故か大葉がそのセプトの言葉に悶えている。

 

「ご主人様とか年下の子が言うとなんかグッとくるものがあるっすね。ある意味背徳的っていうか。……ちなみにその好きはライクの方っすかね? それともラアァヴの方っすかね?」

「……?」

 

 大葉がやけに巻き舌でそんなことを言っているが、セプトは意味がよく分かっていないようだ。キョトンとした顔をしている。といっても傍から見たらいつもと同じ無表情なので分かりにくいが。

 

「むぅ。まだセプトちゃんにはちょ~っと早かったっすかね。いやあセンパイモッテモテじゃないっすか!!」

「モッテモテって言ってもな。あくまでエプリは護衛として色々気を遣ってくれるようだし、セプトに至っては俺が今の主人だからだぞ」

 

 まあまったく好意を持たれていないとは言わないが。そうだな……仲間として好きぐらいはあるかな? なんだかんだ一緒に過ごしてきたからそれくらいはあると思いたい。やっぱりラブというよりライクの関係だな。うん。

 

「まあ、そういう事にしておくっすよ! やっぱりラブ話はこっちの世界でも良いもんっすね~」

「俺は大葉のそのテンションが疲れるよまったく。大葉って元の世界でもそんな感じだったのか?」

「いやいやまさか。あたしだっていつもは初対面の人相手にここまでノリノリで話したりはしませんっす。ただ……久しぶりに同郷の人に会えたからテンションが良い感じになっちゃってるだけっす」

「いつもこんな感じじゃなくてホッとしたよ」

 

 

 

 

 それからまたしばらく、俺達はたわいのない雑談を交わしていった。途中口が寂しいという事で、大葉がなんとポテトチップス(うすしお味)を取り出した時は驚いたな。

 

 俺達の分も分けてもらい、久々にポテチの懐かしい食感と塩味を堪能する。……そのうちブ〇ックサンダーも出してもらいたいな。

 

「それにしてもこの『どこでもショッピング』って便利な能力だよな。これがあれば食料とかに困ることもなさそうだし、エプリやジューネなんかとても欲しがりそうな能力だ」

「……そうね。食料が常時手に入るのは良い能力ね」

「どれも、おいしい」

 

 エプリは素直にそう頷く。毎回よく食うからな。食料問題は切実なのだ。ジューネも商人としては喉から手が出るほど欲しい能力だろう。だが、大葉は困った顔で笑いながら首を横に振る。

 

「実際はそこまで凄い能力でもないっすよ。ショッピングだからあくまで元手が無いと買えないし、買える量や種類にも制限があるっす。()()()()()()()()()()()()()()()()()品じゃないとタブレットに表示されないみたいっすからね。こんなことになるんなら護身用グッズの一つでも買っとけばよかったっすよ」

「催涙スプレーとかスタンガンとかか? 確かにあった方が便利かもしれないな」

 

 なにぶん物騒な世界だからな。外を歩けばモンスターの襲撃も有り得る。街中でも場合によっては争いになる場所だ。

 

 俺は幸い心強い護衛がついていてくれるから安心だけど、一人だったら護身用グッズの一つでも欲しくなるかもしれない。……モンスター相手に効くかどうかは別としてだけどな。

 

「それに……多分もうすぐ元の世界の品を買うことも出来なくなるっすからね。こっちの世界の物は買えると思うっすけども」

「どういうことだ?」

「どうやら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいなんすよ。だから元の世界の物を買おうとしたら元の世界の通貨が必要になるし、こっちの世界の物を買おうとしたらこっちの世界の通貨が必要になるっす。……持ってきた財布に入ってた分はもうそんなに残ってないっすからね」

 

 大葉はジャージのポケットから財布を引っ張り出して振って見せる。財布は明らかに軽そうだ。お札らしきものも千円札らしきものが一枚あるっきり。一言でいうと……金欠だ。

 

「ほとんどからっけつじゃないかっ!? ……そんな状態で俺達に分けてくれたのか?」

「それだけ嬉しかったんすよ。自分が一人じゃないって分かったから。そういう時にこそお金は奮発するもんっす。それにこちらの世界の金も少しは稼いでますから、食うだけなら何とかなるっすよ」

 

 俺の言葉に大葉はアハハと笑ってそう返す。自身の生命線である日本円を、俺達をもてなすために使って一切の後悔もなし。俺の目の前にいる少女はつまりはそういうことが出来る人だ。

 

 間違いない。大葉は良い奴だ。

 

「それにしても、ついつい話し込んじゃいましたっすね」

「おっと。もうこんな時間か」

 

 気がつけばもうすぐ午後五時。なんだかんだ日も少しずつ傾き、入口の布の外から見える景色もやや薄暗くなってきている。

 

「そう言えばセンパイ。どうしてここまで訪ねてきたっすか? 偶然って訳でもないっすよね」

「ああ。うん。ついつい話が弾んで本題を忘れてたな。俺がここに来るきっかけになったのは……これなんだ」

 

 俺は荷物からスマホ(ビンターから買い取った物)を取り出して大葉に見せる。

 

「これは……なるほど。この前売り払ったあたしのスマホっすね」

「俺は今物の買取をして金を稼いでいるんだけど、これが持ち込まれた時はビックリしたな。慌ててこれの出どころを聞いて、なんとかここまで辿り着いたんだ」

「そうだったんすか。……これ明かりとか時計とかに使ってたんすけど、ついにバッテリーが切れちゃって仕方ないから売りに出したんっす」

 

 やっぱりか。一応点くかどうか試してみて、バッテリーが切れているからそんなところだろうとは思ったけどな。

 

「だからって三十デンはないだろう。通話は出来なくたって明かりとかカメラ機能はあるんだから、その点で売り出せばもっと高値で売れただろうに」

「それはあたしも考えたっすけど、そもそもそんな高値で売れる伝手が無かったんすよ。それに上手く高値で売れたとしても、どのみち充電が出来ないっすからね。あとでクレームが来ること間違いなしっす。だから仕方なく安値で売るしかなかったんすよ」

 

 高値で売ってそのままとんずらするという考えはなかったらしい。まあ俺でもその手は使わないが。相手によっては追いかけてくる可能性があるからな。騙して売るのは互いのためにならないのだ。

 

「と言ってもこのスマホのおかげで近くにいることが分かったんだけどな。俺も他の参加者とかには興味があったし、会ってみようと思ったんだ」

「そう考えるとスマホを安値で売ってよかったとも言えるっすね。ツイてたっす!」

「そうだな。正直持ち主が大葉で良かったよ。おっかない相手だったらどうしようかと思ってた」

 

 同年代で話も合うし、どうみても悪人ではない。少し話のテンションによっては疲れるかもしれないが、それくらいは大なり小なり他の人と一緒に居ればあることだ。…………誘ってみるか。

 

「なあ大葉。もし……もし良かったらなんだけど、一緒に行かないか?」

 

 俺は意を決して大葉にそう告げる。これは、イザスタさんやエプリの時と同じように、これからの流れを大きく左右する選択肢。

 

 だけどこれまでと違うのは、()()()()()()()()()()()()

 




 実際大葉の加護は元手さえあれば非常に応用が利きます。その元手が問題なんですけどね。

これからの話で、読者の皆様が重視して欲しい事柄は?

  • 金稼ぎ
  • バトル
  • 人間関係
  • 冒険
  • ゲーム
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