「お~う。待たせたのう」
戻ってきたバムズさんは、背負っているパンパンに膨れた袋をよっこらせと床に置く。……気のせいか一瞬床が揺れた気がしたぞ。いったいどれだけ入ってるんだ?
「結構量がありますね。これで全部ですか?」
「いや。実は一度で運びきれなくてのう。スマンが先にこれだけ頼めるか? その間に次の物を用意するわい」
「他にもですか……分かりました。では先にこれだけ査定しておきますね。中身は外に広げても良いですか?」
ただでさえ多いのにまだ有るという事で少し及び腰になるも、多ければ多いほど儲かると考えて腹をくくる。調べやすいように中身を出しても良いかと訊ねると、バムズさんはおうと頷いて再び次の品を用意しに奥へ戻っていった。
「さて、始めるとするか。……しっかし量が多いな」
袋の口を開けると有るわ有るわ。やはり武器屋という事で、古びたり壊れかけている武器や防具がどっさり。日用品と思われる品もあったけれど、一番多そうなのはやはり武器防具系統だ。
俺は早速貯金箱を取り出し、一つずつ査定を開始する。ただ、これは時間が掛かりそうだな。
「……かなりの量ね」
「トキヒサ。手伝う?」
「大丈夫。俺一人で…………いや、やはり手伝ってもらおうかな」
俺一人で良いと返そうとしたが、セプトの場合逆に断った方が気を遣わせることになるかなと思い直す。エプリはいつも通り我関せずといった具合。まあ他の資源回収の時も基本そうだしな。
時折手伝ってくれたりもするけど、今回はアシュさんもいないし護衛対象が増えたという事で護衛の方に集中しているみたいだ。……増えたといえば丁度良い手伝いがもう一人いたな。
「大葉! そこで素振りしてないでちょっと来てくれ」
「……? どうしたっすかセンパイ?」
今度は特売品コーナーに乱雑に置かれていた武器を振り回していた大葉が、何事かと駆け寄ってくる。よ~しよし来たな。これまで奢った分たっぷり働いてもらうぜ!
「仕事だよ仕事。これから俺が査定した奴を仕分けてほしいんだ。……ところでこっちの文字って分かるか?」
「仕事? ああなるほど! 途中話してた資源回収って奴っすね。それは良いっすけど、こっちの文字はチンプンカンプンっすよ。話すだけなら不自由しないんすけどね」
「そこは俺と同じか。……分かった。じゃあ大葉は俺が査定しやすいようにドンドン袋から出して、終わったらそこに敷いた布の上に置いてくれ。慎重に扱ってくれよ」
「了解っす!」
「セプトは俺が言った査定の内容をメモしてくれ。出来るか?」
「うん。任せて」
セプトはこくりと頷いた。無表情ながらもなんとなくやる気に満ちているようにも見える。勉強も上手くいってるようだし良い傾向だ。念の為、エプリにある程度書き終えたらメモを確認してもらうことにする。そのくらいなら護衛しながらでも何とかなるだろう。
こうして皆の協力の中査定を始め、予想よりも早い時間で査定を終わらせることに成功する。やはり人手があると違うな。
「……よし。これで大体終わったかな」
「そうみたいっすね。それにしてもボロい武器とかが結構多かったっすね。武器屋って言うくらいだから、全部素材とかにしちゃってゴミは出ないかもって思ってたんすけど……違うんすかね?」
「そうじゃのう。そこが頭の痛いところだわい」
大葉がつい漏らした疑問に、また袋一杯に何かを詰めて持ってきたバムズさんがどこか難しい顔をして答えた。
「そこの武器なんかは、ここで武器を買った冒険者なんかが代わりに置いていったもんじゃ。この店では武器の下取りもやっておってな。じゃが……手入れがなっとらんものが多すぎての。出来得る限り修理したり素材ごとにばらして使えるもんは使うんじゃが、素材としても質が悪くなりすぎちょるもんまではどうにもならんのよ」
確かに。査定した時もひどい有様だったもんな。どれもこれも状態粗悪の品ばかり。ダンジョンでスケルトンが持っていた武器より安いものまであったぐらいだ。逆によくこんなのを下取りで出したなと思ったよ。それに素材としても使えないって……どんな使い方をしたんだか。
「そうだったんすか。……その、すみませんっす。何というか想像だけでさっきあんな事言っちゃって」
「なあに気にするでない。分かってくれたら良いんじゃ。それと、なるべく道具は大事に扱う事じゃの。さっきみたいな雑な取り回しじゃあすぐに痛んじまうわい」
「うっ……ゴメンナサイっす」
どうやらさっき勝手に持って振り回していたのを見ていたらしい。言い回しからすると試し切りがダメというよりも上手く使えていなかったことがダメなようだ。それもあってすっかり大葉がしおらしくなってしまった。
「バムズさん。ひとまずさっきの分の査定は終わりましたよ。これが簡単なリストになります。大まかにですが個別に値段が書いてありますから確認をお願いします」
「確認じゃな? …………こりゃ結構良い額じゃ。これだけ貰えるなら大いに助かるわい! それと、今度はこっちも頼みたいんじゃが」
バムズさんはメモの値段を見て相好を崩す。値段はお気に召してもらえたようで何よりだ。それと入れ替わりにバムズさんにまた別の袋を渡され……うっ!? 重っ!! 中に何入ってんだこれ!?
新たに渡された袋の中を覗き込むと、こちらには様々な金属片、それに何かの生物のウロコや皮といった、武器や防具というより純粋に素材そのものが詰め込まれていた。
「これも…………全部ですか?」
「ああ。スマンがよろしく頼むわい」
内容に少し違和感があるものの、売ってくれる品が多いのは良いことだ。俺達は早速また査定を開始した。
「へぇ~。バムズさんは鍛冶屋もやってるんですか!」
「そうじゃよ。この店の商品は大半がワシが造った自慢の作品じゃ!」
査定しながらもちょいちょい世間話をするくらいは慣れたもの。人によっては些か不真面目と取られるかもしれないけど、こういう所から得た情報が場合によっては儲け話に繋がるというのはジューネの言だ。幸いバムズさんもこういった話題は好きなようで、さっきから話が弾んでいる。
「……見たところ、壁にかかっている品はどれも一点物。それも良い素材を良い職人が使って造られた一級品ね。状態も良いし……これならこの値段も納得だわ」
「ふふん! お前さん分かっとるな! 素材だけでも職人だけでも良い品にはなり得んのじゃ。さらに言えば良い使い手も必要じゃな。……じゃというのに、最近はめっきりそういう客は少なくなった。装備だけに頼って自らを鍛えるのを怠り、あまつさえ肝心の装備の手入れすらまともに出来ない輩ばかりじゃ。実に嘆かわしい」
エプリがここまで褒めるのは珍しい。それだけの品ばかりということか。エプリの言葉に少し気を良くするも、今度は少し最近の客層について愚痴りだすバムズさん。色々と溜まっていたらしく、次から次へとポンポン愚痴が飛び出してくる。まあお客さんだしこういうのを聞くのも仕事の内かね。
「じゃあ壁にかかったもの以外の……この棚の奴とかこっちの特売品の奴もバムズさんの作品っすかね? それにしてはなんかちょっと雑っすけど」
「棚の所の一部と、特売品の物はワシの作品ではない。商人ギルドなんかを通して、職人見習いが自身の作品をあちこちの店に卸して生活の足しにするんじゃよ。値段が安い代わりに出来栄えはピンキリ。……まあ初心者なんかには丁度良いかもしれんがな」
バムズさんは微妙な顔をしながらそう説明してくれる。自分の作品でない物を売るのはあまりしたくないけど、ギルドのしがらみかなんかで断れないとかそんな所かな?
そう言えば特売品のコーナーはざっとしか見ていなかった。初心者向けというのも俺向きで気に入ったし、査定が終わったら見てみるのも良いかもしれない。
「しかし、この査定の品は全体的に何か焦げたようなものが多いですね。……これだとちょっと値段が下がってしまいます」
「真っ黒」
セプトの言う通り、査定している品の大半がどこかしら焦げ付いている。しかもわりかし最近のもののようだ。ナマモノ的なウロコとか皮が焦げるのはまだ分かるのだが、熱に強そうな金属類まで影響が出るって相当だ。鍛冶の最中にアクシデントでもあったとかかね?
「やはりか。しかし下手に使う訳にもいかん。ここまで素材が痛んでは作品の出来も悪くなるからのう。その点お前さん達が来てくれて助かった。……いかに新素材の実験のためとは言え、これらの素材が完全に無駄にならなくてすんだわい」
「……新素材ですか?」
何か面白そうな話が出てきた。儲け話かな? 金は稼がないといけないし、こういう情報はちょこちょこ集めておいた方が良い。
「ああ。数日前持ち込まれた物でな。特性やら使い道やらを調べてくれと頼まれての。新素材とあらば職人としては黙っちゃおれん。渡された品を色々調査しておったんじゃが、どうやら特定の条件を満たすと周囲に燃え広がる厄介な性質があっての。実験のために用意していたこれらの素材が焼けてしまったという訳じゃ。いやあ迂闊じゃったわい」
「おっかない話っすね」
大葉が査定の品を運びながら言う。これだけの素材が一度に焼けてしまうなんて相当な損害だ。その新素材というのは大分物騒な物らしい。誰だそんな危険物を見つけたのは?
「名前は何て言ったかのう……そうじゃ! 確かアルミニウムとか言う素材じゃった。珍しく都市長が来て持ち込んだ時は驚いたもんじゃわい! ……おっと!? これは内緒にしておけという話じゃったな。スマンがこのことは内密に……どうしたんじゃ? 急に頭なんか下げて」
「いや。何と言うかその………………申し訳ございません」
俺が都市長さんに渡した奴だったよちっくしょう! バムズさんには悪いことしたな。査定額には色を付けておこう。そんなこんなで俺達はなんとか査定を終えたのだった。
地味にドレファス都市長と繋がりのあったバムズさんでした。
それと、今話でひとまずアンケートを打ち切りたいと思います。皆様の投票に感謝を!
これからの話で、読者の皆様が重視して欲しい事柄は?
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金稼ぎ
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バトル
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人間関係
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冒険
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ゲーム