異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百五十九話 鑑定からの転売は控えめに

 合計査定額を見せると、バムズさんは大分驚きながらも喜んでいた。何度も、この額に間違いは無いか? 本当にこんなに貰って良いのか? と訊かれたぐらいだ。……通常より少し色を付けてあるのでどうか何も言わず受け取ってほしい。ご迷惑代という事で。

 

 それにしても、このバムズさんが都市長さんがアルミニウムの調査を依頼したヒトだったとは。偶然とは恐ろしい。実際腕の方は間違いなく良さそうだし、先ほどうっかり話しそうになったことを除けば優秀な人物なのだろう。

 

 査定が終わったら、今度は純粋に客としてセプトと一緒に店内を見て回る。エプリなんかは普段からすると珍しく、バムズさんと熱心に装備について話していた。仕事上使う物に関しては妥協を許さない……プロフェッショナルとはこういうものよって態度で示しているな。うん。

 

「セプトは何か欲しい物は有ったかい?」

「大丈夫。私、あんまり武器、使わないから」

 

 セプトはいつものようにポツリポツリと答える。確かにセプトは極端な魔法使い型。直接殴り合うとかそういうイメージは湧かない。かといって他の人が買い物してるのにセプトだけ何もないというのも寂しい気がする。

 

「そっか。じゃあ……これなんかどうだ?」

 

 俺は咄嗟に商品棚に置かれていた小さな緑色のブローチを手に取った。武器屋にしてはやけに可愛らしい品だが、他にもわずかばかり似たようなものが置かれている。これも商人ギルドから卸されたものかもしれない。値段の方も五十デンとリーズナブルだ。

 

 ……しかしこのブローチどこかで見た覚えがあるような無いような。

 

「大丈夫。私、欲しくないから」

「それにしては一瞬目がそっちに行った気がしたけどなぁ。……じゃあこうしよう。俺が個人的に気に入ったので買うから、セプトが持っていてくれ。あと持っているだけじゃ寂しいから、時々付けてくれればなお良しだ」

 

 セプトはまだ断ろうとしていたが、俺が半ば無理を言って渡すと諦めたように受け取った。

 

 相手の都合を考えず勝手にプレゼントするのはあまり褒められたことじゃない。これはどこまで言っても俺の自己満足だ。だけど、ずっと奴隷だからと言って俺についてきてくれる相手に何か返せるものがあれば良いと、そんなことを考えてしまったんだ。

 

 まあ後で会計の時にまた渡してもらうけどな。

 

 

 

 

「センパ~イ。ちょっとちょっと! 来てくださいっす!」

「どうした大葉?」

 

 何やら特売品の品の前で大葉が呼んでいる。なんだなんだと駆けつけると、大葉はムフフと何やら悪そうな顔をしていた。この短い時間でも何か企んでるなって分かるくらいに分かりやすいぞ大葉。

 

「センパイ。あたし良いこと考えたっす! この非売品の品はバムズさんの作じゃないっすけど、それぞれ別の人が作ったんなら一つぐらい掘り出し物があるかもっすよ! ここは一つセンパイの査定パワーで掘り出し物を見つけてガッポガッポっすよ!」

 

 査定パワーって……だけどまあ掘り出し物を見つけるということでは確かに使えなくもない。実際の値段と査定の額は場合によって一致しないのは知っての通りだ。単純に価格より高い査定額を出したものを買えばそれだけで儲けだもんな。ただ、

 

「言いたいことは分かるよ。こういう所にこそ掘り出し物が埋もれているのは王道だもんな。某海賊的なアレや使い魔的なアレだって何でもない武器屋の片隅に良い武器が眠っていたしな。だけど……それはなんかダメじゃないか?」

 

 考えてみよう。俺がここの物を査定したとする。それをバムズさんの目の前で堂々とやるっていうのはものすごく気がひける。日本で例えるのなら、古本屋とかでスマホで買取価格を探りながら買うようなもんである。場所にもよるけどマナー違反だ。

 

「バムズさんがOK出すとかならまだしも、そうじゃなきゃ売り物を勝手に査定するなんて出来ないよ」

「それもそうっすね。……じゃあちょっと聞いてくるっす!」

「えっ!? ちょ、ちょっと待った」

 

 しかし止める間もなく、大葉はバムズさんに聞きに行く。まさかいきなり聞きに行くとは予想外だ。エプリとの話を中断されたので気を悪くするかと思いきや、意外にもわっはっはと笑っている。大葉は二、三軽く話をすると、すぐにこちらに戻ってきた。

 

「店内での鑑定系のスキル、加護の使用は問題ないらしいっすよ!」

「別段鑑定されて困るようなもんは置いておらんからな。どれも品質はワシが保証するわい。……ただそこの特売品コーナーのもんはワシの作品じゃないからのう。出来が良いのも悪いのも混じっておるからそこは目利きの腕次第という所かの。その点をスキルなり加護なりで補うというのは仕方のないことじゃわい」

「……ありがとうございます」

 

 バムズさんは良いと言っているが、一応の筋としてきちんと一礼をする。いささか個人的にはどうかと思うが、折角の儲けるチャンスでもある。ご厚意に甘えさせてもらおう。

 

「じゃあやるとするか。言い出しっぺの大葉はしっかり手伝えよ!」

「モチっす! ……ところで、これで儲かった分はあたしの取り分になったりしないっすか?」

「きちんと儲かって、その分だけちゃんと働いたらな。セプトも頼むよ」

「うん」

 

 ある意味これが正しい『万物換金』の金の儲け方なのかもしれないが、ちょっと悩みながらも俺達は査定を開始する。

 

 途中からエプリも掘り出し物を探しだしたのは驚いた。護衛は良いのかという話だが、先ほどバムズさんと話していたのはどうやらこの店の警備についてもだったらしい。自分がずっと気を張っていなくても何とかなるレベルだと判断したという。

 

 そして結論から言うと、少しだけ儲けたといった所だ。特売品コーナーの品は実際の値段とほぼ同じ、もしくは少しだけ安いものが大半。それでも数個値段よりも高く売れそうな品が見つかったので、さっきまで皆で見て回った分とまとめて購入することに。

 

 ちなみに証明書がない大葉の分は俺が代わりに買うことになった。ここは奢りじゃないからな! その内返してもらうから憶えてろよ!

 

 バムズさんはさっきの不用品の査定額と合わせてホクホクした顔をしていたが、こちらとしては内心複雑。買った品は普通に使う物もあるが、いくつかはそのまま転売する予定だからだ。他のは出来るだけ大事に使うので許してください。

 

 

 

 

「う~~ん! 今日は良く働いたっす!」

 

 時刻はもうすぐ午後五時。あらかた今日の食べ歩き(資源回収)も終わり、大葉はグッと伸びをしながら言う。

 

「その分人の金でゴチになりまくったけどな」

「それを言わないでくださいよセンパイ! それを言ったらエプリさんなんかあたしの倍……いや三倍は食べてますって。不公平っすよ!」

「……私の食事代は基本トキヒサ持ちの契約だから。正当な権利を行使しているだけよ。……何か問題でも?」

 

 素知らぬ顔をするエプリに俺は苦笑して返す。大葉よ……誰かと契約する時は食費なんかの項目もしっかり吟味した方が良いぞ。いやホントに。

 

「それにしても……ありがとうございますセンパイ。多分今日はあたしがこの世界に来てから一番良い日だったと思うっす」

「そっか。楽しんでもらえたら食べ歩きに誘ったかいがあるってもんだ」

 

 どこか神妙な態度で礼を言う大葉に、俺は敢えて茶化すような態度で返した。今日まで大葉がどう過ごしてきたかは以前聞かせてもらったからな。その大葉が一番良い日だと言えるのなら、それは良いことなのだと思う。

 

「センパイから日本円で分け前も貰っちゃったし、今日は奮発してスウィーツなパーリーでもしちゃうっすか? 我慢してた甘味とかが火を噴いちゃうっすよ!」

「俺が言うのもなんだけど、あんまり無駄遣いしすぎるなよ。その調子じゃ五千円なんてすぐ無くなっちゃうぞ」

「無駄遣い、ダメだよ」

「了解了解! 分かってるっすよ!」

 

 この五千円はさっきの特売品の儲けの一部を大葉に分配したものだ。元々言われなくとも多少の元手を渡して元の世界の品を出してもらう算段だったので、さっきの大葉の請求はちょうど良いタイミングだったと言える。

 

 あとどうにもセプトが大葉に注意する様子が微笑ましくて仕方がない。会ってまだ間もないけど、関係は意外に上手くいっているようで何よりだ。その点で食べ歩きは正解だったみたいだな。

 

「……そう言えば、ジューネは結局来なかったわね」

「そうだな。珍しいこともあるもんだ」

 

 この時間になってもジューネは追いついてこなかった。商人ギルドに呼ばれた用事が余程長引いたのだろうか? 出来ればここで大葉と顔合わせといきたかったのだが仕方がない。

 

「じゃあそろそろ都市長さんの所に戻るか。買った物の整理もあるし、明日に向けて用意もあるからな。……大葉も来るか? 会わせたい人もいるし、証明書の発行も上手くすれば頼めるかもよ?」

「それは助かるっす! ぜひ伺いますっす! ……ついでに夕食もご馳走になれればもう言う事ないんすが?」

「ちゃっかりしてるなまったく。まあ夕食くらいなら頼めば何とかなるかもな。まだ時間もあるし」

「そう来なくちゃっす! タダ飯は美味しいっすからね!」

 

 そう言ってウキウキと足取り軽い大葉を加え、俺達は都市長さんの屋敷に一度戻ることにした。結局ジューネは合流しなかったので雲羊もなく、当然徒歩である。

 

 

 

 

「…………うん!?」

 

 歩き出そうとした時、エプリが何かに気がついたように足を止めて裏路地に繋がる道を見た。

 

「どうしたエプリ? 何か気になることでもあったか?」

「…………いえ。何でもないわ。一瞬都市長の息子がいた気がしたのだけど、気のせいだったかもしれないわね」

「ヒースが?」

 

 もしやまた講義をさぼってぶらついているのだろうか? しかしいたような気がするだけで特に姿は見えない。

 

「……どちらにしても一度戻ろうか。見間違いならそれで良いし、さぼっているのだとしても夕食頃に戻ればそれはそれで問題ないしな」

「…………そうね」

 

 俺達はたいして気にも留めずにその場を後にした。

 

 それなりに儲かり、これからの準備も着々と進んでいる。今日はとても良い一日だった。

 

 

 

 

 そう。()()()()()





 流石に簡単には掘り出し物は出てきません。そもそも最低限最初にベテランであるバムズさんやギルドの職員が見ているわけですからね。良い品だったらそこで見抜かれて大半が普通に飾られます。
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