異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百六十四話 能力のおさらいと試食会

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 こうして俺と大葉が異世界出身であるという事を受け入れられたのだが、早速と言うか予想通りと言うか、ジューネは大葉の能力について詳しく聞きたがった。

 

「さあさあ聞かせてくださいよ! 異世界の物を取り寄せる能力なんてもう商人からしたら垂涎ものですからね」

「ジューネちゃんが期待しているトコ悪いっすけど、あたしの『どこでもショッピング』はそこまで使い勝手が良くないってことを先に言っておくっすよ。何でもかんでも出せる能力じゃないっす」

「前に言ってた制限って奴だな? それも含めて一から能力についておさらいしてもらえるか?」

 

 大葉と初めて会った時にざっと聞かせてもらったけど、詳しくは聞けなかったからな。良い機会だからじっくり聞かせてもらおう。

 

「了解っすセンパイ! そんじゃ基礎的なことから説明してくっすよ! セプトちゃんやエプリさんもバッチシついてきてくださいっすね!」

「大丈夫。任せて」

「……努力はするわ。内容よりも口ぶりで疲れそうだけど」

 

 セプトはさっきから引き続き行儀よく座り、エプリも壁に背を預けたままぶっきらぼうに返す。どうでも良いけどいつも壁とかに背を預けてるな。ダンジョンの中でもそうだったし、部屋の中でもあまり普通に座らずにそういう姿勢を取っている。癖なのかね?

 

「じゃあいくっすよ! まず能力を使う時は、このタブレットを使うっす」

 

 そう言いながら大葉は俺の貯金箱と同じように、どこからともなくタブレット端末を取り出して見えやすいようにテーブルに置く。

 

「使う時の合言葉は『ショッピングスタート』。まず最初にカテゴリ、つまり大まかな買いたいものの種類を言うっすよ。例えば……決めた! カテゴリはお菓子っす」

 

 大葉のキーワードで起動すると共に、画面にスナック菓子やちょっとした和菓子、簡単なケーキなど様々な食べ物が表示される。……なんか微妙に種類が偏っている気がするな。大半はちょっとしたコンビニで買えるような菓子ばっかりだ。

 

「なるほど。こうして品物を絵で実際に見ることが出来る訳ですか! それにしても実に鮮明な絵ですね」

「まあ画質は結構良くて助かってるっす。次に欲しい品を選んで、このペンでタッチするとマークが付くっす。それと一緒に隅に金額が表示されるっすよ! 品物を選んだら『会計』っす」

 

 そうしてポンポンと画面をタッチし、終わりのキーワードを告げる大葉。するとタブレットから光が放たれ、光が収まった後にはテーブルの上にいくつかの菓子の小袋が置かれていた。

 

 ただあまり目にしたことのないものが多い。大葉はメジャーな品よりマイナーな品を好むのかもしれない。……とは言えブ〇ックサンダーはしっかり()で出されていたが。一箱二十個入りの業務用だ。ちょっと分けてもらおう。

 

「とまあこんな感じっす。やっぱ売り込むならまず試食が先っすよね! さあさあ皆様遠慮せずにどうぞどうぞっす! と言っても夕食食べたばっかでまだお腹が空いてないかもしれないっすから、どれも少しずつ控えめに用意したっす」

 

 と言って大葉は満面の笑みを浮かべる。確かに袋一つ一つは手のひらサイズだから、一人一口か二口でなくなるぐらいか。多くの種類を味わうんならこれくらいで丁度良いか。ちなみに俺はまだまだ食える。ブ〇ックサンダーを見て食欲が湧いたぐらいだ。

 

 こうして商談相手にアピールすべく、唐突に大葉プレゼンツの商品試食会が開催されたのだった。

 

 

 

 

「え~っとその、これはどうやって食べるのですか? というよりこれは菓子……なんですか? 私のイメージする菓子とは大分違うというか」

「ああなるほど。ジューネはこういう奴は食べたことなかったな。ほらっ! まずこうやって袋を破くんだ」

 

 ジューネに見えるように袋のギザギザの部分を破り、俺は中のブ〇ックサンダーを大口を開けて放り込む。……いかん! 久々だったもんで一口で食ってしまった。 しかしコレだよコレ! 果物とかも悪くないけど、ブ〇ックサンダーはやはり美味いっ! ついでにジューネの分も袋を開ける。

 

「トキヒサ。食べて良い?」

「ああ。大葉もどうぞって言ってるし、俺の許可なんて要らないからセプトも貰っておきな。エプリなんか誰よりも早く手を伸ばしてたぞ」

 

 あの言われなきゃ食べようとしなかったセプトが、()()()()食べて良いかと聞くだけで大きな進歩だ。

 

 それと俺は見たぞ。どうぞと言われた瞬間、目にも止まらぬ速さで自分の分を何個か確保して食べ始めたエプリの姿を。こっちは少しはセプトみたいに遠慮してほしい。食うなとは言わないが。

 

「……これは毒見。護衛として必要なことだからしたまでのことよ」

「毒なんか入ってないっすよ~! いやまあ美味しいものは女の子にとって甘い毒なんて言葉はあるっすけどね。太っちゃうし。だけどあたしは食べた分動くからへっちゃらっすよ!」

 

 エプリは素知らぬ顔で口をモグモグさせながらそんなことを言い、大葉も冗談っぽく反応した。そしてセプトが菓子を口いっぱいに頬張る愛らしい姿を見て、ジューネも意を決したのかブ〇ックサンダーを一口かじる。

 

「…………っ!?」

 

 その途端目がいっぱいに見開かれ、今度はもう一口大きくかじると目を閉じてゆっくりと味わうように口の中で転がす。ふっふっふ。その反応。お気に召したみたいだな。流石ブ〇ックサンダー! 異世界でもこの美味さは健在だ。

 

「驚きました。こんな菓子は食べたことがありません。砂糖が大量に練り込まれているようですが、けっして甘味だけでごり押しするのではなくどこか香ばしさや繊細さを感じさせます。それに中に何か別の穀物のような物を加えることで、ポリポリとした食感もさりげなく追加されていますね。飽きさせない味という奴です」

 

 食べ終わると突如としてどこぞの審査員よろしく解説をし出したジューネ。だが分かるよその気持ち。エプリ達が何だかぽか~んとした顔で見てるけど分かるとも。

 

「……これほどの物となるとかなり高級な菓子とお見受けしました。材料費に職人の腕も考えると、私の見立てでは一つ……そうですね。八十デンといった所でしょうか? 如何ですか?」

「もうちょっと安いっすよ。手数料抜きで六十四デンっす。種類によっては八十デンくらいの物もあるっすが。ゴールドの物とか」

 

 ブラックサンダーが一つ三十二円として、一箱二十袋だから六百四十円。計算は間違ってないな。手数料というのがどれくらいかは知らないけど、大葉の口ぶりからするとそこまで大した額という事はなさそうだ。

 

「なんと! これが六十四デンなら十分安いですよ! それに他の種類まであるとは。是非ともうちの商品として扱わせてほしいほどです」

「扱うってブ〇ックサンダーをっすか? 別に良いっすけど。むしろ売れるかどうか見てもらうために試食をお願いしたんだから、売れるんなら大助かりっす!」

「おぉ! それはありがとうございます!」

 

 中々いい感じだ。これを取り扱おうとするとはやはり目の付け所が良いなジューネは。だけどあんまり渡しすぎると分けてもらえる分が減りそうで少し不安だ。

 

「……確かに美味しいわね」

 

 現に今もヒョイヒョイとエプリがパクついているし、セプトも無言でコクコクと頷きながら顔を少しほころばせている。……無表情な人形みたいだったセプトがここまで笑えるとは。お菓子はやはり良い物だ。

 

「……ちなみにこの箱には今の品がいかほど入っているのですか?」

「中身っすか? これは一箱二十個入りっすけど」

「二十個ですか。……とすると一箱千二百八十デンですね」

「…………へっ? 何がっすか?」

 

 気のせいか? 今とんでもない額が聞こえた気がしたんだけど。

 

「ですから、一つ六十四デンが二十個で千二百八十デン……ああなるほど。無論まずこちらで買い取る際にはそれに加えてお代を上乗せしますとも」

「いや、そうじゃなくってっすね。……これ一袋で六十四デンじゃなくて、()()で六十四デンなんすけど」

 

 その言葉にジューネが目を丸くしたのは言うまでもない。

 




 異世界ファンタジーあるあるですが、砂糖を練り込んだ菓子は大概高いです。

 なので一般的には、果物に味付けをした菓子などが普及したりします。
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