異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百六十九話 善意の対価はゴハンの奢りまで

「な、なんであのシスター三人組がここに?」

「そりゃああたしがさっきの照明弾で呼んだからっすよ。だけどセンパイも知り合いなら話が早いっす! 待ってたっすよ三人とも!」

 

 俺がつい素朴な疑問を洩らすと、大葉が耳ざとく聞きつけて説明し、そのまま三人娘の方に走っていく。大葉を見るなり三人が笑顔になったので、知り合いというのは間違いなさそうだ。

 

「それにしてもやけに早かったっすね。教会からだったらもう少し時間がかかるかと思ったっすけど?」

「丁度この近くを巡回中だったんですよ。もうそろそろ帰ろうかという時に、急に以前連絡用に渡した照明弾が打ち上がったから何事かと思いました」

「はい。驚き……ました」

「それで急いで来てみたら……何やら厄介なことになっているみたいだから声をかけたってわけ。まさかトッキー達と一緒に居るとは思ってなかったけどさ。はぁいトッキー! 元気?」

 

 そんなことを話しながら、シーメはこっちに向かって手を振ってきたのでこちらも振り返す。何が何やら良く分からない。

 

「まあ再会を喜ぶのは後にして……何故貴方がここに居るか伺ってもよろしいですか? レイノルズ氏」

「私は商人なのでね。客が居る限りどこにでも行くとも。……と言っても、今回はあくまで互いの友好のために協力を申し出ただけだがね」

「信じられない……です」

「これまでやったことがやったことだかんね。私もちょ~っと信じられないかも」

「おお。何とも嘆かわしい。こんな一介のしがない商人を目の敵にするなどとは」

 

 アーメが突如警戒の色をあらわにしてレイノルズの方を見る。レイノルズが何でもないように答えると、シーメとソーメも疑わしそうな顔をした。俺は戻ってきた大葉にちょっと気になったことを訊ねてみる。

 

「え~っと。いまいち俺には立ち位置がよく分からないんだけど、アーメ達とレイノルズさんってもしかして仲悪いのか?」

「アーメ達は普段シスターの仕事とは別に、こうして町の見回りや治安維持の手伝いなんかもしてるっす。あの悪徳商人は衛兵の動けないギリギリのラインでアコギな商売をするんすけど、アーメ達は衛兵とは違うから時々ぶつかって邪魔されるんすよ! ちなみにあたしと初めて会ったのもそんな時っす!」

 

 それシスターの領分完全に超えてるよね。自警団みたいな感じか? ……考えてみれば、三人娘の所のエリゼ院長は都市長さんの古い知人なのだから、下手に手を出すと都市長さんとぶつかることになる。レイノルズからしたらやりにくいったらないだろうな。

 

 その後少し互いに世間話というか牽制をしあい、軽く息を吐いてアーネ達がこちらに近づいてくる。

 

「遅くなりましたがトキヒサさん。エプリさんにセプトちゃん。こんばんは。宜しければこれまでのいきさつを説明願えませんか? オオバさんに呼ばれて来たのですが、レイノルズ氏が絡んでいるとなると少々問題の気配がしますので」

 

 俺達はアーメ達にこれまでのことを大まかに説明した。

 

 人を探していること。ただ探す当てがなく人手も足りない所、大葉が人手なら当てがあると言って照明弾を使ったこと。そうしたら先にレイノルズが奴隷を引き連れて手を貸すと言ってきたことなどだ。

 

 一応探す相手が誰かまではまだ言っていない。横でさりげなくレイノルズが聞き耳を立てているみたいだしな。こういうのは正式に手を借りてから話した方が良い。

 

 

 

 

「なるほど。そういう事でしたら私も協力しましょう!」

「私も協力するよ! 他ならぬオオバの頼みだし、トッキー達も居るしね。シーメはどうする?」

「うん。私も……手伝います」

 

 三人は快く手伝ってくれるようだ。それを見てレイノルズは何故か少しだけ苦い顔をしている。これはどうしたことだろうか?

 

 ちなみにレイノルズの奴隷達は少し離れた所に待機している。近くに居たら話しづらいだろうというレイノルズの計らいだ。出来れば最初からそうして欲しかった。

 

「だけどタダでってぇことはないよねトッキー? まあヒト探しくらいなら……私達にゴハン奢ってくれるくらいはしてくれるんじゃないかなぁ?」

「私、お魚の料理が良い……です」

「もう二人共……すみませんトキヒサさん。全然お断りしてもらって構いませんから」

 

 シーメとソーメがそんなことを言うと、アーメはそれを抑えながら申し訳なさそうにこちらを見る。……なんか期待されてる気がするな。

 

「ああいや。ゴハン奢るくらいで良いんなら喜んで。何せこっちには多分一人でそれより食う人が居るから、もう数人増えたって今更って感じだし」

 

 それを聞いて今度はエプリがプイっと顔を逸らす。最近ますます食べる量に遠慮が無くなってきた気がするからな。地味に本来の護衛料に加えて食費が嵩んできている今日この頃だ。

 

「ありがとうございます。……さて、こうして私達が手伝うと宣言した以上、レイノルズ氏。貴方()()()協力するということではなくなりました。それでもなお()()()協力すると仰りますか?」

「無論だとも。先にもツグミ達に述べたが、友好な関係を築きたい相手が困っている所に手を差し伸べるのは当たり前のことだからな」

「……良いでしょう。そういう事にしておきます」

 

 レイノルズとアーネの視線が一瞬鋭く交差する。だがアーネはすぐに視線を外し、こちらに向かって小さくウインクをしてきた。何だろう今の言い回しは? どこか引っかかる。

 

「…………そう。そういう事」

「何か分かったのかエプリ?」

 

 今のやり取りを見て、どこか納得したようにエプリが頷く。

 

「……これは単純に貸し借りの分散よ。レイノルズ()()()手伝ったのなら、それがたとえ善意からであれこちらもそれだけ大きな借りとして扱わざるをえない。おそらく後で大きな貸しを一つ作れると踏んでいたんでしょうね。……だけどここでアーメ達も協力すると言ってきた。唯一の協力者という立場を失った以上、得られる貸しも少なくなる」

 

 借りが少ないのなら、精々ちょっとした頼みをそれぞれから聞くだけで良い。大きな頼みを一つ聞くよりはこっちの方が大分マシか。

 

 加えてアーメ達は対価に食事を奢ってもらうということを先に提示した。つまり人探しの貸しは精々そのくらいだとレイノルズに釘を刺した形な訳だ。これなら後々予想外の頼みをされることもない。

 

 どうやらアーメ達には腹いっぱい好きな物を奢ることになりそうだ。

 

 

 

 

「そんじゃ細かい交渉はお姉ちゃんに任すとして、私達はこっちでお話でもしよっか! オオバがトッキー達と知り合いなんて初めて知ったし、シーメはセプトちゃんと話がしたいよね」

「うん! セプトちゃん。私……また色々お話したい」

 

 教会で身体を診察してもらった時から仲良かったもんな。その言葉に、セプトはこちらを一瞬チラリと見る。この状況で俺から離れるのはマズイと思ったのかもしれない。

 

「こっちにはエプリもいるし大丈夫だから。ゆっくり話をしてきな」

「ありがと、トキヒサ。……行ってくるね」

「じゃああたしもちょっと近況報告がてら行ってくるっす。そっちの話が終わったら呼んでくださいっすセンパイ!」

 

 えっ!? 大葉も行くの? 大葉は両方に面識があるから出来れば一緒に話してほしかったんだけど……あいつめ俺に丸投げかい。

 

 そうしてひとまず大葉達は大葉の家に引っ込み、ここに残ったのは俺とエプリ、アーメ、レイノルズのみとなった。

 

「ふむ。では思わぬ乱入があったが、先ほどの続きといこうかトキヒサ君。私も商品を貸し出して君達のヒト探しに協力しよう。この申し入れを受けてくれるかね?」

「はい。よろしくお願いします」

 

 再びレイノルズが手を差し出してきたので、今度こそその手をしっかりと握る。順番的にアーメ達の方が先になってしまったけど、どのみち申し出は受ける気だったしな。

 

 まあ俺も用心だけはしておくつもりだけど、元々こういう裏の裏まで読むってのは“相棒”に任せっきりだったからな。何かミスったら誰でも良いからフォローよろしく。

 

「よろしい。ではトキヒサ君。早速だが、探しているヒトの情報を貰えるかな? なにぶん誰を探せば良いのか分からなくてね」

「そう言えばそのヒトの名前はまだ伺ってませんでしたね。これだけの大事となると、余程の人物とお見受けしますが」

「そうですね。ではお話します。実は探しているのは……都市長さんの息子のヒース・ライネルなんです」

 

 その名前を聞いて、二人の顔色が明らかに変わる。やはりヒースの名前もこの町ではかなり有名らしい。あいつ今ホントにどこに居るんだか?

 




 レイノルズ、およびシスター三人娘に協力を取り付けました。

 なんだかんだ時久自身も人脈が広がりつつあります。
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