異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第百七十一話 同調の加護

 結局組み分けとしては俺とセプト、大葉、シーメがラーメン屋へ向かい、エプリとソーメが雲羊を回収し、捜索をしながら一番近くの通りまで移動して後で合流する……という流れに落ち着いた。

 

 エプリは護衛として離れる訳にはいかないと反対したが、雲羊を操れるのがエプリしかいないという理由から渋々同意。そしてソーメが付き添う理由だが、

 

「“同調”の加護?」

「そっ! 私とお姉ちゃんとソーメが生まれつき持っていた加護。ざっくり言うと、()()()()()()()()()()()()()()

 

 組み分けをする直前、それなら私かソーメの加護が使えるからどっちか一緒に行った方が良いというシーメの言葉に従って別れた後、ラーメン屋に移動しながら細かい説明を受ける。

 

「繋がってるって……どういう事だ?」

「う~ん。なんて言えば良いかなぁ。離れていてもある程度互いのことが分かる……みたいな? 大体の居場所とか考えていることとか」

「それは凄いな! 三人限定のテレパシーみたいなものか?」

「てれぱしーってのは知んないけど、相手に伝われ~って強く念じると伝わるよ。相手の考えを勝手に読むのは無理だけど」

 

 詳しく聞いてみると、その範囲ときたらこの町をまるっとカバーできるくらいだという。

 

 その範囲内であれば普通に大まかな位置も分かるし連絡も取れる。相手がケガをしたり調子が悪くなっても何となく分かると言うから凄まじい。三つ子の間のみではあるが凄い加護だ。

 

「そう言えば前もそんなことがあったっすね。あの時は連絡用の道具を使ってるのかと思ってたっす!」

 

 大葉も何か納得したように頷く。……前にも使ってたなら信用できるな。

 

「っていう訳だから、連絡役なら任せといて!」

「ああ頼むよ。……そろそろ着くぞ」

 

 暗い夜道を歩く中、前に行ったラーメン屋が見えてくる。店から煙が伸び、明かりも見えることからどうやらまだ営業中のようだ。

 

「それにしてもこっちにもラーメン屋があったんすねぇ。……センパイ。ここで一つ食っていきましょうかっす?」

「そう言えば、今日は帰ってから夕食にするつもりだったからお腹空いたなぁ。さっきのうま〇棒は美味しかったけど結局少しだけだったし、食べてくんなら私も私も!」

「今はヒースを探すのが優先な。事態が収まったらまた改めてこよう」

 

 大葉とシーメが二人してお腹をさすりながら言うので微妙に緊張感が削がれるなまったく。さて、他に客が居たら申し訳ないが、少し話を聞かせてもらおうか。

 

 

 

 

 ラーメン屋に辿り着いた俺達は、丁度客が居ないのをこれ幸いとヒースの行方を尋ねた。だが、

 

「えっ!? とっくに帰った? 本当ですか?」

「……へい。今日もヒース様は、ふらりと店にやってきてラーメンを注文し、夕方少し前に帰られやした」

 

 あちゃ~やっぱりか。一番良い展開は、ここでヒースが夕飯代わりのラーメンを啜っているのをひっとらえるという流れだったんだが……流石にそうはいかないか。

 

 おやっさんは一人で机を拭いたり次の仕込みをしながら話してくれる。……ちなみにおやっさんっていうのは俺の勝手な呼び方だが、別に呼び方は何でも構わないと快く許してくれた。

 

「まあ考えてみれば、五時頃にエプリがそれらしい人を見てるわけだしな。今もここで食べているってのは無いか」

「しっかしどうしましょうっすか? 手がかり無くなっちゃいましたっす」

「そうだよね。となると後は院長先生に聞きに行ったお姉ちゃんからの連絡待ちかな? 今の所…………あ、ダメだ。まだ教会に着くまでもうチョイかかりそう」

 

 大葉が困ったように言い、シーメが軽く念じるように目を閉じてからそんな風に返す。さっそく同調の加護でアーメの位置を探ったらしい。

 

 セプトは何も言わないが、前髪から覗く瞳がどうしようかとこちらに語り掛けているように感じた。しかしあと手掛かりといっても何が。

 

 そうして皆手詰まりになったかと思いきや、

 

「…………あ、おじさん! ちょっと聞きたいんだけど、ヒース様が来る時間と帰る時間はいつも決まってた?」

「へい。来る時間は日によってまちまちでしたが、帰る時間はいつも大体夕方頃でした。ラーメンを食べた後は毎回腹がこなれるまで休んでいましたんで」

「なるほど…………次はっと…………じゃあこれまで何か休んでいる間に言っていたことや変わったことはなかった? 小さなことでも何でもいいの」

 

 急にシーメが軽く頭を指で押さえながら、時々ふむふむと応答する様に頷きつつおやっさんに訊ねる。……あれってもしかして誰かと連絡しながら話してるのか?

 

 おやっさんは少し考えこむと、何か気付いたような顔をする。

 

「何か……あぁ。そう言えば、いつも休みながら何か書き物をしてやした。客の相手のついでにチラッと見ただけなんで何とも言えやせんが、あれはおそらくこの町の地図でしたね」

「地図? 書き物ってことは印でも付けてたんですか?」

 

 大きな手掛かりに俺も話に食いつく。

 

「へい。いくつかの場所に丸が付いてたんですが、店に来る度に丸が塗りつぶされてやした。……それと今日は妙なことを言ってやしたな。『おそらく今日。有るとしたらどちらかだ』って。本当にポロッと洩らしたって感じだったんで、もしかしたら自分でも口に出したことに気づいてなかったかもしれやせんが」

「どちらかか…………分かった。ちゃんと聞くから…………おじさん。あとどこに丸が付いてたかは分かる?」

「流石にそこまではなんとも。あまり役に立てないで、申し訳ねぇ」

「とんでもない。おやっさんが謝る必要ないですって! 十分参考になりました」

 

 深々と頭を下げるおやっさんに、俺は慌てて頭を上げてもらう。おやっさんは頭を上げ、そのまま仕事に戻っていった。

 

「それであらかた聞いたけど、これからどうするトッキー?」

「ひとまずエプリ達と合流しようか。……それに、さっきの話も加護で伝えてるんだろ?」

「当然! それと質問の内容を考えたのはエプリね! それをソーメが中継してこっちに伝えてたって訳」

 

 やっぱりか。さっきの態度からそんな感じはしてたんだ。……だけど内容を考えたのはエプリか。向こうでも何か気付いたことがあったのかね?

 

 

 

 

「ちょっと待って下せえ」

 

 店を出ようとした時、後ろからおやっさんが何かを持って声をかけてきた。やっぱ何も頼まずに話を聞いただけってのはまずかったかな? だけど今は時間ないんだよなぁ。

 

「ああすいません。今は時間がないんで注文は出来ないんですが、次来た時に今日の分もまとめてたっぷり頼みますから」

「ああいや。そうじゃねえんです。……こちら、お土産にどうぞ」

 

 そう言って手渡されたのは、少し大きめの木製の器に蓋の付いたものだった。蓋を開けてみると、中には熱々の餃子のようなものが沢山入っていた。……ラーメンがあったからもう驚かないぞ。これもどうせビースタリア風なんだろ?

 

「おっ! 餃子っすか!? やっぱラーメンには付き物っすよね餃子!」

「ご存じでしたか。これはヒース様も好物で、毎回帰りに買って行かれやした。……器の方は返さなくても構いません。餃子も今回は無料ですんでそのままお持ち下せえ」

「ありがとうっす!」

 

 大葉が代表して器を受け取り、ホクホク顔で早速一つ摘まんでいる。熱々で口をハフハフさせているが、とても美味しそうだ。

 

「ありがとうございます。……でも何でまたお土産を?」

「……あっしには皆様の話はよく分かりやせん。ただ、ヒース様はうちの大事な常連さんです。力になれることがあるなら力になりてぇんでさ」

 

 最後に「うちの常連さんをよろしく頼んます」と言って、おやっさんは深々と頭を下げて俺達を見送ってくれた。詳しくは話していないのだが、話の流れからおやっさんもヒースのことを察したのだろう。

 

 屋敷に居る人達だけじゃない。こうしておやっさんみたいな関わった人も心配してくれている。それなのにいったいどこに行ったんだヒースは?

 

「早いとこ見つけないとな」

「……ムグムグ……そうっすね」

「……そうだよね……ムグムグ」

 

 俺達はエプリ達の待っているここから一番近い通りまで急いだ。あと大葉にシーメ。シリアスな雰囲気なのに餃子を頬張りながら言うのはやめような。セプトなんか悲しそうにそっちを見てるじゃないか。

 

 決して美味しそうだから自分も食べたいと思って見ているのではないと信じたい。

 

 

 

 

 そうしてエプリ達が雲羊と待機している通りに辿り着いたのだが、

 

「……遅かったわね。……それと餃子を私達にも渡しなさい」

 

 お前もかいエプリっ!! 合流してすぐコレだよまったく。それと()ってことはソーメも狙ってんのか!?

 

「ちょっとだけ……本当にちょっとだけ、お腹が空いてしまって。すみません」

 

 シーメと同じ顔だが、その内面を表すようにソーメはどこか遠慮がちな表情でそう呟く。これはセプトと同じタイプだな。いつもどこか我慢してしまう類だ。

 

 ……気付けば今まで服の中で大人しくしていたボジョも、袖の中から触手を出して催促している。

 

「……ああもう分かったよ。時間が無いからさっさと皆で食べてしまおう。セプトも遠慮せず食え! 俺も食う!」

「ありがと。トキヒサ」

 

 こうして熱々ジューシーで器にたんまり入っていた餃子は僅か数分で空っぽとなった。これはホントにラーメンと一緒に食べたかったな。

 

 器をどうしようか悩んだが、折角蓋もあるし持っていくかと他から見えないようにこっそり換金する。……値段は四デン。微妙。

 

「それで? エプリの方は何か分かったか? 話は聞いてたんだろ?」

「…………そうね。直接の居場所じゃないけど、私の中で大まかなヒースの足取りについては纏めれたわ。あとは……」

「…………エプリさん! アーメ姉が教会に着いたみたい。多分……今()()()()()()()()をエリゼ院長と話してます」

「……そう。じゃあ各自雲羊(クラウドシープ)に乗り込んで。……残りの話は移動しながらしましょう」

 

 エプリはそう言って、颯爽と雲羊に乗り込む。俺を含めそれぞれ乗り込み、モフモフの毛の中に沈んでいく。

 

「全員乗ったわね? ……出るわよ」

 

 エプリの合図とともに、雲羊は一度メエェと鳴いて走り出した。その動きには迷いがなく、的確に目的地を目指しているようだ。

 

「なあエプリ。そう言えば今どこに向かってるんだ? さっき大まかな足取りを纏めたって言ってたから何か目星でも付いたのか?」

「…………そうね。では着くまでの間、一つずつ話していきましょうか。……と言っても気になった点を自分なりに考えてみただけだから、必ずしも正しくはないかもしれないけどね」

 

 そう言って自身の考え……というより推測を話し始めたエプリの姿は、一瞬俺にはパイプや安楽椅子が似合う名探偵のように見えた。

 




 やっぱラーメンには餃子ですよね。

 名探偵エプリ爆誕! ……という訳ではありませんが、次回彼女なりの推理をお楽しみに!
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