異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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 流石にセプト視点も長くなってきたので途中までダイジェストです。


閑話 ある奴隷少女の追憶 その十

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 そうして私がトキヒサの奴隷になり、埋め込まれた魔石を取り除くためこのノービスに来てからも色々なことがあった。

 

 

 

『トキヒサ。出来た』

『おうっ! よく頑張ったな』

 

 着いたばかりでいきなり荷車の横転事故に巻き込まれた時も、倒れた荷車を運ぶのを手伝い終わったら、トキヒサはそう言って労いながら頭を撫でてくれた。この瞬間は気分がほっこりした。

 

 

 

『ゴッチから報告を受け、すでに検査の用意をしてある。先に医療施設に搬送されているバルガスも現在治療中だ。……安心しろ。凶魔化などさせるものか』

 

 ノービスの偉いヒトであるドレファス都市長に、息子ヒースに喝を入れる代わりに私の身体を診てくれるヒトに取り次いでもらった。どこかヒースとの関係に悩んでいそうなヒトだった。

 

 

 

『皆さん初めまして。私はエリゼ。この教会の院長をしているわ。……と言っても私以外にシスターが数人いるだけの小さな教会だけどね。フフッ』

 

 ドレファス都市長に教えてもらった場所で、実はラニーの叔母だというエリゼに私の身体を診てもらった。ラニーの言った通り、優しくて落ち着いたヒトだった。

 

 

 

『コホン。では改めまして。長女のアーメです』

『次女のシーメだよ』

『ソーメです……末っ子』

『『『私達、三人揃って…………『華のノービスシスターズ』』』』

 

 ちょっとよく分からないけど、何故か凄いと思えるアーメ、シーメ、ソーメの三姉妹と仲良くなった。あの独特の名乗りはどこから持ってきたんだろう?

 

 

 

『…………セプト。エリゼさん達を信じてみよう』

『分かった』

 

 エリゼの作った私の魔石が自然に取れるようになる試作品の器具を、エリゼの言葉を信じたトキヒサの言葉を信じて身に付けた。あんまり重くないしそこまで邪魔にもならなくて良かった。これまでと変わらずにトキヒサに仕えることが出来る。

 

 

 

『どうしたの? トキヒサ』

『な、何でもない。それより早く離れて……あと服はきちんと着てプリーズ』

 

 わざわざ奴隷をベッドで寝かせて自分は床で寝ていたトキヒサが、毛布から足がはみ出て寒そうだったので起きるまでしがみついたりもした。

 

 アーメ達にトキヒサと一緒に寝るならこうした方が良いと言われて、わざと服を少し乱したけど、身体に付けた器具が出てしまったせいか、すぐにトキヒサに服をちゃんと着るよう指摘された。どうやらあの話は少し間違っていたみたい。

 

 

 

『それなら今は無理に目的を作らなくても良いんじゃないか? 目的なんざ生きてるうちにころころ変わるもんだ。だったら今無理やり目的をひねり出さなくたって、やりたいことが出来るまで待ってりゃいいのさ』

 

 ジューネとトキヒサに聞かれて、自分のやりたいことを考えたけど思いつかない時、アシュにそう言われてそういう考え方もあるのだと知り、

 

『トキヒサ。私、一人でやりたいことが見つからなかった。でも、一緒に行っちゃ……ダメ?』

『ダメなもんか。セプトがやりたいことを見つけるまで、一緒に行こうぜ』

 

 トキヒサにも言われて私は焦らなくても良いのだとホッとした。ジロウの宿題もそうだけど、これでまた一つやることが増えた。

 

 

 

『やあやあジューネちゃんじゃないか。ここしばらく顔を見せに来てくれないものだから、ワシもすっかり老け込んでしまったわい』

 

『……ふぅ。まだまだ私も未熟ですねぇ。自分で言ったばかりだってのに、口だけで止められないからって腕に頼ってしまうとは』

 

『只今ご紹介に与りました情報屋のキリですよっと。お代と時間さえいただければ、大抵のことは調べてみせるよ。以後よろしく!』

 

 その後もジューネに護衛を頼まれたトキヒサに付き添って、取引相手のコレクターで貴族のヌッタ子爵、商人ギルドの仕入れ部門のトップだというネッツ、何故かモフモフに目がない情報屋のキリに会いに行ったり、

 

 

 

『こうすると、男は元気になるって言ってた。でも、やりすぎると元気になりすぎて危ないから、基本的に好きなヒトだけにやった方が良いって』

『そ、そうか。確かに誰彼構わずするとマズイからな! うん』

 

 夜中に目が覚めたらなんでかトキヒサの額が赤くなっていたので、以前アーメ達に教えてもらった男のヒトを元気にする方法の一つ、痛そうな所を優しく撫でてあげたら、トキヒサがすぐに元気になって引き離されたこともあった。

 

 ……もう少しこのままでも良かったのに。

 

 

 

『……出来た! 出来たぞっ!』

『私も、出来た』

『はい。お二人ともちゃんと書けてますね。書き取りテスト合格です!』

 

 それから皆で一緒に勉強会もした。奴隷にはこういった知識は不要というのがかつての持ち主だった奴隷商の教えだったけど、こうして勉強してトキヒサの役に立てるならとても嬉しい。

 

 どうやらトキヒサもこれは得意じゃなさそうなので、その分私が頑張ればもっと役に立てるかもしれない。

 

 

 

『これは……硬貨ですか? しかし私の知っているどの硬貨とも違うようですね』

『ああ。俺の故郷で流通しているものでな。ここらへんじゃまず出回ってないと思うぜ』

 

 他にもトキヒサが能力で出したイチエンダマ。素材で言うとアルミニウムというものをジューネに見せて売り込もうとしたり、

 

 

 

『ねえ。聞いても、良い? ヒースは、最近授業を逃げてるって聞いたけど、ホント?』

『……僕に答える義務があるとでも?』

『お願い。教えて』

 

 毎日の鍛錬の終わり際、ヒースに何故他の講義をさぼるのか尋ねてみたりもした。あの時何故かヒースは私から目を逸らしてずっと隠れようとしていた。私はただ普通に尋ねていただけなのに。

 

 

 

『ごめんなさい。私のせい』

『セプトを責めないでやってくれよジューネ。今回の都市長さんからの頼まれごとは、セプトにとっては自分の身体を治療するための交換条件みたいなところもあるからな。それに、俺も分かっててさっきセプトを前に出したしな。謝るなら俺の方だ。ゴメン』

『……ああもぅ二人とも、別に責めてはいませんよ。それを言うなら段取りを伝えていなかったこちらにも非が有ります。すみませんでした』

 

 だけど尋ねたけどそのまま逃げられてしまい、私が勝手にやったことなのにトキヒサとジューネもそれぞれ謝って結局皆で互いに頭を下げあったりもした。ジューネはまだしもトキヒサは私の主人なのだから頭を下げるのはおかしいと思うんだけどな。

 

 

 

『……そういうのをね、要らぬ心配余計なお世話って言うの。迷惑がかかるかも? ハッ! 何も知らないうちに雇い主が捕まる方が迷惑という話よ。……それに、トキヒサが居なくなったら困るヒトがそこにも居るじゃない』

『置いて、行かないで。居なく、ならないで。……お願い』

 

 自分が魔石の不法所持で最悪牢獄送りになった時のために敢えて何も言わなかったトキヒサに、つい縋り付いてしまったこともあった。

 

 奴隷という立場から言えばそれはとても不敬なこと。実際すぐに私も離れた。だけどあの時トキヒサが居なくなったらと考えて、急に胸が怪我もしていないのにチクチクと痛んで、無性に触れていたいと思った。

 

 次はちゃんと我慢しなきゃ。

 

 

 

『準備出来たよ姉ちゃん』

『こっちも……大丈夫だよ』

『よろしい。ではトキヒサさん達はお座りください。“五分で分かる七神教の成り立ち”はっじまっるよ~!!』

 

 ある時はアーメ達の演じたお芝居がとても面白く、影絵の参考にもなるのでまたやってほしいと思った。

 

 あれなら練習すれば、人形だけなら私も近いことが出来るようになるかもしれない。声まではちょっと自信ないけど。

 

 

 

『ちょ、ちょっと買いすぎじゃないかジューネ』

『何を言ってるんですかトキヒサさん。まだまだ予定の半分くらいしか回っていませんよ』

『トキヒサ。私、持つ?』

『気持ちはありがたいけど、もうセプトもキツイだろ? 腕がプルプルしてるぞ』

 

 ジューネの買い物に付き合うトキヒサと共に荷物持ちをしたこともあった。毎回こんなに買い物をするなんて、商人はとても大変だ。

 

 

 

『……セプト。この中で戦力になりそうなのはアナタだけだから、くれぐれも二人を頼むわ。……またトキヒサがバカをやって危険に突っ込んでいこうとしたら力尽くでも止めて』

『分かった。任せて』

 

 講義をさぼって街に出ているヒースを尾行する際、別行動をすることになったエプリにトキヒサの事を頼まれた時は、時々予想を超えたことをやらかすトキヒサを何としてでも守らないとと奮起したり、

 

 

 

『そんなに美味しいんですか? どうも初めて見る品で心の準備が』

『まあ一口食ってみろよ。セプトなんかすぐに食べ始めたぞ』

『美味しい。美味しい』

 

 初めて見るラーメンという食べ物を、トキヒサに勧められて舌鼓を打ったりもした。食べていると身体と心がほっこりする食べ物だった。

 

 

 

 そして、食べ終わった後の帰り道、品物を買い取ってほしいという浮浪者のようなヒトの品物をトキヒサが確認していた時、

 

『…………何でこんな物が?』

 

 品物の中にあった小さな板みたいなものを見て、トキヒサが凄く驚いたような顔をしたのに気が付いた。それがトキヒサにとってどれだけの意味を持つのか、この時の私にはまるで分らなかった。

 

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