異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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 長らくお待たせいたしました。


断章 主催者はテレビのチャンネルを変える

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 そこはよく分からない場所だった。

 

 見渡す限り真っ白な空間……と言うより、何も無いから白という色だけが残ったというべきか。

 

 ずっと居ると常人では精神にダメージを受けそうなその場所では、

 

 

『ア~ッハッハッハ。いやはや。そう来るかい? それは予想外だった!』

 

 

 ポツンと置かれた液晶テレビを観て笑う光球……という、よく分からないモノが存在していた。

 

 

 

 

 幾つかに分割されたテレビの画面に映るモノは様々だった。

 

 ある所では中世風の村に住む貴族の息子と、その村の教会に赴任してきた吸血鬼のシスター。そしてその二人共に関わりのある一人の少女の世界が。

 

 またある所では現代風。カードを駆使して決闘を行うゲームが流行している世界で、幻想を模した怪物をカードを依り代に呼び出し絆を深めながら問題に立ち向かっていく少年の世界が。

 

 また別の画面ではSF風。世界や星々まで征服しようとする悪の組織。その中で造られた愛に飢えた少女と、仕事は器用だが感情が不器用なとある雑用係の世界が。

 

 他にも分割された画面のそれぞれに、一つ一つ違う何かが映っていた。それらは全て、何らかの形でこの光球が関わって今も続く世界である。

 

 光球はそれらを見て大いに笑い、ある時は少ししんみりし、ある時は心躍った。

 

 と言うか時折なんと()()()()()()()()()、直接ヤジを飛ばしては中の人物に撃退されて帰ってきたりもした。

 

 光球に人らしい感情があるのかは分からないが、少なくともそれっぽい反応は取り続けた。そして、

 

『……ふぃ~。やはりヒトの織り成す物語というのは良いねぇ~』

 

 ある程度観て満足したのか、光球は機嫌の良さそうな声を漏らし、

 

 

『ねぇ? 君もそう思うだろう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そうこちらの方を向いて一度ピカリと光った。

 

 

 

 

 この光球に雌雄の区別があるのか不明だが、ここでは仮に彼と言おう。

 

 彼の名はディー。自称“元”神様であり、数多の世界を覗き見てはそこの現地人等の反応を楽しむ事を娯楽としている愉悦大好き野郎(無許可でばがめ野郎)である。

 

『ちょっと~? なんかどっちで呼んでも心外な呼称をされてんだけど。僕はただの()()さ。基本的には観てるだけ。……まあ干渉した方が面白くなりそうだと判断したら手も口も出すけどさ』

 

 このように地の分にまで口を出してくる能力だけは無駄に高い人でなしである。そもそもヒトではないが。

 

 そして一度干渉を始めると大概碌な事にならない。重ねて言うがこの“元”神は人でなしである。

 

 ディーが何度自分の仕事と趣味を両立させるべく、昨今流行の異世界転生なるものを死ぬべき運命の者に囁いてきたか。そしてその甘言に乗ってどれだけのヒトが転生し、またそれを後悔しながら死んでいったか知れないのだから。

 

『ぶぅぶぅ。それを僕だけの責任にしないでほしいな。僕だって最初にちゃ~んと死ぬべき運命のヒトに説明したさ。このまま死ぬか、どこか適当な世界に自分の選んだチートを持って転生するか、僕の暇潰しに付き合って今の世界で死の運命を覆すのにワンチャン賭けるか選ばせたとも』

 

 ディーは不満げにブーイングを上げる。しかしこの時点でかなり理不尽な選択をさせているのに気が付いていないのだから困る。気づいていても同じかもしれないが。

 

 この提案でそのまま死ぬのはごく少数。残りはチートを持って転生か、ディーの暇潰し(試練)を突破してそのまま死の運命を回避するかの二択だが、基本的には前者を選ぶ者が大半だ。

 

 何故ならその言葉は甘い蜜。自身の境遇に不満を持っている者ほど美味そうに見える甘露。

 

 片や今までの人生を手放して、異世界にて新しい人生を送る成功の()()約束された人生。もう一つは試練の内容すらギリギリまで知らされず、成功したとしても命が助かるだけ。

 

 大抵の者は前者を選ぶ。自身が強大なチートで無双する姿を夢想し、必死に知恵を振り絞って自分の理想のチートを考える。

 

 例えば時間操作能力。止めた時の中を自分だけ動いたり、或いは早送りや巻き戻しまで可能。そして制限時間は無制限の明らかなチート。ある転生者はそんな能力を望んだ。

 

 またある者は無敵の肉体を求めた。あらゆる敵を拳で粉砕し、あらゆる攻撃を弾く天下無双の肉体を。

 

 不老不死。物質の創造。魅了や精神支配。魔力容量チート。万物破壊。ダンジョン生成。テイマー。その他思いつく物をチートとして選び、転生者達は意気揚々と異世界へ向かうのだ。だが、

 

 

『望むならどんなチートでも僕が渡せる範囲であればあげるさ。ただし、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 時間操作能力なら使う度に自分の時間(寿命)を極端にすり減らし、無敵の肉体は代わりに莫大なエネルギー補給(食事)が必要になる。

 

 不老不死なら三大欲求が消失して精神が摩耗し、物を生み出すならそれの材料と構造の理解が必要。魅了は使う度にそれ以外からの好感度が下がって世界に嫌われ、魔力容量チートは僅かでも魔法を使う度に全身を拷問級の激痛が襲う等、必ず能力には代償が必要だった。

 

『強い能力を貰おうって言うんなら、当然それに見合った苦労が無きゃ面白くないじゃない! お手軽チートで最強? 俺TUEEE? そんなのは見飽きたよ』

 

 そう言って軽く笑うディーだが、先にチートに見合うだけの苦労をしているのなら割とアリという面倒くさい一面も持ち合わせているから困る。

 

 こうして多くの転生者は、大抵一年以内に異世界に適応出来ず二度目の死を迎えている。その際の恨み節などもディーは楽しんでいるようだから性質が悪い。

 

 ちなみに先ほどの問いで後者、つまり死の運命を回避するべく試練に挑むという者は少数だが、ディー曰く安易に()()()()()()()()時点で大抵こっちの方が見応えがあるとか。

 

 試練の方は完全にディーの匙加減次第。能力もあるがこっちは完全にそのヒトの素養に左右されるのでチートとまで言えるか微妙な所。だが、前者に比べれば圧倒的に生き残る割合は上である。

 

 まあどちらを選ぼうとも、ヒトの人生こそが最大の娯楽であるという持論を持つディーはたっぷりと楽しんでしまうのだが。

 

 

 

 

『それにしても、随分と饒舌な地の文だねぇ。まるで誰かにこの事を話したいみたい』

 

 放っておいてほしい。

 

 ディーは一言ふぅんと返すと、再びテレビの画面に向かう。

 

『まあ良いさ。さしずめどっかの誰かさんの狙いは……()()()()だろう?』

 

 その言葉と共に、画面の分割されていた内二つが拡大して表示される。

 

 一つに映るは身体のあちこちに怪我を負いながらも、片手に金庫型の貯金箱を提げて立つ一人の少年。ディーの弄り甲斐のある友人の一人である女神アンリエッタが選んだ参加者。桜井時久。

 

 もう一つは頭にデカい苺大福のような生物を乗せた少年が映し出されている。こちらはディー本人が()()()()()()()()()で選んだ参加者。西東成世。

 

『ここしばらく他の話につきっきりになっていて、こちらがすっかり疎かになってしまったからね。そろそろ……続きを観始めようじゃないか!』

 

 

 

 

 止まっていた物語が、再び動き出す。




 という訳で、本当に久しぶりに続きです。お待ちいただいたありがたい読者様には大変御礼申し上げます。と言っても現在定期投稿が難しい所でして、不定期投稿となりますが。



 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。久しぶりに見たからおめでとうと応援してくださる読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!

 ついでに本日投稿した新作『とある転生管理者の趣味と記録』もよろしくです! ここのディーが散々やらかした悪行の一部が明らかになりますので。
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