異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第二十九話 久々の換金タイム

 アンリエッタが言うには、ヌーボ(触手)はどうやら俺が起きるまでずっと戦っていたから疲労が溜まっていたらしい。そんなことになっていたのに気づかずぐうすか眠っていた自分に腹が立つ。

 

「ヌーボ(触手)には起きたらしっかり礼をするとして……これどうしよう?」

 

 周りにはヌーボ(触手)が倒したであろう骨達がごろごろしている。頭蓋骨の数から見て少なくとも五体分。四つは人型のようにも見えるが、一つは何だか獣のような形をしている。人型の方は何かしら粗末な剣やら服やらを身に着けていて、昔ここで倒れた戦士の亡骸と言われても信じるぞ。

 

「換金するにしても、こう人型の骨を金に換えるって言うのは何というか…………な」

『ふ~ん。意外に信心深いのね? 宝探しなんてやっているからもっとガツガツしてるかと思っていたけど』

 

 宝探しなんてやってるからこそ、そういうことには最低限の敬意を持ってないといけないんだよ。まあこの状況なら“相棒”だったら普通に換金してるだろうけどな。使えるものは基本何でも使うタイプだから。

 

「ちなみにこの骸骨な方々ってどういう風に生まれるんだ? 自然に生まれる様子が想像できないんだが。人の骨とかを基にされてたりすると非常に換金しづらい。心情的に」

 

 二体スケルトンが居たらちっさいスケルトンが生まれてくる……というのでもないだろうな。

 

『基本的に死体とかにゴーストが憑りついて動かすのよ。だからアンデット系は死体の多い戦場や墓地で生まれることが多いの』

 

 やっぱりそういうタイプかぁ。普通に考えたらただの骸骨が何もなしで動き出すなんてないもんな。まだ他の幽霊とかが動かしているという方が納得できる。…………幽霊自体がほとんどお目にかかったことないけどな。

 

『だけどダンジョンではその心配はしなくて良いわ。ダンジョンのモンスターはほとんどダンジョンマスターに造られた物。皆身体の中に黒っぽい石があったでしょう? あれを基に造られた言わば擬似凶魔みたいなものよ。だからスケルトンも基本的には本物の死体じゃないわ』

「なるほど。少しは気が楽になったよ。最悪ダンジョンの中でやられた人がゾンビになって襲ってくるかと思った。……ってか、ダンジョンマスターとはまたロマンだねぇ」

 

 ダンジョンマスターと言ったらやっぱりアレか? 自在にダンジョンを組み替えて、迫りくる冒険者たちを迎え撃つという奴か。俺の昔読んだライトノベルでは、最終的には人間と仲良くするというルートもあったからな。敵になっても味方になっても実に燃える展開だ。

 

『だからなんでそうダンジョンのこととなると意識が明後日の方向に飛んじゃうのよ!? ……これなら換金できる?』

「まあそれならなんとかな。うっかり本物の骨が混ざっていないように祈るよ。……うりゃ」

 

 俺は覚悟を決めて骨に光を当てていく。光を当てるごとに、貯金箱にその名称と値段が表示されていく。……と言っても、

 

 スケルトンの骨 一デン

 スケルトンの頭蓋骨 十デン

 スケルトンの骨 一デン

 スケルトンのダンジョン用核(傷有)二十デン

 スケルトンの骨 一デン

 スケルトンの骨 一デン

 

 …………安い。すこぶる安い。スケルトン一体倒してもこれでは子供の小遣いくらいにしかならない。強いて言えば、ダンジョン用核が傷有だからこの値段ということは、傷のない状態であればもう少し値が上がるのではないかという点か。あとただの骨がやたら多い。

 

 ボーンビーストの骨 五デン

 ボーンビーストの頭蓋骨 三十デン

 ボーンビーストのダンジョン用核(傷有) 百デン

 

 おっ! 一体だけ違う奴はボーンビーストと言うのか。流石にスケルトンに比べて値段が高い。……でも一体分でも百三十五デン。日本円にして千三百五十円。相手がどれだけの強さか知らないが、命を懸けてまで戦う価値があるとは思えない額だ。

 

「……よくライトノベルだと、ダンジョンは一獲千金の場所だと書かれるけど、少なくともここはそうじゃない気がするな」

『それはワタシも同感。牢獄といいここといい、よくもまあ金になりそうもない所ばかり行くものね。早くここを出て課題に手をつけてほしいものだわ』

 

 他に使えそうなものと言うと、

 

 銅製の剣(状態粗悪) 二十五デン

 銅製の剣(状態粗悪) 二十五デン

 銅製の斧(状態粗悪) 二十五デン

 木製の弓と矢(状態粗悪) 十五デン

 革製の鎧(状態粗悪) 二十デン

 革製の鎧(状態粗悪) 二十デン

 布製の服(状態粗悪) 十デン

 

 スケルトンが身に着けていた装備。装備の内容がバラバラなのはよく分からないが、地味にスケルトン本体より値が張るのがなんか悲しい。それと全て状態粗悪がついている。実際に見て見ると、どれも刃こぼれしたり錆びていたりとボロボロだ。どうやらメンテナンスはあまりしていないらしい。他には…………あれっ!?

 

 黒鉄のナイフ(麻痺毒付与) 六百デン

 

 よく見たらクラウンの奴が使っていたナイフだ。戦いの中で落としたらしい。やはり他の装備と違って結構良いお値段だ。本人が言っていた通り麻痺毒が付いている。

 

「そう言えばこれクラウンの物だけど、換金不可とは出ていないな。何でだ?」

『それは簡単よ。そのナイフの元の持ち主はクラウンだけど、持ち主が紛失した場合は次に手に入れた者が所有者になるのよ。ただし、元の持ち主に強い由来がある物は話が別だけどね。何かの祝福とか呪いとか』

「よく分からないが、つまりこれは奴の専用装備とかじゃないから持ち主が変更できたってことか?」

『何か違う気がするけど…………まあそんな感じで覚えておけば良いわ』

 

 それにしてもナイフか……。まあアイツにはひどい目に合わされたから慰謝料代わりに貰っといても罰は当たらないか。

 

 他にこっちに吸い込まれたものは…………戦いの中で砕けた床の破片とか、牢の中で取り出してそのままだったクッション。それと本棚もあったのだが、こっちは風で吹き飛ばされた時にどこかにぶつけたらしくバキバキに割れてしまっている。これでは木材としてもあまり使いどころがない。

 

 あとは牢で戦った大量の鼠軍団が落とした魔石。これは中々数が多くて見つかっただけでも十個。吸い込まれなかった物もあるだろうから実際はもっと多かっただろう。これは一つ六十デン。俺が戦いながら拾っていたものと合わせると合計三十二個になる。一体どれだけいたんだ鼠軍団。つまり魔石だけで千九百二十デンになった。

 

 

 

 

「ふぅ。ざっとこんなところかな」

 

 大体の査定が終了し、ほとんどを換金したところしめて三千二百五十デン。スケルトン達の素材及び装備は換金しても四百デンくらいにしかならなかったが、魔石がかなりの額になったこととクラウンのナイフがそこそこの値がついたのは助かった。まだまだ課題の一千万デンには届かないが、こうして少しずつでも増やしていかないとな。

 

 換金額のうち五百デン分を銀貨と銅貨にして服のあちこちにしまう。使える魔法が金属性と分かった以上、金は武器(物理)でもあるからな。いつでも取り出せるようにしておこう。

 

『ふ~ん。まあまあの収穫じゃない。でもその調子じゃあ一年どころか五、六年かかっても課題は終わりそうにないわよ』

 

 確かに、仮に一日にこの三千二百五十デンを毎日稼ぎ続けたとしても、とても一年では目標額に間に合わない。それに最初にアンリエッタに言われたではないか。()()()()()()()()()だって。こんなやり方で全て稼いだとしても面白くないだろうな。…………やはり折角ダンジョンに来たんだし、お宝の一つでも手に入れてドカンと稼がないとダメか。

 

『それと、そろそろ通信限界だけどまだ話すことはある? これが終わると丸一日通信は出来ないわよ』

 

 そう言えばそう言っていたな。しかし聞きたいことか。急に言われても…………いや、一つあるな。

 

「前々から気になっていたんだけどな。俺が課題で稼ぐ金。今も能力の手数料とかで送っている訳だけど、一体何に使うんだ? 神様でも金を使って買い物したりするのか?」

『…………ワタシ自身はあまり使わないわよ。だけど必要なものではあるから貯めているの』

 

 アンリエッタはそう言うとそのまま黙ってしまった。あまり聞かれたくないことだったのかもしれない。

 

「そっか。よく分からないけど、そっちも必要としているならいい。ただ課題の為だけに集めるよりは良くなった」

『……そろそろ時間ね。じゃあ次はいつも通り夜中頃に。ただ今日一日は使えないから、明日の夜中に連絡しなさいね』

 

 そう言い終わると通信が切れた。俺はケースを胸ポケットにしまうと、明かり代わりにしていた貯金箱で再び周りを照らす。今はまずここから脱出することが第一か。宝探しは準備を整えてからじっくりとするとしよう。俺はエプリやヌーボ(触手)が起きるまで、新たに加わった荷物やこれまでの品の整理をすることにした。




 スケルトンは倒しても旨味が無いのです。何せ骨しかないですし。造る側のコストパフォーマンスは安くて良いんですけどね。
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