異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第三十九話 気になる箱

 そっちの嬢ちゃんも実際に見た方が良いだろうと、アシュさんはエプリと見張りを交代してくれるという。通路の近くで待機していたエプリとしばらく会話をしたかと思うと、入れ替わりでエプリがこちらに駆けてきた。

 

「何話してたんだ?」

「……見張りの引継ぎについてね。この部屋に繋がる通路は三つ。うち二つは簡単な罠を仕掛けておいたから、残る一つを見張っていれば良いとか。……あとは互いの探査能力について少し。全ての能力をばらすことは出来ないけど、互いに雇い主を守るために必要な分は情報を共有しないとね」

 

 流石傭兵と用心棒。互いにプロフェッショナルということで、話はスムーズに進んだらしい。詳しくは教えてくれなかったが、アシュさんはエプリが言うにはかなり広い範囲を調べられるという。

 

「そっか。……お前ばかり見張りをさせて悪いな。俺も次は見張りに立つか?」

「……止めといた方が良いわよ。それよりいざって言う時のために体力を温存してもらった方が助かるわ。さっきの戦いでアナタ自身もそれなりに戦力として使えるって分かったし、自分の身を守れるのなら護衛の難易度が下がるもの」

 

 戦力として認められたのは嬉しいが、美少女にばかり仕事をさせるのはどうにも落ち着かない。他に何か出来ることはないだろうか?

 

「……ふっ。雇い主がそんなに気を使わなくて良いの。アナタは無事に脱出することを考えなさい」

 

 俺の考えていることが顔に出ていたのか、エプリは軽く鼻で笑ってそう言った。う~む。そんなに分かりやすいかな俺。

 

 

 

 

「いらっしゃいませ! どのような物をお探しで?」

 

 そんなことをひとしきり話し終えた後、俺達はジューネの店で品物を見せてもらっていた。ジューネは相変わらずの営業スマイルだ。商談は話し合った結果エプリがすることになった。俺だとこちらの物の相場が分からないからだ。

 

「……水と食料をお願いするわ。さしあたって()()で余裕をもって三日分。味よりも腹持ちと栄養価を優先で。出来れば持ち運びしやすくて長持ちすると尚良いわ。……用立てられる?」

 

 ここで三日分と言ったのは、ダンジョンに入ってからここまで来るのに二日かかったという話をアシュさんから聞いたためだ。普通に考えれば入口まで戻るのに二日。ただしまだ目を覚まさない男のことやアクシデントのことを考えて、余裕を持って三日分だ。

 

「もちろんですとも。………………こちらの品は如何でしょうか?」

 

 ジューネは店の奥からゴソゴソと何かを取り出してきた。持ってきたのは水が満タンに入った大きめの水筒が三つと、何かの肉らしき物を燻製にしたもの。初めて見る果物らしき物。そして大量のパン。……しかもやたら堅いことで有名な黒パンであった。

 

「お客様が長期保存と腹持ちを優先ということで、足の速い品は除外してあります。水は三日分にはやや少なめですが、一緒にご用意した果物の水気も考慮してのことです。持ち運びに関しては別に袋をご用意いたします」

「……これだけあれば十分ね」

「いや、それよりそんな大量の荷物どこに収納してあったんだ?」

「商売上の秘密でございます。お客様」

 

 エプリは品物をじっくり検分して、納得がいったかのようにそうジューネに言った。他の品物と合わせると、リュックサック状態の体積より多い気がするのだが気のせいだろうか?

 

 一応訊ねてみたがニッコリ笑ってはぐらかされた。これ空属性の一種とかじゃない? それともリュックへの入れ方にコツがあるのだろうか?

 

「……値段はどのくらい?」

「お代は…………こちらになります」

 

 ジューネは懐から算盤を取り出した。異世界にもあるんだね算盤。そしてしばらく指で玉を弾いていたが、計算が終わったのかこちらに見えるように台の上に置く。

 

 算盤か。そういえば小学生の頃一時期やってたな。どれどれ。…………ちょっと高くない? そこには二人で予想した額の二割増しくらいの値が付いていた。

 

「相場より大分高めね」

「ダンジョン料金で少々割高に設定してございます。お客様。それに品質の方は保証いたします」

 

 俺には品質まではよく分からない。貯金箱で査定すれば分かるかも知れないが、ここでやったら流石に不審がられる。

 

「品質の保証は商人としては当然でしょう? …………良いわ。それで買う。ただし、そこに並んでいる品の一つをタダにするくらいの度量は見せなさい」

「………………分かりました。それでは商談成立ですね」

 

 どうやら値切りは成功したらしい。ジューネはしばし考えて、品物を一つただにしても儲けが出ると踏んだのだろう。笑顔を崩さずにそう答えた。その言葉を聞くと、エプリはローブの中から袋を取り出して硬貨を取り出す。

 

「おや!? アシュが払うという話だったのでは?」

「……雇い主からの要望でね。いくら何でもそんな大量に奢ってもらう訳にはいかないって。……私も借りを作るのは苦手だしね。自分の分は払うわ。…………そこで倒れている男の分だけは仕方がないからお願いするわ」

 

 エプリは二人分の値段をジューネに支払った。俺の分は後でエプリに渡すことになっている。俺はジューネが金を数えている間に、品物を用意された袋に詰めていく。そのくらいはしないとな。

 

 

 

 

「確かに受け取りました。残りはアシュからいただいておきますので。それと、そこで倒れている人の服装も見繕っておきます。さいわい我が商店は衣服も取り扱っておりますので」

「……助かるわ。あの格好でダンジョンをうろつかせられないから」

 

 俺が袋に詰め終わった頃、同じように金を数え終わったジューネがエプリと話を続ける。こういう商談は終わった後も情報収集の場としては重宝する。そちらはエプリに任せて、こっちは品物を見てみるとするか。

 

 ブラッ〇サンダーとかあったりしないかな? 大好物で元いた世界では買い置きもしていたぐらいだ。今回も牢獄に置いてきたリュックの中に入ってたのだけど……今頃溶けてないだろうな? そんなことを考えつつも、俺は一つ一つ手に取って眺めてみる。

 

 ……う~む。何が何だかまるで分からない。まださっきの食料とかは分かったのだが、特殊な道具になると使い方もさっぱりだ。

 

 剣やら盾やらも置いてある横に、何故か木の板やお札のような物も置かれている。置かれているものに一貫性がない気がするが、何か法則があるのだろうか? こんな時こそ査定で情報を得たいところだが、時折ジューネがエプリと話しながらこちらに視線を向けてくる。これでは無理だ。

 

「何か良さそうなものは…………んっ!?」

 

 途中、なんとなく気になるものがあった。手に取って眺めてみると、それは古ぼけた小さな木製の箱だった。一辺が十センチくらいの正六面体。簡単に言うと大きいサイコロみたいな感じだ。

 

 普通箱はどこかに開けるフタか場所があるものだが、これにはそれらしきものが見当たらない。軽く振ってみると中からカラコロ音がする。何か入っているようだ。

 

「ああ。そちらをお求めですか?」

 

 ジューネがこちらに向かってくる。商人らしく客の視線には敏感なようだ。

 

「これは何だい?」

「はい。こちらは以前偶然手に入れた物なのですが…………不明なのですよ」

「不明? 何か分からない物を売っているのか?」

 

 それはちょっと無責任ではないだろうか? 操作方法を誤ったら周りに被害が出るような品じゃないよな?

 

「……お恥ずかしい限りですが。何しろ開け方が分からない箱でして。無理やりこじ開けようにも中身を傷つけてしまうかもしれず。半ばお客様の中でこれが何か知っている方が居ないかと考えて店先に出しております」

 

 中身が分からない箱か。ビックリ箱とかは大好きだが、異世界の箱となると危険度が一気に跳ね上がる感じだ。神話に出てくる開けたら災いが飛び出してくる箱の親戚とかだったりして。…………しかしさっきから無性に気になるんだよなぁ。なんだろ?

 

「…………まあ良いか。これいくら?」

「そちらは……」

 

 ジューネはまた算盤を弾いてこちらに見せる。提示された値段は三十デン。日本円にして三百円だ。何か分からない物なので向こうも在庫処分のような扱いなのかもしれない。あまり高いようであれば買うのを止めていたが、これなら買っても良いか。

 

「よし。買った!」

「お買い上げありがとうございます」

 

 俺はポケットから銅貨を三枚取り出してジューネに渡す。銅貨三枚くらいなら無駄遣いにはならないだろう。銅貨の代わりに木の箱を受け取る。さあて、あとで調べてみるとするか。査定すれば手掛かり位は掴めるだろう。

 

 こうして俺達は、ジューネから多くの日用品を買い込んだ。実際あの後いくつか関係のない品も買わされた(俺だけ)のは流石商人と言ったところか。ちなみにエプリは品物の中で、何か珠のような物を一つただにして貰っていた。一体何だろうな?




 パンドラの箱、コトリバコ、ミミックなど、開けたらマズイ箱は多々有ります。さてさてこの箱はどうでしょうか?

うちのエプリはこんなのだけどヒロインと言えるのか?

  • 一応ヒロインである
  • これはヒロインではない
  • むしろアンリエッタの方が美幼……ヒロイン
  • いやいや大人の魅力でイザスタさんでしょ
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