異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません   作:黒月天星

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第八十話 解毒剤を手に入れろ

 

「さあて、それにしても…………帰るのに微妙に時間が掛かりそうだな」

 

 戦い終えて一息ついて、そこで色々と問題が残っていることに気がつく。ここは拠点からおよそ二十分ほどかかる場所にあるが、それは普段の状態ならばの話だ。

 

 俺達の身体はあちこちズタボロで、こんな状態だとどれだけかかることか? それにエプリも毒でまともに動けないし……って、そう言えば忘れていた。

 

「なあエプリ。エプリって薬の知識とかあるか? 俺はまるでダメなんだけど」

「……いいえ。私もそう言った知識は無いわ。精々が簡単な止血用の物を調合できるかどうかって所ね」

 

 エプリも首を横に振る。そうか。薬の知識があれば解毒剤が分かると思ったんだが……。

 

「……とは言え誤って自分が毒を受けた時のために、毒と対となる解毒剤を用意しているっていうのは有り得る話ね。いい加減このまま気分が悪いのも困るし、クラウンを尋問でもして解毒剤を出させるとしましょうか」

 

 そうだな。分からないなら本人に聞けば良いんだ。俺はボジョにセプトのことを見張ってもらい、その間にエプリに肩を貸してクラウンの倒れている所に向かう。

 

「……あそこね」

 

 クラウンは貯金箱を食らった時のままで倒れていた。まだ気を失っているままのようだ。ここで目を覚ましていたら厄介なことになっていたが、不幸中の幸いというやつだな。

 

「……両手を縛りもせずにそのまま来たの?」

「どうせ縛っても空属性で逃げられると思ってさ。それに紐も無かったし」

「…………はぁ。次からは縛っておいた方が良いわよ。紐が無くても相手の着ている衣服や持ち物を使って拘束することが出来るから」

 

 エプリは簡単な衣服を使った拘束術を教えてくれる。袖を外側から結んだりとか、アクセサリ等を紐代わりにして縛るとかだ。……やけに手慣れてるのは何故か聞くべきだろうか?

 

 

 

 

「よし。俺が服を漁って薬っぽい物を探すから、エプリはいつクラウンが起きても大丈夫なようにちょっと離れていてくれ」

「……空属性で跳ぼうとしたら即座に仕留めれば良いのね。……了解」

「仕留めないっての! 解毒剤のことを訊き出すんだろ? もっと平和的に行こうぜ」

 

 相変わらず物騒なことを言うが、何とか納得してくれたようで少し離れたところで待機するエプリ。

 

 流石に美少女に悪党の服の中をゴソゴソさせるって言うのは絵面が悪いからな。待機と言う名の休憩をしてもらおう。……まあ俺にも男の持ち物を漁るという趣味は無いけど、エプリにやらせるよりか大分マシだ。

 

 そんじゃちょっと漁らせてもらうぜ。悪党とは言え人の物を取るのは気が退けるが、緊急事態及び襲ってきた慰謝料代わりってことで勘弁な。俺はクラウンのローブに手を突っ込んで探る。

 

 時折掴みだした物をそっと地面に置くが、どうにも毒々しい色の液体が入った薬瓶だったり、さっき俺に投げつけてきたナイフだったりと危険そうな物ばかりだ。……どれが解毒剤だかさっぱり分からない。

 

「これじゃあどれが解毒剤だか……そうだ。査定だ!」

 

 この際売れる売れないはどうでも良い。あれで少しでも情報が解れば! 俺は貯金箱を呼び出して早速調べてみる。すると、

 

 解毒剤(程度 中)買取不可

 

 と言うのがいくつか見つかった。細かく()()()()()()()解毒剤と書かれていないのがいささか不安だが、この中のどれかにエプリの解毒剤がある可能性が高い。

 

 だがこれ以上は流石に絞り込めない。このままクラウンを叩き起こして聞くか、一度調査隊の拠点に戻ってラニーさんに診てもらうしかないな。

 

「エプリ。解毒剤っぽいものは見つかったけど、どれがエプリの身体に効くやつか分からない。クラウンを起こして聞くか、一度拠点に戻ってラニーさんに診てもらわないとダメそうだ」

「……仕方ないわね。じゃあ尋問するからクラウンを縛り上げて……危ないトキヒサっ!」

 

 その言葉に、咄嗟に振り向きながら貯金箱を振り回す。ガキンという金属のぶつかるような音がしたかと思うと、腕に一瞬鋭い痛みが走った。しかしそれには構わず、俺はそのまま貯金箱を振り抜く。

 

「ぐはっ!!」

 

 そんな声とともに、襲いかかろうとしていた奴は貯金箱が直撃して吹き飛んだ。だが空中で体勢を整えて両足で着地する。……予想はしてたけどまたかよクラウンっ! しぶとすぎじゃない? 

 

「クフっ。正直に言って油断していましたねぇ。まさか貴方がここまでやるとは。……しかし意識を失った私をそのままにしておくなんて、愚かとしか言えませんねぇ」

 

 ……敵にまでダメだしされたよ。いいよ。分かってるよ。エプリにもさっき言われたところだから。

 

「まあ俺が抜けてるのは認めるけどな。……しかしお前何本ナイフ持ってんだよ?」

 

 粗方取り上げたと思っていたが、まだ予備があったらしい。片手でナイフを弄びながらニヤニヤと嗤って答えようとしないクラウンに半ば呆れかえる。……考えてみれば空属性で取り寄せたのかもしれない。人が移動するんじゃないから負担も軽くて済みそうだ。

 

「だけどまた近距離転移で避けようとしなかったってことはそっちも限界ってことだろ。それなら二人がかりのこっちの方が有利だぜ。そうだよなエプリ。…………エプリ?」

 

 反応が無いのを不思議に思って振り返ると、そこには苦しそうに膝をついて息を荒げているエプリの姿が。……考えてみればさっきから動きがまるでなかった。あの状況なら即座に反応して反撃してもおかしくなかったのに。こういう事かっ!

 

「クフフ。私の仕込んだ毒は()()()()()()()()時間の経過で効果が弱まっていくもの。しかしその前にあれだけ無理に動けば毒が一気に回るのは必然。今までは回復した体力及び気力で無理やり戦っていたようですが……ここまで来ては自然回復では収まらないほどに回っているでしょうねぇ。それこそこの解毒剤を飲まないとねぇ」

 

 クラウンはそう言うと、地面に置かれていた薬瓶の一つを掴み上げた。……あれがエプリの毒の解毒剤かっ!

 

「わざわざ教えてくれるって言うのは助かるな。素直に渡してくれ……ないよな」

「渡す理由があるとでも?」

 

 まったくその通りな正論だ。クラウンは持った薬瓶をチャプチャプと揺らしながらクフフと嗤う。仕方ない。なら俺一人で何とか奪い取るしか……。

 

「…………っ!?」

 

 その時、急に頭にズキズキとした痛みが走った。視界がぐらりと揺れたような感覚と同時に軽く目眩がし、反射的に頭を押さえる。何と言うか質の悪い風邪にかかった時みたいだ。……偶然こんなに急に病気が発症するなんてことはまずあり得ない。つまりこれは、

 

「クフフ。ようやく気付いたようですねぇ。先ほど私のナイフが貴方の腕を切り裂き、その毒が貴方を蝕み始めていることを」

 

 そう言われて腕を見ると、確かに浅いものの切り傷が出来ている。ここから毒が入ったみたいだ。

 

「そぉらっ!」

 

 思考が逸れていた一瞬の隙を突いて、クラウンがナイフをこちらに放ってきた。避けようとするが身体が上手く言うことを聞かず、躱しきれずにまた腕を掠めていく。

 

「そぉらそぉらっ! どうしましたぁ? もっと躱しても良いのですよぉ? 動けば動くほど毒が早く回りますけどねえぇっ!」

 

 クラウンは解毒剤をまたローブの中に仕舞うと、そう言いながら次から次へとナイフを投げつけてくる。ホントにどれだけストックが有るんだあのナイフっ!? 

 

 貯金箱を盾代わりにし、動けないでいたエプリを引っ張って何とか近くの岩の陰に身を隠す。……あんにゃろう。さっきからナイフのスピードが少し遅い。わざと俺が躱せるギリギリの速さにしていたぶっているな。

 

「……はぁ。……はぁ」

 

 エプリはさっきから瞳を閉じて苦しそうにしている。……俺とエプリが受けた毒は同じやつか? 同じならクラウンが持ってる解毒剤を手に入れれば二人まとめて治るってことだが…………この状態で奴から奪い取るって難しすぎないか?

 

「ボジョを離したのは失敗だったかな」

「……はぁ。……そう……かもね。でも……泣き言を言っている場合ではないわね」

 

 エプリはそう言うと体を起こして立ち上がろうとする。しかしその顔色はもはや真っ青を通り越して土気色に近い。今にも倒れそうな状態だ。

 

「やめろって! これ以上動いたらホントに毒で死んじゃうだろっ!」

「……どのみち、このままでは……長くは保たないわ。それに…………体調が悪いのは奴も同じようだしね」

 

 その言葉にそっと岩陰から相手を覗き見ると……成程。クラウンも少し息を切らしている。なんだかんだ向こうも貯金箱の直撃を二度も食らっているからな。体力的にも魔力的にも結構消耗しているのは当然か。

 

「なら俺が行く。エプリはそこでじっとしてろ」

「……ダメよ。……私も一緒に」

「そんな状態で何言ってんだっ! まだ俺の方がまともに動けるから俺が行く」

 

 時間経過なのか体質なのかは知らないが、俺の方が明らかに症状が軽い。エプリは今にも倒れそうな具合だが、俺の方は追加で毒を食らったにも関わらず、精々が身体が怠くて頭がグラグラする程度だ。貰った加護が毒にも効いているのかもしれない。

 

「…………悔しいけど……その通りね。……お願いするわ。だけど……危ないと思ったら、私は身体を引きずってでも掩護に入るから」

「そうならないように頑張るよ。じゃあ次に奴の注意が逸れたら……って、ちょっと待て!?」

 

 飛び出すタイミングを計ろうとクラウンの様子を伺っていると、何故か奴は再びローブの中から薬瓶を取り出した。そのまままたチャプチャプと揺らしながら指で摘まむと、軽く腕を伸ばしてこちらの方にニヤリと嗤った気がした。

 

 この状況で出すって……マズイっ!? 俺は仕方なく岩陰から飛び出して走り出す。

 

「クフッ。出てきましたねぇ。……だが、()()()()

 

 奴はこちらを視認すると、そのまま()()()()()()()()()()()()

 




 ホントにどれだけあるんでしょうねあのナイフ? 書いてる自分でもビックリです。

うちのエプリはこんなのだけどヒロインと言えるのか?

  • 一応ヒロインである
  • これはヒロインではない
  • むしろアンリエッタの方が美幼……ヒロイン
  • いやいや大人の魅力でイザスタさんでしょ
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