仮面ライダーアルカナ -Battle to Tarot- 作:地水
※以前投稿したモノを再掲載
――2013年。
とある魔法使いの青年の希望と絶望を巡った戦いは終わり、彼は約束の場所へと向かうために旅に出る。
残された人々、そして戦いの中で生まれた魔法使い達は彼の代わりに絶望の魔物・ファントムと戦っていた。
東京、摩天楼が聳え立つとある場所。
平和だったひと時を打ち壊すように盛大な爆発が起きた。
燃え上がる建物、逃げ惑う人々、そして迫りくるのは異形の怪人。
一体は大柄で外骨格を纏った虫を思わせる怪物"ケプリ"。
もう一体は神官やファラオを思わせる姿をした怪人"スフィンクス"。
彼らは怪人『ファントム』、魔力を持った特別な人間・ゲートを絶望させることによって生まれる魔物達であり、新たなる同胞を生み出すべく活動していた。
だがその存在理由も過去の話……自分たちの首領であった【とある男】が仕組まれた希望と絶望を巡る戦いは終わり、新たな同胞を迎えるというという話もその男にとっての都合のいい嘘だった。
信奉者だったファントムの幹部もいなくなった今、統率力をなくしたファントムの残党達は各々が好き勝手に暴れるようになった。
今この場で暴れまわっているケプリとスフィンクスも、その手の輩だ。
『はっはっは! 逃げろ逃げろ! じゃねえとどうなるかわかったもんじゃねえからなぁ!』
『もっとも、あなた方の逃げ場なんて存在しないですが……ハッ!』
近くのものを手当たり次第にぶち壊すケプリと、手に持った杖から火炎弾を放ち燃やし尽くすスフィンクス。
目につくものを破壊し、暴れまわる二体のファントムにこのまま何もできないのか。
誰もがそう思っていた時、逃げる人々をかき分けて【煌めく閃光】が現れた。
「変身!」
【チェンジ・ナウ】
魔法の呪文のような電子音声と共に、琥珀色の魔法陣が出現。
その中から潜り抜けるように現れたのは、一人の仮面の戦士。
宝石を模した琥珀色のフェイズマスクに肩から突き出た大きな角、左腕が装備しているのは巨大な鉤爪・スクラッチネイル。
万能の魔法使い『仮面ライダーメイジ』は自身の変身を遂げると、スクラッチネイルを構えて、攻撃をしようとする。
「はぁっ!」
『ぐああああ!?』
『ケプリ!? く、貴様は……魔法使いか!』
メイジのスクラッチネイルによる攻撃にケプリは軽く吹っ飛ぶ。
魔法使いであるメイジの登場に驚くスフィンクスは、杖を掲げて火炎弾で焼き尽くそうとする。
だがそれに気づいたメイジは右手に嵌めた魔法の指輪・コモンウィザードリングを手のパーツがついた魔法のベルト・メイジドライバーにかざす。
【バリア・ナウ】
「ハッ!」
スフィンクスの放った火炎弾は真っ直ぐとメイジへと飛んでいくが、それを遮るかのように魔法陣による壁が展開。
対象を守る魔法・ディフェンドの防御によって防ぐと、すぐさま新しい魔法を発動する。
【コネクト・ナウ】
次に発動したのは空間と空間をつなぎ、遠くのものを取り出すコネクトの魔法。
魔法陣から取り出した銃剣一体武器・ウィザーソードガンを構え、その引き金を引く。
銃口から放たれた銃弾がケプリとスフィンクスへ炸裂する。
怯むスフィンクスとは他所に硬さを誇る外骨格でしのぎ切ったケプリはメイジ目掛けて突撃を仕掛けていった。
メイジと二体のファントムが戦う中、逃げ遅れた人達を助ける人物がいた。
一人は灰色のスーツを身にまとった正義感溢れる女性。
一人はおっちょこちょい雰囲気の派手な服装の青年。
女性――"大門凛子"と青年――"奈良瞬平"、彼ら二人はメイジの戦いに邪魔にならないようにサポートへと務めていた。
「皆さん、こっちです!」
「慌てずにこっちへ!」
凛子と瞬平のフォローによって何とか一般市民を避難させ、誰かが巻き込まれる可能性を減らそうとする。
二人が避難活動をしている中、メイジと戦うファントムたちを見て瞬平は眉を顰めていた。
「なんでファントムがまだ活動をしてんだ? もうあいつらを指揮する奴らはいないのに」
「木崎さんは言っていた。ワイズマンだった笛木の傘下にいたファントムはまだ全滅していないって……だから自分達を押さえつける目の上のタンコブがいなくなった今、好き勝手に暴れているって」
「くう……こんな時、晴人さんがいれば!」
「ダメよ、瞬平君……晴人君は今はここにはいない。コヨミちゃんのために、今も旅をしているんだから」
ケプリとスフィンクス、二体のファントム相手に苦戦を強いられるメイジを見て、瞬平が苦い顔をする。
だが、今は旅立っていない彼の事を思った凛子は険しい顔を浮かべて言った。
かつてゲートを守るためにファントムと戦っていた指輪の魔法使い――『仮面ライダーウィザード』こと『操真晴人』はこの国にはいない。
ファントムの残党との戦いは三人のメイジたちに任せ、彼は……晴人は、大切な彼女の形見が眠る場所を見つけるために旅立った。
だから今はいない二人に心配を掛けさせたくないために凛子と瞬平は自分達ができることをしていた。
だが、現実は二人が思っているほどにそううまくはいかない……二体のファントムによるコンビネーションによって、メイジは圧されていた。
「くぅ!」
『そらそらそら、どうした!?』
「ぐぁぁぁっ! あぁぁぁぁあ!?」
『おやおや、そんなことではやられてしまいますよ……そうらぁ!』
自慢の怪力でメイジを取り押さえるケプリと、そのケプリを背後から火炎弾で攻撃していくスフィンクス。
接敵しているケプリごと火炎弾がメイジを焼き尽くさんとし、多大なダメージを与えていく。
何とかしようとメイジは新しい魔法を発動させる。
【エクスプロージョン・ナウ】
「このっ、離れなさい! はぁ!」
『ぐぉっ!?』
対象に爆発の魔法エクスプロージョンによって、ケプリを吹き飛ばす。
だが先程の火炎弾の攻撃が体に響いたのか、体に痛みが駆け巡ってよろけるメイジ。
その隙をついて、今度はスフィンクスが一気に距離を詰めてきた。
『くらいなさい!』
「きゃああああ!?」
スフィンクスが繰り出した剣による一撃がメイジの捉えた。
今まで受けてきたダメージが限界を超えて、地面へと転がりながら変身が解ける。
メイジに変身していた一人の少女……『稲森真由』は痛みに耐えながらスフィンクスを見やる。
「く、うぅ……!」
『終わりですよ、魔法使い』
「……!」
喉元に突き付けられたスフィンクスの剣のひんやりとした感触が伝わる。
敵は自分を絶望させてファントムにする気もなく、ただ殺そうとしている。
何もできないまま死を待つのか……遠くの方では仲間である凛子と瞬平が叫ぶ声が聞こえる。
「「真由ちゃん!」」
『邪魔はさせんぞ!』
どうにかして助けようと近づく二人の元へケプリが襲い掛かり、万事休すの状態に立たされる。
このまま何もできず死ぬのか……、真由は思った。
誰もが絶望的な状況だと思う中、その声は唐突に聞こえてきた。
「ちょっといいかな、そこの人」
『ん?』
「ていっ」
真由に剣を向けて周囲に注意をかけていたスフィンクスは呼びかけられるまでその声に気づかなかった。
不意に振り向こうとした瞬間、ひざの内側に押されてよろめいた。
スフィンクスがバランスを崩したところに何者かが真由を抱えて一気に離れた。
あまりの早業にその場にいた真由も、ケプリの攻撃を何とか避けていた凛子と瞬平は驚いてた。
一体誰が助けたのか、そう思って見てみると……。
そこにいたのは余裕綽々な笑みを向ける、一人の青年……。
「晴人、さん?」
真由は幻視したのは晴人の笑顔……どこにでもいるお兄さんであること隠し、絶望を希望に変える魔法使いとして戦ってきた彼の姿。
まさか、彼が助けに来たのか……真由はそう思った。
だが実際にそこいたのは、自分達が求めた彼ではなく、高校生である自分より一つか二つの年下の少年だった。
少年は気軽に喋りかけてきた。
「やぁ、お姉さん。大丈夫かい?」
「君は……」
「あなたのような美人のお姉さんを助けられてよかった。うん、実に幸運なことだ」
真由を助け出した事に喜ぶ少年はまるで踊るように彼女の体を抱きかかえる。
まるでこの場を戦場とも思わぬ少年の振る舞いに真由と凛子と瞬平、そしてファントム達は戸惑った。
「あ、あの、助けてくれたのはいいけど」
「ああ、大丈夫大丈夫。俺も戦うよ」
「えっ、戦うって……?」
その少年――統人は奇妙な魔法陣が描かれたバックル"タロットベルト"を腰に装着、さらにカードホルダーから取り出した
【The・Fool!】
「―――変身」
【Reverse・Fool!】
タロットベルトから放たれた等身大の光のカードが浮かび上がって目の前に展開、光のカードは統人の身体を変化させていく。
黒いボディに灰色の装甲と変わり、やがて変化を終えて現れたのは……金色の複眼を持った仮面の戦士。
統人が変身を遂げた仮面ライダーアルカナ・フールフォームの登場に誰もが驚いた。
「変身……した?」
「あ、新しい魔法使い!?」
「晴人君や真由ちゃん達以外にもいたの!?」
真由、瞬平、凛子と声を上げて驚愕し、アルカナの姿をまじまじと見る。
ウィザードドライバーや真由が使っている
アルカナの姿も自分たちがよく知る変身した魔法使いの姿とは異なっており、一番目を引くのはタロットカードで変身したこと。
自分達の知らないライダーの登場に三人は見守るしかなかった。
「さぁて、やりますか!」
余裕ありげなセリフと共にケプリとスフィンクスへと飛び掛かるアルカナ。
謎の戦士の登場にケプリとスフィンクスは顔を見合わせるも、自分達に向かってくるアルカナを迎え撃った。
「ハァ!」
『オラァ!』
ケプリが繰り出した怪力を宿した拳とアルカナのパンチがぶつかり合う。
だが自身の数倍の重さを持ち上げる怪力と硬質な外骨格で覆われた強固な肉体を併せ持ったケプリの拳にパワー負けし、アルカナは軽く宙へと放り出されてしまう。
そこへスフィンクスが杖から繰り出した火炎弾が飛んでくる。
『くらいなさい!』
「おっとあぶない!」
【The・Hierophant】
スフィンクスの火炎弾が直撃する直前、アルカナは咄嗟に一枚のカードをタロットベルトにかざした。
その直後、爆炎に飲み込まれるアルカナ……突如出てきた割にはあっけない退場だったと思うスフィンクスとケプリは次の対象を真由達へと移そうとする。
だが、爆炎の中から聞こえてきた電子音声に驚き、振り向いた。
【Reverse・Hierophant】
「よっと、間に合ってよかったよかった」
爆炎が収まると、そこから現れたのはアルカナの姿だった、
片手には大きな5角形の盾・ハイエロファントシールドが装備されおり、コレでスフィンクスの火炎弾を防いだのだろう。
ハイエロファントシールドを構えながら、アルカナは走り出す。
「いくぜ……ハッ!」
『同じように突っ込んできて!』
先程と同じく再び突っ込んできたアルカナを自身の怪力で迎え撃とうとするアルカナ。
そのままハイエロファントシールドを構えて突っ込むアルカナを受け止めるケプリ……だがそこへ、新たなる電子音声が聞こえてきた。
【The・Sun】
「太陽の光、召し上がれ」
【Reverse・Sun】
『なにっ……ぐああああああああ!?』
ハイエロファントシールドを構えて姿を遮ってるアルカナが繰り出したのは、目を瞑ってしまうほどの光量を放つ『光の球』。
立てた人差し指の先に集まった光の一撃『サンライトフレア』をケプリの懐へ浴びせ、外骨格の巨体を軽く吹っ飛ばして行った。
重量級のファントムでもあるケプリが宙を舞う光景を見てスフィンクスは衝撃を受けた。
『ケプリ!? なんなんだ貴様の魔法は!?』
「魔法? 違う違う、神秘の力なのは同じだけど、その実全くの別物だから」
未知の魔法とと戸惑うスフィンクスにアルカナは否定した。
アルカナカードによる神秘の力に恐れ戦くスフィンクスは杖から出したリボンのような物で身体を覆い、金色に光らせる。
その瞬間、リボンに包まれたスフィンクスの姿は消え、アルカナの傍に現れる。
両眼を光らせ、体から高熱を発して焼き尽くそうとする……だが、それをさせまいとアルカナはハイエロファントシールドをぶつけた。
「あらよっと!」
『無駄だ! この高熱を遮ることできると思うな!』
「遮るんじゃないよ、
高熱を纏い始めるスフィンクス目掛けてハイエロファントシールドを押し付けるアルカナ。
一見ごり押し以外の何の意味もない行動に一瞬呆れたスフィンクスはそのままアルカナを焼き尽くそうと図る。
だが、それが過ちだったと気づいたのは、アルカナの持つ盾が高熱を吸収していると気づいた時だった。
『な、なに!?』
「そーら、いただいた! ハッ!」
スフィンクスの高熱をたんまりと頂いたアルカナはシールドを突き出して弾き飛ばすと、そのまま
【Final Turn・Hierophant】
「――――ハイエロファントカウンター!」
アルカナが投げたハイエロファントシールドが回転しながら飛んでいき、スフィンクスとケプリへと迫る。
二人は何とか防ごうと図るも、シールドは光のオーラを帯びて真っ直ぐとファントム達の方向へと向かっていく。
そして一閃、瞬く間にハイエロファントシールドによる鋭い一撃をお見舞いする必殺技『ハイエロファントカウンター』を受けたケプリとスフィンクスは地面へと倒れ伏した。
『ぐ、ぐぉぉぉぉ……』
『ば、馬鹿な……我々ファントムが、魔法使いでもない奴に負けるなどッ』
倒れ伏したケプリの傍で自分の敗北が信じられないスフィンクスはゆっくりと膝をつき……二人そろって、爆発を起こした。
撃破の証である爆炎を背に、アルカナは一人言葉を述べた。
「俺は魔法使い、じゃなくて占い師だよ。そこんところ、覚えておいて」
「……占い師」
二体のファントムを撃破した光景を瞬平と凛子に担がれながら見ていた真由は、アルカナの告げた言葉を思わず口にする。
魔法使いとは異なる、希望を守る戦士に真由達はこの日、巡り合ったのであった。
――これは、数年前の統人ととある魔法使いの出会い。
――いずれやってくる二人の神秘の戦士が巻き込まれる戦いへの序章になるとは、まだ誰も知らなかった。