仮面ライダーアルカナ -Battle to Tarot- 作:地水
真依が出会うは"とある探偵の仲間"、短いながらも心通わせる時間が今始まる。
それはとある占い客から始まった出会いだった。
私、星詠真依は『ある人物』と突然遭遇した。
同じ『仮面ライダー』という隣人を持った彼女と……。
その日は珍しく統人の元には悩みを抱えたお客さんはやって来なかった。
統人自身は『たまにはこんな暇な時には日もあるだろう』と余裕ぶって言っておきながら、閑古鳥が鳴く現状を許しては置けなかった。
丁度授業を終えて立ち寄った私もそんな彼の様子を見ていた。
「ねぇ統人、今日は店を切り上げていいんじゃない?」
「そういうわけにもいかないって真依ちゃん。俺が好きで選んでやってるわけだから」
「とはいってもお客さん全然来ないじゃん」
「ツキが巡って来ないねぇ……なーんかこういう時、美人なお客さんでも来ないかなぁ」
気怠そうに呟く統人に、何かムッとなった私は彼を睨む。
彼は気づいていなのか、それともスルーしているのか、鋭い視線を何ともリアクションをせずに周りを観察していた。
すると、何かを見つけて勢いよく立ち上がった。
「あ、あれは………!?」
「なに、どうしたの?」
統人が見つめている先を辿っていくと、―――そこに立っていたのは一人の若い女性。
腰まで届くほどの藤色の長髪、細身ながらも出ている所が出ている体型、何よりも目を引くのはその整った顔立ち。
ファッション雑誌のセンターにいる一流モデルといっても過言じゃない美貌を持った彼女の美しさに思わず息を呑んだ。
「凄い……ねえ統人、あの人綺麗………って、統人?」
私が統人の肩を叩こうとして空回った事で既に傍らにいない事に気づく。
ふと視線を美女の方へと戻せば、いつのまにか移動していた統人が爽やかな笑顔で声をかけていた。
「やぁどうも、
「……もしかして私の事言ってるの?」
「ええそうとも、あなたが何かを探しているとみてお声をかけた次第です。この占い師御崎統人があなたの
「助言……探し物……」
統人の言葉を聞いて少しの間考える仕草をする美女の人。
そして何かを決意したように彼女は話し出す。
「私、探しているの……時の記憶を」
~~~~~
喫茶・星詠。
私の家でもあるココへ話を移して、依頼人の美女……『ときめ』さんの話を伺った。
話によると彼女は風都という東京の隣の方にある街にて"探偵の助手"をしているらしい。
彼女が東京まで足を運んだのは、いわゆる探し物である『時の記憶』がこの東京へ持ち込まれて追ってきたらしい。
「つまり、ときめさんが探しているのはその魔性の小箱ってわけ」
「うん……その少し訳ありでね」
ときめさんは暗い顔を落とした。
どうやら迂闊に踏み込んではいけない所を踏み込んでしまって悪い気分になる。
一方で私の隣に座る統人も、先程の笑顔とは異なる真面目な表情で眉を潜めていた。
「それにしてもガイアメモリ、か」
「知ってるの?」
「……風都ってところにはいろいろとよくない噂があってね。その一つが『ガイアメモリ』って犯罪ツールさ」
統人が真剣な表情をする時は、決まってドラウ怪人のような脅威と戦う事になる時だ。
いつも真面目な表情なら文句なしでカッコいいのに……そう柄にもなく変な事を思いながら、私は統人の話の続きを聞いた。
「ガイアメモリ、とある犯罪組織がばら撒いていたUSB型メモリ型のアイテムで、人体に挿入すればその記憶を宿した超人・ドーパントへとなれるんだ」
「それって……まるでドラウ怪人みたいじゃない」
「ドラウ怪人……」
私の口に出した"ドラウ怪人"と聞いてときめさんが不思議そうに口にする。
咄嗟に誤魔化そうとするけど、それより先にときめさんが統人へ聞いてきた。
「ところであなた、ガイアメモリやドーパントの事を知ってるの?」
「そりゃあ、あれだけ色々ばら撒かれていたら風都以外にもドーパントと遭遇しますって」
「……ッ!ドーパントと出会ったの!?」
「あー……まあ、俺のドーパント遭遇話は置いといて、本題に戻りましょうか」
驚くときめさんを統人は笑顔で宥めながら、彼女の探している
取り出したのは、普段変身や戦いに使用しているあのアルカナカード達。
見たこともないタロットカードという目でときめさんが不思議そうに見ていると、統人はアルカナカードをシャッフルしながら、一枚一枚並べていく。
やがて並べられたアルカナカードを見て、統人は意味深に頷いた。
「ふぅむ、なるほど」
「どうだったの統人?」
「端的に言って、失せものはすぐに見つかることはできるね」
統人の言葉を聞いてパァッと表情が明るくなるときめさん。
だけど統人は真剣な表情で話の続きを口にした。
「だけど、それが解決するかとなるとまた話は別だな」
「「話は別?」」
「これは俺が語る確証もないたとえ話なんだが……ときめさんの言う探偵が今現在追っかけている所だ。だがしかし、
「人間じゃないってどういうこと?」
「さぁてね……こっから先は君の払うものじゃ足りないから言わないけどね」
ときめさんの問いにそっけなく答えた統人はアルカナカードを手元に集めて回収し、席から立ち上がる。
そしてカウンター席へ向かって身を乗り出すと、珈琲豆を挽いていたおじいちゃんの仙一に注文をしていた。
「マスター、あそこの女神様にとびっきりのカツサンドとブレンド一つごちそうしてやってくれ。俺の奢りだ」
「気前がいいな。お前さん」
「美しい彼女へ何か恵んでもらっても罰は当たらないさ」
自信たっぷりな笑顔をおじいちゃんに向けた統人は紙幣を渡すと、私とときめさんに手を振りながら去っていった。
ときめさんは統人の後を追おうとするも、立ち上がる前におじいちゃんお手製のカツサンドが運び込まれた。
「お待ちどう、ささ、美味しいうちに召し上がれ」
「あ、ありがとうございます」
ときめさんはおじいちゃんに会釈をした後、カツサンドを手にして齧り付いた、
味が気に入ったのか美味しそうに食べる彼女へ私はフォローを出すことにした。
「ええっと、大丈夫ですよときめさん。統人なら戻ってきますので」
「御崎統人……か、一つ彼の事を聞いてもいいかな」
「なんでしょうか?」
カツサンドの一つを食べ終えて、手に付いたソースをなめながらときめさんは私へ聞いてきた。
統人のもう一つの顔であるその名を口にして……。
「彼、仮面ライダーなの?」
「―――えええっ!?なんでそれをっ!?」
ときめさんの口から出てきた言葉に私は驚いた。
仮面ライダーアルカナ……統人が変身する、素顔を仮面に隠した戦士。
アルカナカードを用いて戦い、人々を不幸に陥れる怪人達・ドラウ怪人から世の中を守っているヒーロー。
以前アルカナ以外にも仮面ライダーはいる様子で、事実とある事件で同じ"占い師の仮面ライダー"と遭遇したことはあるが、そうそう慣れるもんじゃない。
驚く私のリアクションを見て、ときめさんは笑って答えた。
「なんだ、じゃあ私とあなたは同じか」
「お、同じって?」
「あの人を見ていて気付いたの。私の探偵と同じ雰囲気を持っているって……私の探偵も、仮面ライダーなの」
「えっ……つまり仮面ライダーのお仲間?」
突然のカミングアウトに混乱する私。
まさかの仮面ライダーという隣人を持っている者同士、遭遇するとは思ってもみなかった。
私は恐る恐る訊ねてみる。
「ときめさんの言う仮面ライダーって、どんなライダーなんですか?」
「仮面ライダーダブルって言ってね、6本のガイアメモリで切り替えて戦うの」
「へぇ、そうなんですか。統人の変身するライダー……あ、アルカナって名前なんですけど、20枚近くのカードで戦うんですよ」
「20枚も?それって大変じゃないの?」
「ふふっ、実はさっき使っていたタロットカードがそれなんですよ」
「えっ、あれが?全然見えなかった」
「ですよね、統人ってば何自分の大切なカードを商売道具に使っちゃって」
「アイテムを大切に扱うだけいいよ。翔太郎なんて私と出会った頃はガイアメモリを相棒に預けてドーパントと対峙していたんだから」
「翔太郎?」
「あっ、私の探偵の名前。左翔太郎って言うんだけどね」
私はときめさんはいつしか楽しく話の輪を広げていく。
内容は大体、統人の事とか翔太郎さんのこととかの話題になっていた。
カウンター席の奥の方でおじいちゃんが楽しく会話を聞き流しながら、午後のティータイムは過ぎていった。
~~~~~
同時刻、東京の某所。
1人の仮面ライダーがとある怪人と対峙していた。
一方は緑の右半身、黒の左半身、そしてWの模した角と赤い複眼を持った仮面ライダー。
彼こそは『仮面ライダー
そしてもう一方は背中に映えた大きな翼が特徴のフクロウにもミミズクにも見える猛禽類の鳥怪人。胸部には時計を模したパーツが取り付けられている。
最初は新手のドーパントかと思ったダブルだったが、以前遭遇した"オウルドーパント"とは全く異なる似ても似つかない姿をしている。
コイツがタイムメモリを風都の外へ持ち出した犯人と分かった今、ダブルは追い詰めようとする。
「よーやく見つけたぜ時間泥棒、お前何者だ?」
『少なくともドーパントじゃないのは確かだ』
「いかにも、我が名はドラウ怪人が一人……オウルドラウ」
猛禽類の鳥怪人……オウルドラウは女性的な声で自ら名乗った。
聞き覚えのない怪人の名前を聞いて、ダブルは困惑する。
『「ドラウ怪人?」』
「聞いたこともないな」
『実に興味深いが……検索している暇はない。いくよ、翔太郎』
先手必勝、先に攻撃を仕掛けようと接近戦によって殴り掛かっていくダブル。
オウルドラウは両手でダブルの拳を捌いていき、逆に背中の翼を羽ばたかせて強風を浴びせる。
一瞬怯んだダブルに隙を見てオウルドラウは上空へと飛び上がる。
「待ちやがれ!……って、ん!?」
後を追って見上げたダブルは驚く。
何処にも姿がない……飛び上がってすぐ追いかけたはずが、上空には飛んでいる姿がない。
一体どこに行った?思考を巡らすダブルの背後から凶翼が迫りくる。
「シャア!!」
『後ろだ!』
「なに!?ぐあっ!?」
無音のまま襲来してきたオウルドラウが繰り出した足蹴りにダブルは背中から受けてしまう。
地面へ転がりながらも受け身ですぐに体勢を立て直したダブルはサイクロンメモリによって手足に旋風を纏わせながら応戦を図る。
「コイツ、いつの間に後ろに現れた!?おっらぁ!!」
「ハッ!!」
ダブルの繰り出した風を纏わせた一撃を羽ばたいて避けると、オウルドラウは再び上空へ舞い上がる。
今の組み合わせじゃ相性が悪いと判断したダブルは、ダブルドライバーに装填された二つのメモリを取り外し、黄色と青のガイアメモリを取り出す。
【LUNA】
【TRIGGER】
【LUNA/TRIGGER】
右半身が黄色、左半身は青色とそれぞれ変わり、幻惑の射手『ダブル・ルナトリガー』へと変化を遂げたダブルは、左胸に出現した大型銃・トリガーマグナムを手にして構える。
上空にて滞空しているオウルドラウへ狙いを定めて引き金を引いた。銃口から放たれたビーム弾は不規則な軌道を描きながら向かっていく。
従来の相手ならば当たるはずの銃撃……しかし、迫るビーム弾に気づいたオウルドラウが行動を起こす。
「ハァッ!!」
胸部の時計のパーツから赤い光が放たれ、トリガーマグナムのビーム弾へと直撃。するとオウルドラウに迫っていたビーム弾の速度がまるで再生速度を遅くしたようにゆっくりとした速度になってしまう。
オウルドラウが掻い潜った後にビーム弾はぶつかり合って消失、これにはダブルも驚きの声を上げる。
「何だ今の!?」
『何かがおかしい……僕の方をサイクロンに変えてもう一度だ』
「あん?わかった!」
【CYCLONE】
【CYCLONE/TRIGGER】
ダブルは再びサイクロンメモリをルナメモリと取り換える形で装填、疾風の射手『ダブル・サイクロントリガー』へと変わり、トリガーマグナムから風の銃弾を放つ。
今度は音速にも近い速度の銃撃がオウルドラウへ襲い掛かるが、再び胸の時計パーツが光り出す。
「遅い!」
オウルドラウから放たれた青い光が自分自身を包み込むと、飛行速度が極端に上がり、サイクロントリガーの弾幕を掻い潜っていく。
そのままの高速のスピードのままダブルへと急降下のまま突っ込んでいき、腹部目掛けて蹴り飛ばした。
「とりゃああ!!」
『「うわあああああ!?」』
鋭い一撃を食らって軽く吹き飛んでいくダブル。
地面へと倒れこんだ後、オウルドラウの能力による"不可解な絡繰り"を察した。
『あの怪人、あの胸から放たれた光を浴びた対象の時間を操っているのか!?』
「おいおい、どこの漫画のラスボスだ!?ぐっ!?」
「諦めろ仮面ライダー、この小箱を以て私は次なる段階へと昇る!」
オウルドラウはダブルを踏みつけながら、その手に持った時計の針を模したTのイニシャルが刻まれたガイアメモリ……タイムメモリを掲げる。
何かするつもりか……そう思ったダブルはトリガーマグナムを向けようとするも、持っていた右手ごと蹴り飛ばされて抑えられる。
万事休すか……そうダブルが思ったとき、聞きなれない電子音声が聞こえてきた。
【The・Temperance】
【Reverse・Temperance】
「なに!?ぐあぁ!?」
突如オウルドラウに襲い掛かったのは無数のエネルギー弾。
軽く吹き飛ばされたオウルドラウから拘束を免れたダブルは、エネルギー弾が放たれた方向を見やる。
そこに立っていたのは自分達が見知らぬ仮面の戦士……。
「やぁ、どうも。先輩」
「せ、先輩だぁ?」
『君は一体何者なんだ?』
「―――仮面ライダーアルカナ、よろしく」
御崎統人が変身した『仮面ライダーアルカナ』は、両手に握ったテンバランスショットを回転させながらダブルに名乗った。
探偵と占い師、二人の仮面ライダーが今ここに邂逅した。
余談
タイムメモリ:仮面ライダーW本編にて登場したミュージアムが発売しているガイアメモリの中の一本として登場した時間の記憶を内包したガイアメモリ。
あくまで売られているガイアメモリの中の一本として登場しただけで、ドーパントの姿やその能力は不明。
もしも劇中で披露されたのであれば、時間に関する能力を披露したと推測されるが、時間というだけあって本編のバイラスメモリのような多大なリスクもあったと予測される。