仮面ライダーアルカナ -Battle to Tarot- 作:地水
彼ら視点での夏祭りの話を、ここでお披露目します。
夏祭りだよ、全員集合!
それは、とある暑い夏の日の事。
東京・頼打地区、とある神社の近くにて、とある祭りが開かれていた。
『頼打地区納涼祭り』、所謂夏祭りの一つである。
頼打地区でも名物イベントの一つでもある催し物は、多くの来客がやってきていた。
無論、ここにやってくるのは一般人だけではなかった。
それは人類の愛と平和を守る大自然の戦士『仮面ライダー』も例外ではなかった。
夏祭り会場、入口。
既に多くの屋台が立ち並ぶ光景が目に映る中、二人の男女が入ろうとしていた。
一人は黒髪に金色の瞳を持った青年・御崎統人。またの名を戦う占い師・仮面ライダーアルカナ。
もう一人は藍色のポニーテールに紅の瞳を持つ少女・星詠真依。統人を支えるごく普通の女子高生。
二人はいつもと違う服装を纏って、この納涼祭りへとやってきた。
「人が多いもんだねぇ。ねぇ真依ちゃん」
「これほどいっぱいいるなんて……やっぱり来る人多いのかな」
いつものように他愛もない話を広げる二人。
だがその姿はいつものような現代の服ではなく、夏祭りなどによく着る浴衣となっていた。
統人は白地に黄色いアサガオの模様が描かれた男物の浴衣。
真依は黒字に群青色のヒマワリの模様が描かれた女性ものの浴衣に加え、花飾りを髪に差していた。
どちらも綺麗に着飾った二人は、これから行われる夏祭りを楽しもうとここまで歩いてきたのだ。
「しっかし人がこれほど集まるってことはきっと楽しいことはお墨付きなんだろうねぇ」
「じゃあ早速入ってみる? 統人?」
「そうだね、入ってみようか……とと、忘れていたよ」
「なに?」
統人と共に会場へと足を踏み入れようとした真依だったが、統人の言葉にひっかかって振り向いた。
そこには真依に向かって手を差し出す統人の姿があった。
いつものような笑顔を向けて統人は口角を綻ばせて彼女に言った。
「ほら、手を繋ごうよ。こんな人が多いんじゃ逸れた時大変だから」
「ふぅん……そう言って、私に触りたいんじゃないの?」
「バレた?」
「……別にいいよ。統人って物好きなんだから、女の子だったら誰でも声かけるくせに私がお気に入りみたいでさ」
ぶつくさと文句も言いつつも、真依は差し出された統人の手を握り、指を絡ませる。
そんな彼女の姿を見ながら笑みを絶やさない統人。
余裕綽々な笑顔を向けられ、真依はそっぽを向けながら、共に夏祭り会場へと入っていった。
統人と真依が最初にやってきたお店は、射的屋だった。
棚の上には数々の景品が置かれており、品揃えは意外にもよかった。
二人はこの店で遊ぶことにすると、どの景品を狙うか相談し始める。
「うーん、どれ狙おうか。統人」
「何かこれ欲しいってものある?」
「そうだなぁ、ゲーム機……ってあれはもう統人が持ってるからいいや」
「あんまり大きいものだと持ち運ぶのに面倒だからね」
「そっか、お祭り始まったばかりだから。んじゃあ……あのキャラメルでいいか」
「OK、キャラメルね。任せて」
統人は店主から受け取ったコルク銃を構えると、景品の品へと狙いを定める。
数分間を置いたのち、統人は引き金に指をかけた。
パシュン、と軽い音が鳴った後、コトンと落ちる音が聞こえてきた。
すぐさま店主が景品のキャラメルを統人へと渡し、受け取った統人は真依に見せる。
「はい、ゲットしたよ」
「上手いね、射撃の才能もあったんだ」
「ふふっ、だって俺現役だもの」
「ああ、そっか。撃ってるもんね」
射撃に関して『現役』と答えた統人に対し、真衣が思い浮かべたのは彼が変身するアルカナの姿。
アルカナの使うアルカナカードの効果の一つ・テンバランスショットを用いた銃撃をよくやっているため、射撃の腕もあるのだと真依は解釈した。
統人の戦闘技術がこんなところで活躍するとは予想外だった真依は受け取ったキャラメルを手に持ってるきんちゃく袋にいれると、統人と共に射的屋を後にした。
次に足を踏み入れたのは、香ばしい匂いが漂う食べ物の出店。
焼きそば、たこ焼き、お好み焼きなどの料理が熱気と共に美味しさを五感に刺激しながら誘っていた。
統人も真依も、その匂いに釣られ、ここまで足を運んでしまった。
意外にも種類が多くて目移りする中、統人は話しかける。
「どれも美味しそうだねぇ」
「うぅぅ……これ、全部制覇できるかな」
「する気だったんだ。いや別にできなくはないけど、お腹大丈夫なの」
「うぬぬぬ……いろいろなものを食べてみたいなぁ」
普通の祭りより倍近くもあるその出店の量に、いろいろと食べ歩きたい真依も涙目になっている。
統人がそんな彼女の一面に対して笑っていると、二人に声をかける人物がいた。
「もし、そこのお二人さん。迷ってらっしゃるのですか?」
「「ん?」」
若い少女の声に呼ばれて、統人と真依が振り向くと、そこにいたのは一人の少女。
年は真依と同じくらい、黒字に赤い虞美人草の絵柄を纏った浴衣を身につけた白髪赤眼の美少女。
目に物見張るのは和服の上からでもわかる豊かな胸……恐らく脱げば凄い事を察した統人は彼女に話しかけようとするが、その前に真依が繰り出した肘鉄が脇腹に直撃。
痛がる統人を他所に、先に真依が少女へと訊ねた。
「えっと、あなたは?」
「私、雛罌粟烈火です。ここで少しお手伝いしているものです」
「お手伝い? お祭りの開催者とかそういう関係者ってこと?」
「まあそんなところですよ」
真依の問いかけに対して、にこやかな笑みを向けて語る少女――『雛罌粟烈火』。
何処か色っぽさを感じる笑みを向けられ、統人は内心『こういう子もいいなぁ』と呟き、それを察した真依は統人の尻へと手を回し、思いっきり抓った。
「あだだだだだだだっ」
「フフッ、仲睦まじい事で。これも何かの縁です。私が案内しましょう」
「えっ、案内?」
「真依ちゃん手を離していたい痛い……」
「さて、ここです」
真依が統人の尻を捻りつつ歩いていると、烈火によって目的の店へと辿り着いた。
そこは貝をはじめとした海鮮物を目の前で焼いてくれる海鮮焼き屋だった。
店の人と思わしき筋骨隆々のいかにも漁師らしい姿の男が手際よく貝を焼いていた。
「らっしゃい!」
「うわぁ! おっきな貝! 手のひらほどのおっきな貝があるよ!」
「ああ、美味そうだね」
「あたぼうよ。この俺が今朝取ってきたものだからな!」
店員の男は貝の事を自慢げに語る。
火が灯った網の上でジュウジュウと焼ける大振りの貝を見て、統人と真依は顔を見合わせる。
どうやら同じことを思っている……互いに考えている事を察した二人は店員の男に対し、注文をした。
「「一人前を一つ!!」」
「へっ、あいよっと。せっかっくだ、多めに持ってやるよ」
口に出した言葉が被った事に上機嫌な男は、焼き上がった海鮮物をプラスチックのトレー皿に盛って、二人へと渡す。
白い湯気が立つ貝や焼き魚の切り身に食欲をそそられた統人と真依は、添えられた爪楊枝を使い、刺して口に運んだ。
「「はむっ」」
「どうだ?美味いか?」
「「………………ッ!!」」
「その様子だと、言葉にならないほどに美味しいみたいですね」
統人と真依が口にした瞬間、目を見開き、その味を吟味するように味わっていく。
無言になるほどの貝の歯ごたえある触感と醤油をベースにした味付けが口内で広がる。
その美味さが表情にもうかがえている事に、烈火はクスリと笑っていた。
「どうですか? 海鮮焼き以外にもたこ焼きとかお好み焼きも美味しいですよ」
「なんたって、焼き物に関しちゃお前さんがプロデュースしているからな」
「もちろんですよ、プロですから」
「いや、確かに焼く燃やすのはプロだけど、食材に限った話じゃねえよな!? お前の場合は!?」
店員の男のツッコミに対して笑って誤魔化す烈火。
二人の漫才じみたやりとりを繰り広げながら、統人と真依は焼かれた海鮮物を味わっていた。
海鮮物を食べ終えて、海鮮焼き屋から統人と真依がやってきたのはたこ焼き屋だった。
そこでは多少の行列が出来ており、その人気の高さが伺えている。
「うわぁ、人気だねぇ。美味しいのかな」
「これはなかなか時間かかりそうだねぇ」
「でもさっき海鮮焼き食べたし、もう少し歩いていたいよね」
「そうだね、あとで立ち寄るか……んん?」
行列が並んでいるたこ焼き屋を後にしようとする統人だったが、とある光景が目について足を止める。
真依も気になり視線を辿ってみると、そこにはベンチに座る若い男女がいた。
「一登君、あーん」
「あ、あーんって……優奈さぁ、たこ焼きぐらい一人で食えるって」
「いいからいいから、ほら、口開けてよ。私だってこうしてるのも恥ずかしいんだから」
「そ、そっか……あーん」
黒髪の中性的な外見の少年――『夏川一登』と、栗色の髪色をした少女『飛鳥優奈』。
片や黒を基調とした甚兵衛、片や白地に赤い金魚が描かれた浴衣を纏った彼らはたこ焼きを食べさせあっていた。
優奈が差し出した串にささったたこ焼きを、恐る恐る口にして食べる一登。
モグモグと咀嚼し、味を確かめる一登は目を輝かせた。
「おぉ、美味しいなたこ焼き。優奈も食ってみろよ」
「そうなの? 私は初めて夏祭りに来たから新鮮だな」
「ああ、昔祭り行った時に食ったたこ焼きを彷彿とさせるぜ。こっちの方が美味い気がするな」
「そっか、私も食べよっと」
一登の昔の思い出に触れて、優奈も興味津々にたこ焼きへと串を伸ばそうとする。
だがその前に一登が優奈の串をかすめ取り、すぐさまたこ焼きの一つを刺し、優奈の目の前に差し出す。
「はい、優奈、あーん」
「ふぇっ、か、一登くん!?」
「優奈だけしないのなんて、許さないからな。ほら、あーん」
「え、えっと……あーん」
一登に差し出されたたこ焼きを恥ずかしそうに優奈は口にして食べる。
数度噛み締めて優奈は唸り声を上げて美味しいと呟いた。
「美味しい、たこ焼きってこんなに美味しいんだ」
「だろ? 美味しいだろ?」
「うん……もしかしたら一登君と一緒にいるから余計に美味しいと感じるかもしれないけど」
「ん? どうしてだ?」
「私の家って夏祭り行く機会がなくてね。友達も成績を競う相手しかなかったから。こうして夏祭り行く事ってなかったの」
「……優奈」
優奈の夏祭りの事を聞いた一登はしんみりとした表情を浮かべる。
夏祭りに思い出がない笑顔を向ける優奈に対し、何かの決めた顔をすると、一登は優奈の手を握りしめる。
いきなりの行動に優奈は顔を赤らめながら驚いた。
「か、一登君……!?」
「これから思い出作っていけるさ。何度もキミと一緒に夏祭り行けるように頑張るから」
「ありがとう……うん、嬉しい」
「こっちこそ、出会えてありがとう」
互いに見つめあう一登と優奈……その嬉しそうな表情が二人の顔に浮かべていた。
彼ら二人の仲睦まじい様子に、統人は静かに見つめ……そして笑顔を向けるのであった。
「フフッ、お幸せに」
「統人?」
「俺達はお邪魔にならないように、クールに去るとしますか」
一登と優奈、まるで比翼の鳥の如く仲のいい彼らを横目に、統人は真依を連れて去っていった。
―――そう遠くない未来、何処かで共闘する縁を感じながら。
やがて、様々な屋台を巡り、思いっきり楽しんだ統人達。
時間も夕暮れから夜になり、夏の夜空に広がる星々が輝いていた。
統人も真依も祭りの中心にある中央部分へとやってくると、そこには多くの人が集まっていた。
「何が始まるんだろう」
「お祭りと言ったら、欠かせないのがアレだよね
「あれって?」
「まあまあ、見てのお楽しみだよ」
首を傾げる真依に対し、統人の悪戯めいた顔を浮かべる。
やがて、人々が多く集まる中、『それ』が始まった。
ヒューと風を切る音が鳴った後、暗くなった夜空に咲くのは、色鮮やかな大輪の花。
夏祭り名物・花火が始まり、祭りに参加していた人々は上を見上げた。
『おい、アカツキにセレナ。花火が上がってるぜ』
「お、ホントだ。綺麗だなぁ」
「わぁ……今年も凄いです」
「おー、始まった始まった。いいねぇ、よ、たまやー」
「花火はいいものですね。どれ、いっちょ私も一つド派手な花火を」
「やめなさい」
「わぁ、綺麗……!」
「本当にきれいだなぁ」
「一登君、また一緒に花火見ようね」
「来年も、その次の年も、一緒にな」
「わっはぁ! 花火だ花火! ソードオブロゴスの皆にも見せてあげなくちゃ!」
それぞれの場所、それぞれの思いで夜空に咲く花火を見つめる夏祭りの人々。
統人達も例外ではなく、次々と打ちあがる花火を楽しんでいた。
「綺麗だね、統人」
「うん真依ちゃん、綺麗だよね。花火」
「これが、統人が守ってきている平和なんだね」
「これは一つに過ぎないさ。俺達仮面ライダーはこんな些細な日常を守るために戦ってきているんだ。今までもこれからも」
人々を守る仮面ライダーの事を思い、真依は統人の傍に寄り添う。
今も怪人達と戦い続ける彼を、せめて一時だけでも癒してあげたい……そう想いを募らせる真依。
……そんな彼女の考えている事を何となく察した統人は、甘んじて寄り添う彼女を肩を抱く形で受け止めていた。
―――これは夏の祭りで起きた一時の夢の時間の話。
―――『仮面ライダー達』の何気ない日常の断片である。
出典作品
仮面ライダーフレア Dragon Knight Apocrypha
→https://syosetu.org/novel/247895/
仮面ライダージェイナス
→https://syosetu.org/novel/249114/
仮面ライダーディボーン
→https://syosetu.org/novel/263645/
魔剣列伝 仮面ライダーセイバースピンオフ
→https://syosetu.org/novel/252586/