バディファイト×ラブライブ!~鉄の意志、天と花を導いて~   作:巻波 彩灯

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 どうも、巻波です。今回はファイト回です。

 今作品も旧ルールで行っていますので、あしからず。いつになったら、現行ルールでファイトするのやら……。

 感想欄で指摘されたので、今作のドラムについて、あらかじめ説明しておきます。
 今作のドラムは通常のドラゴンワールドのモンスターではなく、デンジャーワールドのモンスターです。
 名前に「アーマナイト」と付いているので、分かっていた方もいらっしゃるかと思いますが、分からなかった皆様には申し訳ございませんでした。

 前置きはここまでにして、また後書きでお会いしましょう。


第2話:おぼろげな思い出

「デンジャーワールドにゃ!」

 凛の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン

 

「れ、レジェンドワールド……」

 カスミの手札:6/ゲージ2/ライフ:10/バディ:七角地王 ドーン伯爵

 

「先攻はこっちからだ」

「最初はカードを引けば良いかにゃ?」

「いや、先攻は最初のターンだけドローできないぜ」

「じゃあ、どうすれば良いにゃ!?」

 凛の慌てている様子に「落ち着け」と正成は声をかける。「まず、チャージ&ドローしろ」言葉短めに指示を出した。

「チャージ&ドロー?」

「手札を1枚だけゲージに置いて、デッキから1枚引く事だぜ」

 ドラムの解説に「ゲージって言うところに置くのは、何でも良いのかにゃ?」また疑問を口に出す凛。「何でも良い。好きに選べ」正成が冷たい声音で後押しする。

 先攻の1ターン目は、ドローができない。だが、チャージ&ドローができる為、カード自体は引く事ができる。

 チャージ&ドローは任意の行動である故、敢えてしないという選択も取れるものの、しないという事は殆どないだろう。

 だから、正成は最初にチャージ&ドローをするように指示したのだ。

「分かったにゃ。チャージ&ドローにゃ!」

 凛の手札:6→5→6/ゲージ:2→3

 

 指示通り、凛は自分の手札から1枚をゲージに置き、カードを1枚引く。ここからが本題だ。

 メインフェイズ、モンスターのコールやアイテムの装備、魔法の使用ができる。メインと言われるだけあって、行動できる幅は大きい。このフェイズを使って、準備を整えるのだ。

「ドラムをライトにコールしてみろ」

 正成は凛の手札から1枚を指差す。「コールコストと書かれているところを読み上げてな」コールコストのところに注目するように促した。「それとコールする時は、バディコールと言うんだ」細かいところまで発言。ルールも何も知らない相手は、まずメインフェイズで躓く事が多い。やれる事が多い反面、何をすれば分からないからだ。

「〈アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン〉をライトにバディコールだにゃ!」

「っしゃ、後はオイラに任せろ!」

 ドラムは凛の右手手前に立つ。やはりと言うべきか、右腕のドリルが異様な存在感を放っていた。

「コストでゲージ2払い、デッキの上から1枚をソウルに入れるにゃ!」

「ついでにバディギフトで1点回復だ」

 凛の手札:6→5/ゲージ:3→1/ライフ:10→11/ライト:アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン(ソウル:1)

 

アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン

デンジャーワールド

種類:モンスター 属性:アーマナイト/武装騎竜/赤竜

サイズ2/攻8000/防2000/打撃2

■[コールコスト]デッキの上から1枚をソウルに入れて、ゲージ2払う。

■君がアイテムを装備しているなら、場のこのカードは[移動]を得る!

■[起動]“鋼鉄の友情!”君のライフが5以下ならゲージ2払い、君の手札1枚捨ててよい。そうしたら、このターン中、このカードと君が装備しているアイテムの打撃力を+3!「鋼鉄の友情!」は1ターンに1回だけ使える。

[ソウルガード]/[貫通]

「切磋琢磨って言葉があるだろ? ぶつかり合わなきゃ、何も磨かれねえんだ」

 

 元来のドラムバンカー・ドラゴンとはかけ離れた姿。ここまで機械と共存したドラムは中々見ないだろう。

 強さを彼なりに求めた結果が、今の姿なのだ。ドラゴンワールドとはまた違う強さが肌に合っていた。

「次はアイテムを装備してみるんだ」

 ドラムは振り返り、凛に助言する。彼の能力上、アイテムがなければ、全てを発揮できない。その為、アイテムを装備するように言ったのだ。

 凛はドラムに言われた通り、「え、えーと、〈如意槍 咢〉を装備だにゃ!」アイテムを装備する。穂先が竜の顎を彷彿させるようなデザインの赤い槍が目の前に出現。槍を手に取り、「こんなに軽いのかにゃ……」と凛は感銘を受ける。

 

 凛の手札:5→4/凛:如意槍 咢/ライト:アーマナイト・ドラム

 凛:如意槍 咢/攻6000/打撃1

 

「これでオイラは[移動]を得るぜ」

「[移動]って……?」

「それは後で説明するから、今は攻撃しようぜ」

「分かったにゃ?」

 そのまま凛は「アタックフェイズだにゃ!」と宣言し、武器を構える。「攻撃できる回数は決まっているかにゃ?」攻撃する前に正成の方へ顔を向けた。カードゲームに詳しい訳ではないが、必ずしも制限がある。

「最初の攻撃は1回だけだ」

 抑揚がない淡々とした口調で正成は答えた。決して彼女の質問にイラついていたり、不快に思っていたりしている訳ではない。それどころか、楽しんでさえいる。

 翡翠の双眸(そうぼう)は少しだけ細められていた。口の端もほんの僅かだが、吊り上がっている。些細な変化だが、彼なりの楽しんでいる表情なのだろう。非常に分かり辛いのが残念なところではあるが。

「じゃ、ここはドラムでアタックにゃ!」

「良い判断だぜ! 一丁、ぶっ飛ばすぜ」

 右腕のドリルは回転数を上げ、唸りを発する。回転数が上昇するにつれて、甲高い悲鳴ような音が響き渡っていく。

 そして、ドラムはカスミに向かって「ぶっ壊す! ドリル・ラム・ブロークン!」突貫していった。

「カスミちゃん、このカードを使ってみて」

 花陽があるカードを指差す。カスミは促されるまま、「キャスト、〈聖杯〉。攻撃を無効化する」カードを使った。

 黄金に輝く聖杯が、カスミとドラムの間に割って入り、ドラムのドリルを聖なる力で防ぐ。ドラムは、攻撃が通らなかった結果に、「やるな!」称賛の意を言って持ち場に戻る。

 

 カスミの手札:6→5

 

 僅かなやり取りだが、「カスミ、お前やった事あるのか?」正成は勘づく。花陽に指示されたから、スムーズに出せたのかもしれないが、彼女のプレイングに迷いがなかった。それなりにバディファイトを親しんでいた者に違いないと料簡を立てる。

「分からない」

 これまた首を横に振るカスミ。「けど、何となくこうすればいいって、分かった」感覚的なものだろうか。だとしたら、相当やり込んでいるプレイヤーだったんだなと正成は感じる。ただし、この場面で使って良かったかは別として。

「もうやる事ないにゃ~」

「じゃ、ターンエンドだな」

「次はカスミちゃんとかよちんの番だにゃ」

 凛の手札:4/ゲージ:1/ライフ:11/凛:咢/ライト:アーマナイト・ドラム

 

「じゃあ、ターンもらうね」

 自分達のターンになった事を確認する花陽。「私達はドローから初めて大丈夫だよ」カスミに最初にできる事を伝える。

 カスミは小さく頷き、「ドロー」とカードを1枚引く。「チャージ&ドローもして良いんだよね?」恐る恐る訊ねた。

「大丈夫だよ」

 花陽は優しい声音で答える。彼女の返答を聞いて、「じゃあ、チャージ&ドロー」カスミは手札を1枚ゲージに置いて、もう一度カードを1枚引いた。

 

 カスミの手札:5→6/ゲージ:2→3

 

「……〈赤い瞳のサキュバス〉をレフトにコール」

 カスミの手札:6→5/レフト:赤い瞳のサキュバス

 レフト:赤い瞳のサキュバス/サイズ1/攻3000/防2000/打撃1

 

 しばしの思索の後、カスミはレフトにモンスターをコールする。名前の通り、赤い瞳が印象的な女性型の悪魔――サキュバスが蠱惑(こわく)的な笑みを浮かべ、妖艶な体つきで誘惑するような仕草をして独特の雰囲気を醸し出していた。

 サキュバスは男性を魅了する悪魔なのだが、バディファイトのシステム上、力を抑えられている故に誰も反応していない。バディだった場合、日常面ではどうなるかは分からないが。

「サキュバスの効果を使うよ。〈七角地王 ドーン伯爵〉を捨てて、ゲージ1払い、カードを2枚ドロー」

 カスミの手札:5→4→6/ゲージ:3→2

 

 一切の迷いがない手つきで、カスミはサキュバスの能力を使い、手札を増やす。「そしてセンターに〈ウルフマン ガッツ〉をコール」彼女の真正面には、青い体毛に人狼が姿を現した。

 

 カスミの手札:6→5/レフト:サキュバス/センター:ウルフマン ガッツ

 センター:ウルフマン ガッツ/サイズ2/攻4000/防2000/打撃3

 

 ガッツはオレンジ色のベストとカーキ色のカーゴパンツと、まるでバディポリスの制服のような服装を着用している。一見、バディポリスに関係しているものかと誰もが目を疑うところだろう。

 バディポリスの隊員である正成にとっては、休日でも制服を目にする事になるとは思ってはいなかったのか、渋面でガッツを見つめる。せめて、休みの日だけは見たくなかった光景だと。

 正成の心境などよそに、カスミは次の行動を取る。躊躇いという躊躇いは全くないプレイングで。

「ライトに〈七角地王 ドーン伯爵〉をバディコール。バディギフトで1点回復」

 カスミの手札:5→4/ライフ:10→11/レフト:サキュバス/センター:ガッツ/ライト:七角地王 ドーン伯爵

 ライト:七角地王 ドーン伯爵/攻4000/防1000/打撃1

 

「ふむ、中々の手腕だな」

 彼女の右手前に移動したドーン伯爵が、カスミの方を見て言う。隣にいた花陽を同じ事を思っていたらしく、「初心者とは思えないよ」ただ驚嘆するばかり。実際、ここまで花陽の助けを一切借りないまま一つの準備を終えたのだから、初心者というには些か称するには適切ではないだろう。

「多分、やった事あるかも」

 緊張がほぐれてきたのか、強張っていたカスミの相好が崩れてきたようにも見える。「どこでやっていたとか、誰とやっていたとかは分からないけど」まだ記憶は不明瞭ままだ。

「そうか」

 ドーン伯爵は、それ以上追及する事なく凛達の方に向いた。「次はどうするのだ?」次の一手を待っている。

「次は……〈魔法剣 アゾット〉をゲージ1払って装備するよ」

 カスミの手札:4→3/ゲージ:2→1/カスミ:魔法剣 アゾット/レフト:サキュバス/センター:ガッツ/ライト:ドーン伯爵

 カスミ:魔法剣 アゾット/攻1000/打撃1

 

 絢爛(けんらん)な剣身には色の異なった五つの宝玉が埋め込まれ、剣としては異様な存在感を放っていた。注視すると鍔に三つ、柄尻に二つ、宝玉が嵌められている。質実剛健な凛の槍と正反対に、華美な装飾が施され、如何にこの剣が貴重かと誇示しているかのようだと見た者は思うだろう。

 魔法剣を手にしたカスミは、「アタックフェイズに入るね」ハッキリとした口調で宣言する。水色の双眸は、不安に揺らぐ事なく、真っ直ぐに凛の方を見つめていた。

 宣言を受けて、ドラムが「凛、オイラをセンターに移動させるんだ!」と令する。凛も迷う事なく、「ドラムをセンターに[移動]にゃ!」と叫んだ。

 

 アーマナイト・ドラム/ライト→センター

 

 凛を庇うように立つドラムは、右腕のドリルを盾として構える。繊細さの欠片など存在しない重厚なドリルは、時として盾としても役に立つ。頑丈でなければ、己の身を守る事ができない。故に少し大雑把すぎる兵器が、彼の命綱なのだ。

「サキュバスでドラムにアタックだよ」

 サキュバスは自身の魔力で作り上げたハート型の魔弾をドラムに向けて放つ。攻撃力ではサキュバスの方が上回っている。このままでは確実にドラムは破壊されるだろう。

「キャスト、〈闘魂合身〉だにゃ!」

「おっ、良い判断だな」

 あえて何も言わないでおこうと思った正成は、凛の判断に対して素直に感嘆の声を出す。恐らく先程のカスミのプレイングを見て、攻撃中にカードを出して良いと学んだのだろう。選んだカードも悪くない。

「このターン中、ドラムの防御力を凛が持っているアイテムの攻撃力分だけ上げて、[反撃]にゃ!」

 凛の手札:4→3

 センター:アーマナイト・ドラム/防2000→8000/[反撃]

 

「力が漲るぜぇー!」

 真紅のオーラに包まれ、ドラムの筋肉が膨張する。ドリルも回転数を上げていき、エンジン音が轟く。不敵に笑うドラムはサキュバスの魔弾をドリルを突き出して破ろうとする。

「カスミちゃん、【対抗】は?」

 花陽に訊ねられると「ない」首を横に振ってカスミは答えた。と同時にドラムが魔弾を突き破り、サキュバスの元へ疾走する。

 力を得たドラムは、背中のブースターを全開にし、真紅の影となりてサキュバスへ肉薄。一点のみに集中した攻撃は、瞬く間にサキュバスの肉体を捉え、内臓までを抉り突き抜けていく。断末魔が聞こえる頃には、サキュバスは消失していた。

 

 カスミのレフト:サキュバス 撃破!

 

 バトルが終了してもドラムは真紅のオーラを纏っている。バトル中ではなく、ターン中と効果が書いてある為、効果が持続しているのだ。

 これにはカスミの表情も少し歪む。手元のモンスターでは突破できても、[ソウルガード]があるが故に、[反撃]で破壊されるだろう。

「……これでターンを終わるよ」

 手札と場のカードを何度か見つめて、ほんの少しだけ思い巡らせた後、カスミは終了を宣言する。

 まだ攻撃できるモンスターがいるのに攻撃しなかった為か、「良いの?」と訊ねる花陽。

 彼女の問いかけにカスミは「うん」と返答する。カスミの表情に迷いはなかった。

 

  カスミの手札:3/ゲージ:1/ライフ:11/カスミ:アゾット/センター:ガッツ/ライト:ドーン伯爵

 

 またカスミのターンが終了した事により、ドラムのパワーアップ効果は切れ、彼が纏っていた真紅のオーラは消失する。

 

 凛のセンター:アーマナイト・ドラム/防8000→2000/[反撃]→なし

 

「……考えたな」

 おもむろに正成は口を開く。カスミの意図を読み取って、称賛の意を称した。

 攻撃しなかった事により、モンスターが場に残っている。だが、普通考えてみれば、[貫通]を持っているドラムに対してセンターを埋めるのは悪手だ。理由は明白、攻撃を防げないからである。

 攻撃を防ぐ手段である〈聖杯〉は、センターが空いていなければ使えない。さらにガッツの防御力では、ドラムの攻撃力に到底届きそうもないだろう。

 ダメージを軽減するカードはあるかもしれないが、それでも防御手段の幅は狭い。極めて悪手と言える。

 しかし、事はそう簡単に完結するものではない。カードの効果を知っている正成は、カスミがどれだけ各カードの特性を生かしているのかと分析し、彼女の判断に舌を巻いていた。

「どういう事にゃ?」

「後で説明する。お前のターンだぞ」

 質問を投げかけた凛に正成は次の行動を促す。「分かったにゃ」凛も今はそれ以上言及せず、カードを引く。

「ドロー、チャージ&ドロー!」

 凛の手札:3→4/ゲージ:1→2

 

「それでさっきの……」

 一旦手を止めて、凛は訊ねた。正成の方が背が高い為、自然と見上げる形になり、上目遣いになる。彼女の瞳に不安や心配の色はなく、ただ純粋な疑問だけがあった。

 彼女の視線を受け止め、正成は「ああ、それはな……」と次の句を繋げる。声音は相変わらず平坦だ。

「このままだと相手のセンターは破壊できないって事だ」

 予想外な返答に凛は大きく驚嘆の声を立てた。「どういう事だにゃ!?」食いついて訊く。目は大きく見開かれ、目一杯まで正成を見ようとしているかのよう。

「センターのモンスターは、攻撃では破壊できない」

 動揺が伝播する事なく、正成は泰然とした態度で返事をする。「自分のライトにモンスターがいる時だけ、だけどな」落ち着いた調子で付け加えた。

 正成がカスミに舌を巻いた理由は、この事である。ガッツは自分のライトに《ワイダーサカー》のモンスターがいる時、攻撃では破壊されない。ドラムが持っている[貫通]は、攻撃で破壊しないと発動できない能力。これでは、ダメージを与えられないのだ。

 これを理解して行動したのだから、中々のやり手だと窺える。現状、こちらの攻撃手段が減っているのだから、厄介この上ない。初心者ではない事は察していたが、これまでカードの特性を利用できるとは思いもしなかったと。

「あ、そうだ。凛、ライトかレフト空けておけよ」

 ドラムも会話に入る。凛は頭の上に浮かべて、「何でにゃ?」と返した。まだ少しルールは理解できていない。

「このままだと、お前が攻撃できないからだ」

 凛が持っている赤い槍を指差して、ドラムは受け答える。「そのままだと、オイラの背中を突く事になっちまう」愉快げに笑っているが、意外と真剣な問題だ。

 自分のセンターにモンスターがいる場合、アイテムを装備していても攻撃に参加する事ができない。中には、センターがいても攻撃できるアイテムもある。

 けれど、基本的にはドラムが言ったように味方の背中を傷つける事になる為、センターがいては自分自身が攻撃できないのだ。

「なるほど……これは頭を使うにゃ~」

 課題を目の前に凛は難しい顔をして手札と睨めっこする。自身のレフトかライトを空けつつ、相手のモンスターを如何に対処するか。しばし思考した後、彼女は動き出した。

「まずはキャスト、〈裂神呼法〉だにゃ! ゲージ1とライフ1を払って、カードを1枚ドロー!」

 凛は迷いなく言葉を続ける。「さらに《武器》を装備しているから、もう1枚ドローだにゃ!」計2枚のカードを引いた。

 

 凛の手札:4→3→5/ゲージ:2→1/ライフ:11→10

 

「続けて、キャスト〈超力充填〉だにゃ! ライフ1払って、凛のゲージを+3にゃ!」

 凛の手札:5→4/ゲージ:1→4/ライフ:10→9

 

 まずは手札とゲージ周りを整える。ライフは削ってしまっているが、結果的に手札もゲージも増えた。

 手札を一瞥した後、場を見渡す凛。彼女はガッツを注視する。先程、正成から聞いた話と照らし合わせているのだろう。

 やがて一つの答えに辿り着いたのか、彼女なりの不敵な笑みで手を進めた。

「ライトに〈アーマナイト・イーグル〉をコールにゃ!」

 凛の手札:4→3/凛:咢/センター:アーマナイト・ドラム/ライト:アーマナイト・イーグル

 ライト:アーマナイト・イーグル/サイズ0/攻4000/防1000/打撃2

 

 右手前には機械の鎧を纏った鷹が現れる。人よりかは大きいが、デンジャーワールドのモンスターとしては非常に小柄だ。しかし、非常に好戦的ですぐにでも暴れてしまいそう。

「さらに、〈アーマナイト・アスモダイ〉をレフトにコールだにゃ!」

5 重火器を抱えた人型のモンスターが出現する。紅紫の肌に攻撃的な服装、これでもかと言わんばかりの重火器の数々……マジックワールドで有名なモンスター、アスモダイが装甲を纏った結果だ。

「コストでアーマナイト・イーグルをドロップゾーンに置いて、ゲージ1払うにゃ!」

 凛の手札:3→2/ゲージ:4→3/凛:咢/レフト:アーマナイト・アスモダイ/センター:アーマナイト・ドラム/ライト:アーマナイト・イーグル→なし

 レフト:アーマナイト・アスモダイ/サイズ1/攻5000/防1000/打撃2

 

 アスモダイが現れた代償に、アーマナイト・イーグルが光となって姿を消した。どこか悔しそうな顔をしていたのは、やはり暴れたかったからだろうか。今となっては、その答えは分からない。

「アーマナイト・アスモダイの効果で、カスミちゃんのレフトとライトのモンスターを破壊にゃ!」

 叫び声を上げながらアスモダイは、ガッツを挟むように右へ左へとミサイルや銃弾などを撃ち込む。

 登場時に相手のレフトとライトのモンスターを破壊するアスモダイの効果を使う事により、ドーン伯爵を破壊する狙いか。

「これは、何もできんな」

 ドーン伯爵は口の中で呟き、瞬く間に灰となった。灰は爆風によって散り散りとなり、もはやどれがドーン伯爵のものか分からない状態。これで、ガッツの能力が解ける。

 

 カスミのライト:ドーン伯爵 撃破!

 

「やるな」

 一連の流れを見て、正成は感嘆の声を立てた。自分はあくまでヒントしか出していない。

 そこから凛はどう解決するかを考え、理想通りの盤面となったのだから驚く。上出来な動かし方と正成は感服し、ほんの僅かだけ口元を緩めた。

「これで突破できるにゃ?」

「おうよ、行けるぜ」

「なら、アタックフェイズだにゃ!」

 正成の些細な表情の変化など気にも留めず、凛はアタックフェイズを宣言する。「ドラムをライトに[移動]にゃ」彼女の言葉に合わせて、ドラムは右手側に飛び移った。これで凛のセンターが空き、攻撃に参加できる。

 

 アーマナイト・ドラム:センター→ライト

 

「まずはドラムでセンターでアタックにゃ!」

「おっしゃ! ぶち壊していくぜぇ!」

 背中のブースターが点火。空気が灼ける匂いを辺りに広げながら、ドラムは突貫する。右腕のドリルは、相変わらず甲高い音を立て、高速で軸を回転させていく。何もかもを打ち砕きそうな、そんな予感を覚えさせていた。

「キャスト、〈オースィラ・ガルド〉」

 カスミが魔法カードを発動すると、ルーンが描かれた石板が現れる。「ガッツをドロップゾーンに置いて、ゲージ+1、カードを1枚ドローするね」ガッツを光に変え、カスミの手札とゲージを増やしていった。

 

 カスミの手札:3→2→3/ゲージ:1→2/センター:ガッツ→なし

 

 さらに攻撃対象を失った事により、ドラムの攻撃は空振りに終わってしまう。「くそっ!」ドラムは悔しそうに後退。まだカスミの元には届かない。

 予想外な事に狼狽する凛だが、すぐさま気を取り直す。「今度はアーマナイト・アスモダイでアタックだにゃ!」次の攻撃が始まった。

「受けるよ」

 カスミは【対抗】を使わない。否、使えないという方が正しいか。いずれにせよ、ダメージを受ける事は確定した。

 その言葉を受けてなのか、アスモダイは再び雄叫びを上げ、ミサイルやらグレネードやら銃弾やらを降り注いでいく。どう見てもやり過ぎの域なのだが、それでも本来の力を抑えられているおかげか、カスミ達や周囲に被害はない。

 

 カスミのライフ:11→9

 

「最後は凛でアタックにゃ!」

 赤い槍を持って、凛は地面を強く蹴って疾走する。生まれ持った身体能力の高さから、鈍重という言葉から程遠い身軽な動きで肉薄。そして、カスミに向かって槍を突き出した。

「これも受けるよ」

 竜の顎にも似た穂先がカスミの体を捉える。彼女の体を捕まえては、捻じり込み、引き抜いた。穂先はカスミの内臓を――ということはなく、何も掴まないまま外へと引き戻される。

 あくまで疑似体験である為、ファイターの体を傷つける事はない。多少の感触や衝撃はあるが。

 

 カスミのライフ:9→8

 

「これで凛のターンは終わりにゃ!」

 凛の手札:2/ゲージ:3/ライフ:9/凛:咢/レフト:アーマナイト・アスモダイ/ライト:アーマナイト・ドラム

 

「凄い……」

 隣でただただ見つめるしかなかった花陽の瞳は、感嘆と称賛が入り混じっていた。初心者と思わしき人物が、何も言わなくても的確にカードを使いこなせたのだから、誰だって驚くだろう。実際、花陽以外も驚嘆していた。

「確かに凄いな。初心者とは思えない」

「凛もびっくりしたにゃ!」

 向かい合っている二人も花陽の言葉に賛同した。正成の表情や声音は変化していないように感じ取れるが、裡は酷く驚いている。凛も中々良い動きをしていたが、カスミも負けず劣らず良い判断を下していた。

 先程、ドラムの攻撃を防いだプレイング、ルールをある程度理解していないとできない。初心者にできないと言っている訳ではないが、いきなり使うのは難しいところ。

 やはり、彼女はバディファイトをやっていたんだなと改めて正成は認識する。後は、これで全てを思い出してくれれば、万事解決なのだが。

「……別に凄くはないよ」

 照れくさいのか、カスミは頬を上気させ、少し俯く。「確か、こうできるはずって、覚えていたから」記憶の断片を手繰り寄せるように、ポツリと喋る。そして一拍置いた後、顔を上げて前を見据えた。

「私のターン、まずはドーン伯爵の効果を使うよ」

 ドロップゾーンにあるカードを一瞥した後、「ライフ1払って、ドロップゾーンからドーン伯爵をレフトにコール」先程のターンで姿を消した老紳士を呼び出す。

 散り散りなって行方が分からなくなっていた灰が、一ヶ所に集まり、見覚えのある姿を模る。日傘を差した老紳士――ドーン伯爵そのものだ。

 

 カスミのライフ:8→7/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵

 

「先程の一手、見事だった」

 おもむろに口を開くドーン伯爵。「お互いにな」カスミと凛を交互に見た後、二人に向けた言葉に変換させる。

「いや、凛はそこまで……」

「凛ちゃんも凄かったよ!」

 突然、ドーン伯爵に褒められて凛は尻込みしてしまう。だが、すかさず花陽がフォローに入り、「あれだけカードが動かせたんだもの、自信を持って!」眉を逆八の字にした彼女に励まされた。

「かよちん……分かったにゃ!」

 快活な笑顔で凛は応える。「さあ、どんとこいにゃ!」改めてカスミの方へとめを向けた。

「うん、遠慮なく。ドロー、チャージ&ドロー」

 カスミの手札:3→4/ゲージ:2→3

 

「ライトに〈装甲竜 クエレブレ〉をコール」

 彼女の右前方には、装甲の名に恥じない頑丈そうな鱗を持った竜が現れる。「ゲージ2払い、デッキの上から1枚をソウルに入れるよ」竜は咆哮し、場の空気を震わせた。大きさもドラムより大きく、まさしく神話に登場する竜そのもの。

 

 カスミの手札:4→3/ゲージ:3→1/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵/ライト:装甲竜 クエレブレ(ソウル:1)

 ライト:装甲竜 クエレブレ/サイズ2/攻7000/防5000/打撃2/[貫通]/[ソウルガード]

 

「次に〈ナイトウィッチ クリア〉をレフトにゲージ1払ってコール」

 間髪入れずに次のモンスターをコールする。今度はカスミの背丈と同じぐらいの魔女だ。クリアの名を示すかのように、暗くなると見えなくなりそうな透明感をどことなく持っている。目元は銀の髪で隠されて見えないが、口元は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 カスミの手札:3→2/ゲージ:1→0/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵/センター:ナイトウィッチ クリア/ライト:装甲竜 クエレブレ

 センター:ナイトウィッチ クリア/サイズ1/攻1000/防1000/打撃2

 

「おいおい、これはやべえぞ……」

 カスミの場を見て、ドラムの顔は焦りを見せる。「また攻撃で突破できねえ布陣じゃねえか!」ここぞとばかりに思いの丈を叫んだ。……叫ぶのも無理もない。何せ、現在の布陣は、さっきの強化版なのだから。

 [ソウルガード]を持っているクエレブレがライトにいる事により、クリアは攻撃では破壊されないし、破壊されるまで時間を要する。

 いくらパワーが自慢のデンジャーワールドと言えど、攻撃でモンスターを破壊できなければ、そのパワーも意味がない。

「このままアタックフェイズに入るね」

 一呼吸後、カスミは宣言する。確認するかのように、凛へ目配せすると「[移動]はしないにゃ!」彼女の返答が耳に届いた。

「じゃ、クエレブレでファイターにアタック」

「受けるにゃ!」

 クエレブレは再び咆哮を放ち、空気の振動をファイター達に叩きつける。

 満腔で感じる強烈な空気の圧力。耳朶を強く打つ竜が(うそぶ)く声。

 体重が軽い少女達は吹き飛ばれそうになる。

 正成も少しばかり重心を落として、体勢を崩さないようにしていた。少女達の悲鳴が飛び交う中で、仏頂面は健在しており、眉一つも動かさない。

 体躯に恵まれている自分ですら、気を抜くとそのまま転がされそうだと冷静に観察する。ファイトシステムでこのレベルなのだから、実際はもっと体中を叩きつけるように放つなのだろうなとも。

 ひとしきり吼えたクエレブレは口を閉じ、泰然とした姿でそびえ立っていた。偉容な姿は、如何に竜という存在かというのを示しているかのよう。

 

 凛のライフ:9→7

 

「次は、クリアでファイターにアタックするよ」

 花陽に手助けしてもらいながら、カスミは何とか姿勢を立て直し、次の行動へ出る。傍らの花陽は、大きく目を開いてカスミの手をじっと見つめていた。何かしら引っかかっていただろうが、対戦中の二人は気にも留めない。

「これも受けるけど、キャスト、〈豪胆逆怒〉にゃ!」

 クリアが放った魔弾が凛に襲いかかる。彼女の身は黄色のオーラに包まれていた。「受けたダメージ分だけゲージを増やすにゃ!」風景と同化して目で捉えにくい魔弾は確実に凛の体へ到達。しかし、凛が纏ったオーラが、魔弾を吸収して彼女のデッキの上から3枚をゲージに置いていく。

 

 凛の手札:2→1/ライフ:7→4/ゲージ:3→6

 

「今度は、ドーン伯爵でファイターにアタックだよ」

「レディにはあまり手荒な真似はできんが」

 ドーン伯爵はそう言うと右手を突き出し、魔力を集中させる。「吾輩とて、主の命を果たさないわけにはいかんからな」真剣な目つきで覿面の凛へ魔法を解き放った。

「次も受けるにゃ!」

 攻撃に対して身構える凛。しかし、弾き飛ばれる事も衝撃が襲ってくる事はなかった。代わりに、そよ風が流れ込んでくる。攻撃なのか甚だ疑問だが、これでも攻撃によるダメージになるだろう。

 

 凛のライフ:4→3

 

 凛は鳩が豆鉄砲を食ったように目をしばたたかせる。先程までの攻撃はある程度衝撃が襲ってきた為、まさか何もないとは思わなかったからだ。

 その様子を眺めていたドーン伯爵は「先程、申しただろう?」柔らかい語勢で言葉を紡ぐ。「吾輩は、レディに手荒な真似はできんと」日が直接当たらないように日傘を差している故、影で表情が見え辛いが穏やかな表情である事は確かだろう。

 思いもよらない一言に凛は動揺し、「にゃにゃにゃ!?」頬を上気させた。「り、凛が、女の子!?」自身の見た目を気にしているのか、少しばかり卑下の口調が含まれている。

「何で、そこに驚くんだ?」

 彼女の反応を不思議に感じた正成が、狼狽する凛に訊ねた。見た目は確かに中性的ではあるが、体格的や声音が少女そのものの声をしているだから、何故そこに驚くのだろうか。不思議でしかならない。

 正成の思考を読み取ってか、ドラムは一つため息を吐く。「察してやれよ」繊細な問題に対しての配慮が足りない正成をたしなめた。

「どう見たって女の子なのに、驚くのは変だろ?」

 トドメと言わんばかりに正成は正直な意見を口に出す。驚く程に大雑把で無遠慮な一言。誹る事はないだろうが、それでも慎重に言う言葉であったのは確か。ドラムは呆れたような目で正成を見て、「それだから、お前はモテねえんだよ」怪訝な調子で吐き捨てた。

 言われた側の凛に傷ついた様子は見られない。むしろ、嬉しさや恥ずかしさが込み上げてきたのか、はにかんで俯いた。

 結果的には彼女を傷つけていないと見たのか、正成は「別に問題ないらしいぞ?」仏頂面で返す。

「それでも言葉は選べって」

「選んでいる」

「思った事を言っているだけだろ」

 胡乱げなドラムの視線をものともせず、「思った事は選んでいるさ」平然とした態度で言い返した。これ以上はファイトが進まなくなるから話を切り上げて、「すまねえ、進めてくれ」ドラムはカスミ達の方に顔を向けて促す。

 カスミは小さく頷くと「最後はアゾットでファイターにアタックするね」自身が持っている魔法剣を振るい、魔球を生み出した。

「にゃ! センターにモンスターがいるのに!?」

 すぐさま現実に戻った凛は、目の前の光景に仰天する。先程、センターにモンスターがいると自身は攻撃に参加できない事を教えられたが故に、なおさら驚きを隠せない。

「アイテムの中には、センターがいても攻撃できるものもある」

 落ち着いた語調で正成は教える。「あの剣のようにな」相変わらず大きく変化しない表情で次の句を継いだ。

 センターにモンスターがいても攻撃できるのは大きな利点。全面が埋まっていても攻撃に参加できるのだから、単純に攻撃回数が上がる。センターを埋める戦法に欠かせないカードの一つだ。

「どうするんだ?」

 ドラムの問いかけに「このまま受けるにゃ」と答える凛。剣はもう一度振るわれると凛のところへ一直線に走る。

 魔球をその身で受けた凛だが、特に変わった様子はなく元気な姿でいた。しかし、ライフはかなり危険な状態である。

 

 凛のライフ:3→2

 

「私のターンはこれで終わり」

 カスミの手札:2/ゲージ:0/ライフ:7/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵/センター:クリア/ライト:クエレブレ

 

「凛のターンにゃ! ドロー、チャージ&ドロー!」

 凛の手札:1→2/ゲージ:6→7

 

「かなりピンチだぞ?」

 傍目で正成は問いかける。精悍な顔立ちに吊り上がった目元から睨んでいる形相にも見えるが、決して彼は睨みつけている訳ではない。表情は至って平静を保っている。眉一つも動かさなさそうな雰囲気さえ感じられた。

「大丈夫にゃ! まだ打つ手があるにゃ!」

 元気よく返答した凛は「キャスト、〈裂神呼法〉にゃ! ゲージ1とライフ1払って、カード1枚ドローだにゃ!」魔法を使って、手札を増やしていく。「さらに咢を装備しているから、もう1枚にゃ!」ライフがギリギリの状況で、活路を開こうとさらに身を削ってカードを2枚引いた。

 

 凛の手札:2→1→3/ゲージ:7→6/ライフ:2→1

 

「センターに〈アーマナイト・ケルベロス“SD”〉をコールにゃ!」

 凛の手札:3→2/凛:咢/レフト:アーマナイト・アスモダイ/センター:アーマナイト・ケルベロス“SD”/ライト:アーマナイト・ドラム

 センター:アーマナイト・ケルベロス“SD”/サイズ0/攻2000/防2000/打撃1

 

 白毛が目を引く三つ首の犬が現れる。しかし、サイズは名前の通り、元来の大きさよりもかなり小さくなっていた。

 それでも両隣にいる背丈が高いモンスター達と負けず劣らず、堂々たる出で立ちで一つ吠える。小さくとも頼りがいがある番犬がそこにいた。

「ケルベロス“SD”の効果を使うにゃ!」

 眉を逆八の字にして強気な表情で凛は宣言する。「ケルベロス“SD”をドラムのソウルに入れるにゃ!」言い終わるか終わらないかというぐらいに、ケルベロス“SD”は消失し、代わりにドラム両肩にはケルベロスが背負っていたキャノン砲が装着された。

 

 凛のセンター:ケルベロス“SD”→なし/ライト:アーマナイト・ドラム(ソウル:1→2/ケルベロス“SD”)

 

「キャスト、〈暴連撃〉だにゃ! このターン中、ドラムに[2回攻撃]を与えるにゃ!」

 凛の手札:2→1

 ライト:アーマナイト・ドラム/[2回攻撃]

 

 再び真紅のオーラがドラムを包む。筋肉は膨張し、機械類は調子良く規則正しい音を立て、快調ぶりを示した。

 ドラム自身も獰猛な笑みを浮かべて、「っしゃ! ぶっ飛ばしていくぜ!」意気揚々に闘志を漲らせる。

「さらにドラムの能力を使うにゃ!」

「いよいよだな!」

「ゲージ2払って、手札1枚を捨てて、“鋼鉄の友情!”を発動だにゃ!」

「このターン中、オイラと凛のアイテムの打撃力を+3するぜ! 受け取れ!」

 凛の手札:1→0/ゲージ:6→4

 凛:咢/打撃1→4

 ライト:アーマナイト・ドラム/打撃2→5

 

 真紅のオーラがさらに光り輝く。ドラムの筋肉は、はち切れんばかりに肥大化し、巨木ような逞しい手足へと変貌する。ドリルも今までより多く回り、竜巻を生み出しそうな勢いがあった。

 凛もまた黄色のオーラを身に纏う。彼女が手に持っている赤い槍も穂先が大きくなり、まさしく竜の顎そのものが取り付けられたかのようだ。

「このままアタックフェイズに入るにゃ! まずドラムでライトにアタックだにゃ!」

「行くぜ、ドリル・ラム・ブロークン!!」

 背中のブースターがさらに出力が増し、空気が焦げる臭いを感じさせながら、ドラムはクエレブレに向かって突貫する。

 爆発的な加速力を増したスピードで滑空する彼を目で捉えるのは困難だ。

「ドラムのソウルにあるケルベロス“SD”の効果を使うにゃ!」

 間隙を縫って凛はさらに告げる。「ドラムが攻撃した時、ゲージ1払って、カスミちゃんのセンターを破壊にゃ!」彼女の指示に合わせて、ドラムが背負っているキャノン砲の砲塔がクリアに向けて動く。そして、両肩のキャノン砲から砲弾が放たれ、寸分違わず透明な魔女の元へ音を置き去りにして飛んでいった。

 

 凛のゲージ:4→3

 

「キャスト、〈オースィラ・ガルド〉」

 このままでは破壊されると判断したのか、カスミはすかさず魔法を使う。「クリアをドロップゾーンに置いて、ゲージ+1、カードを1枚引くよ」クリアはそのまま姿を消して、砲撃されたところは粉塵をまき散らされただけで済んだ。

 

 カスミの手札:2→1→2/ゲージ:0→1/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵/センター:クリア→なし/ライト:クエレブレ

 

 だが、ドラムの勢いは衰えない。唸りを上げて轟くエンジン音と共に装甲竜へ肉薄する。ドリルの切っ先は、剛健な鱗を砕き、肉へ抉り込む。そのまま内臓まで到達するところで、突然ドリルの回転音が止んだ。

 強靭な筋肉により、動きを阻害されてしまい、回転を止めてしまったのだ。ドラムは舌打ちをして、ドリルを引き抜き、後退する。ドリルには微細な肉や血が――付いている訳もなく、突き刺す前の姿を保っていた。

 

 カスミのライト:クエレブレ(ソウル:1→0)

 

「ドラムは[2回攻撃]だから、もう一度スタンドにゃ!」

 止まっていたドリルが再び回転して、唸りを上げる。「ドラムでカスミちゃんにアタックにゃ!」ブースターが噴き上がり、もう一度ドラムは突撃。真紅のオーラが尾を引いて、まるで流星の如く駆け抜けていく。

「キャスト、〈聖杯〉。攻撃を無効化するよ」

 カスミの手札:2→1

 

 両者の間を割って入るように黄金に輝く聖杯が姿を現し、聖なる力を用いてドラムのドリルを弾いた。再度攻撃を通らなかったドラムは、苦虫を噛み潰したような表情で元いた場所へと戻る。

 と、同時にカスミのライフをこのターン中で削り切る事が不可能となった。後、1点だけあれば勝てる可能性があったのだが。

「今度はアスモダイで、ライトにアタックにゃ!」

 少しでも勝つ確率を上げる為に、凛はライトのクエレブレを倒す事に専念。クエレブレは[貫通]を持っているモンスター、防御力が低いドラムでは壁にならない。だから、ライフを削るよりも優先する。

 

 命令を受けて、アスモダイはいつも通り感情の昂ぶりを抑えないままロケットランチャーやミサイルランチャー、マシンガンを放つ。

「【対抗】はないよ」

 カスミの声が届く頃には、過剰と言っても過言ではないぐらい弾丸の雨が降り、粉塵で周囲が見えなくなっていく。

 そして視界が晴れると、先程まで偉容な姿でそびえ立っていた装甲竜の姿は、跡形もなく消えていた。

 

 カスミのライト:クエレブレ 撃破!

 

「最後は凛でカスミちゃんにアタックだにゃ!」

「このまま受ける」

 威勢よく飛び出す凛。猫のような素早いステップであっという間にカスミの元へ辿り着き、咢の穂先を叩きつける。

 質量的に潰されかねないが、カスミの体は潰される事はなく、衝撃を多少与えた程度で終わった。

 

 カスミのライフ:7→3

 

「これで凛のターンは終わりにゃ!」

 凛の手札:0/ゲージ:3/ライフ:1/凛:咢/レフト:アーマナイト・アスモダイ/ライト:アーマナイト・ドラム

 

 ターンが終わったと同時に凛やドラムの身を包んでいたオーラが霧散する。肥大化していたドラムの筋肉は、見る見る内に元の体格へと戻り、凛が持っていた咢の穂先もサイズが元通りになった。

 

 凛:咢/打撃4→1

 ライト:アーマナイト・ドラム/打撃5→2/[2回攻撃]→なし

 

「私のターンだね。ドロー、チャージ&ドロー」

 カスミの手札:1→2/ゲージ:1→2

 

 ドローフェイズを終えたところで、カスミは一旦手を止め、手札を見つめる。少しの沈黙が流れた後、花陽の方へ顔を向けて彼女に話しかけた。

「ねぇ、お姉ちゃん? やっぱりこのターンで決めないと厳しい?」

 投げかけられた質問に花陽は眉尻を下げて、やや困惑した様子で考え込む。言うべきか言わないべきか悩んでいるのだろう。やがて答えを決めて、花陽はおもむろに口を開いた。

「うん、そうだね。返しのターンで負けるかも」

 優しく丁寧に告げられた言葉は、現実を突きつけるものだった。けれど、カスミは不安そうな顔をしない。むしろ、答えを聞いて安堵の表情を浮かべる。「そっか、ならこのターンで決めるね」凛達の方へ向き直って、宣言した。

「どんとこいにゃ!」

「おうよ! 簡単にはやられねえぜ!」

 向かい側にいるドラムと凛が気勢よく返す。手札がないとはいえ、まだドラムという盾が残っている。つまり、ドラムを倒し切るか、[貫通]を持ったモンスターを召喚しなければカスミに勝ち目はない。

「キャスト、〈スンベル・ガルド〉。ドロップゾーンに〈ブレッフェン・ガルド〉がないから、ゲージ1払うよ」

 やや緊張した面持ちでカスミは続ける。「そして、カードを2枚ドロー」引いたカードを見て、思わず彼女の顔が綻んだ。

 表情から察した正成は、凛の敗北を悟る。隣を見ると凛も何となく気付いたようだが、決して不満げな顔はしなかった。

 それどころか楽しそうな笑顔を浮かべて、次の行動を待っている。特段心配する必要はなかったかと思いながら、正成は正面を見据えた。

「〈森の王 ズラトロク〉をライトにコールするよ

 頭に角を生やし、鹿やトナカイなどに似た出で立ちをしたモンスターが出現。まるでその場所だけが時間が止まっているかのように静かに佇んでいる。「ズラトロクの登場時の効果でゲージを+2するね」神秘的な力により、デッキから2枚がゲージに置かれた。

 

 カスミの手札:2→1/ゲージ:2→4/カスミ:アゾット/レフト:ドーン伯爵/ライト:森の王 ズラトロク

 ライト:森の王 ズラトロク/サイズ2/攻3000/防2000/打撃2

 

「さらに、キャスト〈デュラハンの号令〉」

 どこからか突撃の合図を知らせる音がなると、ドーン伯爵やズラトロクが緑色のオーラに包まれる。「ゲージ3払って、このターン中、私の場の《ワイダーサカー》に[2回攻撃]を与えるよ」魔力が溢れんばかり増強し、二体の気勢が上がった。

 

 カスミの手札:1→0/ゲージ:4→1

 レフト:ドーン伯爵/[2回攻撃]

 ライト:ズラトロク/[2回攻撃]

 

「アタックフェイズに入るよ」

「ドラムをセンターに[移動]にゃ!」

 無駄な足掻きとも言えるが、取れる行動はきっちりと取る。ドラムもそれを理解してもなお、「任せろ!」と意気込み、凛を守るように仁王立ちした。

 

 アーマナイト・ドラム:ライト→センター

 

「まずはズラトロクでドラムにアタック!」

 ズラトロクは緑色の体毛を震わせ、体中の魔力を頭上へ集中させる。そしてドラムに向けて、魔弾を撃ち放つ。

「[ソウルガード]だにゃ!」

 目で捉えるほどに困難な早さで飛来する弾丸は、ドラムの装甲を確実に破壊。ドラムは壊れた装甲をパージして、破片が生身の肉体に突き刺さるのを防ぐ。瞳の奥はまだ闘志が燃え盛っていた。

 

 凛のセンター:アーマナイト・ドラム(ソウル:2→1)

 

「ズラトロクをスタンドして、もう一回アタックだよ!」

「これも[ソウルガード]で受けるにゃ!」

 再度放たれた魔弾。今度はドラムの両肩にあるキャノン砲に直撃し、砲身をひしゃげていく。デッドウェイト化を防ぐ為に、また切り離される。だが、これでドラムの身を守るものは、手薄となってしまった。

 

 凛のセンター:アーマナイト・ドラム(ソウル:1→0)

 

「今度はドーン伯爵でアタックするよ」

「では、幕引きといこうではないか」

 威厳溢れる語調でドーン伯爵は右手を広げて突き出す。両目を閉じて集中し、魔力を右手に集めていく。唱えている人物しか分からぬ言語で魔法の詠唱をしたら、両目を大きく見開き、ドラムへ向けて雷のように魔力を迸らせた。

 避ける術も防ぐ術もなくドラムは即身で受ける。「ここまでか」終わりを悟り、静かに呟く。後ろに振り向くと凛が申し訳なさそうな表情で見つめていた。

「胸を張れよ。お前は充分やった」

 にやりと笑いかけてドラムは消失。最後の一言が胸に響いたのか、凛は我に返り威勢を取り戻す。

 次の攻撃で終わる。だが、それでも前を向いて凛は快活な笑みを浮かべていた。やれる事は全部やったと言わんばかりに。

 

 凛のセンター:アーマナイト・ドラム 撃破!

 

「最後は主に譲ろう」

「え?」

 唐突の提案にカスミは困惑し、「何で?」と聞き返してしまう。怒る事も不機嫌になる事もなく、ドーン伯爵は穏やかな微笑みで「どうせなら、自分で決めた方が気持ちが良いだろう?」大人らしい気遣いを見せた。

 彼の好意を無碍にする事はできないと思い、カスミは頷いて剣を握り直す。眉根を眉間に寄せて、真剣な表情で宣言。

「最後は私で決めるよ!」

 縦一文字に振るい、魔力で生み出された斬撃波を飛ばす。そして、凛の体を確実に捉えて、真っ二つに――なる訳がないが、そう錯覚させるような衝撃を与えて、彼女のライフを削り切った。

 

 凛のライフ:1→0

 

WINNER:カスミ(&花陽)




 ……正直、ファイトのクオリティはお粗末なもので申し訳ない。
 また雰囲気重視というか流れ重視な感じで、今回も色々とファイトの文章を調整しました。未だにファイトシーンの書き方が定まらなくて、申し訳ないです。
 この辺りも何かしら意見をくださると嬉しいなぁ~と思っています。

 ちなみにかよちんのデッキに関しては、構成自体は全く別物だと思いますが、ヤギリさんのをお借りしています。

 1話の時点で言い忘れたのですが、今作に登場するオリキャラ「カスミ」は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の「かすみ」さんではありません。名前被りましたけど()
 今回の話に沿って、一番合うなって思った名前がたまたま「カスミ」ってだけでした。

 与太話もそこそこに、この辺りで筆を休めます。
 次回は明日17時に公開予定……間に合っていればの話ですが。

 では、感想やオリカ・オリキャラの提案お待ちしております。
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